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なろうテンプレを装ったなろうテンプレでないチーレム小説  作者: 大錦蔵
ジャンクフード店~首都『トックホルムス』
20/23

短編集① カナネ アード

 長々と投稿期間を開けてしまって申し訳ございません。

 カナネの弓は、イナリに預けています。

 今回の語り手をイナリにします。

 〇:時間帯 ●:場所

 ①カナネ

 〇ネクロがイナリのパーティーに入った後

 ●人気のない森林公園


 「そういえば、さっき鍛冶屋でカナネさんが、特殊な機能がある矢を大量に購入してましたよね?

 例の機能について、オレ詳しく聞きたいんですけど・・・・・・」

 みんなで宿屋に戻ろうとする時、どうしても気になることをオレは彼女に尋ねる。


 「ああそうか、確かにまだ説明してなかったな。このマークを見てくれ」

 カナネさんが新品の矢の束を商品袋から取り出し、複数種類あるうちの一束の矢についている羽を、オレ達に見せてくる。

 それの色は、紫と白の縞模様だ。


 「口で説明するより見せた方が早いな。イナリ、悪いが『共同ヂョイント空間スペース』から弓を取り出してくれないか?」

 カナネさんの頼みに、オレは異空間の収納スペースから一つの弓を魔法で手元に取り寄せ、彼女に返す。


 「撃つっすか!? もしかして! 街中で弓矢飛ばしたら怒られますよ! 役人さんに!」


 「ふっ・・・・・・アード グーラー。その心配は必要ないんだけど? なぜならこの騎士であるボクが、特別に許可してやるからなんだよ」

 (ふふふふふ・・・・・・)


 「『バカだねカナネ タランマ。このスパイの前で腕前を披露するなんて、自分の手の内をわざと見せびらかすことと同じなんだよ!』って考えている顔だなお前」


 「なっ! そんなこと絶対ないんだよガルム エーリューズニル!!」


 「まぁネクロさん。声がうわずって冷や汗も滝のようにおかきになられますけれども、お体大丈夫でございましょうか・・・・・・」


 「あの、用意はもうできてるのだが、撃っていいか?」


 「ああカナネさん! ネクロの頭部を狙っちゃダメなんだって! 彼女は内通が仕事なんだから許してやってくれ!!」


 「お人好し・・・・・・自分がまくし立てる内容が少しおかしいことに、自覚してねぇのか?

 まあでも財布がどんくらい役に立つのか見てみたいってのも確かなんだけどよ・・・・・・って、なんで矢先をこっちに向けてんだバカやろぉ!!」


 「ところでどちらに向けて射るのでございましょうか・・・・・・周囲に人が見当たらない場所ではあるのですが、一応ここは遊歩道らしいので」


 「ああ、あの木の実だ」

 カナネさんが指で示す先には、なんか食欲が削げるような気色悪い斑点がある洋ナシ似の実が、遠い木の枝にぶら下がってある。

 指した場所には人なんか通らないだろう獣道だ。


 「すこし下がってくれないか?」

 オレ達が、カナネさんから軽く離れたタイミングで、彼女は流れるように弓を構え、狙いを定め、矢羽根ごと弦を引き、本当に瞬時とも言える早さで矢を飛ばした。

 素人目からでもわかる。必ず命中するな。

 まさしくプロの動きだ・・・・・・見事の一言。


 そして・・・・・・。


 「やべぇっ! トックホルムス同盟緊急会議あるの思い出した!! 遅刻遅刻っ!」

 矢の軌道先に重なるよう、横からタイガが食パンを咥えたまま走って来て、すぐにそれが彼と当たってしまったのだっ!?

 目にも止まらない程の速度を持った矢が、タイガの頬に跳ね返り、力なく落ちる。

 鋭利な鏃におもいっきり触れたはずなのに、意にもかえさない彼は草むらの中を猛進する。


 『・・・・・・・・・・・・』

 しばらくオレ達は、駆けて去っていくタイガの背中をただただ黙って見送るしかできなかった。


 つまらなそうにアードは呟く。

 「当たらないんですか、なんだ」


 「アード、さっきのはノーカウントだろ! 事故だよ事故! 

