建国祭始まる
この、厨房の中でも外の忙しさにが聞こえてくる。城で働く人も、慌ただしく、食事も早々に引き上げていく。明菜たちも、24時間体制で、皆の食事を作らなければ成らない。3部制交代で作るので、同室のアンリさんにも、中々会うことがない。この期間だけは、明菜もアルとは、逢うことが出来ない。寂しい気持ちが募るが今は、誰しも多忙な時期だから、辛抱するしかない。宮殿では、もっと忙しいだろう。アル、無理してないでね。明菜は今日も、一人寄宿舎に戻り、眠りについた。
アルフレッドの執務室では、謁見をする人達で、溢れていた。
「陛下。少し、休憩をされては、如何ですか?」クロウドが尋ねた。
「いや。いい。早く済ませてしまおう。」俺は、早く終わらせたいのだ。
「では。次のお方をお呼びいたします。」
俺は、執務を終えて、少しでも彼女に、逢いに行くつもりでいた。しかし、物事は思い通りには、いかない。自分自身が腹立たしい。次々に予定が入り込み、今日も彼女の顔も見る事すら出来ない有様だ。やっと自室に戻った俺は、バルコニーに立ち、彼女が眠りに付いたであろう館に、意識を向けた。明菜も、忙しく仕事をしていると思うと、俺が秘密を打ち明けていれば、辛い事もさせず、自分の側において置けたのに、今は後悔している。
明菜は、隣のベッドに、アンリが眠っている事に、安心した。
一人は、寂しくなる。日本に居たときは、家に一人でも何故か、寂しいと思わないのに、どうして此処では、人恋しくなるの。誰かが私の側に、居て欲しい。私の我が儘。明菜は自分の側に今誰に一番居て欲しいのか、心に問いかけた。私の心はアルに居て欲しいと叫んでいる。次に逢ったら、貴方の事が好きだと伝えよう。アルは私の思いに応えてくれるかしらん?決断した明菜は、ベットから起き上がり、アンリの眠りを妨げないように仕度をして、部屋をそっと出る。朝日を背に受けて、厨房に向かう。
今日も多忙な一日がはじまる。仕事が終わり、野菜の屑を捨てに、ゴミ捨て場に向かう。何処からか猫の鳴き声がする。野良猫が宮殿に迷い込んだの?明菜はなんとなくそのままにしておけず、鳴き声が聞こえる方へ探しながら進んだ。いた!木の上に白い猫を見つけた。ふさふさの真っ白い毛並で眼の色は片方が金色でもう一方は銀色珍しい猫だ。明菜は初めて視たこの猫は野良猫ではなさそうだ。今訪問されているお客様の大事な猫かも知れない。助けてあげなくてはと思い明菜は猫に呼びかけた。
「降りていらしゃい!」
「怖くないわよ!」猫は、木から降りられないのか、動こうとしない。しょうがない、私が木に登るしか、助けられないから。明菜は桶を置き、周りに、誰もいないのを確認して、木に登り始めた。上まで登り猫の側に、手を伸ばそうとした瞬間に、猫は飛び降りた。下には、一人の男性がいた。飼い主なのか?男性が猫の名前を呼ぶ。
「ミュウ!」猫は男の胸に、抱かれて甘えて鳴いている。
男は、木の下から、不思議そうに、私を眺めてる。薄情な猫の飼い主か?
