襲撃、シュバルツバルト
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ヴィルヘルムは行軍の馬を借りて、アイゼンシュバートを越えロートブルクへ一足早く移動していた。何故か、ヴィルヘルムについて来たヴァルターとヨハンという男達がいたが、それは気にしない事にしていた。
ヴィルヘルムはアイゼンシュバートにリーゼロッテ女王の書状を持ってベリンハルトと出会い、強襲作戦を伝え、ベリンハルトからの許可を貰ってロートブルクの軌道列車の駅にやって来ていた。
奇襲を掛ける際に平原を走っていけば必ずばれて奇襲にならない。到着2日前には斥候によって見つかり、連絡はシュバルツバルトへ早急に送られる。しかも現在は軍隊を集めて向かわせようとしている最中である。
リズの案は、相手が奇襲だと気付いたころにはシュバルツバルトの街中にヴィルヘルムを投入すると言うとんでもない作戦である。
これを行なえば、投入された戦力は、街中で孤立無援になり敵に囲まれるから絶対に行わない事だ。しかし、昨年のクーデターでは見事に功を奏した荒業でもあった。
つまり、軌道列車を使ってヴィルヘルム・フォン・ファルケンという最高戦力を一気にシュバルツバルトへ投入すると言う策である。
ヴィルヘルムは軌道列車に乗り、列車の準備は行なわれており、最後の出発に際して、渡された指示書どおりに操縦桿を押して軌道列車を発車させる。
普段ならば安全性を考えて6時間程度の時間を掛けて列車はロートブルクからシュバルツバルトまで移動するのだが、今回は異なる。
本来あるべき、満員の客や重量のある荷物を事故なく送り届けるという前提を無視すれば、今回のケースはスピード重視で客はいないに等しいので、出力を考慮して倍以上の時間で辿り着けるという事だ。つまり3時間未満でロートブルクからシュバルツバルトまで駆け抜ける事になる。
恐らく誰も見たことのない高速で移動する軌道列車に乗っているヴィルヘルムは先頭の運転席で、壁の上に見える景色が変わるさまを眺めていた。
何故か、そこまでもついて来ていたのがヴァルターとヨハンである。
「で、何故にお前らまで付いてくる」
「こうなったのも、何も分からずクラウスに爵位を譲った私の落ち度だ。それに…妹がケーニヒの為に死を覚悟して戦っているのに、のうのうとしてはいられない」
「私は貴様を倒す事を目標にしているんだ。貴様が誰かに殺される等許容できぬ」
ヨハンとヴァルターは当然のように口にするのだが、
「言っておくが知らぬぞ。この作戦、そもそも重大な欠陥がある」
ヴィルヘルムは呆れるように二人の男を見る。
「その位分かっているさ。街の中で孤立無援となって戦うのだろう?」
「そんな事で怖気づくほど弱者に成り下がったつもりはない」
自信満々に語るヨハンとヴァルターなのだが、ヴィルヘルムは首を横に振る。
「どうもしっかり調整して無かったらしく、ブレーキ…と呼ばれる車両を止める為の機能が壊れているらしい。つまりこの速度のままシュバルツバルトの駅にぶち込まれるのだが」
……
「それは死ぬだろう!」
「ちょっと待て!聞いてないぞ!」
ヨハンは慌て、ヴァルターは涙目で訴える。物凄い速度で景色が遷り変わる状況に、流石の2人も取り乱して訴える。
「いや、何も聞かずに帯同して我が物顔でこの車両に乗っていたのはお前らだろう」
「大体、奇襲するなら正面から馬で行っても構わなかったのでは?1人や2人で相手も慌てまい」
「いや、私はウルリヒに警戒されているからな。私を見れば1000人以上の軍隊は集めるだろう。そもそもファルケン本家は一騎当千で一人前という家訓があってだな」
落ち着いて説明するヴィルヘルムはそもそも最初にリズに全て話を聞いていたからだ。
「お前らの家はおかしいから!」
「お前の親父の方がおかしいわ!」
ヨハンの叫びに対して、極めて当然の指摘をヴィルヘルムがする。ヨハンも黙るしか無かった。ヴァルターは、身内にさえ閉口される元最高権力者がどこまで変人だったのかと改めて思うものがあった。