 あとタイガ、矢の刃に当たったのに怪我とか大丈夫なのか!?」


 「確かに心配だ。例の矢先の金属は、瞬時に生物の神経を麻痺させる毒性を持っているぞ」


 「まあ、それはすぐにでも彼を引き留めなければいけないのでございますよ」


 「いやあの魔族は大丈夫だと思うんだけど。ただでさえ彼はタフだし、普通の生物に効く毒物は効果無いんだよ?

 まあでもかわりにに要生風さんそが彼にとっては猛毒だけど」


 「・・・・・・私の射撃は、通常の鏃で岩をも突き刺さる程の威力があるはずなのだが・・・・・・?」

 

 落ち込むカナネさんだが、すぐに再挑戦する。

 先程よりもしっかり狙いを定め、周りに邪魔をするものがないか調べた後、二発目の矢を撃つ!

 今度こそ命中する・・・・・・そう思ったのに・・・・・・。


 いきなり標的である果物の手前に、虚空から、宙に浮いている一つの影が現れた!?


 「ぐはっ!?」

 例の矢は、的である果物の代わりに、奴のわき腹に刺さってしまったのだ!

 あっけなく地に落ちる。


 「な、何が起こっている!?」


 「うっぅ・・・・・・いきなりなんなんだ? ボクちん、王都内で敵襲でも受けたのかい・・・・・・?」 

 草むらに倒れた影は実は・・・・・・冒険者のブルーサワーだった。

 すぐにガルムが急いで駆け寄り、矢を抜いて鉄パイプで殴って治癒させる。


 アード以外のオレ達も、弱っている彼に集まる。

 このタイミングでネクロが、落ちている矢を拾って、カナネさんに渡した。

 

 紫音が質問。

 「なぜあなたはいきなりここに現れたのでございましょうか・・・・・・高速で移動したようにも見えませんでしたし・・・・・・」


 震えた声で、なんとかブルーサワーが答える。

 「さっきルミたんの魔法で・・・・・・、オレを空間移動能力者テレポーターにしてもらったんだ。テレポートで移動したら、なぜか矢がボクちんに突き刺さって・・・・・・」


 「すまない、私のせいだ・・・・・・なんと詫びればいいか・・・・・・」


 「カ・・・・・・カナネちゃんが撃った・・・・・・矢?」

 ブルーサワーが、悲しんでいるカナネさんを見上げて、

 「美少女の攻撃頂きました・・・・・・ごちそうさまです。ぐふっ!」

 表情を、安らかなほほ笑みに変え、満足そうにその目を閉じたのだ。


 「ブ・・・・・・ブルーサワーぁあああぁああああああああああっ!!」

 オレの慟哭は、天高く轟いた。


 「いたいたそこにいたのか。さっさと宿屋に戻るぞ」

 こちらの騒ぎに気付いたのか、赤髪剣士のブリュンヒルドが寄ってくる。

 ガルムがいままでの経緯をブリュンヒルドに話した後、彼女がブルーサワーを回収した。


 とりあえず元の道まで戻るオレ達。

 三度、カナネさんが挑戦する。


 「やめましょうよ、もう。眠たくなってきましたよ、おいら」

 両手を後ろ頭に回し、片足をぶらぶらして無遠慮に欠伸も出すアード。


 「いやいやまだだっ! もうここまできたら、退けない!」


 「いや諦めろよ。なんか今日無理なような気がすんだけどな」


 カナネさんが自棄やけ気味に弦を引っ張り、その手を離した瞬間・・・・・・。

 地に転がった・・・・・・通常時では、猛スピードで発射されるはずである矢が・・・・・・。

 手から離れた弦も、未だに曲がったままだ。元に戻ろうとはしていない。


 「『天使エンジェル悪戯ミスチフ』っ!! 世界中の弾性の法則が狂ったのか?

よりにもよってこんなタイミングで・・・・・・!」


 「カ、カナネさん、もう今日は帰りましょうよ・・・・・・」


 「うぅっ・・・・・・わかった。イナリ」

 しょげて猫背になっているカナネさんと共に、オレ達はこの場から離れようとした瞬間・・・・・・。


 『ズドンッ!!』

 ここの近くから、なにか激しい爆音が響いたっ!

