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#17 【佐藤大翔】親友の死

佐藤君視点を書いてみました。

さらっと流したかったんですが、各話で佐藤君の変な反応とかの所を書くと結構長くなってしまいました。


本音:澄ちゃんの行動を被害者側の視点で見た時にどうなるのかを書きたかっただけです。

   試しで書いているので、好評でしたら定期的に佐藤君視点も書こうかなと思います。

 side:佐藤大翔


 期末テスト前日、俺と美月は最後のテスト勉強を図書室で行っていた。


 小中と利用することが殆どなかった図書室は、高校に上がって美月と話すようになってから、今まで利用しなかった利息を回収する勢いで足を運んだ。


 昨日までは秋山と藤堂が勉強会に参加していたこともあり、勉強会だというのに騒がしいモノになっていたが。

 今日はどうやらその二人は来ないらしかった。


 学校で見かけるときは必ずと言っていいほど、3人で行動している所を目にしていた俺としては、二人が参加しないことに意外だと思った。


 美月と関わるようになったのは先月から、他の2人に至っては勉強会の数回だというのに、3人の仲がかなり良好だというのはすぐにわかった。


 女性同士の距離感はよくわからないが、秋山と美月の距離は男の俺が見る限りかなり近いというのが率直な感想だ。


 藤堂はともかく、秋山は何かにつけて美月にベタベタとまとわりつくことが多い。


「ねえ、早く次の問題出してー」


 勉強とは全く関係のないことに思考を中断させたのは、柔らかい鈴のような声だった。


 声のしたほうに目を向けると、そこには一人の少女がいた。


 日本人離れ、というよりは人間離れした白髪。現実味のない白髪は、何故か少女という存在を主張するには馴染み過ぎていた。


 白髪という、日本人とは全く逆の髪色をしているのに、少女の白は違和感を一切感じさせることはなく、少女の儚さを演出していた。


 椅子に座っている少女と、席を立っている俺との高低差ゆえに、髪の隙間からこちらを見上げる青色の瞳。


 クラスの中だけではなく、この高校全部を見ても少女が一番可愛いと言っていたクラスの連中が、この少女が見上げてくるという光景を見れば、どんな反応を示すのだろう。


 そんな、達観した視点で少女を。美月澄香を見ている俺は、目の前の少女に対して特別な感情を今まで持つことがなかった。


 そう、今までは。


 それが少しずつ変わってきたのは、俺の唯一の親友で、同姓に対して一般的に向ける以上の感情を持っていたアイツが、死んでから少し経った頃だった。



 ☆



 鈴木斗真が俺を助けて死んだあの日から1週間以上、俺は部屋に引きこもった。


 鈴木斗真という人間は、一言で言えば心底良い奴だ。二言目があれば、ついでに心底バカな奴だ。


 初めて斗真と出会ったのは小学のクラブ活動の時。

 ボロボロのラケット楽しそうに振り回しているのが、初めて斗真を見た時だった。


 第一印象は面白い奴。

 他の同級生と比べても斗真は誰よりも楽しそうに、ラケットを振っていた。


 だから俺は声を掛けた、斗真となら他の奴よりも楽しく出来そうだと思ったから。

 実際、俺の考えは正解以上に運命ともいえるものだったと、今なら言える。


 初めて話すのに、斗真は満面の笑みで俺を受け入れてくれて。それから俺達はクラブ活動の殆どを二人で遊んだ。


 クラブ活動で仲良くなった俺達が、学校でも話すようになり、学校外でも一緒に遊ぶ機会が増えていくのに時間は要らなかった。


 斗真という人間はどこまで行っても無垢で、人を疑わない人間だった。


「手首を擦って匂いを嗅ぐと、レモンの匂いがするらしいよ」

「ほんとか!?」


 今どきの小学生なら誰でも知っているはずの悪戯。

 自分ですら、斗真以外の友人からそんな悪戯をされた時はすぐに看破して、その指示に従うなんてことはしなかったのに。


「あ、右の足もとに毛虫がいる!」

「まじで!?」


 斗真は疑わない。

 慌てて右足を後ろに持ち上げて、所謂ぶりっ子ポーズと呼ばれる少し古い悪戯に、いとも簡単に引っかかる。