「まあ、私は…途中で魔法を使って空に逃げれば良いか」
「途中でそんな事をすれば、軌道列車が来て待ち構えている軍隊に魔導銃で狙い撃ちされるのだろうな。哀れな」
「お前!どうやってそこから逃れる気だったんだ!?」
「とりあえず、何でも斬れば良いだろう」
ヴィルヘルムは何を言っているか理解できないとばかりに首をひねる。
「「何も考えて無かった!?」」
ヨハンとヴァルターはヴィルヘルム自身が成り行き任せの適当な考えでいた事を知って、同時に2人で頭を抱える。
「ヘルムートやらヴィルヘルムやら、各家を代表する名を継ぐ人間と言うのは計画性がないのか!お前の思考は私の父にそっくりだ!」
「失礼だな。私はあんな破天荒じゃないぞ」
「ドラッヘ家のミハエルはもっと理知的だ!貴様らのような家と一緒にするな!」
3人で文句を言い合いながら軌道列車はかつてない速度で進み続ける。ほぼ直線なので、どんなに速度を出しても脱線する事はなく、3時間どころか2時間ちょっと程度でシュバルツバルトの市内へと突入する。
街の中には軍隊が多く見られる。さすがに軌道列車が来るのを察していたようで、線路の外側に待ち構えていたようだ。終点となっている駅より遥か前方、シュバルツバルトの街に入って直の場所には魔導砲が存在しており、突入するのを避けようとしているようだった。
「邪魔だ」
ヴィルヘルムは前方の線路脇で構える軍隊を窓から見て刃を一閃する。
前方に見えた軍隊を、先頭車両ごとぶった切って吹き飛ばす。
電車の前方が火を噴き、あちこちに火花が飛ぶ。だが、それでも電車は速度を簡単には緩めない。
「おい、後の車両に移るぞ」
「お、おう」
急に前方の車両がオープンになってしまい、進行する事によって強い風を受ける事となったヴァルターとヨハンは慌てて後の車両に走っていた。
ヴィルヘルムは当初の予定通り、二両目に移ると前方をぶった切った先頭車両とのつなぎ目を刃で切り離す。
故障して火花を飛び散らせながらもスピードを緩めない軌道列車の先頭車両は駅の方へと走っていく。対して、ヴィルヘルムらの乗っている二両目以降の車両は先頭車両から供給される魔導力が途切れ、ゆっくりと速度を下げていく。
だが、止まろうとする車両に乗ったヴィルヘルム達へ、赤い色調の鎧を付けた大公軍や魔導銃を多く抱えた銀色の鎧を身にまとったリュミエール軍が、シュバルツバルトの中央の方向から数多のわき道を使ってぞろぞろと駆け寄ってくる。対して、一般市民は驚いて必死になってその場から離れようと逃げていく。
「さあ、行くか。邪魔するなよ。お前ら弱いんだから、間違えて斬り殺しかねん」
前方の奥の方で巨大な爆発が起こり天上へ登るような炎と黒煙が巻き上げてられていて、駅は炎によって燃え落ちていた。
ヴィルヘルムはそれを一顧だにせず、軍隊のやって来ている方向へと視線を向ける。
「貴様こそ足を引っ張るなよ!」
「斬るだけしか能が無いのだからな!」
ヨハンとヴァルターも張り合うように文句を言って、ヴィルヘルムの後に続く。
軌道列車による駅の爆発を切欠にシュバルツバルトは戦場へと変わった。
ヴィルヘルムは遥か街道の先に見えるシュバルツタワーへと向かう。
大勢の一般市民がヴィルヘルムから逃げるように走り、逆に大勢のリュミエール帝国軍がヴィルヘルムへと武器を持って迫ってくる。
巨大な盾をもって隊列を組んで前方の街道を封鎖する重装歩兵。左右の横道から走ってやってくるのは魔導銃を持った銃士隊。
だが、ヴィルヘルムは堂々歩きながら、建物ごと遠距離攻撃系の魔煌剣により魔力の斬撃を飛ばして、遠距離から攻撃可能な銃士を悉く切り殺す。勢い余って近くに立っていた住居も真っ二つになり崩壊し、崩壊に巻き込まれて潰されされる兵士たち。
重装歩兵が進軍してくるが、ヴィルヘルムは足を止めずにそのまま前進し、刃ですべてを切り殺していく。
