15 王の権威
リエルタ王国は、建国から300余年の歴史ある王国だ。その歴史ある王国の現王こそ、第21代ラミロ2世のこの儂である。いま儂は、首都ロアーレにある王城の最奥、居館と呼ばれる最重要建物の一室にいる。居館には、執務室や謁見の間といった政務スペースはもちろん、儂の寝室や書斎などの私的スペース、家族が暮らすスペースなどがあり、視察や大教会での礼拝など、外出が必要な公務を除けば、この中だけで王の役目は果たせるのだ。
王城は、長い歴史の間に、増築や改築を何度も繰り返してきたが、昔から大きく3つの区画に分けられることは変わらない。王や王族が暮らす居館、兵や使用人の住居も兼ねる城壁、そして居館に隣接する教会だ。神よりこの地の統治を許された王にとって、教会での礼拝は欠かせない。王城の教会には、天の神ルト、地母神エナ、火の神オム、水の神テセ、風の神ニフ、土の神ムンの6大神を祀っており、王を始めとする王族は、ここで毎日祈りを捧げるのだ。
さて、いまは宰相のミゲル、国務大臣のラファエル、王国軍の指揮官の1人であるニコラオの3人が儂の下に集まり、西南の隣国、ガレス王国への対応について協議している。近年、ガレス王国は、我が国の国境付近に軍を展開させ、露骨な嫌がらせ行為を続けている。
忌々しいのは、ガレス国軍は決して国境侵犯をしないのだ。嫌がらせは、主に隣接する我が国貴族領での盗賊や追剥被害だ。ガレスは自国の盗賊被害から領地を守るという名目で、軍を国境に集めていると主張するが、そんなのは建前に過ぎない。
現に、我が国の貴族の兵が盗賊を追えば、ガレス領内に逃げ込んで取り逃がしてしまう。ほとぼりが冷めれば再び国境を越えて犯罪を行う。ちっとも捕らえられないので、周辺貴族の被害が収まらない。
血気盛んな武闘派貴族からは、軍の派兵を求める声が年々強くなっており、この冬の社交では遂に『臆病王』と陰口を叩かれる始末だ。何とか汚名を返上したい……。
「ガレスの国王は、確かに野心家な面もあるといわれておりますが、暴発を誘ってまで我が国と戦争するほどとは思えません」
宰相のミゲルが言う通りだ。国力を考えればガレス単独で我が国と戦争するのは無謀だろう。とにかく国土と人口が比較にならない。ガレスは、人口も領土も、そして戦力も、何れも我が国の10分の1に満たないのだ。だからこそ不気味だともいえる。何か裏や秘策があると深読みしたくなる。
「帝国とのつながりについては何も情報がないのか? 裏で両国が取引していれば、何かしらの情報があってもおかしくはないが」
ガレスの嫌がらせが報告された3年前から、帝国とのつながりなどを調べさせているが、これまでにそれを裏付ける情報は入ってきていない。ガレスが帝国の後ろ盾なしに、我が国と対立するのは、国力差から考えていささか無謀だ。仮に帝国が陰でガレスを操っているにしても、ガレスとて独立した1国である。両国間の取引について全く情報が入って来ないのはおかしい。
「それが、両国が何らかの取引をした証拠や情報は全くありません」
フラァエルが否定し、ミゲルも肯定して頷く。
「ならば、ガレスの独断と判断し、派兵を決めても良いかも知れん。まずは、西方に配置している国軍で国境まで進軍。軍事的圧力をかけた後、ガレス王に使者を出し、我が国国境におけるガレス軍の駐留を速やかに取りやめ、我が国に対する謝罪と戦費分の慰謝料を要求する。ガレスが軍を引かず対峙したら、軍を増援して実力で排除する。ガレスの狙いが何なのかはこの際関係ない。3年も国境近くに軍を展開させ、我々を威嚇し続けたガレス側に落ち度がある。正教国も納得するはずだ」
「陛下、お待ちください。確かにガレスの行動は腹立たしいものがありますが、ガレスへの侵攻となると、さすがに帝国も黙っていないでしょう。参戦の口実を与えることになります。軍を動かすのはおやめください」
軍事行動に慎重なミゲルらしい物言いだ。財政を取り仕切れば右に出るものはいない有能な男だが、戦争の話になるとこれまで一度も賛成したことがない。「軍事力というものは、相手を威嚇し交渉を有利にするためのもので、簡単に動かすものではない」と、血の気の多い貴族にはとても聞かせられない信念の持ち主だ。儂が『臆病王』と陰口を言われる半分はこいつのせいだろう。
