蜘蛛とハイエナ科と渡来人
少し投稿スペース遅れて申し訳ございません。
最近改稿した時期は、2019年2月26日。
※私の勘違いで、ハイエナを猫科と誤って記述しましたが、ハイエナ科と訂正いたします。
申し訳ございませんでした。
(ウェーデンス国ら辺の地域では、ハイエナをジャコウネコの類と同じ扱いをします)
今回の最初らへんは、三人称視点から始まります。
どこかの放射線使いは、体中ずぶ濡れになって倒れていました。
意識はあったのですぐ起き上がり、周りを少し見渡します。
どうやら山の麓の、王都の城壁近くまで流されたようでした。
「くそ、放射線という存在の情報、いつの間にか有名になっていましたね。今の学園に教えられているのかな? それとも『あの剣士』ってやつが、自分の武器の情報を、鼻高々に演説してないでしょうね?」
放射線使いは、門に向かって歩みながら、独り言を呟き続けます。
わかめみたいな前髪は、ますます海藻に似てきてました。
「それにしてもあの男・・・・・・ボクの放射線いっぱい浴びせたはずなのに、全然効かなかったように感じましたよ。どんな生命力してたんですか? 蟲熊ってやつですか、ん?」
彼は楼門を潜った瞬間に、異常事態に気づきました。
それは、
晩時にもかかわらず、蝋燭の火をはじめとした人工的な光は一つも見当たりませんでした。
墨で塗りつぶされたように夜に染められた大きい石の建造物らが、静かに佇んでいるのが、見えただけです。
空に輝く、赤色と緑色の二つの月と、星明りが、建物や地面を消極的に謙虚に照らしていました。
「・・・・・・なんだこれは、どこもかしこも灯りが点いていない?」
※次の段から、三人称視点から、虎威の一人称に変更致します。
場面は山の奥。
「な・・・・・・何で生きている!? それと気絶した役立たずもなぜ、爆発してない!?」
あの遠くまで逃げた腰抜けゴブリンが、なんか呟いている、うるせぇなぁあっ!!
仲間に見捨てられ利用されたゴブリンの死体から、忌々しい煙の匂いが漂っていく。
アードと気絶したゴブリン二体はダメージを受けたみたいだが、命に別状は無いみたいだ。
先程自棄気味に、死体にオレは『浄魔』の水をかけまくって、爆発の術? とかいうのをすすぎ流したからな。
無事成功して安心した・・・・・・また前のように津波の如く暴発したら、今度こそ魔法恐怖症に陥っちゃうな。
オレは、許容できないことを、あの腰抜けゴブリン共に突きつけることにした。
「そんなことはどうでもいいだろぉがっ!!」
木の幹に叩きつけたゴブリン達に指さし、
「こいつらは、てめえらの仲間じゃ、無かったのかよ!! 死体を利用するのはまだ良い・・・・・・だがヤツラはまだ生きているんだぞっ!! 何見捨ててんだよ!! ってか、敵のオレからこんなこと指摘されてんじゃねぇーよ、バーカッ」
胸やら腹やら心からこみ上げる言葉を、ぶちまけたっ!!
「う・・・・・・」
白い煙を纏って倒れているアードは、四つん這いになり、不思議そうにこちらを見つめて、
「怒っているのですか、ゴブリンのことで。敵に情けをかけるんすか、何で? トライさん」
「何でもねえよ・・・・・・ところで傷とか無いだろうな? 爆発物にされたゴブリン全部洗い流せなかった」
オレは彼女の手を貸して、起き上がるのを手伝う。
「物理的に洗い流すことができるんすね、かけられた呪術そのものを・・・・・・現実離れしてますっすね~、相当に」
「そうなのか?・・・・・・ところでその手は何時になったら離してくれんだい?」
なんか貸した手を、強く握りだしてきたんだけどこの娘・・・・・・。
「ふっふっふっ・・・・・・最後ですよ? おいらに捕まったら・・・・・・。このまま犯してやりましょーかぁあー!!」
「うわぁあああぁああああああああああっ!!!!?? ってか、単語の順番が普通になっていますよアードさぁあん!!」
と、なんかアードがオレを押し倒そうとしたり、オレが突き飛ばしたりとグダグダグダグダやっているうちに・・・・・・。
「ん? そういやゴブリンは?」
転んで、うつ伏せに倒れ、アードにしがみつかれたオレは、呟いた。
首だけをヤツらがいる方に向けた・・・・・・いや、いなかった。
「速いっすね、逃げ足が。去っちまったんすね、同類を置いて」
と、言ったアードは、気絶してるゴブリンに、顔を向ける。
「で、どうします? さしちゃいましょうかトドメ」
アードはオレを拘束したまま、彼女の得物、ノコギリを拾う。
「いや放っておこう・・・・・・」
それと、さっさと・・・・・・。
「イナリから離れろ!! そこのノコギリ女!!」
ん? なんか聞き覚えのある声が・・・・・・。
オレは怒声の元の方に、つまりは正面方向に、顔を上げた。
あ・・・・・・再開できた。
「カナネさ・・・・・・ん!?」
向いた先には、たしかに下半身が蜘蛛でできている彼女はいた、いたのだが・・・・・・。
オレは目をパチクリさせて呟いた。
「ビキニアーマーはどうしたのですかっ!!?」
そう、カナネさんは、その豊満な胸を包む衣類が何もなく、腕で隠していたのだ。
目のやり場に困るではないか!!
