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異世界貴族につき・・・  作者: 茶と和
第1部 田舎の異端児
29/33

29 地母神の縁

 ここは、居館と呼ばれる王城の中でも最重要施設の一室。いま、1人の女の子が3階にある自室で静かに本を読んでいた。最近、貴族の女子の間で流行っている恋愛物語だ。先日、王城に招いた友人から「面白いから、是非読んで!」と、半ば無理やり手渡されたのだ。断るわけも行かないから読み始めたが、読んでみると意外に面白い。


 身分の高い貴族家の娘と、娘とはおよそ釣り合いが取れない、ど貧乏貴族の息子との純愛物語だ。親や周囲による執拗な妨害、身分差がありながらもお互い惹かれ合うドキドキの連続が、刺激の少ない日常を過ごす、貴族の女子に受けたのだろう。


 女の子は、朝から一気に半分ほど読んでしまった。さすがに疲れたので、休憩しようと本にしおりを挟んだとき、ふと、気になって窓の外を覗いてみた。


 そこには城の教会の方に飛んでいく小さい女の子がいた。いや、小さい女の子ではない。姿かたちは確かに女の子だが、身長が20センチほどしかない人形のようだし、何より空を飛んでいる。4枚のトンボに似た翅で器用に飛び、王城に侵入しているのに、人目を全く気にした様子がない。以前、本で読んだ精霊の特徴に似ている。


 女の子は、普段の落ち着いた雰囲気をかなぐり捨て、「教会でお祈りします!」と側仕えに告げて飛び出した。それだけ女の子にとっては衝撃の光景だったのだ。


 ◇   ◇


「ここがレオンの言ってた教会ね。こう見るとひと際大きいわね。一体何人の人が暮らしているのかしら? でも、気になったのはあの小さい建物の方ね」


 小さい女の子は、レオンと共に王都にやってきた地母神の精霊だった。精霊は、ここがこの国で一番重要な王城とは知らず、人目を気にせず、真っすぐに居館の隣に建つ教会へと進んで行く。どうせ誰にも見えないのだから気にする必要はないのだ。間もなく教会へとたどり着く。


「ここね。外には武器を持った人がいるけど、中には誰もいないわね。神の魔力を感じるということは、神の力を持つ魔石でも置いてあるのかしら?」


 精霊は、扉など初めから無いかのように、スーっと扉を抜けて中に入る。そこは、中央の通路を隔てて、左右に5人ほどが座れる、木の長椅子が5列ずつあり、その先に、ひと際目を引く豪華な祭壇があった。祭壇の真ん中には、外から差し込む光を反射して輝く石像が6体、台座に乗せられて置かれており、それが6柱のご神体であるかのようだ。


 でも、その石像からは特に魔力を感じない。むしろその下にある豪華な祭壇の方から力を感じる。魔石があるとすればこの祭壇の下だ。精霊は祭壇に近づいていく。すると、ガチャリと音がしたあと、後ろの扉が開いた。精霊が振り返るとと、豪華な服を着た女の子が、お付きを引き連れて中に入ろうとしてきた。女の子の背丈はレオンくらいだ。


「ここからは王族か王が許可した者しか入室できません。皆、外でお待ちなさい」

「「「「畏まりました」」」」

 お付きは皆、心得たとばかりに女の子に頭を下げ、その場にとどまり扉を閉める。教会で祈りを捧げるのは、王族にとってそれほど珍しいことではない。急に思いついたかのように、祈りを捧げにくることはないが、それでも誰も疑ったり止めたりしないほどには、王族にとって祈りを捧げるのは、身近で神聖な行為なのだ。


 中に入ってきたのは女の子1人で、精霊をまっすぐ見つめたまま歩みを進める。やがて、女の子は精霊の前に来ると膝を折って祈りの姿勢を取った。


「お初にお目にかかります。あなたは精霊さまでお間違えないでしょうか?」

「あなた、あたしが見えるの?」

 精霊が、自分が見える女の子に驚きの声をあげる。同時に、人に見られたことをレオンにどう説明しようかと考えを巡らす。


「はい。私はこの国の王族、第五王女のララと申します」

「王女? あたしの声も聞こえるのね。あなたはレオンほどの魔力はないけど、何かエナ様を感じるわね」

「レオン? エナ様? 私はもっと小さい頃に地母神エナ様の加護を授かりました」

「確かにエナ様から加護を与えた人の子がいるって話しは聞いてるけど、あなたが加護持ちなの? どうやら本当みたいね。それならいいわ。あたしは精霊でも御使いと呼ばれる存在よ。地母神エナ様の御使いなの」


