表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なろうテンプレを装ったなろうテンプレでないチーレム小説  作者: 大錦蔵
ジャンクフード店~首都『トックホルムス』
7/23

不便なチートマジック、ぐっだぐだ

最近改稿した時期は、2019年8月14日。

 その機械音は、

女神からの、救いの手か、

 それとも・・・・・・。


 先程の着信から、そんなに時間が経っていないはずだぞ?

 それとこの機器、防水仕様になってんだなぁ。『浄魔クリアクア』を全体浸されても平気で動いている、なかなか丈夫だ。

 オレは、手にしている二つ折りタイプのガラケーの通話ボタンを急いで押し、耳に当てる。

 

 『もしもし~稲荷・・・・・・あのね~、もうせっかくあたしが『ツィッター』で呟いたり、写真傑作作品送ろうとしても、そっちの機種タイプじゃ、届かないじゃないの・・・・・・・・・・・・これだから古いガラケーは、ったく』

 救いじゃねぇな、ただの那賀の愚痴じゃねぇか!!

 それとそもそもそのガラケー、もともとお前の持ち物だろ?!


 カナネさんとアードが、こんな、こんな殺し合いしているタイミングで!!! 


 『それにしても、あなた実にモテてるわよね? あたしが稲荷を異世界送ってものの一時間ちょっとで、あなたを想う女の娘二人が、戦うなんて・・・・・・ああっ!! なぜこんな悲劇が生まれてしまったの? これが恋という劇薬に狂わせられた少女達の、末路だとでもいうの!? なんて刺激的な展開なのでしょうか、創作意欲が湧いてきたぁあああああああああっっっ!!!』

 

 「なあ本当にオレは、お前をぶち殺したくなってきたぞ? 結構自分は温和タイプだと思ってたんだが?」

 そう軽口を叩くオレだが、ふと・・・・・・徐々におぞましい思考が、オレの頭に、忍び寄ってきた。

 一つの仮説を・・・・・・認めたくないことを・・・・・・。

 だが、聞かなければいけない内容だった。ほっとけない大切なことを尋ねなければ。


 「・・・・・・なんで今、オレの周りで、知り合い達が戦っていることを、知っているんだ?」


 『いや~それにしてもスマホって、素晴らしいわよね。画面パネルを直接指で操作するなんて、ボタンを何回もタップして指定するガラケ時代と比べたら、とっても効率的になったわ。

本当に革新的ね、これ。

 インスタ・ツイッターやったら、知人でないはずのみんなが褒めてくれるし、撮った写真ガラケと比べたら一目瞭然ぐらい綺麗だし、なんかダウンロードされているゲームアプリあたし好みだしってもう最高っ!!』


 「ばっちり堪能してんじゃねぇかっ、他人のスマホで!! はぐらかすなっ!! なんでオレの周りの情報が、お前に漏れてんだ!! 答えろ悪神!!」

 そう怒鳴ってやったら、暫くの間奴から、声は途絶えた。

 

 こんな無駄極まりないやり取りの間にも、カナネさんは、ノコギリの刃に狙われ、アードは、蜘蛛の杭みたいな脚に、体を貫かれそうになっているんだぞ!!


 十数秒程で、ヤツから返答が来た。とってもぶっきらぼうに。

 『だって、・・・・・・なんだもん』

 オレは はっ? て言ったら奴は、


 『だって、あたしは女神なんだもん!! それにネタ集めないと、小説書けないじゃないのよ!!? ちょっと神通力とか権能とかで、ちょちょいのちょい異世界にいるあなた達監視しているからよ。当たり前じゃない!!』


 なっ・・・・・・! と、言葉をつまらせるオレだが、すぐに厳しく言い返す。

 「監視? ふざけんな!! オレ達のプライバシーをなんだと思ってんだっ!!?」

 しかしその女神も必死になって、


 『なんとも思っているわけないじゃない!! あたしは女神で、あなたはただの人間さん!! あなた達の都合なんて知るわけないの!! なんか威張っているけどあなたなんて、ただ神々が要らなくなった魔法だの能力だのおこぼれを頂いているだけじゃないの!!』


 オレは今日までこんなに荒れ狂うほどの怒りを感じたことは、他の日には全く無かった。

 だが今はその比すら微小になってしまう程、何に例えれるのか迷うくらいに・・・・・・。

 「こっちだって、好きでオレTUEEEEEEやっているわけねぇだろぉがぁあああっ!!! 何すねてんだ女子高生!! この世界まで引きずり出して、八・つ・裂・きにされてぇのかよおっ!!? それより、てめぇわかってんだろ! 早くカナネさん達のぶち殺し合いなんとかしなけれりゃいけねぇだろぉおが!!!!!」

 そう、怒りの最上級・・・・・・歪みに歪んだ滅茶苦茶な感情を隠さずに、ぶちまけたのだ!!!