カナネさんは、顔を瞬時に真赤にし、下を向いて
「ううっ・・・・・・いきなり私に襲いかかってきた謎の白い炎に焼き尽くされた・・・・・・」
ぼそぼそっと、恥ずかしそうに呟いたのだ。
ってか、それ・・・・・・。
「オレがさっき繰り出した『非酸』のことじゃねえか。ごめんなさいっ!!」
アーマー・・・・・・金属だから、燃やしちゃった?
「え!? そうなのか!? そ・・・・・・それより!! そこの貴様、イナリから離れろ!!」
カナネさんは、今の空気に耐えきれずに、話題を切り替えたようだ。
ん? なんかカナネさんは、アードに対してキレてんな? なんで?
それとアードは呑気に ふあ~あ あくびをしている。
今の状況を確認してみよう・・・・・・。
①オレは今、ノコギリを持っているアードに、押し倒されている。
②カナネさんは、オレに対し、恋愛感情は持ってないかもしれないが、婚約はした仲。
③先程駆けつけてきたカナネさんは、オレとアードが共闘して、ゴブリン達を退けさせたことを、知らないっぽい。
・・・・・・・・・・・・。
もしかしてカナネさん勘違いしている!?
「ち、違うんだカナネさん! アードはオレを襲ってるわけじゃっ・・・・・・!!」
慌てて説明したオレに、カナネさんは遮るように叫んだ。
「何が違うんだ、あの獣人は、グール・・・・・・つまりは・・・・・・」
彼女は少し間を置いて叫んだ。
「食人族なんだぞ!!!」
「・・・・・・え?」
一瞬、頭が真っ白になった・・・・・・。
信じられない・・・・・・たしかにアードはオレを襲った・・・・・・しかしそれは喰い殺す目的でやったことじゃないはず・・・・・・だよな? ゴブリン達が押し寄せた時も、助けてくれた・・・・・・。
彼女が・・・・・・食人族??
「え、そんな? 違うよな!! アード!?」
伏せられたまま、まくしたてたオレだが、彼女は落ち着いた様子で答えた。
いや、ちょっと嘲笑っている?
「知らなかったんすか? おいらの種族のこと。ウェーデンスで呼ばれてるんですよ、おいらハイエナタイプの獣人は、人や亜人の肉が大好きなグールだって。
それと、『マルウェージャコウネコ』タイプの獣人っす。おいらの種族を詳しく説明するのなら」
※(作者注)マルウェージャコウネコ・・・・・・地球に生息している ツチオオカミ と酷似した毛並みを持ち、昆虫を主食とするが、ゾンビも好んで食べる、身体能力高めなハイエナ。
「そ・・・・・・んな・・・・・・」
アードは、オレの頭を優しくポンポン叩くと、続きを語る。
「たしかに好物は人肉ですが、安心して下さいよ今、食べるつもりはないっすからね? おいらは君を」
・・・・・・え?
「デタラメをほざくな!! グール!!」
ここまで焦って駆けようとするカナネさんだが、どうやら木々の幹に邪魔されて、通行が難航しているみたいだ。あっ、下半身の蜘蛛部分柔らかくて、障害物の間に無理やり体ねじ込んで潜ってる。
「ほざいてませんよ、デタラメなんて。まあ聞いて落ち着いてくださいよ、おいらの目的を・・・・・・」
「とにかく、カナネさん。話だけでも聞きましょうよ」
諌めようとなだめようとするオレに対して、
「う゛~・・・・・・イナリがそこまで言うならぁ~・・・・・・」
唸りながらも、なんとか了承したカナネさん。・・・・・・なんでそんなにオレに従順なのだね?
