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01 ゲーム神

すみません。

ゲーム世界はまだでした。


●これまでのあらすじ


ゲームおよびミリオタの36歳、大谷吉続は、大好きな某社の戦国シミュレーションをこれまた某社の発売前の家庭用最新ゲーム機でやるため、某世界最大手の通販サイトで予約した。

しかし、その通販サイトから発売当日に入手出来ないとの連絡があり、やむなく秋葉原を駆けずり回り、外国人と思しき者が経営する怪しいショップで何とか入手することが出来た。

帰宅して速攻で始めたゲームは、大谷の期待する以上に痒いところに手が届く素晴らしい出来映えで、時が経つのも忘れるほど没頭する。

だが、長時間VRゴーグルでゲームをしていたため、平衡感覚を失い、散らかった部屋で転倒してしまう。

転んだ先にカラーボックスがあり、あろうことかその角に首筋をぶつけそのまま意識を失ってしまった。

 気がつくと、目を開けているのに真っ暗な世界にいた。

 どれほどの時間経ったのか分からない。

 ここがどこかも分からないが、暗い中に1箇所光り輝いている場所がある。

 廻りは真っ暗で何も見えないので、とりあえず光の方へと歩いて行く。

 身体は何やらフワフワと浮いているような感覚である。

 ただ、地面は一応あるようなので、何処かに落ちるということは無いようだ。

 光が次第に近づいてくる。

 近づくにつれ、光が四角い形をしていることに気づく。

 ちょうどテレビの画面のような感じだ。

 すぐ側まで近寄ってみて、ますますテレビの画面と同じだと思った。

 ちょうど俺が持ってる40型の液晶テレビと同じくらいだ。

 だが、それはテレビでは無かった。

 その四角い枠の向こうに部屋があって、誰か女の人がこちらに向かって座っているようだ。

 つまり窓だな。

 だが、その窓にはガラスもなく、手を延ばしたら向こう側に入れそうだ。

 仕方ない、行ってみるか。

 40型と言うと結構大きそうに見えるが、大人の男が通り抜けようとすると結構大変である。

 片足を向こう側に出して、頭を思いっきり屈めて枠をくぐる。

 どうにか残った足も引っ張りあげ、光りの溢れる部屋の中に入れた。

 そして、先ほどからこちらの様子をずっと眺めている女の人に向き直り、挨拶をすることにした。


 「や、やあ、どうも」

 「ようこそいらっしゃいました」


 その女性は微笑みながら、こちらのことを見ているような見ていないような雰囲気で応えた。

 ん?この人どっかで会ったような気がするな。


 「大谷吉続さん、どうぞお掛けください」


 見ればいつの間にか目の前に椅子があった。

 あれ?さっきまで無かったような気がするが…。

 ともかく事情が分からないので言われた通りにする。


 「今からあなたの身の上に起きたことを、そこの窓を通してご覧頂きます」

 「身の上?」


 向かい合わせに座っていたはずなのに、今はなぜかこの女性と並んで座っている。

 そして、窓と呼ばれたそれはまさしく、テレビそのものであった。

 そう、俺の部屋にあったあの台湾製のテレビである。

 ちゃんとメーカーの名前も入っている。

 驚くべきはそこに映っているモノだった。

 VRゴーグルをかけた、先ほどまでの俺が、戦国の野望をやっている最中の状況が、テレビの中から見ているかのように映し出されている。

 そして、コントローラーを置いてゴーグルを外すと、周りをきょろきょろと見回し、「うわ、夜だよ」と独り言を言っている。

 自分で、独り言を言っている意識は無かったな。

 そして立ち上がり、足もとにあったゲーステに同梱してあったイーサネットケーブルのコネクターを踏んづけた。

 そして、ケンケンをしながらゲーステ5の電源ケーブルに足を取られ、後ろ向きに倒れる。

 倒れた先にあったのが、本がギッシリ詰まったカラーボックスである。

 その鋭角な角に首筋をぶつけ、グシャリと音がした。

 間違いない、延髄を挫傷してしまったようだ。

 俺はしばらく、頭が、いや心が現実を受け止められないでいた。

 たっぷり2分は、無言のまま動けずにいた。


 「俺、死んだん?」


 やっと喋れたのがその言葉だけであった。

 それに対し、横の女性はゆっくりと返事をする。


 「そうです。残念ながら」

 「うっわ〜〜……」

 「あなたが亡くなって既に8時間が経っていますが、未だ誰もあなたの死に気づいていません」

