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異世界貴族につき・・・  作者: 茶と和
第1部 田舎の異端児
10/33

10 勉強しよう! 2

 この世界の教育は基本、先生が語った言葉や数字を耳で聞いて覚えるやり方が主体だ。ラミラさんはプラスして紙を使って数字や文字を書いたカルタのような教材を持参してきた。それを見せて俺に答えさせる。まずは挨拶代わりに俺の知識がどれほどか確認したいのだろう。姉は放置ではなく、今は国史の本を読んでいる。


「レオンはもう文字も数字も覚えているのですね。では計算はどうでしょう?」

「大体できます」

 飛ばしすぎは良くないが、簡単な問題をちまちま解くのは退屈だ。どうせなら覚えていない国史やカタスト語を教えてもらいたい。


「ではちょっとしたテストをしましょう。私が問題を出すので答えてみてください」

 おっ、渡りに船だ。これを活かして読み書きと計算を早めに終わらせよう。


「ラミラ先生、それを解いたら読み書きや計算は飛ばして、国史かカタスト語を覚えたいのですが、いいですか?」

「えっ、そうね。全部解けたらいいでしょう。次はエマと一緒に国史を教えます」

 そういうと、ラミラさんは少し準備したあと、8歳には難しい単語の穴埋めや、四則計算の問題を出してきた。この問題が解ければ学び舎の1、2年の読み書きや計算は合格するレベルだという。


 結局、俺は全問正解し、晴れて国史を教わることになった。この世界の文字や数字を覚えた俺に、小中学校程度の問題で後れを取るわけがないのだ。ラミラさんは「まだ何も教えてないのに……義姉さんがレオンは天才よって言ってたのは本当だった」と呆けていたが問題ない。


 その後、姉とともに国史とカタスト語を教わることになった。姉が昨日言ってた通り、歴代国王の名前や有名な戦争があった地名、法律や制度の名前、その施行年などの暗記は骨が折れそうだ。


 カタスト語は日本でいう古語のようなもので、こちらも単語の暗記や発音、文法を覚えるのに手間取りそうだ。スタートしたのが早い姉に追いつくのはまだまだ難しそうだが、2人まとめて同じ教科を教えることになったので、ラミラさんは楽だろう。俺も早めに国史やカタスト語を始められるのは都合がいい。


 ◇   ◇


 ラミラさんの授業が終わり、俺と姉は談話室で一息つく。

「それにしても、あんたが読み書きも計算もできるのは知ってたけど、ラミラ先生が教えることがないというほどとはね」

「早く魔法の教本が読みたかったから、一所懸命覚えたんだ」

「それで、魔法の方はどうなの? お父様みたいに火魔法は使えるようになったの?」

 姉が魔法の習得具合を聞いてきた。


 姉は水魔法と火魔法が使えるが、普段の生活には役に立たないといって、あまり練習に力を入れていない。でも、魔法を使ってもあまり疲れた様子は見せず、意外とけろっとしているので、実は魔力が結構あるのではないかと思っている。

 ちょっとでもやる気が出ればと思い、早速火魔法を出してみる。室内なのでライターほどの火を人差し指の指先から出した。


「あら、できるのね」

「風魔法もできますよ」

 今度はそよ風程度の風を発生させる。「器用ね」と姉がいう。


「姉さんは魔法の練習しないのですか?」

「しても意味ないわ。男性は戦場で役立ったりするけど、女性は戦場に出ないし、私の場合、日常生活で水魔法や火魔法は使わないもの。身を守る程度の火魔法があれば十分よ。火を出せば相手はびっくりするでしょ?」


「確かにそうでしょうが、姉さんは魔力がありそうだし、ちょっともったいないです。練習すればもっといろいろ役に立つと思うけど」

「例えば? 日常生活に役だてば、私ももっと練習しようかしら」

「そうですね。姉さんは火魔法と水魔法だけですか? 風魔法やそのほかの魔法はできないのですか?」

「風魔法は前に試したけどできなかったわ。魔素との反応を上げようとかなり意識してやってみたんだけど……私の魔力と魔素の相性が悪いのかしら?」


 相性って……。でも教本に魔力と魔素を上手く反応させたり融合させたりするように意識しろと書いてあるから、そう考えるのも無理ないよな。姉のようにかなり魔素のことを意識していたのでは、逆に魔法そのもののイメージが疎かになると思う。


「風を出すイメージはどんな風にしました?」

「息を吐くイメージだわ。手で扇ぐようなイメージも試したけど」

「なら、魔素と反応させることは意識せず、右手に魔力を集中させて、なるべく口すぼめて一気に息を吐くイメージで、右手から魔法を出してみてはどうでしょう」

「それに近いことはやったけど。まあいいわ。風魔法が使えるあんたが言うんだし、魔素のことは考えずやってみる」


 そういうと、姉は素直に試してみる。すると、魔力と魔素を反応させるという邪魔なイメージがなくなったからなのか、姉の右手からそよ風が吹く。

「あら、できたわ。案外簡単に出せたわね。何でかしら?」

「おそらく魔素と反応させるということに意識を使わない分、より明確に風を出すイメージに集中できたからだと思います」


 なぜ魔力と魔素を上手く反応させるように意識させるのが一般的になったのか分からないけど、風が出せるようになった姉を見ると、それを意識させることが魔法発動にとって邪魔以外なにもでもないことが分かる。


