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第12話

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


氏名:東雲シノノメ ジン

性別:男

生年月日:2097年7月7日

年齢:15歳

血液型:AB型Rh+

資格:大型自動二輪(特殊)、普通自動車(特殊)、一級小型船舶操縦士(特殊)、特殊小型船舶操縦士


略歴:2097年7月 誕生

   2104年4月 私立北條学園初等部入学

   2108年4月 市立高北小学校に転入

   2110年3月 市立高北小学校を卒業

   2110年4月 市立葛木中学校に入学

   2113年3月 市立葛木中学校を卒業

   2113年4月 国私立朝比奈学園に入学


勇者識別コード:bnw-0_jp-0

ランク:S(暫定)

所属:対妖魔機関日本支部本部 朝比奈学園


クラス:【あなたの権限では閲覧できません】

聖装:【あなたの権限では閲覧できません】

属性:【あなたの権限では閲覧できません】

聖力量:【あなたの権限では閲覧できません】

聖力親和率:【あなたの権限では閲覧できません】

固有戦技:【あなたの権限では閲覧できません】

名称:【あなたの権限では閲覧できません】

実績:【あなたの権限では閲覧できません】


その他情報:【あなたの権限では閲覧できません】


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━







「なによ、これ……」


迅があの後どうにか場を納めていたとき、朝比奈学園女子寮にある資料室には2人の少女が居た。

学生寮資料室。そこにある一部のパソコンでは機関のデータベースへアクセスができる。

機関のデータベース、通称【サーガ】には、機関の発足時から集められている各地の妖魔の出現率や種類、今尚世界の各所に存在する妖魔の巣窟【ダンジョン】、勇者個人の情報、【戦技】、クラス、聖装についてなどの情報が入力されている。勿論、それらは機密性が高いものも含まれているため閲覧には機関所属の勇者であることが求められ、個人識別用のIDカード、パスワードが必要であり、機関の一部施設の情報閲覧専用のパソコンからしか閲覧ができない。

さらに、その情報の中でもロックが掛けられているいるものもあり、一定以上の権限を得た者しか閲覧できない情報もあった。


たった今驚愕の声を漏らしたエレオノーラの権限レベルは【ミスリル】。

下からブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、アダマンタイト、オリハルコン、ダイヤモンドと並べられる権限レベルの中でもかなり高い方だ。


国防上の観点から、政府の一部高官(日本なら防衛大臣や総理大臣など)や王族などにはそれなりの閲覧権限が機関から渡されている。それはエレオノーラも例外ではない。しかし、そんなレベルを持ってしても東雲迅という男の情報は少しも……実際に本人に聞けば分かる程度のことしかわからなかった。


「ミスリルでわからないってなると……」

「国家機密レベルってことですね」


エレオノーラの呟きを拾ったのはノエル・ミシア・フォン・リーリヤ・アーネルト。エレオノーラの付き人のもう1人だ。スラックスを穿いた姿は少しの凛々しさも相まって個性的な可愛さを出している。

肩の辺りで揃えた薄い蒼の髪を揺らし、エレオノーラの後ろからPCのモニターを覗き込む。


「そうなると……」

「機関のデータベースにクラック掛けますか?」

「ノエル、できる?」

「無理ですね。合衆国の国防総省ペンタゴンのものより硬いらしいですから」

「そうよね……さて、現状わかってることは……」

「クラスは魔法剣士(仮)、聖装は普通の……いや、普通に見える長剣、属性は恐らくエレオノーラ様と同じ雷、聖力量、親和率は共に不明。固有戦技に関しては……恐らくあの〘霹靂〙という〘雷解きの螺旋撃タラニス・ヘリクス〙と似たモノといったところでしょうか」

「(仮)?」

「まだ、彼が魔法を使ったところを見てませんから。魔法なら魔法陣があるはずですし」


一般的に、勇者の使用する魔法では魔法陣が虚空に浮かびあがり、そこから魔法が放たれる。勿論、一部の魔法では魔法陣が造られることが無いなどの特例はあるものの、殆どの場合はあると考えて良いだろう。もし仮に迅がこの話を聞いていたなら「アホか」と鼻で嗤っただろうが。ここで言うことでは無いが、言わせてもらうと魔法発動の際に魔法陣が一々可視化されるというのは迅からしたら2流の証明そのものだ。にもかかわらず、魔法が発動するときには必ず魔法陣が可視化されている。というのを信じきっている彼女達……ひいては勇者達は迅から……一流、いや超一流の魔導師からしたらひどく滑稽なものだ。