「これは、珍しい物を発見したよ。漆黒の髪に、黒い瞳、何処の人形かな」笑いながら、猫を放すと、手を差し伸べてきた。
「さあ~僕の胸を貸そう!怖がらなくてもいいよ。おいで!」
誰が、いくもんですか。明菜は無視して、木から降りた。
「君、名前を教えてよ。いいだろ。僕は、怪しい者じゃないよ。」
「この国に、招待された者だ。名前を教えてくれないか。」
「私は、下働きの者です。身分のあるお方に、教える程のない者なので、失礼します。」明菜は頭を下げて、桶を拾いその場を後にした。
「僕、諦めないよ!君の事は、直ぐに見つけるから!」後ろから、声が聞こえる、聞きたくない。二度と、遭いたくない人物その1だ。
宮殿の大広間では、各国の王や跡継ぎの王子。王女。大臣達要人の人達でホールの中は煌びやかに、着飾った貴婦人達で、圧巻だった。そのホールの壇上では、竜王陛下が謁見の挨拶に、応じていた。
ボナール国の王と王子に王女の姿も。
「お兄様!何処へいってらしたの?」
「ミュウがね、僕に珍しいものを見つけてくれてね。楽しんでいたのさ」
「お兄様も懲りない方ですね!何時もがらくたばかりじゃありませんか」
「私は違いますわよ!」
「お兄様、私はどんな事をしても、必ずあのお方に、私を認めさせますわよ。そうしたら、私はこの大陸の王妃。必ず王妃の座を私の手に。」
「ミレーヌ、お前解っているのか?相手は竜王だ。竜族は魂が引き合う、つがいしか、愛さないんだ。まあ、つがいがお前だと良いがな。」
「そんな事、解って居りますわ。もしも、つがいでなくても、側室でも構わないのよ。私の魅力で、振り向かせて見せますわよ。」
「まあ、頑張ってくれ。そうしたら、我が国も安泰だからな。」
「僕は此処で貴重な宝石を見つけたのでね。僕もそれを手に入れたいのだ色々な思惑の中、時が過ぎていく。・・・・・・・
最終日は広間では、舞踏会の準備が、進められていた。
明菜達、厨房の人達も、一息でき今度は、自分達の祝杯の準備をしている明菜は、コック長にお願いして、自分も料理する許可を貰い、張り切っている。私は、日本で欲食べる<トンカツ>を、作る事にして、早速始めるこの国の人にも、美味しいと言って貰えると、いいんだけれど。豚肉を切り、小麦粉をつけて、卵を付けて油で揚げる。厨房の人達も、横目で見ながら、他の料理を作っている。明菜は料理を終わらせると、後片付けしてゴミ置き場に、ゴミを捨てに厨房を出た。外はもう薄暗い。木々の間を抜けて、裏の奥に有るゴミ捨て場で、桶のゴミを捨てた。
明菜の側に、男が近ずくと、ハンカチを明菜の後ろから、鼻と口を塞ぐ、
突然の事で、明菜の体は、崩れ落ちる。記憶が薄れる中、アル・・・・・宮殿のホールでは、煌びやかな宝石に、豪華な衣装を身につけた、紳士。淑女。各国の王族達に貴族達が、豪華な料理と最高級のお酒。優雅なオーケストラの曲に合わせて、ダンスを輪ができる。夜も更けて、盛大になる「此処に集いし我らは、大陸の統治者で有られる。アルフレッド陛下に、永遠の臣下の証として、礼を捧げる。」陛下に向かい、会場の全員が、膝を付いて、頭を下げる。陛下が立ち上がる。
「皆の者、頭を上げてくれ!そなた達が、我を望むならば、我は、そなた達の力になろう!」「陛下!万歳!」「陛下に御代が永久に!」
会場では、あちらこちらで、グラスの当たる音がして、皆が喜び、この良き時を堪能していた。陛下一人除けば、皆幸福に満ち溢れていた。
俺は、後の事をクロウドに、任せて自室に戻った。執事が部屋に、入り来客が謁見を求めていると。今直ぐにも彼女に、逢いに行くつもりだが、相手が、ボーナル国では、仕方がない。案内するように、執事に言う。
部屋に、入って来た人物に驚いた国王ではないのか。まさか、王女が。
「陛下、不躾な事だと思いますが。どうか私の願いを、お聞き下さいませ。」今と成っては、話を聞かねば、仕方がない。
「ミレーヌ王女が、夜半に一人で来られたのには、余程の事でしょうね?何かお困りの事が出来ましたか?」
俺が言うと、王女は優雅な礼し、此方へ近ずいてくる。取り敢えず、腰掛けさせて、話の内容を聞く事する。
「私は、陛下の事を、お慕いしております。」俺は咄嗟に拒絶した。
「陛下の事情は、私も存じ上げて居ります。陛下の愛が私には無い事も、解っております。それでも、陛下のお側に居たいのです。どうか、私の願いを、叶えて下さいませ。愛しております。」そういうと、王女は、俺の隣に座り、寄りかかって来た。王女を、俺の身体から離してから。
