05 犬山
しばらくIF戦記っぽい感じが続きます。
2021/07/13:誤字修正と一部言い回しを修正しました。
領地に戻ったのが29日。
またしても月末ギリギリだったので、開発の指示だけ残し再び犬山に向かうことにした。
ただし、領地が増えて人口も800人ほどになっていたので、弥四郎に募兵の指示を出しておいた。
ただし20%キッチリじゃ無く15%ほどにして、民心安定を優先した。
また、人材も新たに1名、統率が68ある海老蔵という男を雇った。
彼はまだ下人扱いだが、経験を積んで統率が70を超えたら、正式に雇ってやるとしよう。
新たに開墾したり、街道整備などで金を使ったので、信長さんからの褒賞があったのだが結局今月も赤字である。
町子ちゃんが笑う日が来るのだろうか。
やっぱり市場が完成しないうちは、なかなか金が入ってこないな。
まあ、予定では来月中に完成するはずなので、それまでの辛抱である。
さて、反乱鎮圧と言うことなので、俺の出番はそう無いと思うのだが、一応護衛に新九郎だけ連れて、後の2人は現在ほぼ手つかずの領地の開発に掛かってもらうことにした。
砦までの街道整備と、川の対岸にも港を作る事業だ。
我が領地の西の端は、共に南北に流れる長良川と木曽川の2本の川が流れており、それが合流して1本の大河になるところがある。
その川幅は東西およそ1kmにも及ぶ。
そのさらに西には揖斐川という、同じように南北に流れている川があるのだが、そこまでは俺の領地ではない。
ただ、この3本の大河が東西の交通を大きく分断していることには間違いなく、もっと北に行けばそれぞれ渡れる大きな橋もあるが、我が領地には1箇所しかなく、それも木曽川の方だけで長良川との境になっている洲のようなところに掛かっているのみである。
この大河に橋を架けるのは相当な大事業で、それが可能になるまでは渡し船でやるしかないのだ。
とりあえず、渡し船と漁港を兼ねた港を2本の川の両岸に作ることで、交通と地域の発展にも繋がることだろう。
また、今後あるであろう伊勢攻略のためにも、交通網の整備は重要である。
大急ぎで開発の指示を出し、後を町子ちゃんと2人の部下に託して清洲城へと向かった。
清洲城では既に軍議が行われているらしく、我々のような下々の者は外で待っている他は無い。
待つこと1時間、その間にも物見や間諜の情報がどんどんと寄せられ、刻一刻と事態が推移していることを伺わせる。
そう言うの、マップで分からないのかな。
えーと全国図ってどう出すんだ?
内政か?
えーと、チュートリアルさん?
※この場合外交画面が分かりやすいでしょう。
まず外交コマンドのアクションを設定してください。
あぁそっからか、面倒くさいな。
そうだな外交だから電話っぽいアクションとかでどうだ?
※はい、登録されました。
外交のトップ画面から、外交関係のボタンを押してください。
織田信長が中心の大名のアイコン画面が出てると思いますが、右上に地図とあります。
そこを選択してください。
なになに、ほうほう、これが外交画面か。
信長と徳川家康が線で結ばれてるね。
浅井とはまだだな。
この、顔のアイコンの大きさの差は何か意味あるの?