そしてアードは立ち上がり、オレから少し離れ、説明を始めたのだ。
「食わないんっすよ、国民登録されている一般市民は、基本的にね、おいらは。
もっぱら食うのは、外国から不法入国した人とか、盗賊とかの犯罪者と買った奴隷だけ。
捕まりたくはないんでね、おいらも役人さんに」
そうか、彼女は殺害して食べても罪には問われない人だけを選んでい・・・・・・あ、気づいてしまった・・・・・・。
どうやらカナネさんも気づいたようだ。顔に汗が流れ始めている。
そうか・・・・・・
そうだよな・・・・・・。
オレは別の世界から転移してきたこの世界から見ての部外者・・・・・・つまり、そいつが殺されようが、食われようが、国は関与するわけがない・・・・・・。
もちろん国民登録なんぞしていない。
そう、オレが別の世界から転移してきたことがバレれば、アードはオレを遠慮なしに、メインディッシュに調理するだろう・・・・・・。そして輝きを放つ程に、純真無垢なにこやかな笑顔で、オレをほうばることだろう・・・・・・。
・・・・・・ばれてはいけないな。
「そ・・・・・・それじゃあ、イナリを食べないんだな!! ならさっさと彼を開放しろ!!」
少し安堵するように聞き出し、怒鳴ったカナネさんに対し、アードは、
「ん~・・・・・・いかないんですよ、そういう訳には。子作りするんすよ、今から、おいらとトライさんで・・・・・・」
うわっお前、今そのタイミングで言うか!? カナネさん・・・・・・ブチ切れるかな?
だが、
「そう・・・・・・なのか?」
彼女が怒ることはなく・・・・・・つまりは他の娘にオレを取られることに関して嫉妬してないってことで、カナネさんがオレに恋愛対象として抱いていないっていうのはすごく残念に感じるのだがぁああああああああああああああああああああああああっ!!!
カナネさんは、
「貴様も、・・・・・・いや貴様はイナリのことを、しっかりとした恋愛対象として見れるのだな・・・・・・」
そう寂しげに呟いた。
しかし
「違いますっすよ? いや」
アードは否定した。
「「え?」」
呆然とするオレとカナネさんに対し、
「トライさんはイケメンだと思いますよ、たしかに。でもおいらのタイプじゃねぇっす。美食目線からすれば、とってもとっても美味しそうっすけどね、まあ」
説明を続けるアード。
「じゃ、じゃあなんでオレに・・・・・・?」
「養殖が目的っすね。食料をバンバン作っちゃうっすよ、おいらとトライさんで・・・・・・食っちまうっすよ、そいつらを。いや、あえて泳がして太らせましょうか、肥育するっす、こさえた子供達を・・・・・・でもそれじゃあ、登録されちまうな食料達が、国から住民って認められる手続きが・・・・・・ねえ、どうしたらいいと思います?」
とんでもないことだとオレは思った・・・・・・これから生まれる子供を人としてではなく、単なる食料としか見ていない・・・・・・ってか、お前が腹を痛めて、やっとこさっとこ産んだ子、食べちゃうのかよ!? もしもの話だけどよ。
なんかカナネさんの体が振るえているけど、怒っているの?
そして奴は、越えてはならない一線を越えた。
禁句を言い放ったのだ。
「もちろん認めるっすよ、トライさんのハーレムを。分けてくれないですか? 子供が余ったら。・・・・・・君達恋人みたいっすけど、その二人から産まれる子供楽しみだなぁあ、もしアラクネタイプの子供もらったら、どう調理しようかなぁ・・・・・・良いかなぁ~? 揚げが」
「貴様っ!!! ぶち殺す!!」
恍惚そうに涎を流しているアードに対し、カナネさんは自分の逆鱗にでも触れられたのか、今までオレに見せたこともないような怒りを表し、こちらに向かっ・・・・・・って、胸隠して胸!! 腕を離さないで、揺れてるって!! ちょっとみ、見ちゃったよ!!
