表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

202/342

04 料理番長

最近、ちょっとペースダウン気味で申し訳ない。

 とりあえず、無事昼食を乗り切ったことで、俺は懲罰的な扱いからは解放されることとなった。

 料理番のお姉さんは合わせる顔が無いと、なかなか会ってくれなかったが、夕食の準備もしないといけないので、別に怒っては居ないから普通に接してくださいというと、何やらヘコヘコとコメツキバッタのごとく謝りながら現れた。

 「学士様とは存じ上げずに、大変失礼なことを……」と言い訳がましく言っていたが、知らないはずは無い。

 俺が最初に挨拶した時、あんた居たじゃないかよ。

 見え透いたウソを言いなさんな、とは思ったが、まあ彼女にも立場があるだろうから、あまりイジメないでおこう。

 とりあえず、夜に向けてのメニューの再確認を行い、調達できる食材などを尋ねると、どうやらこれまで市場などに買い出しに行くことはせずに、御所内で野菜を育てたり、付近の農家などから寄付してもらった食材を使ってきたらしく、買い出しに行くのはどうしても必要な調味料とか、油や小麦粉など寄付などでは手に入らない食材が要るときだけだという。

 いやぁ、そりゃ食材が偏るわけだ。

 それに加え練り物などの加工食品は避けるようにするとなると、献立にはさぞや苦労していたことだろう。

 まあ「私が来たからもう大丈夫」とまでは言わないが、メニューの幅はだいぶ広げられるだろう。

 とりあえず、小麦粉は是非欲しいのでそれを買ってきてもらうのと、可能なら片栗粉、砂糖も残り少ないのでそれも欲しいと言うと、なんと砂糖は高いから駄目だという。

 マジか!

 どんだけ貧乏なんだよ。

 今は俺も金が無い……いや、もしかして月が変わったから入金があったか?


 大谷(東宮学士・飛騨掾)吉子(女)

 年齢21

 浅井家:武将

 所持金:21850

 総合レベル:26

 思想:革新

 宗教:なし

 名声:215(補正+10)

 使用武器:メイン・金虎雷桜扇+風神化緑凰扇

      サブ・脇差

         火炎鳳凰緋扇

         ミニ火縄銃

 領地:長浜村

 居城:屋敷

 能力値:

  統率94(補正+12)、武力87(補正+5)、知略100、政治96

  体力88、腕力67(補正+10)、技量71(補正+17)、乗馬8、砲術4、走力8

 常駐スキル:鑑定、茶の湯、禄寿応穏

 製造スキル:食の達人

 戦場スキル:鬼、兵法家、二刀流(スキル書:籠城達人)

必殺技

 金虎雷漸撃

 烈雷枝

 雷包棘

 雷飛礫

 大かまいたち

 クロスかまいたち

 十文字斬り

 雷漸波

 爆風陣

 大飛翔

 大竜巻

 イージスの盾


 おぉ、21000も増えてた。

 これで砂糖も買い放題とまではいかないが、ここで必要な分くらいは揃えられるだろう。

 確かに砂糖はなかなか自前で作れないところが痛いところだよな。

 現状では高くても輸入に頼らざるを得ない。

 沖縄あたりからサトウキビ取り寄せられないのかな。

 お菓子屋さんとしては砂糖の調達は死活問題でもあるからな。

 今度今井さんの伝手で、サトウキビ安く仕入れられないか聞いてみるかな。

 市場で言い値で買ってたら高く付いて大変だわ。


 とりあえず、夕食と明日の朝食の分は何とか足りると思うので、明日、俺が食材を調達してこよう。

 その際に馬車を使って良いか聞いてみたところ、それはちょっとと嫌な顔をされた。

 御所に出入りしている人間が、あまり妙な物を乗り回して世間の耳目を集めるのも困るのかも知れないが、歩きで荷車曳いてだと時間が掛かりすぎるし荷物も沢山運べないからなぁ。

 午前中は勉学の時間があるので、そんなことはやってられないとなると、買い出しは午後からになってしまうな。

 う〜む、今ある食材だけで昼の分まで足りるかはちょっと微妙だな。

 そういえば、アイテムボックスの中身は腐らないんだったよな。

 しばらく見てなかったけど、何かあるかも知れない。

 そう思い久しぶりにアイテムボックスを覗くと、色々と得体の知れない酒とか、羊羹とか、今川焼きとか出て来ましたよ。

 お?、3色団子とかもあるな。

 これってチュートリアルの時のやつじゃないか?