 「うわ〜…死んだんか…」

 「ショックでしょうけれど、これは現実です」

 「そっかぁ…死んだかぁ」


 まあ、死んだんなら仕方がないと、ようやく心が諦めを感じはじめた頃、同時に色々な疑問がわき上がってくる。

 そして、最も素朴な質問が口を突いて出た。


 「それで…ここどこ?」

 「まあ、分かりやすく言えば、死後の世界です」

 「天国?地獄?」

 「えーと、最近はそういう二元論的な区分けは、人権を侵害するとして廃止になってまして、ちょっと説明が難しいのですが…」

 「あっ!思い出した!あんた、あの秋葉の怪しい店で俺にゲーム機売ってくれた人だよね」

 「あ…まあ、そうなんですけど…」

 「じゃあんた神様か?」

 「そ、そうとも言えますねぇ」

 「はぁ〜、じゃ俺、神様に見込まれちゃったんだな」

 「えーと、まあ、言いにくいのですが、あなたのあまりの運の無さに、見かねてちょっと救いの手を差し延べたら余計に寿命を縮めてしまったというか…」

 「ちょっと待って、じゃあ俺が死んだのはあんたにも責任が有るってこと?」

 「はあ、まあ、そう言えなくも無いかなぁって…」

 「え〜何それ!」

 「いや、私はね、あなたがこれまで良いことが何も無くて、人生を悲観して自殺とかしないで欲しいなぁと思って、ちょっとラッキーな思いをしたら、この先も希望を持って生きてもらえるかなぁって思ったんですよ。でもまさかこんな死に方するなんて、ねえっ!」

 「ねぇっ!じゃねーわ」

 「ごめんなさいっ!悪気は無いんです!」


 何だ?こいつ。

 神とかホントか?

 そんなことも予見できない神なんて居るんだろうか。

 そもそも神が土下座とかしないだろ普通。

 こいつは神じゃ無い、神以外の何かだ。

 まあしかし、ゲーステ5が手に入ったのはホントに嬉しかったし、5時間も没頭するくらい楽しんだ訳だからな。

 こいつに全責任をおっかぶせるのは間違ってるな。


 「いや、あんたは謝らなくて良いですよ」

 「はい?」

 「あんたのおかげで、楽しい思いできたのは確かだし、感謝してるって方が大きい」

 「…そ、そうよねぇ、ありがたかったでしょう?」

 「ただし、あんたが神だとは思えねぇな」

 「ど、ど、どーしてよ!」

 「いや、これくらいのことで口とんがらかして突っかかって来るとことか、神らしくない」

 「……」

 「ホントにここは死後の世界?」

 「それは、キッパリと言い切れます。あなたは死にました」

 「そこは言っちゃうんだ」


 まあ、なかなか面白いねーちゃんではあるが、ここが仮に死後の世界だとして、今後どうなるのだろうか。

 さっき何か説明しかけてたようだから、一応きちんと聞いてやるか。


 「俺が死んだってのは分かった。で、これからどうなるんだ?」

 「あなたは、また、どこかずっと先の時代で生まれ変わり、新たな人生を歩み始めます」

 「ああ、輪廻転生ってやつだな」

 「はい、ただし、この世に強い未練を残して無くなった方は、その未練を実現していただく形で、次の人生が始まるまでの間、過ごしていただきます」

 「ん?頭打ったから、頭が悪くなったのか良く理解できんかったが」

 「えー、ぶっちゃけた話し、女性に未練があった方は、もう飽きるほど女性とやり合っていただくというか、やり放題というか…」

 「いや、なかなかあんたみたいな人からそういうセリフ聞くのは、気恥ずかしいもんだな」

 「止めてくださいよぉ!こっちだって恥ずかしいんですっ!」

 「えーとつまり、金儲けしたかったヤツは、金がザックザクの世界に行けて、アニメ大好き人間はアニメの世界に行けるってか?」

 「えぇ、そんな感じです」

 「そんな感じって、ずいぶんザックリした説明だな」

 「昔は地獄と天国に別れてて、善行を積んだ人はこっち、悪行を重ねた者はこっちってやってたんですけど、善行積む人が全くいなくなっちゃって、意味が無いってことで、それならやり足らなかったこと、もう十分って思うくらいやらしたら良いんじゃないかって話になりまして」

 「地獄ってのは、要は罰を与えてたわけでしょ?悪行に対する」

 「ええ、要するに更正機関だったわけですが、罰では人は治らないと言うことがハッキリしましたので、だったら逆に飽きるほどやらしたら、むしろそっちへ行かなくなるのではと考えたんですね、神様が」

 「あ、今神様って言ったね」

 「あ…」

 「つまりあんたは神じゃない」


 なんだ?