「帝国に参戦の口実を与えれば、我が国は西側の国境すべてが戦場になります。少なくともガレスへの侵攻はお考え直しください」
ラファエルは国境までの進軍は良しとしても、ガレスへの侵攻には反対の立場だ。それでは意味ないんだがな。
「帝国は、ガレスを事実上庇護下に置いているが、ガレスと取引した形跡がないのなら、帝国は参戦まではしないのではないか? 帝国の真意はどうなのだ。我々がガレスに侵攻したら帝国はガレスに肩入れして参戦してくるか?」
「帝国にいる大使からは、曖昧な返答ばかりで真意は分からないとのことです」
「役立たずが! 交代させてしまえ」
「末の弟君ですよ。陛下が帝国との関係は微妙だから、精々向こうの王族や貴族たちと遊んで仲良くなって来いと送り出したのではないですか」
そうだった……帝国はなかなか本音を語らないので、外交はとても苦労するのだ。弟には一緒に遊んで誼を通じて来いと命じている。まさか遊んでいるだけではないだろうが、肝心なときに役に立たないのでは……。まあ、こちらに来ている帝国大使も似たようなものだが。
「臨時の大使を送るか、ともかく帝国の真意を知りたい」
「帝国に悟られて、いよいよ戦争が近いとの情報を与えるだけです」
結局、何も決まらないではないか。こんなことをいつまで続けるのだ。
「なあ、結局、ガレスは我が国との国境に、兵を3年も配置して何がしたいのだろう?」
もう何度も口にしたセリフをまた繰り返す。すると、これまで黙っていたニコラオが口を開いた。
「陛下、これは未確認情報なので、お耳に入れるべきか悩んでいたのですが、それをご承知のうえでお聞きください。ガレスでは我が国の国境近くに鉱脈があり、軍を挙げて掘り出しているのだと噂されているようです」
「はあ~、鉱脈?」
「あくまでも噂です。真偽は確かではありません。噂によれば、数年前にガレス王が突然、神のお告げだと言って軍の工兵に採掘を命じたそうです。確かに銀の鉱脈が発見されたされたようですが、出兵に見合う量ではないと言われております。最近になってそんな噂が広まったのは、長期の採掘で軍の規律が乱れたことが原因のようです。脱走兵が出て、そんな話しを流してるそうです」
まさか、にわかには信じられず、頭の中で即座に否定する。我々をおびき出す口実にしてはあまりに荒唐無稽だ。脱走兵が工作部隊であっても、こんな話に食いつく者などいないだろう。でもガレスが国境に軍を展開した目的は謎のままだ。
話しを聞いたミゲルが何かを思い出したかのように反応する。
「これは15年前のディエゴのときに似てますな」
一番思い出したくないことを無神経に口にする。15年前のことというのは、儂の弟のディエゴが王位簒奪を謀って起こした反乱事件のことだ。王の地位と引き換えに悪魔の願いを叶える約束した弟が、王都で暴れたのだ。
弟は、側近と、金や権力に釣られた一部貴族を巻き込んで、儂を亡き者にしようと企んだが、王城の中で儂を裏切るものは1人もいなかったので、近衛騎士によってすぐに鎮圧された。
だが、当時王都にいた貴族に被害が出て、当主を失った家が3件、当主の弟や身内を失った家が5件ほどあった。みな儂を支持し、ディエゴには特に厳しかった貴族達だった。どうやら恨みに任せてディエゴが直接、屋敷を襲撃したらしい。それをせずに王城だけを襲えば、儂の命はなかったかも知れない。
そういえば、ディエゴの反乱事件には魔人の一族も係わっていたので、身柄引き渡しを求めて魔人の自治領まで軍を派遣したが、その一族は自治領に戻らず行方を晦まし現在も逃亡中だ。悪魔がディエゴに何を求めたのかも分からないままだ。
ミゲルが言った通り、ディエゴも言動がおかしかったらしい。後で聞いた話だが、「俺に任せれば帝国の半分は切り取ってやる」と無理な戦を主張してみたり、「正教国はまやかしの教えを広めて我々を苦しめている」と不敬なことを口にしたりもした。
挙句には、ニコラオが言ったガレス王の言葉のように「神の言葉を聞いた。俺が国王になればもっと国を豊かにできる」など、明らかに気が触れたと分かる発言もあったらしい。もしニコラオの言葉が事実なら、ガレスの家臣共は何をしているのか!
