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最強剣士の血風伝  作者:
四章
56/61

翻意

 プフェールトの拠点を潰しに侵攻するべく、アームズ帝国軍3万と共に5千の王国復興軍はリズと共に同行する。鉄格子を隠すように出来ている馬車に乗せられて、オリバー、エメリ、トルーデ、ヨハンの4人が人質として獣人軍に輸送される。


 中央に女王の馬車、その直後ろに人質の入れた護送馬車、その前後に王国復興軍と名を変えたファルケン私兵団5000が縦長に並び、その左右前後を守るようにアームズ帝国軍が進んでいた。




 リズたちが乗る馬車は進み続けて6日になる。

 プフェールト領の城塞都市グアステに向けていた斥候が戻って来ていた。その報告はリズの予想を遥かに超えたものだった。


「グアステが崩壊している?」

 リズもライオネルもそれを耳にして目を丸くしていた。

「どういう事?」

「城門は壊されていて、中のリュミエール軍や大公軍の兵士と思われる人間達はあちこちに死体となって転がってました。少数ですが難民達が城砦の外へ避難してこちらに向かっていましたが…」

「…反乱して軍を倒したとでも言うのか?だがあの城砦も餓死者が頻出して、もはや戦力はないと聞いていたが」

 ライオネルも怪訝そうに首をひねる。

「ですが、これで邪魔者がなくあの城塞都市を滅ぼして敵の攻撃をさせ難くする事が出来るという事ですね?」

 遠征軍のファルケン側の指揮官であるフェルナンド・マイヤー子爵は少し明るい声で口にする。何せアームズ帝国が戦うといえど、彼らも戦場に向かっている。いざという時は戦わなければならなかった。連戦連勝といえど、倍の数を持つ敵と戦うのは恐ろしかった。

「では、このまま侵攻しましょう。我々ケーニヒ軍はこのまま生き残っている住民の救助に向かいます!ただし、敵が潜んでいるかもしれないので、広範囲に渡っての確認を再度お願いします」

 リズは声をかけ、フェルナンドが指揮を始める。


 だが、その時、アームズ帝国軍は何故か一斉に女王たちの場車の方へ体の向きを変える。

 それは王国復興軍を丁度取り囲むようにである。王国軍は何が起こったのかと全員が周りを見渡しながら浮き足立つ。

 眉根に皺を寄せてリズは直近くの馬に乗っていたライオネルを睨みつける。

 ライオネルは馬に乗ったままゆっくりと馬を旋回させてリズの方へと向き直る。

「どういう事?」

 リズの問いにライオネルはふんと鼻で笑う。

「どうもこうも…見てのとおりだ。ここでお前らには死んでもらう」

「バカな!私達を殺せば、ケーニヒはウエストエンドに匹敵する魔都になるわよ!あなた達の欲しいのはこの大地でしょう?」

 リズは立ち上がってライオネルに訴える。

「そうだ。そこに貴様らが我らの庇護下に入るから、我等もまた貴様らと行を共にしてきた。後々を考えれば貴様らによって平定された土地を約束どおり手にした方が、よほど簡単に手に入る。混乱したケーニヒと戦を起こして手に入れるというのは非常に面倒な事だ」

「ええ。我等をここで殺せば非常に面倒な方向へ倒れる事になるわよ」

 ライオネルの説明はこれまでのアームズ帝国の立場を正確に口にしているし、それはリズの想定の中だ。だから、自分達を滅ぼすなんてまともな判断ではない。頑強な武人でありながらしっかりとした判断能力を持った将軍だという評価をしていた。ここに来て何でという思いが大きい。

「不思議そうな顔をするな。我らはこの100日に渡る戦いの中で、後々この土地を支配するのに一番厄介なのがリュミエールなのか、滅んだケーニヒの残党なのか、ずっと考えてきた。一番厄介なのは貴様だ、リーゼロッテ・シュテルンブルク=ケーニヒ」