「ミレーヌ王女、貴方は、素晴らしい女性だ。何処をとっても、王妃に成られる資格をお持ちだ。しかし、私ではない。私の魂が求めている人ではないのだ。貴方は、何もかもお持ちだ。女性である美貌、容姿に地位。これから、貴方は、幸せになるでしょう。」
「いいえ!私の幸せは、陛下のお心が欲しいのです。」王女の涙姿は美しい。今の俺には、黒い瞳が光、表情豊かな顔を見せる明菜が好きだ。
その姿を目にしても、心中は動かない。俺の前で、顔を崩し大泣きし、喚いていた顔を、思い出す。俺の心中が、熱く悶える。
「私は、魂が引き合う者の所へ、行かなくてはならない。」
「淑女が、何時までもいては、行けない。執事に部屋まで送らせよう。」
王女は執事と共に、部屋を出て行った。花火の音が聞こえる。遅くなってしまった。明菜と二人で花火を見物するつもりだった。
慌ただしく、ノックがしてクロウドが、眉間に皺を寄せて、困惑した様子で俺の前に来て、動揺をした声で話した。
「陛下!明菜様の姿が、夕刻より、見た者が居ないのです。」
俺の血が、急に騒ぎだした。
「どうゆう事だ!詳しく言え!」俺は無性に自分に腹を立てている。
「はい!トムの話だと、ゴミ捨て場に、空になった桶が、落ちていたと。
誰かに、誘拐された可能性が、あります。今、全部の通用門を確認させております。宮殿の中は、極秘に調査して居りますので、暫くお待ち下さいませ。」
俺の大事な者を、奪い去った奴に、今までに無い感情が、俺の内側から沸き上がってくる。憎悪だ。憎い。此処で自分が冷静に対処しなければ、彼女を助けられない。頭を冷やせ、俺は自分に叱咤する。
「解った!・・俺はバルコニーに居る、情報が来たら知らせてくれ。」
俺は隣の寝室に向かい、ベッドの側を過ぎ、奥の部屋にある階段を、上がった。バルコニーの柵に手を掛けて、明菜の気配を探す。竜の目は、遠くまで、神経を集中さえすれば、見渡せる。しかしそれは、彼女が外に居る場合しか出来ない。建物の中までは、俺でも無理だ。しかし、気配は解る
明菜の気配は、微量だが解る。明菜!無茶をしないで、大人しく待っていろ。絶対にお前を、迎えに行くから。アルは、暗闇の方角に微かな、彼女の気配を感じていた。俺は焦っている。何時俺の前から彼女が消えて、いなくなると思うと、今直ぐにでも、迎えに行きたい衝動になる。必ず!お前を助けに行くまで無事でいてくれ。
明菜はぼんやりした頭で、自分に何が遭ったのか?どのくらい時間が経ったのかを思い出してみる。ゴミを捨てに・・・後ろから変な匂いがして・
私拉致されたの?誰に!自分が寝かされて居た場所から飛び起きた瞬間、身体が崩れる、身体全体痛いし重い、筋肉痛だ。頭もぼんやりして、思考がついてこない。自分を点検した。大丈夫!私の貞操は、今のところ取られていない。ちょっと安心した。もし、汚されたりしたら、もう二度とアルには、逢えないもの。今の明菜にはアルだけが心の支えだ。アルが居てくれるだけで自分は強くなれる。落ち着いて状況を確かめなくてはアルに二度と逢えないような気がする。この建物には外から鍵が掛かっている。床に毛布が敷いてあり、この上に私は寝かされていた。大きな声を出しても、物音はしない。私、置き去りされたの?それとも後で、誰かが来るのか?明菜は少し薬が、切れてきた頭で、状況を確認しはじめた。ここには、天井近くに、明かり取りの為の小さな窓が一つ。光の入り方すると昼頃か?昨日の夕方拉致されたのなら、宮殿から此処まで連れて来られた。相当の時間が経っている。厨房の皆もきっと心配しているわよね?トムもアンリもあんなに楽しみにしていた無礼講なのに。皆私が作った<トンカツ>食べてくれたかな?アルもきっと心配してくれているよね。(ごめんなさい・・アル!)貴男に逢いたいよ!今は集中して此処からでなくては!ドアの横に水とパンが置いてある。犯人は餓死させるつもりは、ないとゆう事。今は、生かして置く。きっと、犯人はここに来るわよね。でも誰が?ふっと嫌な顔が浮かぶ。猫の飼い主の顔が!私の人生最悪だ!異世界まで来て好きな人に告白も出来ずに、幸せに成れないなんて絶対に嫌よ!誰とも判らない嫌な奴に殺されて、孤独に死ぬ運命だなんて惨めだ。
お願い!アル此処にいるから、助けにきてよ~アル、貴方が好き・・・・
明菜が消えてから9時間経過した。
階段を慌ただしく上がってくる。クロウドが来たな。
闇夜に目を閉じ、自分の愚かしさを、悔やんでいた。もっと前に、告白していたら、今頃、こんな事態にさせずに済んだはず。きっと、怖い思いをしてると、想うと胸の奥がずきずき疼く。早く助けてやりたい!