 おこぼれ?? ただ単に要らなくなった廃棄物を、押し付けたぁだけじゃねぇか!!!!

 

 そして

 気づいた。今更なことを。


 そうだ、オレはその廃棄物をたくさんもらったんだ。

 それを、使えばよかっただけなんだ。


 『知らないわよ!! だいたい電話越しでも、あたしに対しての畏敬の念が足りな』

 プッ、と電話を切り、ポケットに締まった。


 あんなに大声張り上げてオレが口論したのに、彼女たちはこちらに気づかず、まだ、ケンカをやめてはいなかったのだ。


 「さっさと、調理されてくれっすよ、さっさとさっさと。カナネさん? すっごくお腹空いているのですよ、おいらは」

 そんな言葉をつぶやいたアードは、拾った石を得物であるノコギリの刃を使って、野球のように打ち出したのだ。

 驚異するべきとこはその砲丸並みの大きさに匹敵する、岩とも言えるような巨大さを持つ石を、アードが軽々とかっ飛ばせれるその膂力だ!


 飛ばされた石は、ぶつかりさえすればコンクリートブロックも粉々に砕くと思しき速度で、直線的にカナネさんの頭に目掛けて向かって来る。これをまともに喰らえば、アウトだろうな。

 しかし、カナネさんは低空に真横に跳んで、これを回避・・・・・・。


 避けられた飛び道具の軌道先には、未だに気絶したままのゴブリンの一体が、へたりこんでいた。


 その石は、そいつにぶつかる寸前で、白い炎に包まれ、一瞬で灰になり舞った。

 まあ、オレが那賀に押し付けられた『非酸ナイトロジェイム』を使っただけ。


 アードが、その光景を視界に入れて、獣人尻尾とケモ耳をピッーンと立てて驚き、次にオレを見つめてくる。

 それにつられて、カナネさんもこちらを向いた。


 「イナリ?」


 「トライさん?」


 オレは着ていた上着のラフなシャツを脱ぎ、次に不動作ノーモーション不呪文ノースペルで風魔法『増速インクロー』を発動し、掌に収まるほどの竜巻を生み、それでその服を浮かび上がら、浮かび・・・・・・浮かび上がらん!!


 たった数秒じゃ、服が浮かび上がらん!! この風魔法、型にはまればまさしく威力も速度も風量をも無尽蔵に上げれるとんでもない化物魔法だが、発動したばっかじゃぁ全然威力ねぇなっ!!

 流石、『周辺にある魔力と空気とその移動エネルギーを半永久的に吸い上げ操れる風です。ただし、発動時際には、イラつくほどしょっぼいですから、ご了承ください❤』の、キャッチコピーを誇っているだけのことはあるなこんちくしょぉお!!


 そのベイビー風を操りながらも、恐る恐る振り向いたオレの目先には・・・・・・、


 戦闘状態を解き、哀れんだ目でこちらを見つめてくる二人の姿が!!

 ああ、何やってんのこいつ、って思われてるんだよなぁあ、きっと。

 そしてやっと十数秒で、その魔法がマシな威力まで増え、オレの服が浮かび上がる。

 そしてカナネさんに向けて、はためかせた自分のシャツを、竜巻ごと運んだのだ。

 ふっ・・・・・・ただ服渡すだけで、どんだけ時間かかってんだよ全く。

 ただの手渡しなら、もっと効率的にできたんじゃね?

 


 「さっさとそれで胸隠してくれよ。オレはウブなんだからさ」

 土で汚れてはいるが、それをブラ代わりにしてくれ・・・・・・あっ。


 「ああ、ありがと・・・・・・ぐはぁあっ!?」


 シャツをキャッチしようとしたカナネさんが、その竜巻に弾き飛ばされたのだぁっ!?

 呆然とするアードをよそに、カナネさんは、何かの冗談のように、赤い月をバックにし、蜘蛛脚と両腕を激しくばたつかせ、夜空高く舞っていた・・・・・・。

 ああ、もう陽は沈んでるんだな・・・・・・夜か。


 って、のんきに傍観している場合じゃねえだろ!!


