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06 小口城の戦い

2話同時に上げます

 その夜、丹羽長秀が帰還し、事の次第を伝えた。

 そもそも病気と称し、会ってもくれなかったそうである。

 中島さんは信長さんが信頼できる人物として、城主を任せた経緯があるらしいが、ただの使いでは無い丹羽長秀にさえ会おうとしないと言うなら、もはや交渉は無理と言うほかはない。

 信長さんは水晶玉を覗き「犬山に動きは無いな」、と確認したところで「吉子、お主も加われ」と言って、本格的に出撃の準備を始めた。

 どうやらまた、お得意の夜襲を仕掛けるのか。

 となれば今から領地に戻っていては間に合わない。

 仕方ない、新九郎と二人で行くしか無いな。

 城攻めなんかしたこと無いんだけど。


 信長さんは空が薄ら明るくなった頃、出撃した。

 ただし、今回も少数精鋭である。

 織田軍には即応常備軍として2000余りの兵が常にスタンバイしているのだが、その半数を今回の城攻めに持ち出した。

 さらに信長本人とその親衛隊である小姓衆が先陣を切ることになった。

 いつの間にか俺も小姓衆の列に加えられたのだが、皆さん違和感無く受け入れてくれたようだ。

 迅速を尊ぶ信長だが今回は殊更にスピード重視である。

 中島さんの態度がよほど腹に据えかねたのか、交渉してすぐには攻めないだろう、と油断している隙を突こうとしたのかは分からないが、もう一回話に来るかな?と思っている所に、いきなり攻撃を仕掛けるという作戦だったのかもしれない。

 だが、この小口城がなかなかの難攻不落で、平城ひらじろ(平地に建てられた城)でありながら、二重の堀と虎口、馬出しを備えた、高い防御力がある城だった。

 中島さんはこちらの襲撃を予測していたらしく、こちらが勢いに任せて門から突入すれば、高所からの狙い撃ちに遭うことが予想された。

 俺は城のマップをその場で出力し、検討の結果、防御の薄い馬出しの脇の辺りから攻めるのが良かろうということになった。

 普通、攻城戦となると攻城櫓とか破城槌とかを持って行くもんだと思っていたが、今回は梯子と大槌、火矢、鉄砲が主な武器となる。

 歩盾という木製の大きな盾を立てかけて、そこから鉄砲隊で敵を威嚇しつつ火矢を射って防護施設に火災を起こさせる。

 敵が消火活動に当たる隙に梯子をかけ、中に乗り込むという手順だ。

 こちらの弓隊が火矢を放ち、敵の城のあちこちで火の手が起こり始めると新九郎が梯子を担いで城の壁に取り付いた。

 すかさず俺が梯子を駆け上り、付近の兵を火炎かまいたちで攻撃。

 ついでに施設の延焼も誘う。

 炎属性の特殊攻撃が、こうも役に立つとは思いも寄らなかった。

 ほとんど俺と新九郎だけで馬出しの一画を掃討すると、大槌を担いだ兵が4〜5人やって来て馬出し門を壊しはじめた。

 馬出しの門を壊すと、そこも正面と同じく虎口という塀によって囲まれた構造になっている。

 ただ、こちらの虎口は正面よりは簡素な構造で、二つ目の門も無い。

 それでも周囲の塀の上には、やはり敵兵が弓や鉄砲で待ち構えている。

 門が開いた瞬間、一斉に弾丸と矢が飛んできた。

 ここを突破しようとすれば、やはりそれなりの損害を覚悟しなければならないだろう。

 仕方ない、ここは負傷覚悟で力押しで行こうとした矢先、馬出しに信長さん自ら、馬上のまま乗り込んできた。

 そして大声で城主に呼びかけた。


 「左衛門よ!(中島豊後守の通り名)上総介じゃ!」


 すると、それまでの喧噪が嘘のように静かになった。


 「左衛門よ!このような城、落とすことはいとも容易いわ!こちらはまだ誰一人死んでおらんぞ!だが、今日のところは引いてやる!」

 「……」

 「貴様に今一度猶予を与えよう。こちらに降れば良し、そのまま咎め立てはせぬ。このまま犬山と共に滅びることを選ぶならそれも良かろう。だが、奴には目先のことしか見えておらん。そこをよく考えよ!」