「まさか、悪魔に操られているとでも言うのか? 1国の王にそんなことありえるのか?」
「定かではありませんが、悪魔は人の心の弱い部分や、気落ちしたときに付け入るものだと言われています。もしかするとガレス王に隙があったのかも知れません」
ミゲルがそう語り、ラファエルも頷いた。
そのうえでミゲルが結論を下すようにこう告げる。
「もしもそれが事実なら、我々がガレスに付き合う必要は全くありません。勝手に疲弊させとけばよい話しです。ガレスはもう3年も軍を国境に駐留させているので、そろそろ限界が見えてきてもおかしくありません。このまま静観が良策でしょう」
一気に話が静観に傾いたが、誰も異を唱えるものはいなかった。儂も少し考えたいので、会議を終わらせることにした。
「悪魔が関係していると断言はできないが、もしそうであれば何を仕出かすか分からない。突然国境を越えてくる可能性も全くないとは言い切れないので、皆も注意しておいて欲しい」
皆、恭しく挨拶して会議室を出ていった。
もうすぐ夕刻という時間まで経ってしまった。執務室に戻ろうとしたが、そんな気分になれないので、庭に出て気分転換することにした。少し遅いがティータイムの時間でもあったので、居館に隣接する庭にある東屋でお茶を飲むことにしたのだ。普段ならこんなことしないが、たまには我儘も許してくれるだろう。
南向きの暖かい庭に出ようとしたとき、テラスに誰かいることに気づく。儂を見て驚いたテラスの側近たちが、主に何かを伝えていた。儂は構わずテラスに向かうことにする。
「ララではないか。1人でお茶か?」
「陛下、テラスにお越しとはお珍しいですね。先ほどまでテレサお姉さまとアマリアお姉さまとご一緒でした」
ララは第五王女で今年8歳。妻に似て聡明で美しい儂の末娘である。ララに会えただけでも庭に来たのは正解だった。
テレサは第三王女、アマリアは第四王女で、やはり2人とも美しい。テレサは適齢期の16歳になり美しさに益々磨きがかかった。テレサより上の2人は、既に結婚してこの国を離れており、次はテレサなので周囲も騒がしい。
儂の娘だから、どこに嫁に出しても恥ずかしくはないが、儂の見立てでは、テレサに釣り合う男性など、どこにも居らんのだ。美しすぎる娘というのも困りものだ……まだ誰にも渡さん!