 そうだ! 火魔法と風魔法を組み合わせれば、温風のドライヤーもどきができるのではないか? これなら髪を乾かすのに便利だろう。便利だと分かれば姉も魔法を練習するかも知れない。ちょっと試してみるか。


「姉さん、ちょっと試したい魔法を思いつきましたので、これで失礼します」

「そう。じゃあ私も部屋に戻るわね」

 といって休憩はおひらきになった。


 俺は庭に出て早速試してみる。火に風を当てると火がぶれて顔や髪に当たりそうで危ないが、火を小さくして風を当てれば使えないこともない。魔法で出す火は魔力を使ってる間は消えないので、火はなるべく小さく、風は髪が舞わないように方向を持たせていろいろ試してみる。


 結果、指をすぼめて指先から極小の火を出し、手の平から指先に向けて風を出すイメージのドライヤーもどきが完成した。これなら30センチくらい離れれば火が髪に当たることはない。絶えず風を炎に当てることで指に熱さが伝わることもない。頭の後ろは当てづらいが、左右の手で魔法を使うなり工夫すれば、実用に耐えるのではないか。


 ◇   ◇


 翌日、早速姉の前で披露する。一度見せた方がイメージしやすいだろう。姉は髪を早く乾かせる魔法と聞いて興味を示すが、指をすぼめて火を出すのをみて、「絵面がひどいわね。レオンは魔法のセンスはあっても、美的センスは皆無ね」……ひどい言われようだ。


 でも、絵面はともかく実用性は認めてくれたようで、姉もドライヤーもどき魔法を試してくれた。火と風の同時使用であるため、初めは難しいかもと思ったが、一度見せたことでイメージしやすかったことや、火は魔力を流し続ける間は風を当てても消えないなど魔法操作の基本やコツを伝えたこともあり、20分くらいの練習でかたちになった。昨日初めて風魔法が使えた嬉しさもあったのだろう。姉は結構に真剣に練習してくれた。


「すごいわ。私が火と風の魔法を同時に操れるなんて!」

 姉も満足そうだ。魔力の減り具合を心配したが、「この魔法なら30分くらいは平気ね」という。姉の魔力はやはり多いのだな。これなら髪を乾かすには問題ないだろう。あとは集中力が続くかどうかだ。


 そう思っていると、姉の専属メイドのサルドが申し訳なさそうに姉さんに声をかけてくる。

「エマ様の髪を乾かすのはメイドの仕事でございます。エマ様が自ら魔法で髪を乾かすのはおやめ下さい」

 そうか。ここでは髪を梳かしたり服を着せたりするのはメイドの仕事だった。でも姉が反論する。


「ええ、確かに今まで通りサルドにお願いするけど、湯浴みの後に早く髪を乾かさないと風邪をひいちゃうし、それに学び舎に入れば、身分の高い貴族以外はメイドをつけられないでしょう。自分である程度できないと私が恥をかくわ。この魔法は使い方によっては便利だし、是非使わせてほしいの」


 学び舎には地方貴族や王都に住んでいても通いにくい生徒のために、寄宿舎が備わっている。ただ、身分差があって、伯爵家ならメイド1人の帯同が許され部屋も大きいが、男爵家だと1人部屋が割り当てられる。つまり着替えとかは自分でやらなければならない。1人部屋だから、寄宿舎よりも寮と言った方が良いだろう。寄宿舎と呼ぶのは昔の名残なんだとか。


 うちは王都にも邸があるが、学び舎から離れていることや、普段は管理人代わりの使用人が家族とともに離れで暮らしているだけでなので、寄宿舎に入ることになっている。寄宿舎なら専用コックや洗濯を行う使用人がいるので、その心配はしなくていい。昨夏に卒業したエリアス兄さんがそうだったし、フィデル兄さんとカロリーナ姉さんもそうだ。


 だからなのか、学び舎には制服というか服装に規定があり、1人でも着やすい服になっているそうだ。特に女性には有難いだろう。貴族の女性服は背中を紐で縛るなど、1人じゃ着られないようなものが多いのだ。


 因みに、王都に住んでいたり、屋敷を構えている貴族は大体通いである。王族はもちろん、公爵家や侯爵家などだ。伯爵家も王都に屋敷を構えていることが多いのでほとんど通いだという。もちろん、中には家に居場所がないのか、はたまた通うのが面倒臭いのか、そういった家の身分でも寄宿舎で暮らす人がいるらしい。でも、やはり子爵や男爵以外は寄宿舎の利用は少ないという。


 姉の説得が実り、結局はサルドが折れた。魔法は湯浴み後に一度タオルで髪を拭いたあと、髪を梳かす前に短時間だけ、タオル越しに使うことになった。俺が温風を直接髪に当てたり、乾かしすぎたりするのは良くないと言ったからだ。

 二人とも、「なんで知ってるの?」といった感じの疑いの目を向けてきたが、「夏の日差しを浴びると髪が痛むでしょう。髪は熱に弱いのだと思います」と言って納得させた。

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