表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

第17話

『人気男性アイドルグループの────』

『書類送検され──』

『自宅で女子高生に──』


「なんか最近こんなのばっかりですね、先輩」


テレビのチャンネルを変えながら絢瀬はバーカウンターでパソコンを弄っている迅へ話し掛けた。


「んー、まあ仕方ないんじゃねーの?人気アイドルのわいせつやら政治家のセクハラやらは何時でも視聴率が取れるわけだしな。まあ、俺等にゃ関係無いことだろ」

「そういうもんですかね〜?ところで、さっきからなにしてるんですか?」

「色々だ、色々。まあ、簡単に言えば仕事の打ち合わせってとこだな」

「先輩、仕事なんてしてるんですかー?」

「まあ、色々とな」


『「この度はたくさんの方々にご迷惑をかけ──」』


「ほんと、こればっかりですね……あっ!」

「どうしたー」


色々な局の番組を行ったり来たりしては愚痴を漏らしていた絢瀬の今までと違った声に迅は絢瀬の方を向く。そうしたことで、必然的にテレビの画面も目に入り、絢瀬が「あっ」という声を漏らした理由がわかってしまった。 


【next 謎に包まれた勇者】


「先輩、これって……」







◇◆◇◆◇


『昨年12月、頻発する妖魔被害の中でも特に異質な事件があったことを皆様は覚えているでしょうか』

『対妖魔機関日本支部の発表によれば、現れた妖魔は【オーガ型】というパワーに優れたものでしたが、魔法のような超常の力も使用しており新種と考えられるということでした』

『しかし、それ以上に大きなニュースとなったのが、その際対妖魔機関の発表したその妖魔の討伐者です。詳しいことは発表されませんでしたが、その討伐者が男性であるということが機関の口から語られました』

『ですが、その後その男性がどこの誰なのかはっきりとしたことはわからず、街灯のカメラによる映像もなく、目撃者も総じて口を噤んでいます』

『今回、我々はその男性の真実を追いました』










「なるほど、やってくれんじゃねーか」


ニュース番組のとあるコーナーを見終わった迅はそう呟いた。

例の事件から凡そ4ヶ月。これまで、マスコミは機関の口から語られた男性勇者、つまり迅のことを探っていた。

報道番組、新聞、週刊誌。ありとあらゆるマスコミがその正体を突き止めようとしていた。

先日の入学式にしてもそうだ。機関の口から語られた数少ない情報の一つである年齢から推測し、朝比奈学園正門前にはマスコミが例年以上に集まり、迅を撮さんとしていた。

だが、その目論見も失敗したところでこれだ。


たった今放送された内容は、どれも信憑性に乏しいものや、人によっては陰謀論と捉える場合もあるようなものだった。

曰く、その男性というのは「精神病であり、それ故に人前に出ない」だったり、「機関が秘密裏に行っていた人体実験によって生み出された」だったり、最終的には「実は機関の嘘」という結論に至っていた。


正直なところ、表に出ていないのだから都市伝説のような扱いを受けるのに関して、迅は仕方ないと思っているし、なんならそれを楽しんでいる。女性しか居なかった勇者のなかに男である自分が突然現れたのだからそれは仕方ないだろうし、自分に対する都市伝説なんかは笑って見てられる。

しかし、これについては話は別だ。これは都市伝説云々よりも裏の事情が明け透けだった。


このニュース番組を放送している読日テレビの番組には、最近話題のわいせつアイドルの事務所から多くのアイドルが出演しており、視聴率の半数程度はそのアイドルが好きな層からのものだ。それ故に、読日テレビというのはその事務所にたいしてあまり強気に出ることはできない。

だからこそ、夕方のニュース番組でこのような陰謀論じみた論調で対妖魔機関に対する話を流し、そのアイドルから関心を逸らそうとしたのだろうと、迅は予想を立てていた。


そして、その目論見自体は成功していた。


「チッ、面倒だな」


たった今、迅の携帯電話には高北の友人からメッセージが送られてきた。

その内容は「今の読日見たか?」というものと共にとあるSNSアプリを映したスクリーンショットと「これを見てくれ」という言葉だった。





アーレル@赤鬼 @aaaaareruuu

【たしかに。機関が言うとおりなら、その男を出すべき】


西野光徳 @bengo_nishino

【その男の秘匿は人類に対する損失では?】


獅子の四肢 @lion_leg_arm

【人体実験とかマ?】


あるふぁ @pakupakupakuri

【機関は我々の知る権利を無視している】


ニンニン @ninjaaa

【男を出せ】


オーマイマイナー @ohmygooooood

【出せ】


シリコン@リリアル民 @ririarulove

【表に出てこい】





大まかに纏めればその男を世間に出せというものだ。

なんとも簡単に意識を向ける方向を操作させられている人間達にアホらしさを覚えながら、迅は頭に手をやった。


「馬鹿だろ、こいつら……」


隠されると気になるというのは人の常だが、何故隠されているのかも理解せずに開示を要求する彼らに対し、直接届くわけではないが迅はそう評する。

普通に考えれば、その男が未成年であるというのは公開されているわけで、勇者であっても芸能人ではないのだからそれが公開されないのは当然のことだろう。それに、知る権利が云々というのなら迅のプライバシーはどうなってしまうのか。勇者という肩書を持ってはいるが、迅自体は公人ではなく私人だ。にも関わらず、迅のことを無理に探ろうとするのならそれこそプライバシーの侵害で、逆に訴えることもできるだろう。


そのへんのことは、二枚目に送られてきたスクリーンショットにも述べている人間が居た。

ただし、そんな人間は全体の数パーセントにもみたないのは目に見えていた。

非常識も数が多ければ常識となってしまう。結局のところ、機関も迅の公表を検討しなければいけない程度には、放送から数分しか経っていなくとも事が大きくなってきていた。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] すべてが完璧です [気になる点] 話を続ける [一言] のシリーズを続ける 異世界主人公最強すぎるシリーズ しかし何よりも続ける 神皇勇者の英雄譚《りょこうたん》
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