猿みたいなハイエナ
今回は少し長いです。
最近改稿した時期は、2019年6月22日。
最初ら辺には、三人称視点になっています。
どこかの女神は呟きました。
「あっ、彼に配った魔力量について伝えてなかったでしたっけ? なろう小説の主人公でよくある破壊神レベルくらいだって・・・・・・下手したら国が滅ぶどころじゃないって・・・・・・まっ今度言っときますか」
舞台は変わり、傾度が緩やかで緑が豊かな山、その中腹には博物館が建てられていることで、国中有名でした。
なぜかその地域が今、雑草も木々も岩もびしょ濡れでした。
ところどころボールペンやらコタツやらゲームコントローラーなどを始めとした、異世界ファンタジーものではまずありえないであろう品々が、土にまみれで転がっています散らばっています。
一人の少女が、もう日が沈みかけている時間、獣道に生えてある木々の枝という枝を足場にして飛び移りながら、場違いな物体を、首を傾げながら見下ろしていました。まさしく物語出てくる忍者のように。
彼女は正確には人間・・・・・・ヒューマンではありません。
「落ちてますっすね沢山、おいらが見たことないものが。」
主語がおいらである少女は、次に細い木の幹めがけてキックし、柔軟に富んだ三角跳びで移動してました。
「いませんかね? 盗賊とか。かっさらいたいんっすけどね、そろそろ・・・・・・減っちまったな~、おいらの腹」
文章を構成する単語の本来の順番を逆にする技法・・・・・・倒置法をバンバン遠慮なしに使う彼女は、一旦一つの太い木の枝に着地(?)し、休憩します。
「あの人は? あら」
彼女は、仰向けで伸びている男を発見しました。
彼の体全体には泥がまみれていて、シャツの襟には茂みの枝が引っ掛かっていました。
目立った外傷は見当たりません。
しげしげと彼を見定めるようにした彼女は、舌なめずりをして妖しい笑顔を表し呟きます。
「アタックしようかなおいら、いい男じゃないっすか」
その時、彼の瞳は少しずつ開き出したのです。
※次の下段から、三人称視点から、虎威の一人称視点に変更致します。
「ん・・・・・・? ここはオレが住んでいる家の中じゃないな。どこだ? 外に昼寝でもしてたのか?」
微かに目が覚めたオレは、ゆっくり起き上がり、周りを見渡す。
どうやらここは山の奥深くらしい。広葉樹タイプの木々がところどころそびえ立っていて、まっ平らな場所など見当たらないような坂であったんだ。
「・・・・・そうか、異世界まで転移してきたんだったなオレ・・・・・・」
後ろ頭を掻き、平常そうに呟いたオレ・・・・・・実は内心滅茶苦茶心細く、錯乱しそうなのだが。
そして前オレが繰り出した、『浄魔』は、いつの間にか止んでいた。
そっか、はぐれてしまったんだな。
「カナネさん探さな・・・・・・」
視線と首を前に動かした時、見た。
「わかるっすね、近づけば近づくほど上物だなと、彼は、ふむふむ」
顎に手を添えている見知らぬ女の娘が、眼前至近距離にいた。地べたに座っていたオレに対し、彼女は高さを合わせるよう屈んでいたのだ。
というか顔と顔の距離が近っ!? 女の娘の息がオレの肌にぃ!!
「ぎゃっぎゃあああっあああああっ!!? だ、だっ誰だ、ああんたは!?」
絶叫するオレに対し、彼女は、
「しゃべってくださいよ、ちゃんと。それと アード です、おいらの名前のことっす」
アードと名乗った彼女の外見の特徴は、背が低い可愛い女の子だ。まさしくロリコンのロリコンによるロリコンに好まれそうな体型をしている。
それと、言葉の順番逆じゃないのか? ちゃんと、しゃべってくださいよ。
髪の毛は大半部分が灰色のロングだが、黒の縞模様が髪の毛中端にあり、毛先はクリーム色に染まってるように黄みがかっていた。
服装はボロの継ぎ接ぎだらけな布一式に、ボロいマフラーも身につけ、細い首華奢な足首手首には包帯を巻いていた。履物にはサンダル。
単色の膨らんだ風呂敷を、片肩で背負っていた。
なんか彼女の後ろに、木製の棒が見えるのだが、大剣の柄か何かだろうか・・・・・・?