「陛下。一台の荷馬車が北の門を、夕刻過ぎに出たと報告があります。」
「それで、荷台は確認したのか?。」
「門番の話では、いつも来る者で、荷台までは確認しなかった様で、私の落ち度でございます。」
「その者の、身元は分かっているのか?」
「その件は、ダグラスが、動いて居ますので、直ぐに解ると思います。」
「他に、この城から出た者は、居ないのだな!」
「はい!宮殿の中は、極秘に探させております。」
「いや!彼女は、此処にはもういない。クロウド!あの先は何処へ行く」
クロウドは、陛下の指指す方向に、目を向けた。
「あちらの方角には、古い城が、有るはずですが。今は相当荒れ果てて居るはずです。陛下!まさか!其処に明菜様が、お出になると!城も崩れております。」俺の五感が告げている。彼女は其処に居ることを。
「確証ではないが、彼女の気配が、微かにするのだ。俺に告げている。」
クロウドは、自分の思いは、間違いでなかったと、異世界から来た。彼女が陛下のつがい。彼女が竜の姿でいた、陛下の前に突如現れたのは、偶然なのではない、必然だった。お互いの魂が呼び合ったのだ。それが、<つがい>俺とした事が、なんていう失態を犯しているんだ。もっと依然に明菜様を保護して居れば、この様な事態だけは、避けられたはず。
「陛下。今より、宰相の職を辞任して返上します。どうぞ許可をお願いします。」この、災厄の中で、彼奴はとんでも無いことを言い出した。
「クロウド、突然、何だ!俺を見放すつもりか?」
「いいえ!私は、この命に変えても明菜様を、陛下の前に、お連れしたいのです。」クロウドも混乱してるな。こんな姿をみたのは、初めてだ。
「お前には、遣る事がある。後の事は、お前に任せる。いいな!」
「彼女を迎えに行くのは、俺の役目だ。俺のつがいを取り戻しに行く。」
支度をしてくれ!ダンカンに手配をさせて欲しい。
その時は、一人の王子が城を出たのを、気付いた者は、いなかった。
明菜は、思案していた。誰の仕業か解らないけど、逃げ出すチャンスは、
必ず在るはず、その為には、食べて於かないと、逃げ出せない。堅くなったパンを水で流し込む。森があるのか近くに鳥の声が聞こえる。
耳を澄ますと、遠くから、馬が駆けてくる、それも段々近くに来る。誰か!助けて!と声を出しかけて、押しとどめた。きっと、犯人だ
馬の嘶きが聞こえる。誰かが階段を上がって来る。ここは、二階、違う三階、もっと上なの、飛び降りるのは無理だ。(明菜、諦めては駄目よ。)
アルに告白しない内は死ねない!自分を叱咤して、相手が来るのを待つ。・・・・・
ドアの鍵が開けられたら直ぐに飛び出して、階段を降りる。頭の中で此処から逃げだす為に心の準備をする。ドアが開いた瞬間・・明菜の前に男が居た。・・
「ごめんね!僕の可愛い人。寂しかったよね。僕の大事な物を、こんな薄汚い所に、置いていくなんてね。」あの、猫の人だ。
「何故!こんな事を!これは、人を誘拐し監禁するのは、犯罪ですよ。」
「僕の、思った人で嬉しいよ。僕は、君が欲しいんだ。僕の物に、なってくれない。不自由はさせないよ。君が欲しいものなら、与えてあげるよ」
「こんなの間違ってる。私は物は要らないし。不自由はしてない!」
「僕には、君が必要なんだ。僕は、君の様な人に遭うのは、初めてだ。
だから、僕の物になってくれないか?」
「貴男!勝手な事ばかり言わないでよね!人の事を物扱いして!」
「そんな勝ち気のある君も好きだな!正に僕好みの人だよ!」
この人には、話が通じない!説得は無理だ!実力行使しかない!