それでもアードの口は止まらない・・・・・・。
「何で怒ってるっすか? そんなに。・・・・・・ああわかった。食べたいんですね、あなたも」
カナネさんは、アードの言葉に、怪訝そうな顔で足を止めたのだが・・・・・・。
「トライさんの人肉、好きなんですねあなたも、それじゃあ決めちゃいましょうよ配分を。できることならおいらは、目玉と肝臓と舌・・・・・・あ、脳みそは捨てきれないっすね~、何が好きっすかあなたは? トライさんの◯巣を汁で一晩煮込んだ料理はどうですか?」
ぞっとする言葉だった。
アードは特に何気もなく言い続けている。
まさしく人ではなく豚やら牛の料理の話をしているようだった。
しかもオレについてだ!!
背筋が異様に凍ってしまう。
しかしもし 背筋凍ってしまう とか感情吐露しようものなら、じゃあかけましょうよ、キンキンに冷えた背中にかき氷のシロップを・・・・・・と、彼女はノリノリで、ブルー・ハワイと練乳を用意するだろう・・・・・・。
そしてカナネさんは、暫くの間は固まっていた。
・・・・・・まさか、アードが言っていた通りに、本当にオレを・・・・・・。
下半身が蜘蛛でできている亜人・・・・・・なんか、あり得る話になってきたような・・・・・・?
例えば蜘蛛の糸張り巡らせてある人気のない洞窟内で、オレが油断したタイミングを狙って粘着糸で襲い、体中包んでバクリッとか・・・・・・!!?
だが、
「っざっけんじゃねぇぞてめぇえええええぇえええええええええ!!!!」
良かった。怒っている・・・・・・それも先程よりも。
どうやら図星を突かれたから、ではなく本気でオレのことを想っているから、アードの言葉に爆発したんだと感じた。
もはや彼女は周りも見えずに、アードに向けて全力疾走で突進する。
って、ちょっと喜んでいる場合じゃない!!
オレはすぐに起き上がり、まくし立てた。
「アード逃げてぇええっ!! カナネさん滅茶苦茶お怒りモードだからぁあああっ!!!!」
「あらブチ切れてますね。なんででしょう?」
ほら、かわいい首かしげは良いから、さっさと逃げないと、えっと・・・・・・とんでもないことになるぞ!
「あっちょっやめてカナネさん!! お願いだから止めてぇ!!」
急いで、オレはアードを庇った。カナネさんが走る軌道先に立ったのだ。
両腕を水平に挙げる。 ・・・・・・ちなみにカナネさんの胸部を視界に入れないように気をつけて・・・・・・。
オレの取った行動は功を奏したのか、カナネさんは徐々にスピードを落とし、走るのをやめた。
「ふむ・・・・・・」
なんか、オレはアードに背を向けているから、よくわからないが、先程の彼女の呟き・・・・・・何か良からぬことを考えているのではないか、アード!!?
「OKですかね? 正当防衛では。殺して食っても大丈夫でしょう、やむを得ずなら。如何ほどでしょうかねぇ? タランチュラのTENPURAは」
「いや、え? アードさん?」
嫌悪感溢れる汗が一滴、背筋を流れていく。
先程までオレが立ち塞いだから、せっかく態度が軟化し始めたカナネさんも、増々前よりも緊張感を発し、構え直してきた。
「いっただきま~すっ!! 役人さんへの証人お願いしますよ? トライさん。おいらの正当防衛ののね!!」
いや、せっかくそのままにしとければ、平和的に解決・・・・・・痛っ!?
「ああ貴様!? よくもイナリの肩を、踏み台にしたな!!」
え? うわっ、カナネさんが言ったとおり、アードはオレを利用して高く飛翔・・・・・・って、どんな身のこなし方してんの彼女!!?
それからは・・・・・・まさしく殺し合いだった。
現時点では二人とも、致命傷になるような傷は、まだ受けていないみたいだが。
アードは軽快な動きで、カナネさんの急所を容赦なく、ノコギリで狙い撃ちにし、
カナネさんは、・・・・・・以外に跳躍力高え!? 目測五メートル以上跳んで回避し、のしかかろうとする。
てか、呑気に見物している場合じゃない!!
もう女の娘の秘所は見ませんぞ、な、紳士モードを貫いている場面でもない!!
・・・・・・とりあえず、どうしたら・・・・・・。
そして、
このタイミングで、
携帯電話・・・・・・それもガラケーの着信音が、オレのポケットから、発せられた。
ご覧くださりありがとうございました。