表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/18

8 新米教師の一日 下

前回と今回はこの世界の設定確認の一面もあります


 さてと、午前の授業が終わり、昼食の時間となる。

 俺の世界基準だと午前二時間だけで昼食は早いな。

 というか一日四時間なのも短いと感じる。


「はぁ疲れたぁ」


 向かいの席で机に顔を伏せるエマが言うが、お前は一限目はサボって二限目は剣投げただけだろ。

 今日も俺のクラスは食堂の端に追いやられている訳だが、却ってここが俺たちの特等席のようになっている。


 とまぁ、九人で談笑しながら食事をしていた訳だが‥‥

 冷っ!


「あ、悪りぃ悪りぃ」


 俺は後ろを通った男二人組に水をかけられてしまった。

 わざとじゃ無いならしょうがないが、どうもそうでは無いらしく、ニヤニヤとこちらを見ながら気持ち悪い笑みを浮かべている。

 まずこんな端っこの席の後ろを通る時点でおかしい。

 だが、こんな知能の低い奴の相手をするなんて時間の無駄にも程がある。


「次は気をつけてね。はい、これ」


 俺は無理矢理笑顔を作り、空のコップに水を注いで渡す。

 男達はこの対応が気に食わなかったのか、顔を一瞬歪めた。そして


「おっと、また滑ったぜ!」


 あろう事か、俺が渡した水を今度はランハートに浴びせたのだ。

 俺がされる分にはまだ許せるが、生徒にするのは許せない。

 俺が立ち上がろうとすると、それよりも早くエマが机を叩いた。


「よくも、よくもエマのデザートを‥‥」


 ふと目をやると、エマのお皿に乗った小さいケーキに水が掛かってしまっていた。

 エマが仲間のために怒れる人間だと、一瞬でも見直した俺が馬鹿だった。

 てかこれまずくないか?ゴブリン戦の時よりも強い力を感じるぞ。その結論に至ったのは俺だけじゃないらしい。


「まずい!エマを止めろ!」


 バナンが叫び、俺達は暴れるエマを拘束しようとする。

 気がつけば大混戦になり、俺達対男共の筈が、俺達対エマという謎の構図となっていた。

 やっとのことでエマの四肢を拘束し、カタリナが首をコツンと叩き、気絶させた。

 というかその気絶のさせ方って存在したんだ。

 男共は騒ぎに乗じて姿を消していた。


 その後、気絶しているエマを教室まで運び、俺とランハートは着替えた。

 教室にはなんとも言えない空気が漂っている。


「まったく、女の子以外に水を掛けられても全然嬉しくなんかないですね」

「ランハートは経膚毒でも掛けられれば良かったのに。先生は大丈夫ですか?」


 ランハートは重い空気を払拭するためか、軽い言葉で笑い飛ばそうとするが、カタリナの無情なツッコミが入った。

 最近はカタリナがランハートを鼻先であしらうという流れが頻繁に起こる。

 何故かカタリナはランハートだけは邪険に扱うんだよな。


「ハハッ、俺への対応と先生への対応が正反対だ」

「水を掛けられただけだし、俺は大丈夫だけどエマは生きてんのか?」

「恐らく。軽くやったのでもう直目を覚ますかと」


 そう言うと同時に、エマが飛び起きるように目を覚ました。


「はっ!エマのデザートは?」


 第一声がそれかよ。

 まぁそうなると思っていたんで、予めお菓子を沢山買っておいたんだけどさ。

 エマはお菓子を口いっぱいに頬張り、幸せそうにしている。

 まるで幼稚園生みたいだよな。お菓子一つで一喜一憂するし。

 今の所、俺の中でエマの長所は魔法しか見出せていない。


「オスカー達は何をやっているんだ?」

 

 何やらオスカーとバナン、カイとリオニーが机を睨んでいるので尋ねてみる。


「いや、アイツらに仕返しをしようと思ってな。どうすれば校則に触れずに苦しめられるのかを考えていたところだ」


 いや、怖いわ!