重装歩兵を全滅させた後、街道が再び眼前に広がるのだが、今度は魔導砲の砲門を台車に乗せてやってくるリュミエール軍が現れる。街中だと言うのに問答無用で魔導砲を打ち込もうとしていた。
「いたぞ!」
「撃てーっ!」
彼らは躊躇もなく魔導砲を撃ってくる。
「ふっ」
ヨハンが前に出て魔防御障壁を張り、攻撃から全員の身を守る。
「我が名において命じる。天地の狭間に移ろう疾き者、我が声に耳を傾けたまえ。我が示したもう形は真空の刃、向かうべきは眼前!断空」
ヴァルターによる魔法の呪文が紡がれて、真空の刃が魔導砲を切り刻み、同時にその準備をしていた兵士達は一網打尽となる。
「ふっ…これで借り1つだからな」
「剣術馬鹿はこれだから」
ヴィルヘルムの背後で得意顔となっているヨハンとヴァルターがいた。ヴィルヘルムは面倒くさい連中だと心の中で呟く。別に撃たれる前に斬れたのだが、まだまだ先は長いので、味方をしているうちは放っておこうと考えて、とにかく先へ進行する。
すると遠方にあるビルの屋上から巨大な魔導砲の砲門が一行へ向いていた。
凄まじい轟音と光と共に強力な爆撃がヴィルヘルムら一行を襲う。ヴァルターとヨハンもそれが遠くにあるので気づくのが遅れて障壁を張れなかった。
ヴィルヘルムは刃を斜めに一閃し、魔導砲の爆撃を切り裂き一行を守る。同時にその一閃から繰り出された魔煌剣は魔導砲が設置されていたビルを斜めに寸断し、ビルが音を立てて崩れ落ちていく。
さすがにそれを見たヨハンとヴァルターは目を疑う。
ヨハンはヘルムートの亡骸の発見した場所があのように倒壊した建物ばかりだた事実を思い出し、何があったのかとずっと訝しんでいた。どうやらビルを刀で本当に切っていたらしいと察し、一気に顔を引き攣らせる。ビルを拳でぶち壊す変人の父親を見てなかったら、あまりの恐怖で腰が引けていただろう。
やって来る敵兵を悉く殺していくヴィルヘルムの剣は、全く迷いがない。
勝利の愉悦も、殺人への躊躇も、手を汚す悲嘆も、一切存在せず、淡々とした作業のように敵と言う敵を切り伏せていく。
ヴィルヘルム・フォン・ファルケン。
1000年において2人しかその名を名乗っていないファルケン家に伝わる最強の武人の名と同じ名を授けられた青年は、歴代3人目となるヴィルヘルムとして、過去の名声を凌駕する力量をしめしていた。
(ゲルハルトが異なる時代に生まれていたら名を継いでいた?冗談じゃない、これは明らかに規格外だろう!こんな者とまともに戦える存在なんてありえない!)
ヨハンとヴァルターはそんな思いに駆られてヴィルヘルムの背を見る。
「怪物が…。魔導砲をビルごと斬るとか常識外だろうが…」
ヴァルターはぼやく。
「は?お前らはヘルムートやミハエルの肉親だろうが。彼らを見てきたのだろう?長短違えど彼らも私と大差なかろう。ヴィルヘルムを継いで以来、死を覚悟するような戦いをしたのはベヘモスとヘルムートとミハエルの3度くらいだ」
ヴィルヘルムはぱっと思い出せる戦いをぼやくのだが、ヨハンもヴァルターも同時に『ベヘモスと人の肉親を同列に並べないで欲しい』とは思うのだが、敢えて口にはしなかった。
そんな無駄口を叩きながらも、眼前からは鉄に身をまとう屈強の軍隊が迫り、背後からも騎兵が束ねて街道を踏みつぶすようやって来る。
ヴィルヘルムは迫り来る敵を、間合いに入るや否や次々と斬り殺していく。騎兵に至っては馬ごと3~5人まとめて切り落とす。
まるで竜巻が街の中を蹂躙するように死と破壊をまき散らして進んでいく。
弓や魔法や銃弾や砲弾さえも、全ての飛び道具が切り落とされて、街道付近の建造物は次々と切り落とされて崩れ落ちていき、飛び道具を扱っていた人間たちはむしろ切り殺されるよりも建物に押しつぶされて朽ちていく。
どんな騎馬にのった歴戦の軍人も、数多の敵から味方を守ってきた屈強な重装歩兵も、次から次へと真っ二つになって切り殺されていく。
赤鬼、鬼神、そんな異名がつく筈である。
ヨハンやヴァルターも迫る敵を必死に倒していくが、足元の草を払うように刃を振って先へ進むヴィルヘルムの姿は別格であった。