 ライオネルはバスタードをリズへ向けてハッキリと断じる。

 全員がその言葉に反応し、リズは強く口を結んでライオネルを睨む。

「確かにお前はこれまで幾度となく、窮地の舵取りをしてこの大地を守った。我等にとっても素晴らしいパートナー足りえただろう。だが、余りにも上手すぎる。これは脅威に他ならない。我が国のジェイムズ総督を超えうる知略を持った王のいる地ほど、今後の支配において厄介な土地はない」

「………」

 リズはどうしてという思いがあるが、同時に心の中で冷静な自分は失態に気付いて歯噛みする。そう、リズはやりすぎてしまったのだ。それは獣人達に脅威を持たせるほどに。アームズ帝国に出来るだけ負担を持たせないようにしたやり口で取り入ろうとしたのだが、それが余りにも巧妙すぎて彼らが恐れてしまった。

 リズは人質のいる馬車を一瞥する。

 そして自分に従ってきた王国復興軍を眺める。彼らは絶望的な表情で、縋るように自分を見るが、この状況を覆すような戦略はない。裏切られるというのは想定外だった。彼らはここで無駄な兵力を使うのを良しとしないと思っていたからだ。

「プフェールト領グアステに、私抜きで勝てると思っているの?兵士が潜んでいるかもしれない」

「貴様へは最終報告として流していたが、我々はその前に斥候から細かく話は聞いている。多くの難民が既に西へと動き出していた。リュミエール軍や大公軍と思われる甲冑を着た男達は悉く死んでいたそうだ。その死者の数は…悠に数万はくだらないという。将軍格の首が落ちていたから間違いがないそうだ。つまり兵士が潜んでいたとしても軽く蹂躙できるだろう」

「何でそんな………。ん?……将軍の首が落ちていた?刃で切られていたと?」

「そう聞いている」


 リズはその言葉で1つの可能性が出てきた事に気付く。

 しかし、このままでは恩人達に対して顔向けできない。せめて人質だけでも解放したいという思いが募る。

「先に言って置くがこの場にいる人間は1人たりとも生かして帰す真似はしない。口を封じれば、アイゼンシュバートにいる連中は我々を信用して明け渡す可能性があるからな」

「……」

 リズは悔しさに塗れた表情でライオネルを睨みつける。

 リズとて大きい群集の動きは予測がつくのだが、人の頭だけはどうしても読めない。戦略戦術を立てても、すべての人間が考えうる要素を挙げたつもりでもだ。リズ自身がもっとも脅威に感じられるとは思っていなかった。当人はこの戦で死ぬ覚悟でいたのだ。そこまで自分に高い評価はしていない。自分という駒が最も危険に思われるという事実に、全く気付いていなかった。


「終わりだ」


 ライオネルはリズの正面に立ち、バスタードを掲げてその首を落とそうとする。リズももはや抵抗する意味もないので、諦めて自身の最後を享受する。多くの後悔が残る終わり方だ。

 だが、駒のように人間を使って多くの人を殺し殺された女の末路なんてこんなものかもしれない。

 ライオネルの刃が振り下ろされ、リズは目を閉じて最後の時を待つ。

 衝撃音が響き渡り、リズの背後にある玉座が吹き飛ばされる轟音が響き渡る。


 リズはその音を聞いても自分が生きている事に対し、不思議に思って恐る恐る目を開ける。


 ライオネルは刃を大地に振り下ろして馬車に突き刺さっていた。

 リズは何が起こったのか、周りを見渡し、そして自身の斜め前にとある男が長刀をもって立っていることに気付く。

 リズはその男の顔は見えないが、見なくてもその男が何者なのかはすぐにわかった。

「どうやら、よく分からないが色々間に合ったみたいじゃないか」

 そんなどこか緊迫感のない声が懐かしく感じる。

 ここが戦場でなかったら柄にもなく抱きついてしまう所だった。相変わらずタイミングの良い男である。


「貴様、どこから湧いてきた」

 ライオネルは突如現れた男を睨みつける。男は右手に持った長刀でライオネルのバスタードを受け流してリズへの攻撃を退けたのだった。

 ライオネルは自身の力を受け流す力と技量を持った剣士がこの土地にいるなど考えてもいなかった。獣人達の目にも止まらぬスピードでこの場に飛び込む速さはもはや脅威である。