「地母神様の御使いさま……。わざわざこのようなところにお越しになったのは、どのような理由があるのでしょう? それに先ほどレオンっておっしゃってましたが?」

「あたしはレオンと一緒にこの王都というところに来たのよ。ここには神の魔力を感じたから来てみたの。あなたレオンを知ってるの?」

「ここより東に領地があるグラセス男爵家のレオンなら、一度会ったことがあります」

「確かに、グラセス男爵家の三男って言ってから合ってるわね。そのレオンがこの王都で暮らすと言うから、あたしも付いてきたの」


「そうですか。ここは王族が普段祈りを捧げる教会です。ご神体は水晶で出来ているので高価ですが、他は特に珍しいものはないと思います」

「やっぱり教会というのね。その祭壇の下に神の魔力を感じるわ。神の魔力を持つ魔石か何かがあるわね」


「隠していてすみません。実はこの下には宝物庫があります。でも特別な結界が張ってあって、父にしか開けられません。私も入ったことはありませんが、宝のなかにそういうものがあるのかも知れません」

「そう。気になっただけだから。別に欲しいとか見たいとかじゃないの」


「ところで御使い様はレオンと親しいのですか? 確かにレオンの魔力は強そうでした。私と同じ地母神の加護を持つのですか?」

「エナ様に叱られるから言いたくないわ。だけどレオンの加護はもっと強くて大きいとだけ言っておくわ。でも、そんなこと他の人に言ってはだめよ。ただでさえレオンは国王に目を付けられて、これから研究材料になるのだから。あなたも王族なら知ってるでしょう?」


「それは初めて知りました。もちろん加護のことは他の人には言いません。お約束いたします。それで、レオンが研究材料というのは?」

「本当に知らないの? そういえば、国王がレオンのことを秘密にするらしいと言ってたから、王族のあなたでも知らされてないのかも。まあいいわ。レオンが使う飛行魔法が画期的だから、研究して軍で使いたいらしいわよ。でもはっきり言っておくわ。レオンの飛行魔法は人の魔力量では無理よ。エルフや魔人なら少しは飛べるかもね」


「飛行魔法? 空を飛ぶのですか? 御使い様のように翅を出して?」

「レオンは翅で飛ばないわ。風魔法で飛ぶの。あたしの翅も飾りだけどね。初めて見たときはあたしも驚いたわ。あんな使い方するなんて。常識外だわ」

「風魔法で空を飛ぶなんて聞いたことがありません。確かに画期的で常識外ですね。それに、エルフや魔人でも少ししか飛べない魔法ということは、レオンの魔力量はエルフをも超えるということですか?」

「一概に魔力量だけではないけどね。確かにレオンはエルフを超える魔法が使えるわ。だから心配なのよ。誰かに良いように利用されないかとね。もう国王に利用されようとしてるけどね」


「レオンは父に、いや国王陛下に拝謁したのですか? 私は何も聞いてませんけど」

「レオンがそんなこと言ってたわ。国王と、側近とかいう偉そうな貴族、面倒臭い近衛騎士というのに会って、わざわざ飛行魔法を見せたらしいわよ。レオンは成り行きだって言ってたけど。それで爵位というのや、報酬を貰う代わりに、研究材料として王都に来て協力しろとって言われたんだから、自分から厄介ごとに飛び込んだようなものじゃない。本当に馬鹿だわ!」