 たった数メートルの距離の風エネルギー吸って、どんだけやばい破壊力まで膨れ上がってたんだこれはぁあっ!!

 まさか『増速』の風は、威力や速度だけじゃなく、それらの加算値そのものすらも、時間経過によって累乗的にどんどんどんどん跳ね上がるのかっ?!! 


 カナネさんを弾いた風の魔法は、オレが驚愕したことにより、影響を及ぼしたのか、向かう先が彼女がいる向きとは別にれて、突き進む。


 「これは・・・・・・」

 顔を上げて呟くアードは続けて、


 「ナイスフォローです、トライさん!! うぉしゃぁあああああああっ!! 突きますっす、カナネさんのスキを!!」

 ノコギリを高々と挙げて、落下しているカナネさんの方向めがけて、全力疾走する。

 え~と、させるか!! 追いかけるぞ。


 ちなみにその2秒後、例の竜巻は、山に生えるたくさんの巨木を、根ごと地面ごと掻き上げ吹き飛ばした。

 その光景に絶句したオレは、急いで『増速』を解除する。数百の木々と土砂が、天災のように落とされたのだ、衝撃波は甚大なものであった・・・・・・。 もしの話だ。役立たずなさっきの風魔法は、ほっとけば、この国どころか星さえ滅ぼすのでは??


 「夜中だよな、火をつけよう・・・・・・」

 あたりが真っ暗で、危険だ。オレは念じる。呪文も動作も必要ない。

 それだけで、『非酸ナイトロジェイム』という名の、純白な火炎が一瞬で、この山全ての無機物を呑み込んだ!!

 下方から、まばゆい灯りが生まれたのだ。これでよく見える!!

 

 「さっきの炎ですか、これは!?」

 尻尾を内股に隠して驚いてる・・・・・・いや怯えてる? アードかわいい・・・・・・じゃねえや、オレはその術について説明する。


 「安心しなアード。この炎は生物には無害さ。熱くねえだろ? 威力も弱めにしといたから、ノコギリの刃も、燃えないはずだぜ」

 

 「おおっ! 素晴らしいっすね、なんとも。安全にそして早く追いつけますよ、これで!!」

 しまったぁあああっ!! アードの手助けをしてしまったぁあ!!


 「ってか、カナネさんが・・・・・・森の奥に落ちたぁあっ!! 地面に激突しているのか!?」

 彼女の安否を滅茶苦茶心配しながら、坂道を駆け上る。アードを止めようと追いかける。

 しっかし、足速いな、あの娘。

 オレが息がきれて、肺も攣ってるんじゃないかと思うほどの痛みが生まれた時に、アードが叫ぶ。

 「あっ!! 見てください、あれを。トライさん」


 アードが指差す方向に、オレは視線が釘付けになってしまった。

 そこには、その平地なっている場所には、


 『非酸ナイトロジェィム』とは別の、オレがよく知る赤い火・・・・・・焚き火の上で、胸を腕で隠したカナネさんが、熱さと痛みでもがいていた有様が。

 焚き火を囲んでいる人達が、慌てて炎を消そうと、水魔法を繰り出す光景が。


 「わ~おっ。入ってましたか、もう焼きの段階に。食べる! 食べたいです~、おいらも、アラクネの塩焼きを!!」

 目を輝かせ、よだれを口から垂れ流し、見当違いの答えにたどりついて狂喜していたアードを、オレは無視して、カナネさんに駆け寄る。


 「カ・・・・・・カナネさん!! 申し訳ございません。大丈夫ですか!!」

 わかっている。大丈夫な訳が無い。


 「イナリ!! うっぅっうっ・・・・・・」

 涙を浮かべ、こちらに走り寄るカナネさん。そりゃそうだよな、・・・・・・こんな不憫な目に遭っている人なんてそうそう。


 「イナリは、こんな災難よりも、もっとひどい理不尽な目にぶつかっているんだよな!!? 簡単に共感できたと勘違いした私が、恥ずかしい」

 ・・・・・・へっ?


 「イナリは一回、意味もなく殺されているんだよな? 服を消し炭されたり吹き飛ばされたり焼かれる程度で私はこんなに苦しかったんだ・・・・・・これ以上の痛みを受けた君には、私は頭が上がらないな・・・・・・」

 なんか、カナネさんが、オレの両肩を掴んで俯いて振るえていた・・・・・・だから胸隠せって!!