「どこからって虫じゃないし。正面から走って来ただけだぞ?何かいきなりこんな場所で殺し合いをしようとしているから何だ何だと近付いてきたら、人を呼びつけた女が死にそうになっていてな。殺す前に状況を聞かないとこっちも駆けつけた意味が無い」

 男は長刀を肩の上に乗せつつ、端的に説明をする。

「呼びつけた…?」

 ライオネルは眉根に皺を寄せてリズを見る。リズも極秘裏に何かしら動いていたのは察していた。援軍でも呼んでいるのかと思っていたが、これがリズの呼んだ援軍なのかと怪訝そうに感じる。だが自分の刃を華奢な体で受け流した技量は、自軍においても早々いないレベルである事を示している。

「何者だ?」

「何者も何も……この頭と目を見れば分かるだろう?ヴィルヘルム・フォン・ファルケン…しがない流れの剣士だよ。最近じゃ赤鬼呼ばわりされて凄く心を痛めているがな」

 ヴィルヘルム……それは200年前の戦争での勇名然り、去年の戦争でも多くのアームズ軍兵士を殲滅したとも噂される鬼神の名だ。

「ほう………なるほど。では、昨年の戦争で、アイゼンシュバートにて我が弟を殺したのは貴様か?」

「知らん。ロートブルクに侵攻する獣人族は殺し続けたが、そこにお前の弟が混ざっていた等一々覚えていられるか。苦戦の1つもすれば覚えようが、ただ襲ってくる敵を蹴散らしただけだ。お前、ヤブ蚊を払った際に大きいヤブ蚊か小さいヤブ蚊なのかを一々覚えているのか?」

 ヴィルヘルムは明らかに挑発した物言いで口にする。自分の友人を手にかけようとしていた男だ。特にへり下る必要もないと判断していたのだろう、かなり存外な口振りでライオネルの質問を切って捨てていた。


「つまり貴様は俺に喧嘩を売っているという事でよいのだな?」

「そも、我が友人と同胞に刃を向けている以上、貴様らを殺す事に何の躊躇もないが?喧嘩を売っていたのはそっちが最初だろう?まあ、口論で退いてくれるなら喜んで付き合うぞ?いい加減に人斬りは飽きた。つまり……私はお前を見逃してやるというのだが、どうだろう?」

 だが言葉は完全に喧嘩を売っている。

 見逃すというのも本心だが、恐らくそうならない相手であることは明らかだった。

 そもそもライオネルもヴィルヘルムも勝つ事が当然のように生きてきた人種で、戦う相手は殺す側なのだ。刃を向けなければ見逃してやるという、どちらも上から目線なのである。

 無論、ヴィルヘルムは見逃してやるといわれれば喜んで戦を回避するだろうが、自分から見逃すと口にして、相手のライオネルが喜んで戦を回避するような男ではないのである。

 だが、この場で交戦をしない理由はライオネルに存在しなかった。


「つまり……貴様は死にたい訳か!我が弟の仇、ヴィルヘルム・フォン・ファルケン!この場で死ね!」

 ライオネルは両手でバスタードを持って、地面に刺さった刃を抜き、ヴィルヘルムを横薙ぎに切り落とそうとする。

 だが、そんな喧嘩売ってから攻撃態勢に入るような愚鈍な男を前に、既に刃を抜いていたヴィルヘルムが躊躇する事もなかった。

 ライオネルは刃を持ち上げた頃には頭から股間にかけて一筋の光が通過する。

「!?」

 ライオネルは何も理解できない様子で、大量の血を噴出したまま、真っ二つにされて地面に倒れ伏す。

 ファルケン家の人間の間合いの中で喧嘩を売るなど愚の骨頂であった。己の能力を過信した獣人は戦いを始めた次の瞬間には絶命する事となる。もしもまともに戦っていればそれなりに戦えたのかもしれないが、相手が悪かったとしか言いようがなかっただろう。