「それで、御使いさまはレオンのことが心配だから一緒に王都に来たというわけですか」

「そうね。それだけじゃないけど」

「あの、レオンはそれほどの存在なのですか。御使いさまがわざわざ一緒に王都に付いて来るほどの?」


「うーん。本当は付いてくる気はなかったのよね。あたしは住んでいた森が好きだったから。本来、精霊と人は交わらないわ。互いを見ることも話すこともできないから当然ね。あたしは御使いとして意思を持つから、ある程度、人のことが理解できるし、こうして会話もできるけど、それでも価値観とかは違うから、これまで、ほとんど人とは係わらなかったわ。でも、レオンは私と会話ができる数少ない人間だし、私が頼んだ森の主の討伐を引き受けてくれた。信じられない魔法の使い方をするから、興味を引かれたのも事実ね」


「つまり御使いさまは、レオンが手助けしてくれたことや、会話できる存在だから、彼への情が湧いて心配になった。御使いさまということよりも、個人的にレオンに付いてきたということでしょうか?」

「勘違いしないでね。あくまでもエナ様から見守りなさいと言われたから付いてきたの。御使いであるということがあたしの全てよ。こんなこと絶対に言わないけど、エナ様がレオンを見捨てなさいと言えばそうしたわ。レオンを心配しているし、放ってはおけないけど、あくまでも御使いとしてレオンに付いてきたのよ」


「失礼しました。御使い様がレオンと王都に来たのは地母神様のご意志ということですね」

「そうね。見守るのがあたしの務めだわ」


「そうですか。レオンは地母神様が御使いさまに見守りなさいと言うほど、特別なのですね。もしかすると、今後、レオンの身に何か起きると地母神様はお考えなのでしょうか?」

「私は見守れと言われただけだから。この先、何を選択するかはレオンの自由よ。だけど、レオンのことだから平穏な生活を送るとは考えにくいわね。そんなに長い付き合いじゃないけど、レオンは明らかに厄介ごとに自ら巻き込まれに行く性格ね。きっと王都でもやらかすわよ」


「私と会ったときも、やらかしましていました。王族の前では許可がないと使ってはいけない魔法を使ったのです。癒しの魔法でした」

「癒しの魔法なんて可愛いものじゃない。あたしは目の前で治療魔法を見たことがあるわよ。ブラグスという魔物の傷を治してみせたわ」

「治療魔法? そんな魔法は神の御業です! 正教国の大司教様が使えると聞きます」

「多分レオンのとは違うわね。大司教という人は祝詞を唱えて治療するのでしょうが、レオンは祝詞を唱えず自分のイメージで傷を治すの。傷なんて初めから無かったかのように全身綺麗に治してたわ」

「飛行魔法に治療魔法。確かにそれなら御使いさまが見守るのも分かります。恐らくその2つの魔法は人間の領分を越えたものです…。レオンはほかにもそんな画期的な魔法が使えるのでしょうか?」

「そうね。あまり言うと研究材料に使われそうだからこれ以上は言えないわ。もっとも、他の人が使おうとしても、無理な魔法がほとんどだけど」


「私は研究材料にしません。このことは加護と同様、他の人には話しません」

「そう。じゃあ話してあげる。レオンはほかにも、魔法を完全に無効化させる防御魔法や、弓矢などの物理攻撃を防ぐ魔法が使えるわ。攻撃魔法は、炎の竜巻を発生させたり、上空から巨大な岩を落としたりするものね。本気を出したレオンの攻撃魔法は、人間の魔力では防げないわ。おかしいのは、指先から小さい炎を出して、その炎に風魔法を当てて暖かい風にする魔法ね」


「最後の暖かい風の魔法は暖を取るためですか?」

「それで髪を乾かすのよ。湯浴み後の濡れた髪を早く乾かすのに良いんだって。一度髪を拭いて、別の乾いた布を髪にかぶせて、布の外側から魔法を使うらしいわ。部屋の中で使うから炎をなるべく小さくして危なくないようにしたと、自慢気に語っていたわね。あたしは濡れないから良さが分からないけど。この魔法は姉が使うために考えたって言ってたから、他の人でも使えそうね」

