5.良くない事は大体被る
ついていない時は、とことんついていないもので…。
※※※※※※
ピピピッ、と着信を知らせる電子音が鳴った。
ーーーあ、病院からだ。
珍しいな、と思いながら出ると、馴染みのある声が聞こえてきた。
「もしもし、私神津と申します。花緒さんの携帯電話で間違いないでしょうか?」
電話をかけてきたのは神津先生だった。
『はい。合ってますよ、先生。』
「あ、花緒さん。間違えてなくて良かった。よく僕だって分かったねー。」
『いや自分から名乗ったでしょ!じゃなくて、わざわざ電話してくるなんてどうしたんですか?』
「あのね、検査結果の事なんだけど…」
ーーー検査結果!おお、もう出たんだ!
これで少しはスッキリする。と思っていたのに、告げられたのは意外な事だった。
「明日伝える約束だったと思うけど、少し解析に時間が掛かっていてね…。悪いんだけど、結果報告が1週間延びます。」
『え!?』
「ごめん☆」
ーーーこいつ絶対悪いって思ってないな…!
つい先生の事をこいつ呼ばわりしてしまった。(心の中でだけど)
『1週間後だと完全に仕事被ってくるんですけど…。』
「いや本当に、申し訳ありません!」
『はぁ…。わかりました。』
シフト表を見て1週間後辺りで行ける日を探した。
ーー1番早くて…10日後しかないやないかい!
『…先生、その辺りだと10日後が最速ですね。』
「10日後ね、ちょっと待ってこっちも確認するからー」
電話越しに紙を捲る音が聞こえる。
「…10日後…10日後…うん、大丈b…あ、」
ーー何だ最後の、あ、は。
「…すみません、学会で出張です…。」
『………』
「………」
『………』
「……すみませんすみません!」
『…先生その次は?』
「スルーはやめて!泣いちゃうから!」
『良いから早く』
「はい!ふざけてすみません!」
ーーー本当にこういう所が医者らしくないよなぁ(良い意味で)
「に、2週間後で!」
『…うーん、あ、大丈夫そうですね。早上がりなので。』
「本当に?!グスッ…ありがとう!!」
『先生なんで涙声なの。』
最早何の話をしているか分からなくなってきた。
「じゃあだいぶ空いて申し訳ないけど、2週間で。」
『わかりました。』
「本当にごめんね!今度ケーキでも奢るから!」
『大丈夫ですよ。』
「じゃあ2週間ねー。」
電話を切ると、どっと疲れが襲ってきた。
ーー2週間かぁ…。とりあえず、仕事に専念しますか!
軽く頬を叩いて気合いを入れた。明後日からは仕事に本格復帰である。
ーーあと今日中にやるべき事は…
と考えながら歩いていると、
「あ、花緒さん。」
『え?…あ、音海さん。』
今1番会いたくない人に出会ってしまった。