女王リーゼロッテの戦う理由
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ヨハンは護送車で運ばれ、アイゼンシュバートの地下牢に放り込まれる事となった。
同じ牢屋にいる青年オリバーから状況を簡単に教えられる。
彼らはオリバー・ハインリヒとその家の使用人で、リズは前当主オズバルドの客人だったらしい。
彼女は王族の血を引くという話も前から聞いていたが、ずっとそれには触れないでいたそうだ。リズはオズバルドに恩義があるとの事で、若輩の身で領主をする事になったオリバーに色々と領地運営や聞いたことのない新しい農法などを教えてくれて、今にも崩壊しそうな厳しい状況をどうにか踏ん張らせてくれた恩人だったもと言う。
ただ周りの領地は酷い状況だったようで、反乱を起こし、何故か彼女の事を王族と知っていた人間が現れて自分達を人質にして彼女を女王として祭り上げたというのがこれまでの経緯だったそうだ。
「なるほど。リズはファルケン系貴族領で世話になっていたのか。それにしても王族の身の上だったというのは初耳だ。彼女の母親には会った事は無かったが、使用人の娘だと聞いていた筈だ。いや、しかし……まさか父上はそれを隠していたのか?」
ヨハンはオリバーから聞いた話を分析するが、全く覚えのないことだった。可愛がっていた妹が実は女王家の血筋だったなんて初耳だったからだ。
「僕も詳しい事は知りませんが、ヴィルヘルム様はヘルムート当人にそう言われたと仰ってました」
「はあ?……待て、ヴィルヘルムは父と知り合いなのか!?」
「えと………」
オリバーはヨハンの問いに対して答えを濁す。
ヨハンは自分の知らない場所で何かが起こっていた事を察して問い詰めるのだが、オリバーは困ったように言葉に窮していた。ヨハンも訊ねてみたものの、よくよく考えればオリバー自身も蚊帳の外で後になって教わったという話をしていたのだ。
聞いたところで答え難い、あるいは答えを知らない事もあるだろう、とヨハンも余計な質問をしたと思い直していると、
「それについては、私が説明するわ。ありがとうね、オリバー君」
「り、リズさん」
牢獄の外に現れるのはリーゼロッテ・シュテルンブルク=ケーニヒことリズであった。オリバーは少しホッとした様子でリズを見る。
「どういう事だ、リズ。お前が女王の子孫だったとは」
「いや、実は…私もお兄様が本当に存じ上げていなかったとは思って無かったので。去年、私と会った直後にお父様が現れたから、てっきり私の素性を知ったのかと」
リズは説明をするが、ヨハンは首を傾げる。どうやら本当に分かっていなかったようだとリズは察して苦笑する。
「もう一度訊ねる。どういう事だ?」
「私は女王家三女にして元レーヴェ家の正室マグダレーナ・シュテルンブルク=ケーニヒの子、リーゼロッテです。生まれた2年後にご存知の通りレーヴェ家は女王家を滅ぼしてリュミエールに投降しました。戦時下において戦地から遠い、実家に離されていたお兄様は存じて無かったと思いますが、女王家が滅んだ際に母は離れに隠棲し、私は母の名や女王家の事を語られずに、妾の子のリズとして育てられました。お父様はもしかしたら自分で決着が付けられないようなら墓の下に持っていく積もりだったのかも知れませんね」
リズは少し寂しそうに口にする。
ヨハンも思い当たる事は多いにあった。情報が少なくて気づけなかったが、それだけの情報で十分に納得が行くものだった。ヘルムートは過去に誰かを探すような私設諜報部隊を有していて、ヨハンが公爵就任後もそれには一切関わらせていなかった。外部への漏れを防ぐ為に処置である事が容易に想像がついた。
だれよりもリズに忠誠を誓っていたマーレが、リズを誘拐したという件も変に感じていたが、レーヴェ家から逃げる為ならば納得は行く。裏切られた気がしていてマーレを憎んでいた自分が恥ずかしくも感じてしまう。