「魔法で髪を乾かすなんて、考えたこともありません」

「そうね。それだけでもレオンは常識外だわ……」


「それで、あなたはこの話を聞いて、レオンをどうするつもりかしら?」

「どうとは?」

「あなた、さっきからレオンのことしか聞いてこないわ。私がレオンの話しをしたこともあるけど、1回しか会ったことがない子を、そんなに気にするかしら。あなた王族なのでしょう? 王族ならもっと王国側に立った質問をしても良いと思うの? レオンを研究材料にすることをエナ様がどう考えているのかとかね。国王がレオンを利用しようとしていると、あたしが言ったときには、もっと国王を擁護しても良かったわ。でもあなたはレオンの心配をしたわね。どうしてかしら?」


「それは……気になったからというのが真実です」

「1回しか会ってないのに? それに、レオンなんて名前が貴族に1人きりなんてないでしょう? なのに、あなたは真っ先にグラセス男爵家のレオンを思い出したわね? 何故かしら?」

「それは、最初に会ったときに魔法を使ったので、強く印象に残っていたということです。あれからまだ半年と経ってないですから……」


「ふーん。まあいいわ。それだけレオンが気になるなら、あなたもレオンを見守ってよ! 助けてあげてとまでは言わないから、あたしと一緒にレオンを見守っていきましょう?」

「あの、私は王女とは言っても末の娘です。そんなに力はないですし、王女だからそう簡単には動けない立場です。見守ると言ってもお役には立てないかと……」


「見守るだけでいいのよ。そう難しくないと思うの。王族にレオンを気にかけている人がいれば、少しはレオンの境遇も変わるかと思ったのだけど……だめかしら?」

「御使いさまがそこまでおっしゃるのなら。でも本当に見守ることしかできないですよ」

「それでいいのよ。あたしもエナ様から見守れとしか言われてないし。あなたもエナ様の加護を持つなら、一緒にレオンを見守っていくべきだわ」


「それなら、分かりました。御使いさまのおっしゃる通りにいたします」

「ありがとう。これであたしたちは地母神エナ様の望みを実行する仲間ね! あなたはいつもどこにいるの? たまに会いに来るわ」


 ララは、飛び去って行く御使いさまを見送ると「さて、困ったことになったわ」と1人嘆く。レオンを見守るよう言われたものの、相手は自分と同い年の男爵家三男、王家主催の子供向けのお茶会でも開かないと、まず王城には来ない。私的に王城に呼ぶこともできず、接点が見つからないのだ。


「御使いさま、これでは見守ることができません」と、天に向かって1人呟く。「そういえば、御使いさまが爵位とか言ってたけど、どういうことかしら?」ララは思い当たる人を訪ねることにした。


 ◇   ◇


「どうしたのですララ。急に面会を求めるなんて。何か大事な話でも?」

 ララは自分の母親であるアマンダに面会を求めた。アマンダは第三王妃で、第二王子の実母でもある。ララは考えてきたシナリオ通りに母に話しをする。


「お母さま。前に地母神エナ様の加護の話しをいたしましたが覚えていますか?」

「ええ勿論です。それで魔力が倍くらいになったと聞きました。それがどうしたのですか?」


「驚かないでくださいね。先ほど地母神エナ様に仕える御使いさまが来られました」

「は? 御使いさま?」


 驚くなと言われたアマンダだが、それでも驚きのあまり声が裏返る。実は、アマンダは地母神の加護を与えられたというララの言葉を本当には信じていない。作り話や妄想話と思っているのだ。子供の頃には良くあることだとも割り切っている。


 ララは控えめで大人しい性格だ。周りからは、側仕えにも気配りができる慈愛に満ちた優しい王女とも言われるが、そんなの子供の頃だから評価されるのであって、自分にも他人にも厳しくあらねばならない王族には向かない性格と言えるだろう。常に衆目に監視され、その一挙手一投足が自らの評価につながるのが王族だ。


 確かにララの魔力は子供にしては高い。加護を与えられたと嬉しそうに語った、5歳の頃から更に伸びた気がする。それでも、地母神の加護というのは、そんな性格のララが、自分を正当化するために作り出した鎧のようなものだと考えている。「今度は御使いさまか……さてどうしましょう」とアマンダは思案する。