 「……」


 返事は無いが聞いているだろうことは伺える。


 「左衛門!再び長秀を使わすから奴の話を聞け!そして考えよ!」


 そう言うと信長さんは手で退却の合図を出して、兵を引かせた。

 信長さんの言うとおり、こちらの損害は0である。

 敵もそれなりに被害を被ったと思うが、死者は数十人であろう。

 あのまま虎口に突入していれば、双方に多数の死者が出たことは間違いなく、それで城が落とせれば良いが、失敗した場合の影響が大きいと判断したのだろう。

 それだけあの、中島豊後守の能力を評価していると言うことか。


 清洲に帰った信長さんは、再び軍議を開いた。

 さすがに今回は呼ばれなかった。

 信清の件は持久戦へと持ち込まれたのだ。

 こちらの出番はすぐには無いと言うことだ。

 既に今後の方針が決まっていたのか、軍議はものの30分ほどで終わった。

 予想どおり、今後はじっくりと準備を固めてから行うと言うことが決まり、まずは調略で何処まで切り崩せるかであった。

 それに応じて、橋頭堡の場所も変わってくるのだ。

 つまり、次に動く時は美濃まで一気に突き進むつもりのようだ。

 余談だが、軍議の中で俺への評価が急に高くなったそうだ。

 今までは女だてらにとバカにしていたようだが、今回の働きで、重鎮たちにも大谷吉子の名を認めさせることができたようだ。

 その割には、レベルアップのお知らせとか全く無かったんだが、スペック的には変わってないって事なのだろうか。


 軍議の報告を聞いて、自分の領地に帰ろうと思った時、信長さんにまた呼び止められてしまった。

 そしてまた、褒賞を頂いてしまった。

 ひとつは、既に預けておくと言っていた手甲を正式に賜ったこと。

 もうひとつは未だに兵の数が揃わない我々に、特別に常備軍から200名を派遣してもらった。

 これで現在訓練中のはずの100名の農民兵と合わせ300の兵が揃ったことになる。

 もちろん彼らの雇い賃は信長持ちである。

 有り難いやら、見込まれすぎやらである。

 と言うことなので、俺が一足先に帰って200名の兵士の受け入れ体勢を整えなくてはならない。

 兵たちの引率は新九郎に任せ、こっちは領地の開発準備に掛かるとしよう。


 領地に戻ると、さっそく新たな兵舎の建設の指示を出す。

 一棟で100名収容可能なので2棟建てなくてはならないのだが、人足を400人ぐらい雇わないと今月中に完成しないようだ。

 兵士たちは、明日にも到着してしまうだろうから、いずれにしてもすぐに間に合う話では無いので、一時的にはうちの屋敷に泊めておくしか無いだろう。

 町子ちゃんに、そのへんの経緯を話し、簡易の宿泊所のような物を作るよう、お願いする。

 さらに、兵士が集まれば必要となるのが酒場である。

 当面は俺の懐から、振舞酒を飲ませてやるのだが、いずれは自分達の金で飲んでもらわねばならない。

 と言うことで急遽、飯屋と酒場も建設することとなった。

 それらも今月中に建設するとなると、1000人近い人足が必要となる。

 褒賞はもらったが金が増えたわけでは無い、仕方ない、前使ってた手甲とか売っ払ってくるか。

 来月の開発資金も欲しいので、1回依頼を何処かでこなさないといけないな。

 と言うことで、また清洲に舞い戻らねばならなくなってしまった。

 もう一人、開発のスペシャリストが欲しいところだな。

 町子ちゃん、錦之輔、又右衛門は、それぞれ政治力が70以上あるので、十分有能ではあるのだが、今回のように急場の馬鹿力じゃないが大急ぎで何か建てたい時、若干の力不足は否めない。

 政治力85以上ある武将が是非欲しいところである。

 人材検索をかけるも、1000人足らずの人口の中でそうそう有能な人材が見つかるはずが無い。

 こんなことなら架空武将で有能な妹でも作っておくんだったな。

 ねえ、神様。

 今さら無理だよねぇ。


 ※1人だけなら特別に認めても良いかな。

  ていうか、あなたが結婚すれば良いんだけどね。

  そうすればあなたのスペックを受け継いだ優秀なお子さんがいっぱい生まれますよ。


 それ何年先の話よ。

 今は16歳なんだから、無理でしょ。


 ※この時代では13歳から結婚できますよ。


 そりゃそうだけど、子供産めるのはもう少し大人にならないと。


 ※この時代16歳なら出産適齢期です。


 うそっ、ってそうか。

 ウチらが16歳の娘に手を出したら犯罪者だけどな。

 そもそも妊娠なんかしてたら武将やってらんないじゃんか。


 ※そうですね。

  どちらかを諦めるほかはありませんね。

  世継ぎ無しで一代で終わるか。

  結婚して優秀な世継ぎを産むか。


 あー、俺その辺のこと全く考えてなかったわ。

 てことはさ、弟がいれば世継ぎにできるのか。


 ※そうですね。

  ただ、その場合領主はあなたでは無く弟になりますけど、よろしいですか?


 うーむ。

 あ、でもそれって、結婚しても同じ事だよね。

 自分は領主じゃ無くなるんだよね。


 ※その通りです。

  ただし、弟を迎えると跡目争いなど、色々と複雑な事情を抱えることになりますね。

  いっそ、信長の側室などどうですか?

  一緒に天下統一目指せますよ。


 いやぁ、男にやられるのはちょっとなぁ。

 あーもう、何で女武将なんかにしたんだぁ!俺のバカ。

 分かりました、その話はちょっと保留。

 この先のこと、ちょっと考えてからにします。


 ※それがよろしいかと。


 はい、アドバイスありがとうございました。

 ふーむ世継ぎかぁ。

 考えてもみなかった。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

ちょっと短いので、もう一話上げました。

引き続きお楽しみください。

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