 頭抱えてしまったな。

 なんか、からかいたくなるねぇこういう人は。


 「まあ、あんたの話は何となく分かったよ」

 「そ、そうですか?分かっていただけました?」

 「だが、あんたが何者かはさっぱり分からないな」

 「あ〜」

 「何となくだが、俺はゲームが好きで、ゲームのせいで死んだから、ここに呼ばれてきたと思うんだがどうだろう?」

 「そっ!そーなんですよ!」

 「で、あんたはゲームの世界をつかさどる何か、だな」

 「何かじゃなくて、神なんですっ!」

 「それはあり得ないな、こんな神ダメすぎるでしょ」

 「失礼なっ!!」

 「わかった!」

 「えっ?」

 「あんた、チュートリアルさんでしょ」

 「はぁ?」

 「ゲームの説明に、本編中でもちょくちょく入り込んでくる」

 「いやいや、違いますから」

 「普通ゲームの神様って言ったら、ドラ○ンク○スト作った堀○雄○さんとか、スー○ーマ○オ作った宮○茂さんとか、よく言われるじゃない。そういう人とあんたは同列だと言うこと?」

 「違いますぅ、私はあくまでゲームの世界を司る…神様。あの方たちはあくまで人間、私は神様」


 なんかおもしれぇ娘だな。

 まあ、何となく言わんとすることは分かったよ。

 ラノベでも、やたら転生モノばかりあると思ったら、こういう世界があることを、見据えてのことだったんだな。


 「それで、ゲームの世界を司る何かさんは、何をしてくれるわけ?」

 「神様です!」

 「はいはい、で?」

 「あなたの好きなゲームの世界で、人生を全うしてもらいます」

 「あー、死ぬまでゲームしてろと」

 「そうです、あれっ?」

 「それってこれまでと変わんなくね?」

 「あーそうじゃ無くてですね、ゲームの世界の中に入って、そこで人生をおくってもらうわけですね」

 「はあ、じゃあ戦国ゲームが好きな俺は、戦国時代行っちゃうわけ?」

 「ちょっと違います。戦国時代のゲームの中です」

 「いや、それは難しくね?」

 「何がです?」

 「例えばパック○ンが好きなヤツは一生、道に転がってる玉を食い続けるわけ?」

 「え…」

 「イ○ベーダーが好きなヤツは一生、上から落っこちて来るもん打ち落とし続けるわけ?」

 「あの、例えが極端すぎてアレなんですが、ある意味そうです」

 「ウッソ〜!」

 「あなたの例えが古すぎるんです。あれがつまり、もっと現実的な世界になると思ってください」

 「いや、無理でしょ」

 「まあ、確かにパッ○マンは無理があります。ですが、ああいうスリリングなゲーム世界が好きな人は、そういう事しか起こらない世界、常に追いまくられてる世界に行ってもらいます」

 「じゃあ、俺はどうなるの、やっぱ戦国時代じゃないの?」

 「あくまであなたがゲームでやってた戦国時代ですが、戦国時代ではありますね」

 「なるほど〜」


 言われてみれば、確かに未練はある。

 さあこれから領地経営をやっていこうという直前だったしな。

 願わくば、あのセーブしたところからやり直したい。

 こいつが神だというなら、そのくらいできるだろう。


 「よし決めた」

 「はい?」

 「俺を、あのゲームのセーブしたあの時にやってくれ」

 「えっ?」

 「神なら、できるんだろう?そのくらい」

 「うっ…なんとかしてみましゅ…」

 「何その煮え切らない返事、あとねぇ、あんた面白いからあのゲームのチュートリアルやってよ」

 「はぁ?」

 「まだあのゲーム始めたばっかでわかんないこと多いわけ。チュートリアルの途中だったのよ、だからあんたにそれやって欲しいんだけど」

 「いや、あの、そういう個別の要求にはちょっと規約があって…」

 「ほーら、やっぱ、あんた神じゃねぇな」

 「うぅ…も〜!分かりました!やります!やれば良いんでしょ!」

 「ほほう、神に二言はないね」

 「ありません!」

 「オッケー!」

 「じゃ、もう良いですね、戦国時代行っちゃいますよ」

 「は〜い、よろしく」

ここまでお読みくださりありがとうございます。

次からようやく戦国時代です。

ひきつづきよろしくお願いします。

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