 仲間のために怒れることは素晴らしいが、だからといって仕返しはしなくてもいいだろう。


「俺的には厩舎に閉じ込めておこうと思うんだが、先生はどう思う?」

「いや、どう思うって‥‥それより何故あいつらは俺らに嫌がらせをしてくるんだ?」

「フィスト国出身の者が一人も聖龍の学級に入れなかったからだろう。確か今日の男はファスト国の貴族の嫡子だ。俺たちが不正をしたんじゃないかと疑っている。自分のことを優秀だと思っていたから、どうしても納得できなかったんじゃないか?」

「確かに大陸中から優秀な生徒の集まるこの学校で、ファスト国出身のものが一人もいないのは異例だけどな」


 オスカーの説明にバナンが捕捉をする。

 ファストってのは大陸の三分の一を占める大国だっけか。

 確かにそれは不正を疑われてもしょうがないな。


「全員ヘルデンクルト出身なのか?」

「私だけは違う小国出身だよ」


 リオニーだけが違うのか。

 どこかに亜人の国みたいなのがあるのかな。

んで、それ以外はヘルデンクルト出身と。ヘルデンクルトの王弟と他国の庶民を同クラスにするのには問題があったのかもしれないな。

 ま、皆優秀だからな、実力だろう。


「で、どのような仕打ちを与えようか」

「じゅ、授業が始まるから後にしような!」


 コイツら真剣な顔でこう言うから怖い。

 無理矢理話を締めるが、この調子だといつかやらかしそうだな‥‥


 次の授業は魔術だったな。

 魔術は今日が初めての授業だ。もちろん俺は生徒側である。

 実は前々からかなり楽しみにしていた。そりゃ折角なんだから魔法使えるようになりたいしね。

 そういえば、魔術の教師が全然見つからないとかランスさんが騒いでいたけど見つかったのかな。

 俺の時然り、あの人にはもっと事前に準備することを覚えてほしい。


ゴーンゴーン


 鐘が鳴り、授業が始まる。

 さて、どんな人が来るかな?


「おぉ、すまぬすまぬ。遅れてしもうた」


 ってランスさんかい!

 これはあれだな。教師が見つからなかったんだな。


「本来儂は授業をせんのだが、エマ君よりもレベルの高い魔法使いが見つからなくてな。儂が授業をすることとなった。よろしく頼む」


 生徒達はワーキャー騒いでいる。あのエマですら目を輝かせているくらいだ。

 ランスさんに教えてもらうのがそんなに嬉しいのか?

 ランスさんは世界的に有名な人らしいが、この世界の常識がわからない俺からしたら、ただの準備不足のおじさんだ。


「最初の授業じゃし、まずは魔法適正を確認するところから入ろうか」


 そう言うと、ランスさんは薄い青色の水晶玉のようなものを取り出した。


「常識ではあるが、シグレ君のためにも説明しようか」


 わざわざ常識の部分を強調して言うランスさん。

 魔法適正なんて知らなくても大体は想像できる。

 どうせ、どの属性の魔法に適性があるのかを調べるんだろ。

 何があるんだろう。有名どころで言うと、火と水はありそうだな。

 他には、風とかか?


「これは基本属性である火、水、風、地、光、闇、天、回復、召喚のどれに、どれくらいの適性があるのかを測るものじゃ。これらは全ての魔法の基礎となる」


 やはりな。予想通りだ。

 大体の属性は想像できる範疇だが、天だけはよくわからんな。光と似てそうだけど‥‥

 まずはエマからだ。エマがそっと水晶に手をかざす。

 すると、水晶からは薄い光が発せられる。エマとランスさんが覗き込んでいるのを見るに、中に何かが浮かび上がっているんだろう。


「ふむふむ、流石はエマ君だな。適性は火、風、地、闇、天が最大じゃ。他に、光、回復にも少し適性があるの」


 すごいな。

 水と召喚以外全てじゃないか。

 エマは満足げな表情で席についた。


「次にオスカー君。前へ」


 オスカーが手をかざす。

 その結果は、風と闇、後は天だった。

 エマとの差からか、肩を落としている。


「安心せい、エマ君が異常なんじゃ。普通適性は一つ、多くても二つじゃ。君は十分優秀じゃよ」

 

 それを見たランスさんは肩を叩き、励ます。

 やはり、こう言うところは教師なんだなと感心する。

 他の生徒達の結果はこうだ。

 カタリナが風と光。

 バナンが水と天。

 リオニーが闇と回復。

 カイが火。

 ランハートが闇と回復。

 ルイーサが地と光だった。


 多くが二つ適性があるのを見ると、やはり優秀なのだなと実感する。

 さてと、お待ちかねの俺の番だ。

 待ちきれず、ランスさんに支持される前に手をかざす。

 さてさて結果は?

 水晶の中を覗き込んでみるが、まったくわからない。綺麗な青色のままだ。

 あれ、俺には見えないものなのか?

