アルフレッドとクロウド
「陛下!お茶の支度をしましたので、少し休憩をなさって下さい。」
「クロウド、何か俺に云いたい事があるのか?」
「さすが!陛下!よくぞお分かりですね」
「まあな・・いつも俺の尻を叩いて仕事をさせるお前が、休めとは?気持ちが悪いぞ?」
「陛下が私に内密に、明菜殿にお会いに、なっていらしゃるようですね!」何だか今日のクロウドは機嫌がいい。
「何も、陛下としてでなく、アルになって会ってるだけだ!」
「私には、同じ事だと思いますが?」クロウドの顔が笑っている。
「別に、お前に黙っていたのは、ただ、あいつは俺の事を助けてくれた恩人だと思っている。それだけだ!」クロウドは今度、眉間に皺をよせる。
「私は、陛下が明菜殿がお好きならば、お側に置いて下さっても良いと思っております。陛下付きの侍女になさっては如何です。」
「今までこの俺が、側に侍女を置かないのを知っているだろ!今更ない」
「私は、もしかしたら、陛下の唯一人のお方になるお方かと思いましたが違うのですか?」クロウドは疑惑の目を向ける。
「・・・・・・・迷子のようで放って於けないだけだ!」
「陛下にとって、それだけ気になる存在と云うわけですね。」
「明菜殿から、アルと二人で町に行く、外出許可願いが、出されました。どういたしましょう?」今日のクロウドは可笑しいぞ?
「なんだ?分かり切った言い方は!」
「では、明菜殿の今度のお休みの日は、アルにも休みを差し上げねばなりませんですね。」
俺は、ぬるくなった紅茶を飲み干した。
「では、陛下にはアルの分までも、頑張って書類を終わらせて頂かなければなりません。」やっと、いつものクロウドになった。
「お前は、やはり鬼だ!」
「お褒めにあずかり、恐悦至極であります。」
その後、何枚も分厚い書類を、俺の机の上に置いて行った。
しかしその仕事も、今は気にならなかった。数日後に彼女と、二人で町に出かけるのだと思うと、嫌な書類の処理も苦にはならない。