それとどうやら、彼女は獣人とかの類らしい、アードの耳はケモミミで、猫の耳を細長くしたようなタイプであったんだ。時折ピクピク動いている。
オレは中端唖然としながらも、
「オレは虎威稲荷ってんだ、アード。ところで下半身が蜘蛛でできている紫髪の女性見なかったか? お姉さんタイプの・・・・・・」
「アラクネ族のことっすか? 知らないですよおいら」
「そっか・・・・・・、それじゃあオレはこれで失礼するよ。ん?」
立ち上がろうとするも・・・・・・なんか茂みの枝が、オレのシャツ首元に引っかかっている?
試しに風の魔法使って切るか。
「えいっ」
アードは木製の柄を掴んで引いて、大鞘から抜いたのは、無骨ででっかいノコギリだった!!
それを片手で振り下ろしっ!!!??
背後に衝撃を感じた。刃はオレには触れていないようだった、バキバキバキッ!! と、枝が切り落とされるのと金属音が聞こえる。
「取れましたよ、引っ掛かった枝」
ノコギリの柄を肩にのせながら、アードは何気なく呟いたのだった・・・・・・のこぎりの刃には、赤黒く染まっているシミみたいなの見えたけど??
「あ・・・・・・ありがとう」
なんとか感謝の言葉を絞り出したオレ。たぶん自分の繰り出した笑みは引き攣っているだろうな・・・・・・。
「やってないっすけどね大したこと、別に・・・・・・ん~」
なんか顎に人差し指を添えて考え事しているアードだけど・・・・・・嫌な予感がする。
「恩返ししたいならあんた、協力してくれないっすかね? おいらと」
「きょ・・・・・・協力? 何を・・・・・・」
そしてヤツは呟いた。本当に何気もなく。
「子作り」
「なっ・・・・・・」
何を言っているんだこの娘はっ!!?
だが落ち着け自分!!
「い、いやせっかくの誘い、嬉しいんだけどさ、オレにはカナネさんという恋人がいてだな・・・・・・」
だが、その程度の言い訳ごとき、この世界では通用しないらしく。
「認められてますよ? 一夫多妻に一妻多夫制、ウェーデンス国ではね」
「うっ・・・・・・」
「タイプじゃないんですか? おいらのこと。嫌いですか? おいらっ娘」
いやもろタイプです、おいらっ娘のとこは別として!! 美少女だよあんた!!
「で・・・・・・でもまだ出会ったばかりじゃ・・・・・・」
「あ~も~煮えきってませんねぇ~、童貞はこれだから・・・・・・襲っちゃいましょうか!! いっそのことこれから」
そうアードはとんでもないことを言って、ジリジリと少しずつこちらに近づく。
もはやこのまま童貞を卒業でもしようかとオレが諦め出し、心臓をバクバク鳴らし、顔も熱くなるタイミングで・・・・・・。
「クカカカカッ! エロいん時に邪魔するがよ~、こちらも襲撃して良いのかね~?」
オレの背後から、野太い声が聞こえたのだ。
何だよこんな時に!!?
最初は放射線使いのジルコニーが、声変えて話しかけてきたのかと思ったのだが、違った。
後ろを振り向く・・・・・・そこには怪物の集団がいた。
緑色の肌に、尖った耳、長い鼻が特徴的な背がとても低い人型モンスター・・・・・・そう、ゴブリンだ。
テンプレノベルはそんなに詳しくはないが、オレは奴らの種族をそう把握する。
オレの側にいるアードは、オレを庇うように一歩前にのり出し、大きい例のノコギリを構えだしたんだ。
あ、やっぱり彼女は獣人だ・・・・・・おし・・・・・・コホンっ臀部ら辺に、淡い黄色いしっぽがあって、その毛先には、黒く染まっているのが見えた。
上下左右に揺れている。
各々ゴブリン達は、アードと負けないくらいボロい皮の服を身に着け、錆びた斧やら剣やらを得物にしている。
「喋れるのか・・・・・・」
「ホギャッゴギャリグガギガホグァアッ!!」
は? 先頭にいるゴブリンがいきなり変なこと言い出した。しっかり人語を操れるんじゃなかったの?