 その瞬間、周りの兵士達が一気に動揺が走る。

 ヴィルヘルムはリズのほうを見て訊ねる。

「リズ。状況が分からないのだがどうすれば良い。敵の大将を教えろ。獣人族は強者に従う連中だろう?そいつの首を落として追い返す。囲まれた状態ではさすがに全員守りきれん。敵将の場所はどこだ?」

 ヴィルヘルムは周りを見渡す。

 そんなヴィルヘルムの様子に、リズは思い切り頭を抱える。

「今、アンタが切り殺したのが、私達を取り囲んで殲滅しようとしていたアームズ軍の敵将なのだけど」

「はあ!?ちょっと待て!こんな雑魚がアームズ軍最強の一角なのか!?」

 ヴィルヘルムの驚愕の声はアームズ帝国軍の兵士達を一気に恐怖のどん底にさせた。ドラゴンスレイヤーの称号を持つ一騎当千の武将ライオネル・ランカスターを苦もなく瞬殺した男は、獣人達の頂点を雑魚と言い切ってしまった。それ程の力をすでに見せている相手である。

「ヴァルター!アームズ軍だけを蹴散らせ!」

 ヴィルヘルムはプフェールト方面の側を振り向いて大きい声で指示を出す。

 刹那、空より氷の矢が獣人達へピンポイントで降り注ぐ。その容赦ない魔法攻撃によって獣人達は次々と倒れていく。

 将を失い、混乱した獣人達は雲の子を散らすように街道を外れて、南の方へと走って逃げて行く。



 ヴァルターの襲撃と5000人の追い打ちにより、獣人の3万軍はあっという間に逃亡に入ってしまう。

「ふむ、何かよく分からないが、これで良かったのか?」

 ヴィルヘルムは逃げていく獣人達を見送りながら溜息をつく。

「……どこから説明すればいいのか悩んでいるだけよ。そして…何でヴィルヘルムを呼んだだけの筈なのに、ディオニスの隣にあのヴァルター・フォン・ドラッヘがいるの?」

 ゆっくりと前のほうから歩いてくるのはディオニスとヴァルターの2人だった。

「知らん。何かついてきやがった。使えそうだったからそのまま連れてきただけだ」

 ヴィルヘルムもなんでヴァルターがついてきたかあまり良くわかってない。

「で?お前の目標たるオリバー達はどこに捕まってんだ?」

「そこの護送者の中に囚われてるわ。私が逃げないように常に人質としておいていたから」

「なるほど」

 ヴィルヘルムは納得すると、離れた牢屋へ向けて刃を一閃させる。

「あの護送車は魔力を通さない強力な牢屋だから、魔煌剣であってもさすがに切れたりは…」

 ガコンと音が響く。護送車の壁がずるりと落ちて見事に牢屋が開放される。

「……何かもう凄くあきれるくらいに疲れてきた。あんた、もうどっか行って良いよ。私の悩みとか凄くちっぽけな気がしてきた」

 さすがのリズも肩から力が抜けて座り込んでしまう。

 護送車のドアが開き恐る恐るオリバー達が顔を出す。次いでヨハンも顔を出して、そしてライオネルが真っ二つになって転がっているのを見て絶句する。

「大体、貴様の悩み等、以前からちっぽけ過ぎるだろうが。どうせ、今回も万と言う人間を戦に巻き込んで殺し合わせている事に悩んでいるんだろう。バカめ、私はその数をこの手で斬り殺しているんだ」

「……そうだったわね」

 いつもならここでヴィルヘルムに反撃の1つもするのだが、それをする元気も無かった。だが、そんなリズをヴィルヘルムは怪訝そうに見る。

「疲れてそうだな」

「疲れるわよ。でも…最後の私のミスで5000もの人達を殺させずに済んで良かった。ありがと。お父様に殺される瞬間に現れたりと、2度も人の窮地に現れたり、普通の女なら惚れてる所よ」