 食べると体力が回復するアレですな。

 いやいや、四次元ポケットもビックリだわ。

 ただ、昼食の食材に使えそうな物はあまり…、あ、これ行けるんじゃね?

 美濃攻めの時に作った猪鍋の材料が残っていた。

 野外での調理だったから、ちょっと余った食材を捨てるの勿体ないと思って、ついつい仕舞っておいちゃうんだよな。

 ふむ、猪の肉はさすがに残って無いが、韮とネギと里芋が少しある。

 麦飯もあるが、これはちょっと皇子様にはお出しできないだろうから、これは我々だけで頂こう。

 まあ、これで今夜から明日の昼食までの食材は、何とかなりそうだな。

 しかし、御所なのにここまで困窮してるとなると、この先どうするんだろう。

 しばらくは大大名による大型支援も望めそうも無いし、信長さんとてすぐに上洛できるわけも無い。

 だが、ここでは全くもって信じられないことだが、まさに明日明後日の日々の食材が乏しいのである。

 仕方ない、もやし栽培ここでも始めるか。

 とりあえず下女の人に、大急ぎで小麦粉と卵を買ってきてもらったので、これで今夜は天ぷらが作れる。

 当初の予定通り、甘栗も大量に作り、2〜3日はおやつに困らないだろう。

 大根はまだまだ沢山あるので、しばらくは大根中心で回して行けそうだな。

 ということで、今夜は天ぷらと大根のお味噌汁、香の物に大根の浅漬け、さらに大根、蓮根、里芋、ゴボウ、茸を煮物にして小皿に入れれば、ほ〜ら、そこそこ豪勢な感じになったじゃないか。

 これくらい、あなた方でも出来るだろ?と思ったのだが、煮物と浅漬け以外は見たこともない料理だというので、そりゃぁメニューのレパートリーが限られてしまうわけだ。

 新嘗祭並の豪華な夕食だと、皆さん喜んで居られたが、普段どんだけ質素な食事だったんだと、逆に心配になる。

 むしろ御所でこれだけ困窮しているというのに、近隣の公家たちが、はるかに豪華な食事をしている事の方が問題だろう。

 それは、武士たちが許認可権を有する公家たちを接待するからなのだが、政治への実権が無い皇族には、逆にそういった“恩恵”が届かないのである。

 天皇こそが我が国の国体そのものであるにも拘わらず、許認可権が無いがために、こんな貧しい暮らしに追いやられてしまうとはな。

 ある意味、武士たちに見下されても仕方ないのかも知れないが、俺はやはり納得いかないな。


 翌日。

 早朝から朝食の準備にバタバタと取り掛かる。

 昨夜のうちに仕込んでおいた豆腐で田楽を作り、小豆ご飯に、大根の浅漬けは昨日とは味付けを変えて昆布だしにして、昆布の千切りも添えた。

 さらに特製和風ドレッシングに削り節をふりかけた大根サラダ、大豆の甘煮を加えて、なんとか品数を揃えた。

 いやあ、ほぼ大根と大豆しか無いのもどうかと思うが、まあ、こういう日もある、ということでとりあえず主膳監様にお許しを請うと、意外にも大根にこれほどの調理法があるということに、逆に驚いていただいたようだ。

 皆さんも「朝から豪華どすなぁ」と驚いていた。

 作り分ける手間を省くため、朝は偉い人と下働きと献立を変えることはしなかったから、そう感じたのかも知れない。

 まだまだ、こんなもんじゃ無いんだけどね。

 大根料理の本命は、今夜出す予定の“おでん”だからな。

 そんな感じで、一転指導する立場となってしまったため、さすがに俺だけハブる訳にもいかないのだろう、今朝から食事は皆と一緒に頂けるようになったのだが、何か空気が重たいというか、皆さん誰も一言も話さないのが非常に気になる。