そもそも、魔法陣なんてものは敵に見せてはいけないものだ。もし仮に【無詠唱】などという特殊技能を会得したとしても、熟練した魔術師なら放たれる魔法の属性を魔法陣から察することができるし、なんなら発動する魔法の種類も、その効果もわかってしまう。戦闘用にある攻撃魔法において魔法陣などという魔法の情報の詰まったものは弱点以外のなにものでもないのだ。

だからこそ、本来なら魔術師は魔法を習得したのなら次はその習得した魔法の魔法陣の隠蔽ということを覚えなければならない。にも拘わらず、勇者達はそんなことに注力することは無かった。

まあ、人間同士で戦う事もあまり無いだろうし、そもそも魔法陣を読むなんていう芸当ができる人間が存在しないので仕方がないのかもしれないが、備えあって憂いなしなんていう諺が存在するのだから多少なりとも考えてもいいのではないのだろうか。


「ねぇ……ノエル。アナタは本当にアイツが魔法剣士だと思う?」


エレオノーラにしては珍しい少し弱気な声音で彼女は質問した。


「それは……」

「聖装の効果で……っていうのならまだ良い。だって私の剣だってそんな感じだから。でも、もし……もし聖装云々関係なく本当に魔法も使えるんだとしたら……」

「殿下……」

「ちょっとキツイかな」


エレオノーラが強さを求めているのはヴァンヘイム王国の宮廷では有名な話だ。その理由は誰も知らないが、ただ貪欲に彼女が強さを求めているのは誰もが知っていた。

通説として、勇者のクラスに優劣は無いとされている。

しかし、一撃の強さという点だけを見るのならば魔術師の方が若干上回るというのは勇者なら誰もが知ることだ。だが、魔術師には詠唱という弱点がある。多少の身体強化は施せる魔術師でも、近接戦のエキスパートであるところの戦士には敵わない。故にそこを狙えば戦士職は魔術師を下せる。

それ故に、クラスの優劣は無いとされているのだ。


だがそれは魔術師が近接戦闘が行えないからだ。

もし、迅が本当に魔法も使えたとしよう。そうしたらどうだろうか。


剣では手加減されていた。

動きも自分の追える動きしかしていなかった。

自分は固有戦技を放った時には消耗があった。にもかかわらず帰ってきた技には自分以上の威力があり、迅に消耗は無さそうに見えた。


そんな迅が、魔法を使う。


もし、もっと広い場所で戦ったら……もし、彼が詠唱を短縮できる程の魔術師だったら。


さらに成長したとしても、自分に勝ち目はあるのだろうか。

その問の答えは出したくなくても自分のなかで勝手に出てしまっていた。








◇◆◇◆◇


翌日。


「東雲迅!貴方に決闘を申し込みますわ!」


教室に迅が足を踏み入れた瞬間。

今日こそは話し掛けようと息巻いていた少女達に先んじてそんな声と共に白い手袋が迅に当たった。


「……ふん!」

「ぎゃひん!」


次の瞬間には白い残像が金の縦ロールに飛来し、顔面に直撃していた。


「……次から次へと…………面倒な。王女サマの相手をして帰ったらナリヤンに絡まれて、ナリヤンの親を正論でどつき回してスッキリして寿司屋に行ったら今度は偉そうなジジイに『子供の来るところじゃない』だ。知らねーよ、クソが。それで?学校に来たら今度はお付きの縦ロールに手袋投げつけられて決闘だぁ?いい加減にしてくれよ。なんだこの面倒事とのエンカウント率。主人公かってんだ、クソ」


イライラオーラ全開で迅は持っていたカバンを机の上に置く。

ここ最近色々とありすぎて迅も少し嫌になっていた。

特に昨日なんて変な奴等に絡まれるわ、食事に行けば若い女性(大方キャバ嬢だろう)を連れた50代ほどの男に絡まれるわ。ストレスという一点で言えばここ数年であそこまで溜まったのは昨日が初めてだろう。

そこにこれだ。

昨日終わったはずの決闘騒ぎ。今度は付き人の方が決闘を挑んできた。昨日あれだけ力の差というものを手加減に手加減を重ねて丁寧に教えたというのにそれが分かっていないようだった。

そして思わず、ぶつけられた手袋をかなりのスピードで顔面に投げつけてしまった。

気付いた時にはもう遅し。

避けられたはずの手袋を避けるどころか逆に投げ返し、決闘を受けるという返事をしてしまっていた。


「もう面倒だ。お前、死なないように手加減はしてやるけど一応言っとく。もし死んでも文句言うなよ?」


そう言った迅の前に、一冊の本が顕れていた。

また決闘ですか。

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