「グゲバギガゴッ・・・・・・とか外国やら異世界やらのイメージ通りに喚いてほしかったんかな~? あんた外国人? 他には、下品で粗野だってのあるし、そこら辺は確かに合ってるんだがよぉ」
そのゴブリン達は次に、こちらに向けて急接近し、言った。
「頭悪いってイメージは違うんだよな~!! ずる賢いんだよ儂らはっ!!!」
「あ!! 後ろ! トライさん」
トライ・・・・・・あっ虎威のことか! 後ろを振り向けば、茂みの影から刃物を持ったゴブリンが二体、こちらに向かって突撃してくるのがわかった。
「わっ!! 浄魔!!」
慌てて水魔術を発動する・・・・・・今度は暴走せず、両手から放たれた水の弾丸は、二体のゴブリンを吹き飛ばし、木の幹に叩きつけたのだ。奴らはどうやら気絶したらしい。
「ありがとうアード、よくわかっ・・・・・・」
彼女の方まで視線の位置を戻した時、オレの眼前に赤い飛沫が舞った。
アードが、でかいノコギリを剣のように使い、歯向かってくるゴブリン達をどんどん引き裂いていく・・・・・・。
どこにそんな筋力あるの!? その華奢な体に!!
よく眺めると、敵の肌にノコギリの刃が喰い込んでいるタイミングで・・・・・・アードは、ノコギリそのものの特性を活かすよう・・・・・・えっぐいな、上下又は左右に押したり引いたりして、腕やら脚やらいろんな部位を斬り落とす。とても素早く手際が良かったのだ・・・・・・。
うわっ!? ゴブリンの切断された腹やら目玉が宙を・・・・・・グロ!!
「ん~? かすかに響いた木の葉の踏む音がね、聞こえたからわかったんすよ背後から、さっき。トライさん」
返答したアードは、通常運転のように無表情で、そのまま倒れてうめいているゴブリン一体に、ノコギリを突き立てとどめを刺し・・・・・・うげぇっ!! 噴水みたい噴水・・・・・・血が!!
グロイの苦手なんだよぉ!! やったことあるテレビゲームも全部が全年齢対象とR12のばっかりだったんだからオレ。
「ひっ退け退けっ!!」
先程オレと話したと思しきゴブリンが、慌てて片手を横に振るジェスチャーをしながら叫んだのだ。
奴らの人員も、最初にオレ達と出会った時から今、半数以下まで減っている。
「もう終わり?」
ノコギリの持ち手を肩にのせ、空いている手を腰に添えているアードは、つまんなさそうに呟き、逃げるゴブリン達を見送っていた・・・・・・まさか殺人快楽者とかじゃないだろうな、あいつ?
「・・・・・・うぷっ」
いきなり吐きそうになった。
周りを見渡せば、やられたゴブリン達の血痕やら臓物とかが散らばっており、生臭い匂いが溢れかえる。
・・・・・・斬り落とされた頭の近くにあるあのピンク色の物体あるけど、もしかして・・・・・・。
「おいあんたらぁっ!! ぎゃははははっ!!」
遠くまで避難したゴブリンの一人が、こちらに向けて雄叫びを上げたのだ・・・・・・何だ?
「忘れてねえかぁあっ!? ゴブリンは狡賢いってよぉおっ!!!」
あ?
「足元です!! トライさん!!」
アードは慌ててオレのシャツの裾を引っ張っている。足元?
え、あっ? ええっ!!? なんか地面に散らばっているヤツらの死体から光が放って・・・・・・!?
「ぎゃははははっは~思ってなかっただろお、下っ端には役立たずになったら・・・・・・」
閃光が周りの色を白一色に染め、直後に莫大な音が木や地面に反響した。
「自爆する術を儂が施したんだよばかめぇっ!!」
黒く燻す爆炎を、風で吹き飛ばした後。
「これで奴らは木っ端微z。・・・・・・はっ?」
ご覧下さりありがとうございました。