 黙って食べるのが礼儀なのかも知れないが、美味しい食事もこれでは台無しな感じだ。

 食べ終わって「ごちそうさま」と言って、自分の膳を下げようとしたところ、どうやら皆が食べ終わるまで待っていないといけないらしい。

 こっちは戦場を経験してるし、生前も早飯を常としていたので、女にしては他の人より食べるのが断然早い。

 また、皆さん黙って食べてるわりに食べるのが遅いので、一人で待っているのが非常に辛い。

 これはこれで、面倒なシステムだな。


 色々と不満は募れども、とりあえず能力を認めてもらって職務を与えられてることには感謝しないといけない。

 こういう雰囲気も、徐々に打ち解けてくれると良いんだが。

 朝食の片付けを終えて、さてと、気分を変えて皇子様の勉学の時間だ。

 凝り固まって怨念を募らせてそうな人は、こっちの方にも居るのだが、そんなのはとりあえず無視だ。

 昨日同様、学問所で待っていると、いつにも増して顔をほころばせた皇子様がお出ましになられた。

 いやぁ、何か嬉しそうだねぇ。

 マズいなぁ、連弩のこと期待させちゃってたからな。

 どうやって謝ろう。

 もう最初から土下座しか無いか。

 「皇子様、申しわ…」まで言ったところで向こうから話を被せてきた。


 「其方、料理番になったそうじゃの!素晴らしいぞ」

 「は?」


 ちょっとぉ。

 何でバレてるのさ。

 内密にって言ったじゃんかよ、全く。


 「昨日の昼餉ひるげ夕餉ゆうげ、そして朝餉あさげ、どれもすこぶる美味であったぞ」

 「あ、ありがとうございます。恐れ入ります、が、私が作ったと、どなたからお聞きになられたのでしょう」


 すると皇子様は、にんまりと笑って「これまでとあまりに味が変わったので、大夫を問い詰めたのじゃ。予が昔、父と一緒に食べた食事でも、ここまで変わったことは無い。なので父の内膳が作ったという話は嘘だとすぐに分かったからのぉ」と、自慢げに答えた。

 なんてこった。

 マズいなぁ、こっちで評判が上がることは、予定してなかったからな。

 なんとかこれ以上料理人への道を進めないようにしないと。

 

 「それは、さすが皇子様にございます。よくぞ見抜かれました」

 「あれだけ違えば、誰にでも分かるじゃろ。味の付いた米を食うことなど無いからの」

 「え?そうなんですか?」

 「昔からのしきたりなのじゃろな。米は米だけ、栗は栗だけ頂くのが常じゃった。今は時代も変わっておるというのに、こうやっていつまでもしきたりに縛られておるから、武家に良いように仕切られてしまうのじゃろうな」


 いやぁ、12歳の子供と思っていたが、随分と老成なさっているご様子。

 仰ることまさしくその通り、それが真実だ。

 だからいずれ皇室も近代化されねばならない。

 仮に民の治める国が出来たとしても、やはり天皇には頂点で君臨してもらいたいからな。

 だが、皇室改革は朝廷の解体以上に難しい事かも知れないし、天皇自ら内側から変えることは恐らく無理だろう。

 ならばここはむしろ俺が外敵の代わりとなって今の政治システムを一旦潰し、戦後のGHQ支配のように改革することで、急速に近代化できるかも知れない。

 それには、この皇子様の教育こそがカギとなるに違いない。

 となれば今与えられているこの機会は、掛け替えのない貴重な時間だ。

 一刻も無駄には出来まい。

 夜伽の相手などしてる場合じゃ無いよな。


 俺は「最初にお詫び申し上げねばなりません」と切り出し、昨日は見せると言ってしまった連弩と鉄砲について、東宮大夫からダメ出しされたことを伝えると、皇子様はそんなことは初めから分かっていると言わんばかりに「左様か、やはりな」と言っただけで、それ以上何も言わなかった。

