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召喚されたのは幼女でした。  作者: 秋野 錦


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16話 大きすぎる代償

「おい、聞いたかよ。あのルイスが最近、幼女を部屋に連れ込んでるって噂」


「あー、それ私も聞いたよ。いっつも連れてるあの金髪の子でしょ? 平民ってそういう趣味があるのかしらねー」


「そういう人達をなんていうんだったかしら? 確かロリコ……」


「……おい」


「「「!?」」」


 俺が教室に入ろうとすると、その前で三人の生徒が聞き捨てならない話をしているのが聞こえてきたので割って入ると、途端に三人は微妙な顔で俺を迎えた。


「あ、ははっ……お、おはよう」


「……あんまり人のことであることないこと噂するのは良くないと思うぞ」


「そ、そうだよねー! うん、私もそう思う!」


 とは言いつつ、その女生徒の視線は俺の影に隠れるようにしているリリィに注がれていた。そして、俺を見る目はまるで未確認生物を見るかのような視線。

 一言で言えばドン引きしていた。


「……はあ。もういい、どいてくれ」


 ここで弁明しても無駄と悟った俺は脇を通り抜けるようにして教室に入る。

 すると、そこでもクラス中の視線がこちらに集まるのが分かった。そして、同時にひそひそと話し始めるクラスメイト達。もう少し分かりにくいように噂してくれませんかねえ。


「ルイス、注目されてる?」


「ああ。まあ、仕方ねえ」


 何せ、表向きには正式にリリィを眷属としたことになっているのだから。

 もしも俺が客観的にその事実を知ったならこう思うだろう。


 うわっ……こいつロリコンかよ、と。

 だからある意味、この注目は仕方ないこと。だが、分かっていても我慢できないこともある。


「うわあ、こっち睨んでるわよ。あの目は人を殺したことがある人の目ね。ゼッタイ(ひそひそ)」


「やっぱり幼い子以外には興味がないのかしら(ひそひそ)」


「きっと幼女にだけ甘い顔してるのよ。間違いないわ(ひそひそ)」


 周囲にガンを飛ばしながら席へと向かうと、そんな囁き声まで聞こえてくる始末。くそっ……出来ることなら今すぐ否定したいが、口で言っても信じてくれるわけねえしな。一体どうすればいいんだよ。


「お、落ち込まないでっ! リリィがついてるから!」


「ああ、ありがとな。リリィ」


「まあ、もうすっかり手懐けてるみたいね(ひそひそ)」


「きっと夜もああやって従えてるのだわ……不潔よ(ひそひそ)」


 ぐっ……噂されるのは慣れてるが、こういう誤解のされ方は癪に触る。

 今、喋った奴覚えてろよ。俺の絶対許さない奴リスト──絶許リストに加えてやる。


 結局、その日は訂正することも出来ず時が流れていくのだった。

 しかし……この時、事態はすでに手遅れなほどに進行してしまっていた。

 次の日も、その次の日も俺が学園に行くと周囲の人間が俺を見て噂しているのが分かった。というより日に日にその数が増えている気がする。

 まずい……これは非常にまずい事態だ。


「おい、リリィ。もう少し離れて歩け」


「え……?」


「さっきから噂されてるだろ。べたべたしてるとロリ……仲が良いと思われる」


 一応は言葉を選んで伝えたのだが、どうやら逆効果だったらしい。

 思わずぎょっとするような表情でリリィは涙を堪えていたからだ。


「る、ルイスはリリィのこと……嫌い?」


 ぐはっ……だ、駄目だ。そんなつぶらな瞳で見られたら……拒絶なんて出来るわけがないっ!


「そ、そんなわけないだろっ。ほらっ、好きなだけくっつけ」


「うんっ!」


 さっきの絶望を宿した瞳から一転、ぱあぁぁと向日葵のような笑顔を浮かべるリリィ。うん。やっぱり、リリィには笑顔が一番似合うな。可愛い。


「校内でまであんなにべたべたして……どうせなら家に帰ってからすればいいのに(ひそひそ)」


「きっと見せ付けているんですわ。全く何の自慢にもならないどころか、恥を晒しているだけですのに……哀れですわね(ひそひそ)」


 その代償としてどうやら俺の評価は最早取り返しが利かないほど落ち込んでいるようだが……後悔はない。俺はリリィの笑顔が守れるのなら、それで。


「? ルイス、もしかして泣いてるの?」


「違う。これは……汗だ」


「でもはっきり目から……」


「汗だ」


 男には強がらなくてはならない時がある。

 先生が言っていた言葉の意味が、少しだけ分かったような気がした。

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