陛下と宰相の事情
周辺の国の王や王子と姫。そして貴族たちと国の要人達が、続々、このグランシャル国に訪れていた。俺は何度も経験してきた事だ。気乗りがしない。
「陛下!どうなされたのですか?」クロウドが尋ねた。
「何でもない!」俺は、苛立っていた。
「私には、そうとは見えませんが。何か?御気分が宜しくないように、見えるのですが?」クロウドは、俺に気使いし過ぎる。
「いい気分とは、いえんな!また、面倒な式典が始まると思うと、気分も悪くなる。」3年に一度とは言え、茶番にすぎる式典には、嫌気がさす。何度も経験すれば、仕方がないのは解っているが、今は、式典より彼女に
俺の秘密をどう打ち明ければいいのか、俺には最も重要な事なのだ。
「そうだったんですか。私はまた違うことで、気持ちが沈んでいらっしゃると思いましたが?」クロウドは、頬笑みながら言った。
「意味ありげな言い方だぞ!」やはり、察しのいい奴だ。クロウドに相談してみるか・・・駄目だ。何よりも望んでいる奴に話したら、請求に事を運びそうだ。彼女には俺が、最初に告白しなければ・・・・・・・
「私とした事が、とんだ失礼な事を申しました。」
「では、明菜様にお願いしましょうか!」クロウド!気は確かか!
「何を!!言い出すのだ!」と、激怒してみるが、完全に見抜かれた。
「陛下!失礼ながら、あなた様にはもう御自身のお気持ちに、気が付かれていると思いますが?明菜様は、貴方に様には特別なお方だと・・そうではありませんか?」クロウドの言う通りだ。俺の魂が欲求する。
「私は、この時をどれほど待ち望んでおりましたことか。」
「明菜様に、御身分をお話下さいませ。きっと、貴方様を受け入れて下さいます。」クロウドは歓喜に浸っている。
「お前の気持ちは、良く解ってるつもりだ。しかし、明菜はこの国の者では無い。国の理も知らぬ。そして竜族のような、相手がつがいとは解らない。今、俺が本当は竜だと知り、彼女に拒否されたらと思うと、心底心が震えるのだ。」彼女に対しては、俺は臆病者なのだ。
「・・・・・・・しかし。何時かはお伝えしなければ、陛下!!」
「解っている。この、建国祭が終わった後に打ち明けよう!」
「解りました!私の御無礼をお許し下さい。」
「明菜の事は宜しく頼む。」今明菜が、消えてしまったらと思うだけで・・・・俺は怖い(竜王の俺が恐怖を感じる)
「はい。万事手抜かり無く、ダグラスにも伝えてありますので、どうぞ御心配なさいませんよう。」彼女に近ずく無頼者は、今は居ない様だ。
「そうだな。お前の子飼いも側に居るようだし、任せる。」
この時は、まだ俺は、気付いてなかった。心底後悔する事に。