9 失踪騒ぎ
ルイーサは体調が良くないのかもしれない。
そう思い、授業が始まる前に部屋に行った。
しかし部屋には誰もいなかった。
綺麗に整頓された女の子らしい部屋は、主人を待っているかのように、扉を開け放っている。
ルイーサの性格上、扉が開けっ放しなのは怪しいな。
嫌な予感がしないこともないが‥‥
始業の鐘も鳴ってしまったので、サボりという一縷の希望に賭けて一限目を開始する。
異様に長く感じた一限目が終わった。
生徒達も同じ心境のようだ。
「なぁ先生。虫の知らせか、胸騒ぎがするんだ」
「あぁ俺もだ。丁度二限目は俺の授業だし、中止にして捜索しよう」
そうして、二人ずつ手分けして探す事になった。俺はルイーサと一緒だ。
因みに、珍しくエマも起きている。
「ルイーサちゃん大丈夫かな‥‥」
「大丈夫に決まっているさ。自分探しの旅にでも出たんだろ。そういうお年頃だ」
「そっか、そうなんだよ!きっと大丈夫だよ」
リオニーが自分に言い聞かせるように言う。
自分探しの旅に行っているなど考えられもしないが、生徒を安心させるのもまた教師の仕事だろう。
それにルイーサは単純な力だけでいったらクラス一位だ。
どんな事件に巻き込まれていても、きっと返り討ちにでもしている筈。
取り敢えず次の授業が始まる前に聞き込みをしよう。
俺がこの学校内で気軽に話せる人は少ない。それこそ、生徒合わせて両手で数えられるほどだろう。
学校内じゃなくてもラガードさん達が加わるだけなんだけどさ。
まぁそう言うわけで、少ない聞き込みで手掛かりとなるものを得たいが。
まずはランスさんの所へ向かう。
無駄に豪華な扉の前に立ち、ノックする。
「入りますよー」
「ほーい」
とても校長とは思えない軽い返事が返ってきた。
リオニーは緊張しているようで、背筋が伸びきっている。何度もランスさんのを授業受けているのにこれか。
忘れがちだがランスさんは大物だったな。
「失礼します」
「おおシグレ君、そんな深刻そうな面持ちでどうしたのじゃ?」
ランスさんは紅茶片手にそう言う。ティータイム中だったか。
メイドさんが俺達にも注いでくれようとしたが、急いでいるので断る。
「俺のクラスのルイーサがいないんですが、ランスさんは何か知りませんか?」
「何、ルイーサ君が?ちょっと待っておれ‥‥いや何も申請されておらぬな。この学校内にいるはずじゃが」
辞書のように分厚い書類を確認したランスさんがそう言った。
無駄足だったか‥‥
「ふぅむ、ただのサボりだと信じたいが‥‥アディー、念のためルイーサ君の目撃情報を集めるのじゃ。余っている教師一人を捜索に回すのも頼む」
「かしこまりました」
ランスさんがアディーと呼ばれたメイドにそう指示する。
アディーさんは深々とお辞儀をし、動き始める。寡黙でテキパキと動く姿は、仕事ができる女って感じだな。
さてと、俺らも捜索を再開するか。
あと俺が話せる人はアイバンのみ。
ということで、アイバンの教室に向かった。
「おーいアイバン!ちょっと聞きたいことがあるんだが」
「おう、どうした?」
「俺のクラスのルイーサっていう生徒が見当たらないんだが、見かけなかったか?」
アイバンが顎に手を当てて考え始める。
実際はそう経っていないのに、回答までの時間が長く感じる。
心臓の音が普段よりも大きいのは不安からか?