 

 ってっきり・・・・・・。

 「オレに対して怒っているのかと・・・・・・。結構ヘマして、大迷惑かけたはずだが・・・・・・」


 「怒るわけがない。私は今まで君から自分に対して一回も、敵意を感じたことはなかった。先程の竜巻も白い炎も、私を思っての行動だったことがわかる」


 「・・・・・・ま・・・・・・まぁ、そうですけど??」

 ただ、蜘蛛の下半身は、正直まだ全然苦手意識があるのですよ・・・・・・すいませんでしたぁああああっ!!!!!!! すごい罪悪感が・・・・・・。


 「ところでひどい火傷じゃないですか、カナネさん」

 

 オレの言葉に対して、カナネさんは

 「いや、大丈夫だ」

 と気丈に振る舞って答えてるけど、彼女が痛くて熱くて苦しいというのが丸わかりだ・・・・・・何とかしなくては!


 「実はオレ、どうやら治癒に関する魔法、使えるらしいんですよ。ちょっとあの悪神から夕方時に押し付けられた魔法の情報量が多すぎて、思い出す(?)のが遅れました」


 「そうなのか? では、頼む」


 オレは『献身リカバリーギフト』の術を使う。カナネさんの全身から、淡い緑色の光が溢れ出したのだ。・・・・・・もしオレがこの術の正体をばらしたら、きっとカナネさんは治癒を拒否してただろうけどな。


 「ああ、痛みが引いてくるのが、わかる・・・・・・」

 と、カナネさんの顔は、安らぎだしたのだ。


 というか、アードは? まだカナネさんを狙っているはずでは・・・・・・。

 そう、オレがアードがいる方向に振り向いたら、


 「う~・・・・・・空きすぎですよ、おいらのお腹。動けないっすよもう~」

 なんか焚き火の側で、彼女がうつ伏せに倒れて、弱々しく呻いていた。


 そんな彼女を不憫に思った見知らぬおじさんが、

 「お嬢ちゃん。豚肉入りの揚げパンをどうぞ」

 と、カバンから布に包んだパン一つを差し出してきたのだ。

 オレがいた日本のスーパーで、百十数円【税込み】で、売られているメロンパン並みの大きさを持っていた。


 「・・・・・・美味しそうですけど、すっごく。でも企んでいませんか? これ食べさせておいらを太らせようと。そしてブクブク肥えたおいらをバクリっ・・・・・・」


 そんな訳あるかっ!!!

 「せっかくの親切受け取りなさいよアード! おじさん困った顔してるじゃないか」


 オレが言い聞かせて、アードはやっと変な警戒を解き、パンの施しを受けたのだ。

 食べ物をもぐもぐほうばっている彼女・・・・・・なんか、庇護欲を唆らせるようなかわいさがあるな~。人肉以外も食べるってわけだな。

 そしてあっという間にぺろりと平らげたアードは呟く。

 「なっちゃったすね~、お腹いっぱいに。満足ですよおいら」

 少食だな君。

 

 次に彼女は カナネさん と呼びかけ、

 「しましょうよ、仲直りを。狙う理由がなくなりました。おいらが満腹になったから」

 と、先程までの狼藉が一体何だったのだと突っ込みたくなるような、空気読まずの発言を、曇りなき笑顔で、本当に敵意が感じられない様に宣言したのだった!!

 お腹いっぱいになれば何でもいいのか!!?


 ・・・・・・思ったのだが、人肉好きの大食らいも大変この上ない大迷惑だ。

しかし少食の食人族もなんだが徹底して倫理的にひどいような気がするぞ・・・・・・アードが大幅に残して捨てている人肉のイメージが、オレの頭の中にこびりついてしまう・・・・・・。


 アードの友好的な態度に、

 「・・・・・・・・・・・・」

 複雑な表情をするカナネさん。だよね。


 「ところであんた・・・・・・」

 焚き火を囲んでいるおばさんが、オレに話しかける。


 「いや~、海藻みたいな髪の毛した人からばらまいた見えない毒を・・・・・あんたがあたし達を治してくれたんだろ? ありがとね命の恩人。助かったよ、あんたが制御できなかった水のおかげでねっ・・・・・・!!」

 と、彼女は額に青筋を立てて、感謝を述べたのだ。


 他の人達も、こちらに集まりだして、不満を垂れ・・・・・・お礼を述べ始めたのだ。

 

 「もしもあなたがいなかったら、僕たちは死んでいたよ。お返しがしたいんだ。あなたが僕を水浸しにしたから、こちらも水魔法を差し上げよう」

 柔和な物腰の男性が、殺意を放ちながら、頭を下げて掌を、オレに向けてくる。


 「くそがっ、どうも解毒してくれてありがとさんよ。くそったれ!!」


 「君がいてくれて命を失わずに済んだよ。・・・・・・ところで、私の財布と指輪が、君の水に流されたんだ。どう落とし前をつけてくれるんだい?」


 さて、こういう状況になったら、どうすればいいと思う? 答えは、


 「あはは、どうも・・・・・・ところでもう夜ですけど、皆さんは下山しないのですか?」

 笑って適当に返事をして、話題転換をすることだっ!!