※所属している勢力との関係、あるいは存在感を意識しているかで大きさが決まります。
敵対していても、存在感が大きければ大きいアイコンで表示されますし、同盟していてもあまり意識していないと、小さく表示されます。
たとえば武田信玄などは、現在敵でも味方でもありませんが、大きく表示されているので、織田家としては相当意識していると言うことです。
ふむふむ、三国時代のような感じだな。
えーと、地図だったね。
これか、ほい出た。
で?あ、これで拡大ね。
ほんで、尾張近辺が、なるほど、支城も誰の所有か表示されるのね。
あらー、犬山城の周りの城、結構取られてるね。
敵の部隊の移動とかは分からんよねぇ。
※その場合戦略画面から“マップ“を見れば現在展開中の部隊が表示されます。
なんだ、そういうのあるんじゃん。
今までミニマップしか見てなかったから、全体像が掴めなかったわ。
とりあえず、現在交戦中の部隊は無いようなので、暫くは様子見か。
しかし、この楽田城を取られたのは痛いな。
ここから那古野城にも末森城にもどちらにも行ける。
この、小牧山辺りに拠点でも作らないとやりたい放題になるな。
その時、突然厳つい顔をした武将から声をかけられた。
「おぬし、今なんと言った」
「はい?私?何か言いました?」
「小牧山がどうしたとか言うておったろう」
「あら、声に出てました?すみません、独り言ですのでお気になさらず」
「気になるわ!楽田城が取られたとか言うておったろうが」
「あ、すみません、軍事機密でしたか?」
「そうではない、いや、そうなのだがそんな話を誰から聞いたのかと聞いておる」
「いやー、誰と言われてもねぇ、独自の情報ルートというか…」
※今は室町時代末期なのでカタカナ語を使わないでください。
すんませーん。
何とか誤魔化して逃げようと思ったが、その武将に強引に腕をつかまれ、なんと軍議の場に引きずり出されてしまった。
軍議中に小物を呼び入れたことで織田信長が窘めた。
「何事じゃ信盛」
「は、まずは軍議に遅れましたことご容赦願いたい」
「ん?吉子ではないか、何故ここにおる」
「吉子?ではお主が大谷吉子に御座るか」
「は、はい、そうです」
「信盛、何故吉子を連れ込んだのじゃと聞いておる」
「は、この者が、拙者しか知らぬはずの大事を知っておったことで、問い質しておったのですが、しかと申さぬゆえ、この場に連れて参った次第。よもや敵の間者ではないかと疑ったものに御座います」
「して、お主しか知らぬ大事とは何じゃ」
「楽田城が奪われました」
「なんと!信清の阿呆めがっ!!」
「まったく、これでは何のために姉君を嫁がせたのやら」
「して、吉子。其方はどのようにしてその話を知った」
うっわ〜どうしよう。
信長さんすっげー睨んでるし。
たすけて〜チュートリアルさん!女神さま〜!
※こんな時だけ神様扱いするんじゃないわよ。
しょうがない、あなたがちょっとした妖術が使えるってことにしますか。
はい、水晶玉です。
これで、上手く誤魔化して。
なんかすごいぶん投げたっぽくない?
ちょっとぉ。
まあいいや。
妖術か、ん、これに映るのか?映像とか?
おー、これが楽田城ね。
煙出てるねぇ、いかにもだね。
さて、なんて言い訳しよう。
「申し訳ありません!信長様。わたくし実は少しばかり妖術の心得がありまして、この水晶玉で遠くの様子を見ることができるのです」
「なんと!妖術とな」
「黙ってて、ごめんなさい!」
「貴様なにゆえ秘匿していたか!事と次第によっては…」
「待て、秀隆。予が神仏妖怪の類を嫌っておることを、慮ってのことじゃ、そうであろう吉子よ」
「ははぁ!恐れ入りまして御座います。仰るとおりに御座います」
「して、その水晶玉とやらは、どこでも見ることができるのか?」
「恐れながら、何処でもと言うわけでは御座いません。これと対になる水晶玉があと3つありまして、それを持った者が見た景色のみ、映し出すことが出来まする」
「なるほど、十四条で予を救い出した時も、それを使っておったのか?」
「その通りで御座います、これで敵の動きを先回りしておりました」
「ふむ、吉子の活躍の裏に、そのような秘策があったとはな、いつも吉子には驚かされるわ」
「申し訳御座いません」
「して、それで信清の動きなども見えるのか?」
「城の中までは無理ですが、外の様子なら分かります。ですから城から出ればどちらに向かうかは予測できます」
「よし、それは使えるぞ、吉子。」