彼がライオネルに対してヤブ蚊を殺すのに大きいも小さいも一々覚えてないというような事を口にしたが、まさにその程度のものなのだろう。ちょっとやそっとの強さでは、彼には到底及ばない。
一行はシュバルツバルトの都市を黒いモノリスのようなシュバルツタワーへ向けて1時間も歩いていく。長く見慣れた街並みの光景は、前方はすべて軍隊に埋め尽くされ、そして背後には死体の山が存在していた。
やがて敵の部隊も連携を取る様になってくる。
左右からは巨大な盾を構えた重装歩兵が埋め尽くして、前方からは魔導銃を持った軍隊が道を埋め尽くすように30人ほどが隊列を組んでやって来る。
「構えーっ」
指揮官と思われる男が声を張り上げ、魔導銃を持った男達は銃の照準をこちらに向けて構える。
だが、そんな悠長な事をやらせるほど甘くもない。
「構えずに撃て」
ヴィルヘルムは刃を一閃させ魔煌剣による飛ぶ斬撃を放ち、前方で魔導銃に指をかけて構えていた銃士部隊を一瞬で首と胴を切り離して全滅させる。
さすがにその光景は全員が驚いたようだが、次いで左右から重装歩兵が襲ってくる。ヴィルヘルムからすれば重装歩兵ほど楽な敵はいない。鈍重なので、簡単に殺してくださいと訴えているようにしか見えなかった。重装甲であっても魔力を刃に集中させた魔煌剣ならば、簡単に切り落とせる。問題は横も縦も大きすぎて前に進み難くなるだけだ。巨大な障害物が前方に転がる事になるので進行し難くなるのだ。
速度を欲していた時にこの図体の連中が現れると非常に厄介だった。
「何をウダウダしている、後の2人。足手まといになる為について来たのなら今すぐ帰れ。帰る方法知らないけど」
「くっ化物め」
ヴァルターもヨハンも負けることは無いがかなり押し込まれていて苦しそうにしていた。
ドラッヘ家からすれば、単純な魔法では重装歩兵は止まらないので非常に厄介だった。
破壊の拳を持ったレーヴェ家であっても重装歩兵相手には一度接触せざるを得ないので力で押し込まれてしまう。
「魔法でピンポイントに急所を貫くなりすれば良いだろうが!その触れただけで殺せる拳なら別に相手の攻撃を避けながら触り続けてりゃ終わるだろうが!後ろで押し込まれても、こっちはお前らが邪魔で切れないのだ!邪魔しに来ただけなら今すぐ死ね!」
「貴様に文句を言われるまでもないわ!」
「誰が足手まといだ!」
後の2人は意地になって敵を撃退する。
ヴァルターは氷の刃を降らせて鎧と鎧の隙間に刃を貫かせて、敵をせんと不能にする。ヨハンは前からぶつかるのではなく、避けるようにして相手の鎧をレーヴェ家秘技でもある震拳による一撃で鎧の中の人間にダメージを与えて倒していく。
だが、ヴィルヘルムの助言をそのまま実行する辺りが既に精神的に負けていた。
たった3人の襲撃で、シュバルツバルトは一気に混乱の坩堝と化した。
「敵が多すぎる。足止めされている間に大公やリュミエールの偉い所が逃げる可能性もある。ヴァルター、ちょっと空を飛んで偵察して来い。私はこのまま進軍してシュバルツタワーに殴りこむ」
「…確かにこのままではあの塔に辿り着くには時間が掛かる。私1人なら魔法による空中浮遊で余裕だがな」
自慢げに語るヴァルターだが
「宙に浮けば下から狙い撃ちにされるかも知れぬが、あいにく私はお前の生死に興味はないから安心して行け!」
「安心できるか!」
そうは文句を言いながら、ヴァルターは空を飛んでビルの上へと乗り移る。案の定、空へと魔導銃を向けて、銃士隊がヴァルターに向けて撃ち続けるが、ビルの屋上に登って影になるヴァルターを仕留めるには至らなかった。
そして他所に銃口を向けている愚か者はヴィルヘルムによって反抗する間もなく斬り殺される。
ヴィルヘルムの歩いた後は、真っ赤な人の死体の絨毯が敷かれた様に駅から延々と続いており、シュバルツタワー近くの大広場まで続いていた。