 ちくしょぉ・・・・・・なんでこんなことになるんだ!! オレのメンタル弱いほうなんだぞ!!


 そんなオレの質問に、アードにパンを渡したおじさんは、

 「この山の人気がない獣道には、ゴブリンやら統率リーダーシップウルフが、縄張りしているんだ。松明持っただけじゃ心細くてね。下手に動くより、みんなで焚き火を囲い集まって、朝まで迎えたほうが、安全だと判断したんだよ」

 そう答える。続けて、

 「しかしその必要も無くなった。君が白い炎を山に灯しただろう? あの時の戦いを見て聴いていたから知っていたんだ。生き物には無害の不思議な火を頼りにして、無事に帰れそうだ。ありがとう」 

 お礼を述べたのだ。悪意はない・・・・・・純粋な感謝の気持ちがわかる。


 いや~、先程の微妙な言葉群を受けた心の傷が、薄くなったなあ。


 「ところで『浄魔クリアクア』・・・・・・水に流された人達全員・・・・・・実は安否がわからないのだろ? ・・・・・・正直困ったぞ」

 と、顎に細い指を添えながらカナネさんは呟いた。

 オレが授かった術の名前、覚えてくれたんだな。

 仕方なかったとはいえ、本当に申し訳ない。


 「良いんじゃないですか? 別に見知らぬ人を助けなくても。悪いんですよ、雑魚が。ほっときましょうよ」

 ドライな意見だが、オレをフォローしてくれてんのか? アード。でも見捨てるという選択はおれにはできない。


 オレは自信満々に口を開く。

 「こうなりゃ、召喚術を使うか!!」


 「回復に攻撃に、召喚か・・・・・・君は何でもできるな」

 と、カナネさん。

 ・・・・・・驚いて褒めているところ悪いけど、女神から押し付けられた魔法使ってるだけなんだから・・・・・・。


 とにかく発動させよう。

 「『雇用ハイアモンスター』」

 オレが仁王立ちで宣言した瞬間、自分の周囲地面に、魔方陣【%や$などの見覚えのある文字の羅列と、四角三角を組み合わせたような図形】が複数現れ、そこから・・・・・・。


 背中に翼が生えたモグラ・腕が肥大化している岩人形・尻尾がたくさんの蔦、蔓でできているウサギ、空中に浮かんで尾びれを揺らしている大魚が、召喚されたのだ。よし、成功した!!

 魔法のコツが分かってきたぞ!!


 「御用は何でしょうか、社長」

 リーダーらしき翼モグラが、持っていた紙束をこちらに渡しながら、尋ねてきたのだ。


 「オレ達はこれから下山するから、あんたらはこの山で遭難している亜人やら人間見つけたら助けてくれねえかな? 特に土煙出てるとこ」

さっきオレが、増速インクローで、あちら辺木々ぶち落としたからな・・・・・・どうかそこら辺に、誰もいませんように‼︎

オレは続けて、

「あと何か困ったら・・・・・・」


 「はい、通信魔法で社長に相談します」


 「よろしく頼むよ」


 「「「「はいっ」」」」

 

 オレと召喚獣達の様子を眺めていたカナネさんは、オレに耳打ちをしてきた。

 「大丈夫なのか?」


 「ああ、大丈夫だ。女神からの情報によれば、彼らはとても有能らしい・・・・・・だけど」

 渡された履歴書の束を、読みながら答える。


 モグラが言う。

 「ところで社長。異界にある日本の社長の預金自動引落か、この世界の現金手渡しか、どちらかに選べますが、如何致しましょう?」


 オレは苦い顔をして答える。

 「銀行の預金引き落としで」

 

 

 金かかるんだよな。

 

 私は、スマートフォンとガラケーの能力スペック差について全然詳しくありませんから、イナリ達の通話内容を、鵜呑みにしないようお願いいたします。

 『増速インクロー』は造語です。

 次の投稿スペースを、だいぶ遅らせる予定です。申し訳ございません。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