「私は、貴方の事は、知らないし、それに・・私は好きな人がいるの。」
「だから、私は、貴方の物には、成らないわ。」
「じゃあ。君が拒否するなら、強引な扱いをするしかないよ。」
明菜に迫ってきた。嫌だ。早くこの場を逃げなくては、男を突き飛ばして部屋の外へ出た。下へ降りる階段には、もう一人の男がいる。咄嗟に明菜は、上に行く階段を登りだした。下から男が、追いかけてくる。上は屋根がなく、床も所処崩れている。下を見ると結構な高さがあり、降りられる様な所もない。絶体絶命の明菜は決断した。男は余裕で明菜の側に、迫る。
「これ以上、寄らないで!来たら私、此処から飛び降りるわ!」
男は、脅し文句だと、思って此方に足を踏み出した。その瞬間、明菜はその場を後に、飛び降りた。最後にアルに逢いたい・・・・・・・・・・・
本来の竜の姿で俺は、彼女の気配を追いながら、朽ち果てた城に向かっている。後方には、ダグラスと護衛騎士の姿が、馬で駆けてくる。
城の上にいるのは彼女だ!危険だ!一人の男が彼女に迫っている。
その瞬間彼女は屋上から身を投げた。俺は夢中で飛一瞬の差で、彼女を受け止める事ができた。彼女を失うと思った時、身体が震えた。
明菜は堅い衝撃ではなく、柔らかい竜の背に乗っていた。目を開けて下を見ると、騎士が周りを囲んでいた。竜は私を背に乗せたまま、飛んでいる。そして着いた所は、夕焼けに染まった湖。
私が最初に着た処。この世界に着いた場所。ファレン湖だ。私を高い岩の上に降ろすと話し出した。心中に響くような声で、竜が話し出した。
「俺の事が怖いか?」
明菜は初めて眼にした時のように、恐怖は無く、唯綺麗だと思った。
「貴方のこと、触れてもいい?」竜は静かに眼を閉じる
明菜は手を伸ばし、そっと鱗を触わりながら、呟く・・・・・
「とても宝石の様に堅くて綺麗」
竜の首に、唇を寄せる。何故か愛しくなる。アルの眼の色と一緒だから。
「私、貴方の事知っているの。貴方に逢うのは、二度目なの。私が初めて、この世界に来たとき、湖で月光を浴びている貴方は、崇高で、美しい姿の貴方から、目が離せませんでした。怖くはないです。」
明菜はそっと手を伸ばして、竜の頬を触った、竜の目を見る。紺碧の瞳は優しさに満ちあふれていた。明菜は無意識に、竜の顔にキスをした。竜は明菜を岩の上から降ろした。その瞬間に一人の男性が現れた。竜王様?輝く白銀の髪に、青い目。なんて綺麗な人、完全なシンメトリー。あっ!アル!アル!なの・・・・・・・・
今度は、アルの姿になった。俺は明菜を抱きしめた。この腕に抱くまでは生きたここちがしなかった。俺は彼女の身体を骨が軋む程強く抱きしめた、俺は彼女の行動を怒っていた、彼女に告げた。俺が恐怖の感情を持つのも初めてのことだ。それまでに彼女を失うのが怖い。
「明菜!あの高さから、飛び降りるなんて、馬鹿げてる。もし俺が間に合わなかったら、と思うと肝が冷えた。もう二度と、するな!」
アルがこんなに激怒するのは初めての事だ。
「アル。ご免なさい。私自分の事しか、考え無かったのね。アルがどんなに、心配して呉れてたか、私アルの為に自分を大切にするわ。」
「私、あの男に強姦されたら、もう二度とアルに顔を見せられない。逢うことも出来ないと、それを考えたら自分が死ぬ事なんて怖くは無かったの
アルに逢えない方が怖かったから。心配かけて、ごめんなさい。助けに来てくれてありがとう。」もう一度抱きしめ合った。
「明菜、騙すような事をして、悪かった。私は、明菜を愛している。この気持ちは、嘘偽りのない俺の気持ちだ。俺の側に居て欲しい。」
「明菜、元の姿でもいいか?」明菜は頷く。竜王の姿になる。
「明菜、俺は後悔している。早く俺の気持ちを告白してさえ入れば、この様な危険な事にならなかった。許して欲しい。」
明菜は今度は自分の気持ちを素直に伝えようと思った。
「私、アルの事が好き!大好きよ。でもアルは竜王様で、本当は竜で、それぞれ姿は違うけれど、中身は一つだから、貴方の事も大好きです。愛しています。」
俺は、壊れそうな華奢な身体を今度は、柔らかく彼女を抱きしめた。お互いの魂を、確かめるように、抱き合った。彼女の唇に接吻する。彼女の頬が赤く染まり、恥ずかしそうに。俺に縋る。彼女が愛しい。頭の髪に俺は、唇を押し当てた。もう二度と危険なめにはさせない。俺が守る。
