英国のEU離脱?と今後の情勢について
英国の国民投票の結果について興味が出たので書いてみました。
・・・特にキャメロン首相の逃げっぷりに最大の賛辞を贈ります。
イギリスの国民投票が終わり、僅差4%で離脱派が勝利した。
その後の報道が激しいが、いくつか気になった点があるので筆をとってみた。
まず、今回の選挙のやり直しを求める声だが・・・間違いなくやり直しはしてはいけないし、行われることはないと思う。
これは、嘆願書は国民投票だからと理由はつけてはいるが、議員選出の選挙と何ら変わることない選挙方法で行われた以上、正当性には疑いの余地がない。やり直しを行えば議員選出の根拠に関わる大事になりかねないので再選挙はないだろう。
今回の選挙結果は事前に予想していたものとそうでないものが混じっているが
「EU離脱」は起きるだろうと知人には話していた。
その後に英米同盟強化しかないだろうという、観測もつけてだ。
今回一番驚いたのはキャメロン元首相の退陣である。
これはキャメロン元首相の政治センスを示す良い例だと思う。(良い行動かどうかは別にする。)
キャメロン首相は批判が燃え上がる前に退陣してしまった。
この結果、EU残留希望派にしてみれば、首相の指導力不足を問う前にいなくなってしまったので、離脱派にその不満を向けることになる。
結果、残留は結束を高めながら、キャメロン元首相は影響力を保持しつつ、最小限の傷でカーテンの後ろに隠れてしまった。
見事な逃げ足であり驚嘆に値する。
国民投票はリスボン条約第50条のトリガーに該当すると明言しておいて、結果が出たらトリガーを引く役は他人に押し付ける。
人としてどうなのかは別にして、政治家の判断としては見事なまでに鋭敏である。
以前の私のキャメロン首相への注目度は高くなかったが、今回の行動で欧州での注目すべき人物の一人になっている。
次の首相は誰であれ、非常な苦労が待っている。
EUから英国が離脱するにはこれからリスボン第50条の各項目について順次、消化していくことになる。
リスボン第50条第3項に関連する第218条3項についても確認してみたが、すでにEU首脳陣より速やかな離脱の声明が出ている、そして独、仏、伊の声明で協議断絶の宣言がだされた。
交渉部門はEU首脳陣とその外交部門が独占的に取り扱うことから、離脱することになるのは間違いないと考えられる。
英国がEUを離脱する時期はともかく、離脱を前提に欧州情勢を考えると中々興味深い状態になっている。
アメリカは欧州での拠点を失わないために、イギリスの支援とEU内での親米国の作成に全力をあげるだろうが、この時点ではまだ候補や政策が未確認なので今回は触れない。
大統領選も絡むので流動的だが予想としては順当ならトルコ、大穴としてはイタリアが挙げられる。
さて欧州単独の構図で考えた場合に、英国の不利な要素だけが喧伝されているが、果たしてそうなのかということが疑問点である。
世論調査でも経済的には中長期的に悪影響が大きいと自国民にも判断されているが、実は経済的には大きな不利は存在しないのではないのだろうか?と考えている。(もちろんEU内での英国へのネガティブパッシングはあるだろうが)
市場規模としては確かにEUは大きい。
しかし、市場の堅牢さで見た場合にはポンドとユーロはポンドの方が堅牢である。
EUにはPIGS問題がまだ解決の目途が立っていない。これを失敗した場合には通貨価値は下落することになる。
EUとしては今回、英国の国民投票を見せしめに結束を強化することを目的にしているのは確実だが、反面国民投票で反対多数になれば離脱容認となる前例になってしまった。
ギリシャ、スペインあたりでは経済的にきつくなった時に離脱という選択肢を与えたともいえる。
今回スペインの改選でEU独立派が席を増やせなかったのは、国民が別の手段を提示され、冷静になったとも考えられる。(いざとなったら国民投票!)
英国は金融市場においてはベテランであり、ロンドン株式市場はイタリア株式市場を子会社化している。
経済面では、まだまだEUが簡単に手切れできるような単純な絡みではないのである。
今後の情勢について簡単にまとめておこう。
欧州半島では仏独の影響力が一層強まるが、一方で露の干渉力が強くなる。
これは経済圏というよりエネルギー保障の点から確実と思われる。
その結果東欧が動揺すると予想している。
EUの加盟国でも中東欧の国々はNATOには加盟していない国々が多い。
(旧ワルシャワ条約の影響である。)
英国はNATOの主要メンバーであり、海外への展開力についてはおそらくアメリカに次いで世界第2位の能力を持っている。
よってNATOより英国を追い出すことはできない。
石油資源について考えてみると英国は北海油田を有しているが、ドイツは電力不足で恒常的にフランスの原子力発電所からの電力を購入している。
また欧州へのガス・石油の供給はロシアのコーカサス油田からのパイプラインの影響が大きい。
こうやって見てみると中長期的にはユーロの方が不安材料が大きいのである。
他方、英国の方もとんでもない爆弾を抱えることになるが・・・その処理だけ済ませれば・・・あとは最悪普通の長期不況で済む。瓦解という可能性は低い。
英国の爆弾は「北アイルランド独立派」である。
20世紀には爆弾テロの代名詞みたいな集団であった。
この再燃が起きると思われる。
もっとも今回は有力な味方が欧州半島にできたので、過激派にならなくても支援がもらえるので、テロの可能性は低くなってはいる。
個人的には独立を認め、アイルランドに併合させるのが英国にとって一番良い方策だとは思うが、歴史的、感情的な問題からすんなりいく可能性は低いと思っている。
ともあれ、そろそろ纏めよう。
今回の英国のEU離脱は10年スパンで考えるなら、英国にとっては決して悪い選択ではない。
おそらく現状より4%程度はましな選択である(時に民意は神意を示す。)
ただし、10%、20%改善を望む層の不満は高まるので、いかにそれを散らすかが英国の指導層に求められる。
(現実的にはNAFTA加盟も視野に入ると思う。)
一方でEUにとっては痛恨事であり、強がって対応したことが致命的にならなければよいがと不安に思っている。GDPでいえばフランスと並ぶ大きな優良市場が消えたのである。
英仏独と独仏伊、同じ3国でも重みがまるで変ってくる。
ECBは難しいかじ取りを求められることになりそうである。
しかし毎回不思議に思うのだが・・・イタリアはなぜこんなに都合のいい場所にいるのだろう。
そこそこで、脅威にならず、かといって見捨てられず、どこかの代用が必要な時には手を挙げられる。
・・・ベネチア以来の伝統なんだろうか?
次は予定では大統領選後にその結果を考察する予定です。