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#08 物事の解決には、多角的な視点を駆使するべし

 まったくもって無意味な出来レース裁判に巻き込まれた私は、秋ちゃんともっちゃんに詰め寄る。


「秋ちゃん! なんであんなことしたの!」

「いやあ、問い詰めようってのは元々二人で考えていたんだよー」

「そうですね、それに例え恋愛感情がなくても、異性に抱きつくなんてはしたないことは注意しないといけませんから」


 全く意に介さない秋ちゃんの反応と、結局は私のためを思ってくれていたもっちゃんに、私の勢いは沈下される。


 そうだ、結局のところ二人は私を思ってくれただけなのだ。

 秋ちゃんは遊び半分だと思うけど。


 それならば、私が二人に憤りを持つのは間違いだ。


「ご、ごめんなさい」

「うんうん、次からは気を付けるんだぞー?」

「はい……」


 秋ちゃんが私の頭を優しくなでる。


 中学生の時から秋ちゃんたちに頭を撫でられているせいか、二人の頭撫でスキルの上達が著しい。


「じゃあ、もう今後は男子に飛びついたりしないようにな?」

「はい……」

「あと、今後は佐藤君のことも私達に相談すること、いいね?」

「はい……」

「それと、私のことは今後お姉ちゃんと呼ぶように」

「はい、お姉ちゃん……ふぐっ!?」


 秋ちゃんの言葉に、私はしくしくと答える。私を思って言ってくれている言葉に、異を唱えるなんてできなかった。


 だけど最後の一つに、流れで答えてしまった私は、秋ちゃんをお姉ちゃんと読んでしまった直後、強い衝撃とともに身動きが出来なくなってしまう。


「うんもおおお! 澄ちゃんは素直でいい子だねえ! お姉ちゃんが守ってあげるから、何も心配しなくていいんだよ!」

「んぐー! んんー!?」


 秋ちゃんに抱きつかれる形で拘束された私は、高校に上がってからさらに実りをよくしている、大きな果実に埋もれてしまう。


 どうして秋ちゃんとこんなにも差が出来てしまったのだろうか、なんて思考は。


 息がしずらい状況と、私を拘束する秋ちゃんの両腕が、私の体をまさぐってきたことによって強制的に中断させられる。


 携帯のカメラを構えたもっちゃんが、私を秋ちゃんから解放してくれるまでの数分、私は自身の犯した罪を再確認した。


(秋ちゃんの言葉に不用意に返事しちゃダメだ……)


 ☆


「っということがあって、今日は大変でしたよー」

「それはSUMIが悪い、男の純情をもてあそぶんじゃねえ」

「がっはっはっは! ファンクラブが出来る程の美少女に抱きつかれたんだ、本望だったろ」


 秋ちゃんたちに冤罪裁判にかけられた私は、家に帰ると早速今日の出来事を早速ネトゲフレンドの、アヒルさんとガガンさんに話していた。


 ちなみに、今日皆で遊んでいるゲームは世界的に有名なサバイバルゲーム。


 何もない自然豊かな世界で、石を拾って、木を切るところから全てが始まる。

 皆で家を作ったり、見たことない世界を探索したり。時には敵と戦ったりと色々出来ちゃうゲームで、コミュニティ単位で遊ぶのにはピッタリだったりする。


 最近始めた事もあって、まだ皆で家を作っている最中だったりするので、暫くはこのゲームを皆で遊ぶことになりそう。


「あ、木余ってない? ちょっとここの柱で使いたいんだけど」

「私もってまーす、はいどうぞー」

「さんきゅー」


 このゲームがコミュニティで遊ぶのにぴったりというのは、こうして自然と会話をしながら、まったりと遊ぶことができるのが大きい。


 所詮PVPと呼ばれるゲームだったりすると、ほのぼの会話をする暇もないし、重要な場面だと重い空気で息をひそめたりもする。

 だから新規参入の人と仲良くなるなら、PVPゲームよりこういうのんびりしたモノの方がいい。


「それにしても、SUMIの話聞いてると性別疑うときあるよな」

「ガガンさん、私さっき資材が無いと嘆いていた哀れな人に、優しく接してたんですよね。そんなこと言っていいんですかー?」


 せっかく、建築に必要な資材を提供してあげたのに、ガガンさんはそんな心優しい私になんてことを言うのだろうか。

 優しさとは無償からくるものではないということを、懇切丁寧に教える必要がありそうだ。


 サバイバルゲームで、協力が重要視されているとはいえ、このゲームはFFが許されているのだ。


 抗議活動なら幾らでもできる。


 早速私は普段モンスターと戦うときに使う武器を取りだす。


「わー! ま、まった! 今結構重要素材とか持ってるんだよ!」

「大丈夫です、貴方の意志は私が繋ぎますから!」

「こっちくんなー!」

「お前らいつも仲いいよなー」


 建築をメインでプレイしていても、たまに脱線できるのもこの手のゲームの良い所だ。


 2分後、ガガンさんの悲鳴と共に、一つのキャラクターのライフがゼロになった。


 そんな感じで、脱線しつつも最終的には、私達がこのゲーム内で遊んでいくための拠点が完成していった。


 私たちの目の前には、一つの大きな建物が建っていた。


 装飾が少なく、広さと利便性を重要視した拠点は、見た目はともかく今後のプレイを大いに盛り上げてくれるだろう。


「それでSUMIよ、その元気になって欲しいヤツに明日からもアタックするのか?」


 建築も終わって、自分たちの荷物整理をしていると、アヒルさんが少し前に私が話題にしていた内容を掘り下げてくる。


 相談したいときって、誰かに聞いて貰わないと言い出しづらかったりするので、アヒルさんのこういう所には感謝しかない。


「んー、そうしたい所なんですけどね。どうしたら良いのかなって悩んでるんですよ」

「あー、そうだよな」

「んあ? 悩む所なんてあるのか?」


 アヒルさんは分かってくれてるみたいだったけど、ガガンさんは全く分かっていない様子だった。


 ガガンさんの性格は誰彼構わずなため、この手の話になると途端に理解を示してくれなかったりする。


(ま、それがガガンさんの良い所なんだと思うんだけどねえ)