俺の腕の中に、彼女を抱いて座り、彼女の頬に両手ではさみ、眼を見つめて俺はプロポーズをした。明菜を永遠に愛し、守ると誓う。
明菜は祖父から聞いた、伝説の話しをした。日本にも、遠い昔竜が現れて、村の娘と恋に落ちたと。村は一度災害に見舞われ、大被害に成った時、竜が現れて村の復興を助けた。竜人と娘の幸せは長くはなかった。娘の寿命が尽きたのだ。竜人は嘆き悲しんで、悲嘆し娘の後を追って自害した。
その後、村人は、恩人の竜人と娘の祠を作り、龍神様として神社に奉られる様になったのだと。明菜は、その神社の階段から落ちて・・・・俺の処へ、きたのだと。
俺は、不思議な気がした。もしや前に聞いた、つがいを探しに行き、戻って来ない王子の話は、明菜の世界で、龍神に成ったのではと、王子のつがいは、双子の姉の方で、明菜の祖先は、妹が古い祖先だとか。明菜は、俺の処に着たのは、偶然ではなく必然なのだ。俺は自分の祖先の王子に、感謝した。彼女も同じ様に感じて、お互いに、見つめ合う。どちらともなく
寄り添い、唇を重ねお互いの気持ちを確かめ合った。
静かな湖畔には、二つの影が一つに重なった。
俺は、幸せの頂点にいたが。彼女は少し不安そうだ。思案した明菜は、話し出した。
「アル、私はアルの側に死ぬまで、居られるけど。アルを一人残して逝くのは辛らいの。」俺はその事が、不安の原因で安心した。
「明菜は、そうかまだ、知らないよな。人間も竜のつがいに、なれば竜と同じように、年を取る、俺の祖父も祖母も、父や母達も竜族の国で、幸せに暮らしているよ。可笑しいよ、そんな事で、不安そうにしてたのか。」
「明菜、お互いに、気に成る事は話をしよう。此から先時間はタップリ或る。愛を深め合う時間も・・・・早急にというなら今でもいいが。」
明菜は、竜王陛下は案外、触りたがりのエッチな性格なんだと判明。
普通の高校生が、高貴で美しい人と恋人になるなんて、これこそ夢を観ているんじゃないかと思う。夢でもいい永遠に覚めなければ・・・・・・・
竜王は明菜を背中乗せ宮殿に戻った。バルコニーに降り立つと満面の笑みを浮かべたクロウドが膝を付き臣下の礼をする。
「陛下。明菜様も無事の御様子、嬉しく私は今宵のことは、感激で終世
忘れは致しません。陛下もお部屋の方へ、明菜様には大変お疲れございましょう。まずは、お部屋に御案内致します。陛下には後ほど、お会いする事にして、さあ、参りましょう。」
宰相様に急がされて案内された部屋は私が最初に寝かされいた部屋だ。侍女としてメアリー様とアンリが待っててくれた。再会を喜んだその後は、プロポーション抜群の二人がかりで、服を脱がされてお風呂タイム。
自身のない身体を二人にお世話されるのは、二度目の拷問の時間なのです。私は姫でもお嬢様でも在りません。一庶民なのです。お風呂は好きですが、一人でのんびり入りたい。普通お風呂は疲れを取り、リフレシュする為に入るはずだけど、この世界は疲れます。風呂は一人で入りたいです!!!(王妃になったら、断固入浴は一人で!)
其れで駄目なら、大きなお風呂を作って皆で入る法律を作る。
(裸の付き合い法案を提出しよう!)
(もちろん!混浴は禁止!)
明菜には、今までの出会いは、物語の序幕で、始まったばかりだ。
これからも、明菜には、未知との出会いが、次々あるだろう。
明菜の側には、永遠に愛し守ってくれる人がいる。
明菜を略奪したボナール国の王子は、世継ぎの地位を剥奪されてた。
実行犯の者は、刑に罰せられた。王女は他国の王子と結婚が決まった。
トムとアンリは、宰相様の手の者で、影ながら私を守ってくれていた。
明菜は、婚約してから、1年後にグランシャル国の王妃になる。
名前は、アキナ・イル・スターレット
王妃就き侍女はメアリーとアンリ
明菜が無事王妃に、成れたのは、二人の侍女と宰相の、汗と涙の努力の賜物である。
追伸
何故か、グランシャル国では、レストランにトンカツがメニューに記
露天ではカツサンドが売り出されて。評判になり、今ではトンカツ巡りツアーが流行りだした。