 だが、ララも分かっているのだ。母が加護を持っているというララの言葉を信じていないことを。


「近く、私と同じくらいの歳の子に爵位を与えると聞きました。何でもその子の魔法が画期的なものだから、お父様が研究をお命じになったようですね。実は魔法のことや、子供の名前も聞きましたが、どうも、お父様が秘匿されたようです。お母さまはそのことを知ってますか?」

「は? 子供に爵位、魔法の研究のため? 私は聞いていません。陛下が秘匿されたのなら私にも話さないのでしょう」


「その子は地母神様が特別に目をかけている子なので、あまり無茶はさせないでくださいませ」

「ちょっとお待ちなさい。その御使いさまがそう言ったのですか?」

「無茶をさせるなとは言っていませんが、見守っていることは確かです。御使いさまが、わざわざその子と一緒に王都に来たのですから」


 子供の妄想話だと否定したいアマンダだが、内容が具体的過ぎて、すぐに否定するのも躊躇われる。ララが陛下の名を出してまでこんな嘘をつくとは思えないし「本当にこの子はどうしたのかしら?」と悩む。もしかしたら子育てに失敗したかもと、言い知れない不安を覚えるが、否定するのは陛下に確認してからでも良いと思った。


「分かりました。今夜にでも陛下に伺ってみましょう。ですがララ、この話が嘘やでたらめなら、あなた、覚悟はできているの?」

「もちろんです」

 ララがシナリオ通りにことが進んだことを確信した瞬間だった。


 ◇   ◇


 その夜、王がアマンダの部屋にやってきた。枕を共にするのだ。2人の子供がいるとはいえ、32歳のアマンダは十分魅力的で美しい。


「陛下、まずはお話しがあります」

「どうした? 何か望みごとか? それとも3人目でも懐妊したか? 儂ももう1人くらいは欲しいぞ」

「いいえ。そうではなく、実はララのことでお話があります」

「ララ? ララがどうかしたか? まさか病にでも罹ったか?」

「もしかしたら病かも知れませんが…。実は、ララが昼間私を訪ねてきて、地母神の御使いさまに会ったというのです。それで、陛下が近くララくらいの歳の子に爵位を与えて、その代わりにその子の魔法を研究するのだと言ったそうです」


 王の顔が一瞬固まるがすぐに元に戻る。「誰かがララに洩らしたのか? こんなにも早く情報が洩れるとは、弛んでる!」と怒りを覚えたが、アマンダの所為ではないので冷静になる。


「それで、ララはほかに何か言ってたか?」

「魔法のことやその子の名も聞いたと言ってました。地母神はその子を見守っているとも言ってました。ララは本当に心の病なのでしょうか? 私、心配で……何か良い薬は? エルフが良い薬を持っていないでしょうか? そうだわ、まずは主治医に相談しなくては……

 自分で言った言葉に動揺し始めたアマンダが取り乱す。


「アマンダ落ち着きなさい。まだそうとは決まっておらん。儂がララと話してみよう」

 動揺するアマンダを落ち着かせて何とか寝かしつける。もうそんな気分ではないようだ。


 ……しかし、誰が洩らした? 王は1人思案する。


 近衛か? 側近か? いずれにしろそいつは死罪だな。なぜララに洩らしたのかは分からないが、ララはレオンのことを知っていた。もしかすると、ララがそいつの前でレオンのことを話し、てっきり、ララが爵位のことを知っていると勘違いして、口を滑らせたのかも知れない。どのみちそいつは死罪だな。


 そういえば、ララは以前、自分を地母神の加護持ちだと言ったそうだ。話しにあった地母神とはララ自身を暗喩したものなのか? 母親に、面と向かって異性のことを見守っているとは言えなかったのかも知れない。つまり、ララはレオンに懸想している? まさかな。でも、ララが初めてレオンの話したときは、本音を隠しているようだった。本人に直接聞くしかあるまい。レオンのことは何かの間違いだとでも言って、誰が洩らしたか問いただすのが先だろう。そのうえでララの本心を聞いてみるか。


 レオンの奴は、ララに一度しか会っていない筈なのに、そんなにもララの印象に残ったのか? トレド侯爵も孫娘の相手にと考えているらしい。さて、どうしたものか……。


 王の長い夜はまだ明けない。

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