 まるでオレがまだ地球にいたころによく聞いた、テレビから発される銃の発砲音のような・・・・・・。


 「おい倒置猫・・・・・・臭わねえか?」


 「ええ火薬ですね。焦げ臭い・・・・・・」


 音が出た方に視線を向けると、そこにはたしか見覚えのある人がいた。

 サマーセーターとタイトスカートを着用している女性。

 地球の文化を取り扱っている博物館で受付の仕事をしていた人だ。

 彼女は片手に・・・・・・当たり前のように拳銃を持っているな・・・・・・。

 もはや中世西洋みたいな世界観を、この国で求めること事体無理があるのかもしれない・・・・・・。

 

 銃口先には、例の果物が見えた・・・・・・ただし下部分が破裂したものだが・・・・・・。


 彼女は銃口を空に向けて、筒から溢れる硝煙を吹き消した後、こちらにウィンクして呟く。


 「今は弓矢ではなく・・・・・・銃の時代よ?」



 ②アード

 〇ネクロがイナリのパーティーに入った後

 ●路地裏


 「なんだよアード・・・・・・こんな人気のないところまで連れ出して・・・・・・」

 他のみんな【カナネさんは地べたに座っている】がベンチで休んでいる時、アードがオレを、人気の無さそうな路地裏まで手を引っ張ってくる。


 「我慢できないっすよ、オイラ。やるっすよ? 恋人らしいことをね」

 

 「恋人らしいこと・・・・・・?」


 オレが首を傾げていると、アードがなんでもないような表情で、とんでもないことを口にした。


 「するっすよ。キスを」


 「はぁああああっ!? な、な、な、何を言っているのだ君はっ!!」


 「おかしいですか? 恋人同士がチューをすることに・・・・・・」

 確かに一応形式上では、アードはオレのハーレムの一員だが。


 「いや、でもあの・・・・・・」

 しどろもどろするオレだが、内心では、キスしたいのだ。美少女と。


 「ま、まあ女性に慣れるために練習しても良いかな~なんて・・・・・・ところでどこにキスをすればいいんだ? ほっぺか? おでこか? それともアードからするのか」


 「はぁ・・・・・・これだから童貞は・・・・・・口と口ですよ、もちろん」


 何だとっ!! と驚くオレに、アードは追い打ちをかけてきた!


 「あ、ディープキスですよ、それと。絡ませるんですよ、舌と舌をね」


 「いやいきなりハードル高すぎなんだけどっ!?」


 「ああ忘れるところでしたね、そう言えば。口に含んでください、これの中身をね」

 そう言ったアードは、黒い液体が入った小さいガラス瓶をこちらに渡してくる。


 「なんだこれは・・・・・・」 

 

 「間違っても飲まないでくださいね、くれぐれも。」


 オレは怪訝になりながらも、彼女の言う通り、その瓶に入っている物を口に入れる。


 「ぶっ! しょっぱい!?」

 いきなり刺激の強い味を感じ、オレは驚いて誤って例の液体を飲み干してしまった!

 ・・・・・・なんかそれ・・・・・・かなり覚えのある味がしたんだが・・・・・・。


 「ああ、何やってるっすかっ!?」

 驚愕と悲哀の表情をするアード。

 「せっかく味わえると思ったのに!! 醤油で味付けしたイナリさんのタンを!!」

 

 「こんなことだろうと思ったよ!!」

 うわっ危ねぇ・・・・・・もし醤油を口に含んだままアードと大人のキスしたら、自分の舌を食いちぎられるところだった・・・・・・。


 「うう・・・・・・まぁしょうがないっすよね。飲み込んでしまったものは。

 では次は、これを口に含んでください」

 すぐに立ち直ったアードは、オレに、弾痕のついた斑点柄の果物を渡してくる。


 「楽しみっすね~、果汁で味付けされた舌は。

 さあキス再開っすよ~」

 


 「するかぼけぇええええぇえええええええええええっっっ!!」

   


 弾性変質の『天使の悪戯』は、カナネが三発目の矢を放した後に、無事治まりました。

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