「はい」
「信清に何か動きがあったら即刻伝えよ」
「承知いたしました」
「よろしい、特別に吉子も軍議に加われ」
「信長様、それは如何なものかと…」
「他より先に知り得たる者を、予より遠ざけるは愚の骨頂なり」
「は…申し訳御座いません」
うわ〜、えらいことになったなぁ。
信長さんは、親切にも軍議の参加者を紹介してくれた。
みなさん有名なキラ星のごとき名将揃いであります。
一応参加者を書きだしておきましょう。
織田信長
河尻秀隆
丹羽長秀
滝川一益
佐久間信盛
池田恒興
佐々成政
この中に柴田勝家の名が無いのが意外だったが、どうやら以前敵方に付いた経緯があるため、イマイチ信用されてないみたいだ。
同じ理由で林秀貞さんとかも呼ばれてない。
木下秀吉もまだまだここに出られるほどの力は無い。
つまりこのメンバーが今の織田家の中枢である。
なので、たとえオマケだったとしても、この軍議に加われるというのは、非常に名誉なことなのだ。
後で、秀吉に自慢してやろう。
さて軍議の大まかな内容であるが、現在犬山城を中心に楽田城、小口城、少し外れて黒田城が信清の支配下になっている。
この謀反の裏に斎藤家の関与が伺われる。
従って織田信清およびその配下は、謀反と言うより斎藤方に寝返ったと見るべきだと言うこと。
その斎藤家も、武田の援軍を見越してのことと推察される。
武田まで相手にする余裕は無いので、あくまで局地戦にとどめること。
小口城主、黒田城主は説得の余地があり、調略できる可能性があること。
これ以上の侵攻を防ぐためにも、緊急に橋頭堡を確保する必要があること。
信清とは過去の経緯もあり、今後共闘することは考えにくいので、これを機に誅滅すること、などが決定した。
橋頭堡の建設は、場所と時期の問題があるためもう少し検討する期間を設ける必要があるが、調略は今すぐにもはじめられる。
そこで、小口城の城主中島豊後守に丹羽長秀が誼があるということで、彼が交渉役に選ばれた。
以上の内容が、軍議で決まったことで、首脳陣はそれぞれ持ち場に戻って行った。
だが、俺だけはその水晶玉を監視し続け、動きがあれば即刻報告しなければならなくなった。
まるで立て籠もり犯の実況中継を見守るニュース番組のスタッフのような感じである。
現地に取材班はいないけどな。
2日ほど清洲城で監視の任務について気づいたことがある。
全然腹が減らないのだ。
まあゲームの中の人になったわけだから、そう言うことはあるのかもしれないが、他の人たちは良く分からない硬いご飯をポリポリとよく食べている。
今気がついたけど、そう言えばトイレにも行ってない。
これって大丈夫なんですか?
チュートリアルさん!
※仕様です。
オイオイ、最近お仕事ぶん投げてない?
チュートリアルさん!
※神です!
神だから、気安く何でも聞かないで!
あと、文句が多い!
いや、自分でやるって言ったんじゃん、チュートリアルさん。
※やりたいと言った覚えはありません!
頼むから余計な仕事増やさないで!
それで無くても色んな人のAIの調整が大変なんだから。
前にも言ったような気がするけど、それをやるのが神なんじゃないですかねぇ。
神と呼ばれたいなら、やるべきなのでは?
※したいの?トイレとか。
あ!わかった!セックスしたいんでしょ!
スケベなんだぁ!
やっぱ、あんた神じゃないわ。
こっちが赤面するようなこと、よくも平気で言うよね。
※用が無いなら帰って良いかしら?
はいはい、仕様ってことで良いです。
最近かなりいいかげんになってきた気がするな。
と、少々じっと城に詰めているのに飽きてきた頃である。
水晶玉の映像に動きがあった。
小口城の門が開かれたのである。
昨日丹羽さんが交渉に向かったと知らせがあったが、ちょうど今、小口城に丹羽長秀さんが入っていく映像が水晶玉に映った。
一応その状況を信長さんにも見てもらおうと思い、小姓の岩室重休さんにその旨を告げた。
暫く信長さんと一緒に眺めていたら、一時間ほどして丹羽さんが門から出てきた。
だが、顔がかなり険しい。
これはどうやら交渉が不調に終わったらしいな。
それを見た信長さんは憮然とした顔で、側にいた岩室さんに「兵を出す支度をせい」とだけ伝え、奥に引き込んでしまった。
これは間違いなく小口城を攻め落とすつもりのようだ。
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