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召喚されたのは幼女でした。  作者: 秋野 錦


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17話 ロリコンは立派な犯罪だよ?

 人の噂も七十五日。

 じっと耐えてればいつしか噂も止むだろうと思っていたが、改めて考えるまでもなく七十五日は長すぎる。この狭い学園という世界ではそれだけあれば良い晒し者だ。精神強度が鋼並みの俺じゃなきゃ登校拒否しちゃうね。

 まあ、特に仲良くしている友人なんかもいないし好きに言ってくれって感じだ。別に悪いことをしているわけじゃないし。


「いや、ルイス。ロリコンは立派な犯罪だよ?」


「何でですか。別に手を出さなければ良い話でしょ。別に俺はロリコンじゃないですけど」


「……その発想がすでに危ない」


 日は流れて、マクレガー先生の研究室にて俺たちはいつものように研究に勤しんでいた。今回は珍しく先生の招集により、俺とティナは新型魔法陣の開発を手伝っていた。

 すでに術式も組み込まれた後のようで、俺たちに頼まれたのは構築に漏れがないかの確認……ようはデバック作業だ。特に神経を使う作業でもないので、俺たちはいつものように駄弁りながら作業を続けていた。


「そうは言うけどよ、どんな人間にも好きな動物くらいいるだろ? それで動物性愛(ズーフィリア)とか言われたらどう思う? とんでもなく心外だろ?」


「私はルイス性愛(フィリア)


「誰もお前の性癖なんか聞いてねえ」


 相変わらず話の通じないティアだった。


「ふーむ。確かにロリコンの主張としてはなかなか見事な返しですね。温めていましたか?」


「まず俺がロリコンだという前提をやめやがれください」


「そうは言うけど、ここ数日の君はどうみても……」


 先生が何かを言いかけた、その瞬間のことだった。

 部屋の奥で、ドサドサドサッ! と何かが崩れる音がした。

 そして、同時にリリィのものと思われる「ふえええぇぇぇっ!」という悲鳴も。


「リリィッ!? どうした!? 無事か!?」


「い、痛いぃ……」


「くそっ、本棚から本が落ちてきたのか……当たったところを見せてみろ」


 額を抑えるリリィの手をそっとどかせる。

 コブにはなっていないが、赤く腫れてしまっている。ああ、可哀想に。


「痛いか? 痛いよな。悪かったな、俺が目を離したばっかりに……よし、じっとしてろよ」


 俺は即座に魔粒子を流し込み、詠唱を開始する。


「《清廉なる水精よ、我が呼び声に応え、彼の者に祝福を》」


 水系統の初級魔術、『水蓮』。対象の自然治癒力を増すこの魔術はこういった小さな怪我には最適な魔術だ。この時、俺は自らが水系統の魔術師で良かったと心から思った。


「そんな怪我とも言えない怪我に魔術を使うなんて……どんだけ過保護なんですか」


「うるさいですよ。元はといえば先生がきちんと部屋の整頓をしていないのが悪いんでしょうが」


「いや、まあ、それはそうですけど」


「ったく……リリィ? 他に痛いところとかはないか?」


「うん……もう大丈夫」


「リリィ……」


 水蓮は自然治癒力を増す魔術だが、すぐに効果が現れるようなものではない。恐らくまだ痛いだろうに、気丈に振舞うリリィに涙を誘われるようだった。


「……どこからどう見てもロリコン」


「子供の無事を心配することのどこがロリコンだっ!」


 ったく、コイツら何も分かっちゃいねえな。


「良いか、お前ら。リリィは毎朝俺を起こしに来てくれるんだ」


「……? それが?」


「それに毎朝俺のために朝食を作ってくれるんだ。一日の始まりは朝食からってな。一人だと面倒で抜くことも多かった俺の食生活をリリィは改善してくれたんだ」


「……だから?」


「しかも俺が忙しい時は代わりに部屋の掃除とか洗濯を変わってくれる。文句の一つも言わずな。この歳でなかなか出来ることじゃねえぜ」


「…………」


「最近は字の読み書きも練習し初めてな。その理由が分かるか?」


「…………」


「もっとルイスの役に立てるように、だってよ。俺はそれを聞いた時、涙が出そうになったね。こんな健気な子が他にいるか? こんだけしてくれるリリィに何も返さないなんて人として間違ってるだろ。だから今後俺のことをロリコンとかふざけた呼び名で……」


「……ルイス」


「何だよ。話の腰を折るなよ」


「もう何も言わないで良い。何も……」


「は? 何言ってんだよ。リリィの良いところはまだまだこれから……」


「……もう十分分かった。ルイスは……ロリコン」


「はぁっ!? ティナ、お前さっきの話を聞いていたのか!? ったく、しっかりしてくれよ。仕方ないからもう一度最初から……」


「もういいですからっ! ルイス、手伝わないなら出て行きなさい!」


「なっ! まだ、話は途中……って、マジで追い出すつもりですかっ! ちょっ、まっ! あああああ!」


 押し込まれるように強引に研究室から追い出される俺。

 解せぬ。

 追い出された俺はそのままどうして追い出されたのかも分からぬまま帰路につくのだった。

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