「あはははは! 引っかかったー!」

「お前なあ!」


 俺が笑うと斗真は怒った表情を見せて俺に突っかかる。

 あまりの形相に、俺はやってしまったと、子供ながらに結果を考えなかった行動に怯えてしまう。


「足元に毛虫いねえじゃねえか!」

「……そこかよ」


 悪戯をされても、簡単に引っかかるくせに、こっちが想定した引っかかり方をしないのが斗真だった。


 そうして俺達の仲はどんどん深まっていき、自然とお互いを親友と思えるようになっていった。


 俺が斗真のことを親友以上に考えるようになった切っ掛けは特にない。

 ただ何となく中学1年のどこかで、斗真に対しての自分の気持ちに気付いただけだった。


 だから中学に二人で入ったテニス部でも、俺は斗真とペアを組んで、いつも一緒にいるようにしていった。

 斗真に向けている自分の感情が、他の人には許容されず、奇怪に扱われるものだということも中学生ながらに分かっていた。


 俺は何も言わなかった。

 斗真と親友以上の関係になりたいと言う思いは当然あった。


 だけど、それが斗真に受け入れられるか分からなかった。

 気味悪がられて、距離を離され、今の親友という関係が崩れていくのを幻視してしまった。


 俺が斗真に自分の気持ちを伝えるのを諦めるまで、そう時間は掛からなかった。


 その代わりにいつでも一緒にいようと思った、親友としてずっと隣に入れればそれでいいと。

 自分を納得させていた。


 親友の隣にいるためにできることは何でもするつもりだった。

 元々頭がよかった俺は、勉強に関しては問題なく、斗真以上の成績を保っていた。

 だから、斗真が行こうと考えている高校に一緒に行くことはできる。


 後はテニス。

 斗真より弱くなってしまえば、斗真とペアを組んだり、一緒に部活をすることが出来なくなってしまう。


 だからは俺は斗真と遊ぶ以外の時間のほとんどをテニスに充てた。

 不純だろうが、気味悪がられる理由だろうが関係なかった。


 恋人なんて関係を望んでいるわけじゃなかった。俺は斗真と一緒にいられれば、なんだってかまわなかった。


 幸い、テニスに関してもある程度の才能が合った俺は、練習すればするほど上達していった。

 斗真と比べても。


 斗真は良い奴だ。だから俺と自分のテニスの実力が離れていくのを感じ取っていた。


 ある日。


「なあ、大翔は俺よりテニス上手いだろ?」

「まあそうだね」

「だからさ、俺よりももっとうまい奴とやったほうがいいと思うだ。そうすれば 「嫌だ」……え?」


 斗真のそんな俺を気遣った言葉を遮るように否定する。


「知らないやつとやるより、斗真とやってたほうが断然練習になる」

「お、おう。そうなのか」

「それに、他の人も斗真と比べて大差ないしね」

「ひでぇ!」


 別に俺はテニスが上手くなりたいから、こんなに練習をしているわけじゃない。


 斗真と一緒にいるために、斗真ができること以上に出来るように頑張っているだけだ。


 それからも斗真は何かにつけて、部活中に離れようとするけど、そのたびに俺は理由を付けて斗真と練習をした。


 ずっと斗真と一緒にいられた時間は短く感じてしまう、だから中学を卒業するまであっという間だった。

 高校も部活も同じ場所、だからこれからもこの時間が続くんだと俺はずっと考えていた。


 そんな日常が、簡単に崩れるなんて思っていもいなかった。


 高校1年の6月のなんてことはない日。

 不注意で車に引かれかけた俺を、斗真が庇って死んでしまった。

すみません!

手前勝手で申し訳ないですが別キャラ視点が蛇足気味なので、後日別キャラ視点のお話を別章に区切るなどで、本編(章単位ストーリー)とサブ編(章単位キャラ視点)みたいな形で読み分けできるように少し整備します。


なので、基本蛇足気味になりやすいサブ編は読まなくても、本編のみで完結できる形にしていきます。


※上記と同様の文を#1-21の前書きでも記入しています。

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