 そう思い、ランスさんを見やると、何度も目をこすって見返していた。


「‥‥シグレ君。君は魔法への適性が皆無のようじゃ。普通なら適正ではないものでも微量は感じられて、少しは使える筈なんだが‥‥」

「要するに、俺は魔法が使えないってことですか?」

「そうじゃな」


 なんだって!?魔法が使えないだって?‥‥最悪だ。

 生徒達も俺を可哀想だという目で見ている。

 エマだけは俺に指差して爆笑してるけど。後で覚えとけよ。


「お、落ち着け。辛うじて無属性への適性はあるみたいじゃぞ!」


 顔から感情が滲み出ていたのか、ランスさんが慌てた調子で言う。

 無属性ね。どうせ誰でも使える生活向けの魔法だろ?


「先生すごい!」


 そう思ったのだが、生徒達の反応からしてそうではないらしい。


「無属性魔法というのはな、その持ち主、または家系でのみ使える魔法。いわば特殊能力のようなものじゃ。まず使える人が少ないのが特長じゃ。その数は五万人に一人と言われておる」


 一瞬喜びはしたが、要するに武器召喚のことを言っているのだろう。

 これがあるだけましってことか。


「後で個人個人で伝えようと思っていたのだが、言ってしまおう。このクラスだと、エマ君、オスカー君、リオニー君も無属性魔法を持っておる。やはり優秀じゃのぅ」


 五万人に一人が四人も集まっているのは流石だな。

 こればっかりは生まれ持ったものなんだろうけどさ。


「え、エマにもあったの?どんなの?」


 エマが驚き混じりでランスさんに問い詰める。

 そっか、自分じゃ気づかないこともあるのか。


「すまんがこればっかりは儂にもわからんの。これから探していこうではないか」


 その後は基礎魔法講座だ。

 それぞれの属性の基礎魔法を確認し、質を上げていく。

 どうやら、それぞれの属性に基礎となる魔法があるらしく、それを派生させて強力な魔法にしていくらしい。

 なので、かなり難しいことではあるが、我流の魔法を作り出すこともできるようだ。

 相当難しいので、ほとんどは先人が編み出した魔法を習得していくらしいが。エマならいくつか作ってそうだがな。


 それともう一つ、天属性の魔法は、天気に関するものが多いようだ。なので基礎魔法は雷攻撃のようなもので、ゴブリン戦の際にエマが使っていたファイアーレインは火と天の合わせ技らしい。

 そんなこんなで楽しそうに魔法を学ぶ生徒達を、俺は指をくわえて眺めていたのだった。


 そうして魔法の授業も終わり、次の授業も終わった頃、学校自体は終了となる。

 俺の世界感覚で、四時間で授業が終わるのは早いな。

 全寮制の学校なので、生徒が放課後にすることと言ったら自主鍛錬か、自習か、町に行くぐらいしかないがな。


 そうして放課後、俺は職員会議に出席する。

 士官学校の教師だというのもあってか、空気が粛然としていて緊張してしまう。

 俺が他の教師と殆ど関係を持たないのもあり、これはいつまで経っても慣れなさそうだ。

 やっと終わった職員会議から寮に戻ると、生徒達に暖かく迎えられる。

 周りから蔑みの目で見られているのもあり、結束力は凄まじいのが救いだな。


 生徒達と遊んだ後、食堂で夕食をとり風呂に入る。

 ここにも聖龍の学級に対する優遇があり、大浴場には俺のクラスだけのための時間がある。しかも一番風呂だ。

 だだっ広い大浴場に人数が少ないのもあって、とても快適なものになっている。

 一日の疲れを癒した後は、リリス様とお話ししてから寝る。

 なんかカップルみたいでいいなと自分で思ってはニヤけてしまう。


「せんせー何でにやけてるの?気持ち悪いよ」


 おっといけない。顔に出ていたか。

 とまぁこの世界での俺の生活はこんな感じだ。



 ‥‥そして一週間後。


「おはよー」

「おはようございます」


 口々に朝の挨拶を交わし、支度をする。

 さて、今日も頑張るか!

 と、教室に来たんだが、なにやら騒がしいな。


「ルイーサが来てないんだが先生は知らないか?」


 エマならまだしも、ルイーサがいないのは珍しいな。

 体調が悪いのか?見に行ってみるか。


 ‥‥この時の俺達はまだ知らなかった。

 これが予想以上の大騒ぎになるということを‥‥

 


ブックマーク、感想、評価を下さる方、本当にありがとうございます

とても励みになります!この調子で頑張るぞー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