 本人に言うと煩いので、直接本人に言うことはないだろうけど。


「はあ、これだからガガンさんは……」

「……お前めちゃ失礼だよな。俺、年上。お前、年下。OK?」

「OK、OK。ガガンさん、トシウエ」

「ガガンには分からんだろうど、普段から全然話したことのない奴を、元気づけようとするってかなりハードル高いぜ?」


 アヒルさんの言う通り、私の悩みの種というのはそのことだ。


 前世ならともかく、今世の私は佐藤君と一切の交流を持たずにいた。


 興味みたいな、授業ノートという学生的な心配の仕方ならともかく。それ以外でのアプローチが思い浮かばないのだ。


 前世の交流が有ればそんなこと気にせずに話しかけることは出来ただろうけど、もはや性別から違ってしまっているのだ。


「もうガガンさんは外野担当でお願いします」

「あーはいはい、そうですかー」


 やっぱりこの手の話で頼りになるのはアヒルさんだ。


 ガガンさんも頼れる人ではあるけど、今回のケースだと多分厄介ごとになる気しかしない。


「それでアヒルさん、どうしたら元気づけられますかね?」

「んー」


 アヒルさんは数秒悩むように唸り声を発した後、私の問いに答えてくれた。


「まずはSUMIの目的をハッキリさせる所から始める必要がある」

「目的ですか?」

「例えば、そいつとただ仲良くなりたいのか、恋人関係になりたいのか、元気づけたいのか。そこを最初に決めとかないと話がぶれるからな」

「なるほど……」


 至極まっとうな意見に私は納得する。


 アヒルさんのように物事をしっかりと順次立てるというのを、私は出来ない。

 私は考えるよりも気持ちが先に動いてしまう。だから大抵は起きた後に、行動している最中にその場で漠然と考えたりしてしまう。


「まず、恋人になりたいとかではないです。一番の目的は元気づけることで、仲良くなるのは二の次です……まあ、出来れば仲良くなりたいですけど」


 前世で友人だったのだ、今世でも友人になりたいと思うのは自然だと思う。


「よし、じゃあ次だ。SUMIが元気づけようとしているそいつは、何か趣味とか好きな事ってのはあるのか?」


 佐藤君の趣味、好きな事として最初に上がるのはやっぱりテニスだろう。

 というか、それ以外だとゲームと読書ぐらいしか無い気がする。良くも悪くも前世の私たちはテニスしかやってなかった。


「テニスですかね、その子は大会でも県大会上位とか行ける人ですし。それ以外だとやっぱりゲームぐらいですかね」

「県大会って結構すげえじゃん」

「そうだな、それだけテニスに入れ込んでいる訳だからな。それなら、そこをソイツとの接触点にすればいいんじゃないか?」

「接触点ってなんですか?」


 アヒルさんの言いたいことはなんとなく分かったけど、最後の部分で曖昧な言葉が出てきたため、私は咄嗟に聞き返した。


「簡単に言えば、テニスっていう話題を使ってソイツとの関係を作っていくってことだ」

「あ、そうゆうことですね。分かりました」

「テニス教えて、って感じで行けってことか。でもさ、ソイツは今も部活続けてるんだから、そんな時間ないだろ?」


 一瞬、光明が見えたと思ったけど、ガガンさんが提示した問題点によって、光はすぐに閉ざされる。

 が、アヒルさんはそんな私に手を差し伸べる。


「いや、案外そうでもないぞ。精神的なショックが理由で一定期間休部するとか、普通にありえるからな」

「そうなんですか!? わ、私。明日確かめてみます!」

「そうするといい、別にテニスじゃないといけないわけじゃないからな、さっきみたいなパターンで他のも考えてみろ」

「おー流石アヒルさん、人生経験が違うな」


 私は、アヒルさんから貰った解決策を胸に、明日の学校で佐藤君とどうやって関わりを持とうか。

 前世の記憶を総動員して考え始める。


 幸い、今日渡すことが出来た授業ノートで、話しかけるための楔は打ち込んだつもりだ。

 中学時代の時みたいな冷たい雰囲気も感じられなかったので、もしかしたらそんな思い悩むことでも無いのでは? と少し気持ちの余裕も出てきた。


「そういえばアヒルさん、俺の従弟が最近落ち込んでるらしいんだよ」

「おいおい、SUMIだけじゃなくてガガンの所もかよ。暗い話ばかり聞いてるとこっちまで滅入っちまうから、その話は今度な」


 考え込むと周りに対しての注意や関心を全く持たない、子供の頃からの悪い癖が出てきていた私は、ガガンさんの話を聞き逃してしまった。

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