 こうなることは分かってはいたけど、もしかしたらという希望を持ったのかも知れない、どことなく淋しげな表情の中に諦観のようなものが感じられた。

 なるほどな、12年の間にこういった諦めを、何度となく繰り返してきたのだろう。

 老成した理由はそこら辺にありそうだな。

 役人の事なかれ主義は古今東西を問わないが、教育という側面からすればマイナスしか無いと思う。

 こうなってくると横紙だろうがたてがみだろうが破りたくなってくるな。

 皇子様のためにもなんとかしてやりたいところだが、何か手は無いものかな。

 とりあえず、今のこの時間も無駄には出来ないので、早速講義を開始しよう。

 今日はいきなり禁忌っぽいが、宗教の話をしようと思う。

 神道ももちろん宗教であるし、天皇家はそのご本尊みたいな物だ。

 まさしく釈迦に説法のような話なのだが、要するに宗教はしばしば支配する側の道具となってきた歴史があることを、説明しようと思ったのだ。

 キリスト教が世界的な広まりを見せたのは、植民地支配と密接に関係していることは周知の事実だ。

 今まさに、我が国でその教義の拡大が行われている最中なわけで、ここで取り込まれるか拒絶するかで歴史の結果は大きく変わっていくのだ。

 後から見れば日本は味見はしたけど突き返したみたいな、美味しいとこ取りをやって上手くいったように見えるが、その陰に宗教弾圧があり、要らぬ虐殺を招いてしまったことは忘れてはならない。

 これには、宗教の持つ教育的側面が大きく係わっていると思う。

 一般的な教育、教養を身に付けた後に宗教の教義を聞くのと、予備知識無しにいきなり宗教の教えを聞くのとでは結果は大きく違うと思う。

 宗教は身の回りで起こる天変地異などを巧みに利用し、自分の教義に結びつけようとするが、科学的に理由が分かっていればそれを神のみ技と思うこと無く冷静に見ることが出来るだろう。

 だからこそ、俺は教育を先に広めたいのだ。

 科学的、合理的な考え方が身についていれば、盲目的に信じてしまうことは無いだろうし、自分で物事を判断出来れば、自らの生き死にを他者に託したりはしないはずだ。

 長く続いた武家支配の影響か、特に一般庶民は自分自身で判断をせず、自分の行動すら他人に委ねる傾向があるように感じる。

 第二次大戦末期、特攻隊などという愚かな作戦が実際に行われたことは、こういった日本人のメンタリティが係わっていると思うのだがそれは言いすぎだろうか。

 それはともかく、皇子様をそこまで俗化させるつもりは無いが、過去の有り難い教義より実際に足元で起きていることを知ることが、俺は先決だと思う。

 キリスト教は神道にとって、まさしく脅威そのものであるが、その認識が果たして当事者たちにあるのかどうか。

 俺は怪しいと感じている。

 そもそも、自分達が宗教の一種であるという認識があるのかすら怪しい。

 今日はその辺の所を、じっくり議論してみようと思って身構えていたのだが、どうも皇子様の様子がおかしい。

 先ほどまで老成したと思っていた立ち居振る舞いが、何やらソワソワと落ち着かない感じだ。

 なんだ?うんこ漏れそうなのかな?

 そう思った次の瞬間、皇子様がいきなり下腹部をさらけ出し、「昨日から、コレがちっとも収まらんのじゃ」と言って佇立したイチモツを俺に見せつけてきた。

 何だ何だ!?

 いきなりご乱心か?


ここまでお読みくださりありがとうございます。

危ない展開ですが、なんとか15禁の範疇で収めたいと思いますので、安心してください。

引き続きよろしくお付き合いのほどお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] こっから15禁で収められるのか!? [一言] R-18√とか書く予定ありますか? 今まで手篭めにされかけた回のIF√だけで、いっぱい書けそうな感じがする・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