 そんな中、2人の方へやって来る男がいた。ファルケン系貴族のフェルナンド・マイヤー子爵である。この集団の実質的なトップの人物である。

「お久し振りです、ヴィルヘルム様」

「?……私は貴族でもなんでもないただの人斬りだ。マイヤー子爵閣下に様呼ばわりされるほど偉い人物だった記憶はないつもりだが?」

 ヴィルヘルムは首を捻りながらマイヤーに疑問を返す。マイヤーもまた、かつてはヴィルヘルムと敵対していた立場にある。ヴィルヘルムは元々公爵位をライナーに明け渡さなければこの土地の公爵だった男である。

「それを言うなら私とて大公国に反旗を翻した貴族でもなんでもない男です」

「なるほど。で、何か用か?」

「手を貸していただきたい。我々はこれより東部に向かってプフェールトの城塞都市グアステを城砦を崩す必要があります。そこで、貴殿の力をお借りしたいのです」

 その言葉にヴィルヘルムは何かを思い出したような顔をして視線をそらす。視線の先には後方に歩いて来ていたヴァルターと目を合わせるが、ヴァルターはブンブンと首を横に振ってさらに視線をそらして、近くにいたディオニスを見る。ディオニスは恨みがましい視線をヴィルヘルムへと向ける。

 ヴィルヘルムは視線を遠くに向けていると、ディオニスは

「だったら、その件は必要ありません。ヴィルヘルム様が城砦をぶち壊してしまったので」

 とアッサリ白状する。

「いやいやいやいや、私ではなかろう。提案したのはヴァルターだ。あの場を支配していた将軍を殺しても何も終わりそうに無かったから、民を救うには常駐して民を虐げる兵士を一網打尽にしなければ意味がない。そう言ったのはディオニスだ。そして、民を外に出して城砦を崩壊させれば皆潰れて万事解決、混乱して出てきた生き残った兵など容易く葬れるし逃げる民を追うほど元気も無い筈だとか言ったのはヴァルターじゃないか!」

 ヴィルヘルムは慌てて手を横に振って自分の犯罪歴をフォローする。

「まさか、本当に城砦を魔煌剣で城砦を切り落として滅ぼすなんて思いもしないだろうが!ジョークを真に受けて実行するバカがどこにいる!」

「大体、1人で城塞都市を陥落させるなんてこっちだって思いませんよ!」

 ヴァルターとディオニスも慌てて首を横に振る。

「だが、お前らが主犯で、私はただの実行犯だろう」

「断じて違います!主犯も実行犯もヴィルヘルム様です。あえて言うならヴァルターさんが共犯です」

「待て、私は共犯ではないだろう。私が共犯だとするなら精々1%くらいだ。3%くらいはディオニスだろう!」

 3人で犯罪を押し付けあうように口にする。

「ぷっ……はははははっ!またいつものようにバカやっただけなのね」

 あまりにも変わってない様子に思わずリズも噴出して笑ってしまう。

「分かったわ。マイヤー子爵、こちらからも再度斥候を。状況によっては我らはこのまま引き返して防備に備えます。どの程度の破損なのか詳しく調査してください。難民がいるようだったら、そのままわれらと共にファルケン領まで連れ帰ります」

「承知いたしました」

 キビキビと指示を出すリズに、恭しくマイヤーは頭を垂れて、周りに指示を出す。軍はここで野営をして状況の報告を待つ事にする。

 ライオネル・ランカスターとの戦いを期待した方々、申し訳ありません。

 本章に出て来てあっさりと沈んだ七星序列2位の方がいたように、もはやどれほど周りに強いと思われていても、ほぼほぼヴィルヘルムとして完成しつつある彼の前では無力です。


 第1章にて剣の腕ならば既に極めてますし。

 第2章にて弱点を突いてくる経験値の高い国内最強を倒していて。

 第3章にて最も苦手な遠距離攻撃のスペシャリストを倒していて。

 そもそもライオネルにベヘモスが討てるとは思えないという時点で、ヴィルヘルムに勝てるという発想が全く思い浮かばなかったのです。実は戦闘シーンも考えていたのですが……成行き任せで、こんな感じになってしまいました。


 それと同時に、ヴィルヘルムも目の前の相手を倒す事だけではなく、如何に守るべきものを守るのかという、戦術的視点から戦略的視点へと主要課題が変わりつつあるのです。

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