アマリアも11歳を迎え、幼い容姿から、ときどき女性らしさを窺わせる仕草が垣間見えるようになってきた。この3人が、いま王城にいる儂の娘たちだ。
「公式の場ではないので父でよい。姉妹仲良くお茶会とは、それはこの春に相応しくさぞかし華があったろう。儂も一緒に楽しみたかったが、仕事では致し方あるまい……」
「父上は、先日まで冬の社交で忙しくしていらしたので、少しはお寛ぎ下さい」
「ありがとうララ。でも冬の社交で貴族たちからもたらされた問題や、情報の処理に早く取り組まなければならないので、まだまだ休むことはできん。お前たちはお茶会で何の話をしたのだ?」
「そうですね。お姉さま方が理想とする結婚相手は、どのような方なのか聞いたり、実際に誰が相応しいか予想したりしました。特にテレサお姉さまは適齢期ですので、アマリアお姉さまと、どのようなお相手が相応しいか予想していたのですよ」
いきなり心をえぐられる話題が飛び出したが、結婚前の女性3人が揃えばそんな話もするだろう。会議疲れでリフレッシュしたい今は聞きたくなかったが、娘たちの結婚観や、理想の相手を聞ける機会は、そうはないので、儂は努めて冷静に続きを促す。
それでも、王族の結婚は政治判断で決めなければならないときもある。なるべくは希望は叶えてやりたいが。
「テレサお姉さまは父上のような方が好みと言われてましたよ。できることなら幸せだといえる家庭を築きたいのですって。良かったですね」
うむ。満更でもない。
「アマリアお姉様は武芸に秀でた方が良いそうですよ。強い殿方がたまに甘えてくるのが良いんですって」
警備の近衛騎士に好みの者がいるのか? 誰だ? 全部女騎士に替えるか。
「そうか。2人ともずいぶん好みが違うのだな。テレサは家庭的、アマリアは強い男性を立てるような結婚観なのだな。どちらも夫婦円満を望んでいるのは当然か」
「それはそうでしょうとも」
「ララはどうなのだ? 8歳でも理想というものはあるだろう」
「私は……そうですね、少し困った方が良いですね」
「困った方?」
「一途に何かに取り組んでいる方や、危なっかしいので思わず手を差し伸べたくなるような方が性に合ってるかも知れません」
母性を刺激するような人が良いということか? これはまた8歳とは思えないような……。だが、幼かったころの姉も、儂をいつも構ってくれたな。母性に年齢は関係ないのだろう。
「それはまた面倒な好みだな。ララを困らせるような奴は、たとえ誰であろうと儂が認めんのだがな」
「それを認めさせるのも、夫となる方の努めでしょう? 舅に認められないで、王女を妻にはできないでしょうから」
また随分と器の大きい男を選ぶものだ。悪くない。王族や貴族に恋愛結婚はほぼないが、ララが認める相手というのを見てみたい気がする。もちろん結婚となれば話しは別だ!
「それで、そこまではっきり好みをいうのなら、誰か気になる奴でもいるのか。儂はそんな話は聞いてないが、冬の社交でどこかの子倅にでも興味が湧いたか?」
「それはありません」
ちょっと目を見開いた驚きの表情で即座に否定したところが怪しい。この辺りはまだまだ子供か。
「別に隠すことではない。今の時点でどうこうしようという話ではない。ララはまだ学び舎にも通っていないのだ。ここだけの話だ。もちろん父とララの秘密で誰にも話さん」
「本当に気になるとか、興味があるとかではないのですよ。冬の社交でお兄様達とお茶会を開きました。皆から挨拶を受けたとき、私の目の前で挨拶した女の子が倒れ、次に挨拶しようとした子が、女の子に癒しの魔法をかけたのです。その魔法の手際は見事だったのですが、王族の前での魔法使用は、許可が必要なのを知らなかったようなので、無用な混乱を避けるため、咄嗟にその子に声を掛けました。そうしたら、病気や怪我が怖いから、癒しの魔法は真っ先に覚えたと言ったのです。おかしいでしょう? 聞けば私と同い年だというのです。普通は火魔法とか攻撃系の魔法を初めに覚えるものでしょう? でも彼は、相当魔力があるように見えました」
言い方がその子から彼に変わったのは気になるが、まあいい。