ビルの上からそれを見てヴァルターは改めてヴィルヘルムという戦力の恐ろしさを感じる。連綿と死体を生み出し続ける殺人兵器、ドラッヘ家に生まれファルケン家で育てられたリオの弟は、鬼神の名に違わない存在に作り上げられていたのだと理解する。
ヴァルターはシュバルツタワーの方を見る。
だが、そこで隼と剣があしらわれた紋章の入った馬車がシュバルツタワーの裏手から出て行く姿が目に入る。大量の軍艦が立ち並ぶ港へとその馬車は向かっているようだ。あの紋章はファルケン公爵家やファルケン大公家にあしらわれた家紋である。
「まさか、もう逃亡か?あるいは…リュミエール軍が駐留している場所を本陣にする気か?」
リュミエール軍が来ている中で、さすがに大公が逃亡するとは思えない。だがあの馬車は間違い無く大公だろう。そもそも、あれだけの巨大軍艦がいるのに逃げるとは考え難い。
むしろ、陸戦を想定しているから、港付近や船の上に駐留している大量のリュミエール軍は、鉄の鎧に身を固めて、すぐにでも飛び出せる状況が出来ているのだろう。戦いはシュバルツタワーまでではなくリュミエール軍本体の待ち構える場所へと移すことになる事だけが理解された。
そして、大量の魔導砲の砲門がついている軍艦は、確かにこの市街において最も高い戦力を持っていると考えられる。
ヴァルターはそれを伝えようと視線をヴィルヘルムらの方へ向けようとするのが、その途中で視界を横切ったシュバルツタワーの異変に気付く。
「ん?」
ヴァルターはありえないものがシュバルツタワーの頂上に設置されるのを目にしたのだった。
シュバルツタワーには魔導エネルギーを使った巨大な昇降機が存在し、それによって上層においても、巨大な絵画やグランドピアノ、あるいは使い古された軌道列車の展示会などが出来る。他国に無い圧倒的な技術力が詰まっているのだが、それを使って屋上からは市街の全域を見渡せる見張り台の役割も担っている。見張り台となっている場所には、なぜか望遠鏡ではなく巨大な砲門を持っている魔導砲が屋上に運ばれていた。
軍役の長いヴァルターも、相手がどうしようもないバカだとファルケン家の連中に言われていたことも加味しても、全く信じられないものがそこにあったのだ。
広域破壊魔導砲
およそ砲門の向いた方角に対して、街の終端まで全てを焼き払うような大量破壊兵器がシュバルツタワーの屋上に設置してあり、ヴァルターやヴィルヘルムらのいる方へと向けられていたのだ。
昨年の戦争でヘルムートがその攻撃を抑えたが、あれはあの化け物が斜線の広がる前に立って防御障壁を張ったからであり、またケーニヒ公国最高の防御障壁を張れる存在だからこそ被害をほとんど出さなかったのだ。
タワー屋上という場所では地面に到達するまでに、十分な広域範囲の破壊を齎す。なによりヘルムートのような防御障壁を張れるような人間は存在しない。そもそも町中に入ってしまっている以上、住宅が邪魔で防御障壁を大きく広げられない。防御障壁を得意とするレーヴェ家のヨハンとて自分を守るのに手一杯だろう。
万を悠に超えているだろうリュミーエル軍と大公軍は、未だヴィルヘルム討伐に雪崩れ込んでおり、現在も交戦中だ。自身が守るべき都市にはまだ避難していない民が大量にいる。
そこに広域破壊魔導砲が砲門を向けられているなんて、誰が考えようか。
「あのバカはこの都市そのものを滅ぼす気なのか!?」
ヴァルターはただ3人の襲撃者を滅ぼす為に、とんでもないものを持ち出した大公に恐れを抱く。
おお、初レビューが入ってる!驚きました。とっても嬉しいです。
そして仰る通り、大詰めです。
12月に入って、仕事が忙しくなり、ストックも付き、既定の物語なのに設定の違いで全く使えないものが多発する異常事態(笑)に直面。
やべー、物語の先をどう進めるんだ、俺…。みたいな状況でした。
3章あたりからそんな事を考えてました。年末年始はほとんど書けなかったものの、どうにか設定上の問題を頭の中では解決できました。ですので、一気に加速中です。最後までお付き合いいただけると幸いです。