「‥‥すまんな。心当たりがない」
やっぱりか。わかってはいたが、可能性が消えていくたびに、不安が大きくなる。
まぁ、もし見ていたとしても他クラスの生徒なんて覚えてないよな。
俺もアイバンのとこの生徒なんて一人も知らないし。いや、嫌がらせをしてくる男共はアイバンのクラスだったか。
そう思い、背をむけて立ち去ろうとした時だった。
「あ、そうだ。それと関係があるかはわからないが、俺のクラスでもカールとロスがいないな。あいつらの事だからサボっているんだろうが」
そう言ったアイバンの指す方向を見やると、席がぽっかりと二つ空いていた。
教室を見渡すと、例の男共二人の姿だけがない。要するに欠席している二人のことだろう。
リオニーもその事に気づいたらしく、俺と顔を見合わせる。
「ありがと、アイバン!」
俺とリオニーはそう言って駆け出した。
犯人がアイツらだという確証はない。
しかし、俺の直感がそうだと告げるんだ。行かぬ選択肢は無かろう。
‥‥で、肝心の男共はどこにいるんだ?
「なぁリオニー、男共はどこにいると思う?」
「知らないんだよ!なんで知らないのに走り出したんだよ!」
「お前も一緒だろ!狐って匂いを辿れたりできないのか?」
「そんなことできないんだよ!」
はぁ、俺も大概だな。
ランスさんのことを言えない。
しらみ潰しに学校中を歩いてはいるが広すぎる。
既に授業を開始している校内は閑散としていて、足音だけが虚しく響く。
仕方がない、一度教室に戻るか。
教室に戻ると他のペアも戻ってきていた。
まだなのは、カタリナとランハートだけか。
「先生は何か手掛りを得たか?」
「いや何も。ヒントが少なすぎるからなぁ」
「やっぱりかぁ」
一応、現状報告をし合うが、状況は芳しくはないようだ。
皆で思考を巡らせるが、いい案は出ない。
いつもは冴えているオスカーやバナンもそれは同じだ。
「先生!犯人がわかったぞ!」
その時、ランハートが扉を押し開けて教室に入ってきた。後にはカタリナも続いている。
息を切らしている所申し訳ないが、もう犯人自体は分かっているんだよな。
「こっちだ!」
手招きしてまた走り出すランハート。
何!場所まで特定したのか!でかした!
辿り着いたのは、古い倉庫か何かか?
「それにしてもよく犯人と場所がわかったな」
「こういうのは得意なんでね」
ランハートはいつもの半笑いを崩さずにそう言った。
ルイーサの部屋に落ちていた不自然な髪の毛の色から犯人を特定。あとは隠れ場となりうる怪しい場所を調査したって訳らしい。
「ほらここ、扉を引きずった跡があるだろ。ここには人が滅多に入らないから。絶好の隠れ場所だとでも思ったんだろうけど、裏目に出たな」
なるほどな。
そう言えば俺達もこの前は通ったが、全く気が付かなかった。
耳を当てると、中からは男共の声が聞こえるので間違いはないだろう。
さてと、男共はどうしてやろうか。
水をかけるくらいなら許してやったが、これは流石に看過できない。
「アンロック」
ランハートがそう魔法を唱え、扉に手をかけた瞬間、ガチャリと音を立てて鍵付きの扉は開いた。
プライバシーという概念を教えてやりたい‥‥
ま、俺が言えたことではないか。
「な、お前ら!‥‥どうしてここが‥‥しかし‥‥」
「ルイーサ、無事か!?」
クラスのお母さんことオスカーがルイーサに駆け寄ろうとする。
男共が悪者ムーブしてんだからさ、取り敢えず聞いてやれよ‥‥
まぁこんな奴らに耳を貸さないのも理か。
「おっと、そうはさせないぜ」
男1がナイフのようなものをオスカーに突きつける。
そいつ王弟だぞ。傷つけたら退学じゃ済まないだろうけどいいのか?
まったく、こいつらの心理が理解できない。
「で、お前ら。一体何がしたいんだよ」
できるだけドスの利いた声で尋ねる。
「おい、ランハート。俺と勝負しろ!」
男はオスカーに突きつけていたナイフをランハートに向け、言い放った。
‥‥はぁ?
ブックマークよろしくお願いします