確かに癒しの魔法を真っ先に覚えたのが事実なら、ちょっと変わった性格のようだ。まあ、貴族なんて、みんな一癖も二癖もある変わり者の集まりみたいなものだ。そんなのが居てもおかしくはないだろう。魔力があったとしてもララと同い年の子供なら高が知れている。だが一応名前は把握しておくか。
「そうか、面白い子のようだな。名はなんという?」
「確かグラセス男爵家のレオンと言ってました」
それなら安心だ。たとえ恋愛結婚を認めても、男爵家は絶対にない。
儂はちょっと珍しい動物を見た子供が、好奇心から興味を抱いたのだろうと判断した。儂も子供の頃に異国から連れてこられたサルに興味を惹かれ、父に飼いたいとねだったものだ。儂は末娘から初めて聞いた、気になる異性の名を胸に刻むように「そうかグラセス家のレオンか。儂も興味を持った。縁があればいずれ会うこともあろう」と返した。
◇ ◇
その夜、近衛第三隊隊長のクルロが面会を求めてきた。どうやら緊急かつ内密の要件らしい。儂は近衛騎士隊長のアントニオに立ち会うよう命じ、面会の許可を出す。謁見室に入ってきたクルロが儂の前で跪くと、早速用件を切り出す。
「陛下、ようやく例の魔人たちの足取りが掴めたかもしれません。東方のグラセス領に魔人が潜んでいるとの一報が、グラセス男爵から届きました。発見した魔人は2名。うち1名は子供で、定住している可能性があるとのことです。発見場所や装備などの詳細も送ってきました。なお、魔人はラノスという大蛇の魔物をつれているとのことです。流民の可能性もありますが、魔人の自治領はグラセス領から遠いので、15年前の生き残りの可能性が高いと男爵の手紙にはありました」
例の魔人とは、15年前の王弟反乱事件に加担した魔人の一族のことだ。
「グラセス領? レストリナに続く街道沿いの男爵領だな。確かに魔人の自治領からは遠いな」
夕方、ララから聞いた男爵名がいきなり飛び出したのには驚いたが、務めて冷静に返答する。
「はい。グラセス領は、かつては取るに足らない小領でしたが、近年は良質なワインが生産されることになったため、かなり羽振りが良いと評判です。男爵領には手つかずの大森林があり、そこに潜んでいるようです」
「ふん。商人貴族か。そのグラセスが自領の森で魔人を匿っているということか? 事実ならグラセス家共々排除するか」
「グラセス家とは、父、トレド侯爵を通じて付き合いがありますが、魔人を匿うようなことはしないと思われます。現に魔人発見の一報を入れてきた訳ですし」
「クルロ、あれから何年経つ? 魔人が自領に隠れ住んで、子供まで作っているのに、領主が気づかなかったのなら、怠慢も良いところではないか」
いささか棘のある言葉にクルロがたじろぐ。クルロが悪いわけではないのだ……許せ!
「グラセス男爵からは魔人発見の一報とは別に、必要なら王都に説明に上がりたいとの報せもありました。あの領地からだと馬車なら7日ほどで到着すると思われます」
「ほう。わざわざ首を差し出しに来るというのか。よかろう歓迎してやろう」
「陛下、重ねてグラセス男爵が魔人を匿ったとは誰も申しておりません」
「分かっておる。だが、あの事件は儂の権威を傷つけた。その生き残りがまだいるのは我慢ならん。魔人は、かつて王国が奪った先祖伝来の土地や宝を返すと、ディエゴに言われたらしいが、儂に歯向かったのだ、同情の余地などない。グラセスが匿っていたとは思わぬまでも、これまで領民から報告があったのに、知らぬふりをしていたり、隠してたりしていたのなら、取り潰しても構わん!」
いつになく苛烈な言葉に、クルロだけでなくアントニオも驚きの顔を隠さない。それを見て、さすがにやり過ぎたと反省する。
「まあ良い。グラセス男爵には王都に報告に来いと伝えよ。また、領主不在であっても魔人討伐に対応できるよう、自領の体制を万全にしておけとも伝えよ。どうせ商人貴族なら戦力としては期待できまい。領主がいてもいなくても魔人討伐に影響しないだろう。アントニオ、すぐに森の捜索に慣れた者を集めろ。ラノスという魔物の対策もだ。それと、近衛の精鋭と、グラセス領周辺の軍をいつでも動かせられるよう手配をせよ。魔人が何人隠れているか分からぬから十分にな。準備が整い次第出立せよ」
「「畏まりました」」
アントニオとクルロは揃ってそういうと謁見室から下がっていった。