「言われてしまえば、確かに納得は行く。……しかし…ヴィルヘルムと父上とリズの間で、一体何があったと言うのだ?」
ヨハンはオリバーが言葉を濁していた部分に対してリズに尋ねる。リズも視線をそらし暫し考える。
「お兄様と再会した後くらいでしょうか。父に住処を嗅ぎつけられてしまいまして襲撃を受けました」
ヨハンは父にそのような話をしたのを覚えており、父は恐らくそれで動き出したのだと理解する。
知っていれば………否、知っていて自分は何をしたのか、それに関して、ヨハンは答えを直に出せなかった。
「父上は何故お前を殺す必要があった?公には知られていない事だろう?むしろそこで騒ぐほうが厄介なのではないか?」
「ドラッヘ家やファルケン家は極秘裏にその情報を掴んでいました。リュミエールも噂は耳にしていたでしょう。私の存在はレーヴェ家のみならずケーニヒにとってのアキレス腱となります。極秘なのでおおっぴらには動けない為に父はお兄様に伝えて無かったかもしれません。私はマーレと何度となく、保護をしてくれる貴族の家を転々としていました。その中に南部貴族もいましたし、今思えばどこから漏れてもおかしくは無かったと思います」
リズは申し訳無さそうにオリバーの方を一瞥し、そして再びヨハンの方を見る。
「そうか…」
ヨハンも何となくだが、逃亡生活を続けていた妹が大変だった事を察する。元より、実の父親に命を狙われる娘の心情を、自分が理解しよう等とはおこがましいとも思うのだった。
「だが、逃げて来たのだろう?何故、今になって逃げなかった?」
「逃げられる訳がないのですよ。お兄様は……私が今までどうやって暮らしてきたかご存じないでしょうから」
「今まで?」
ヨハンはリズに問われて首を傾げる。果たしてどうやって暮らしていたのか?女2人での逃亡生活はどう考えてもどこかで厳しいものになる。平民として暮らすにしても、マーレは犯罪者扱いで指名手配されているし、リズの逃亡当時はまだ幼かった。生きていくには余りにも厳しい。
「今までの逃亡生活において、私は常に政治の道具と見做されていました。女王の血筋を匿うのに何の見返りも求めない人がいるとでもお思いで?マーレ以外に信用も出来ず10年もあちこちの貴族を転々としていました。彼らは決まって、私をレーヴェに売ろうとしたり、リュミエールに売ろうとしたり、中には私を娶って王家の旗頭として三大公爵家を潰そうとしたり、あるいは私の能力を利用して成り上がり邪魔になれば消そうとしたり、誰も彼もがろくでもない企みごとを持って、善意を口にして擦り寄ってくる連中ばかりでした。私にとってマーレ以外に信用できる人間はいなかったんです」
そんなリズの独白にヨハンは口を閉ざす。小さい子供が腹黒い大人達に振り回され、信用できる忠誠を誓ってくれている騎士だけを信じて生きていく姿は、あまりにも厳しい世界だった事が容易に想像つく。
「オズバルド・ハインリヒ男爵はそういう打算を持たない人だったのよ。彼は若い息子を残してこの世を去った。短い期間だったけれど、彼は私に安息できる時間を与えてくれた。だから、せめて領地が軌道に乗るまで、彼を助けようと思っただけ。その矢先に私が今度は災難を振り撒いてしまった。せめて彼らを救わねば、死ぬ事さえ許されない。それが今の私の状況です」
「……そうか……。だが、よく父の襲撃を受けて助かったな。正直、あの父が何かを失敗する等想像もつかなかったが」
「偶然、通り魔に襲われている女性と勘違いした男が、私を助けてしまったので」
………
「通り魔と勘違い?」
「ヴィルヘルム・フォン・ファルケンが通りかかったのです。元々、ハインリヒ男爵は200年前にヴィルヘルムの弟子だった家柄ですから。私はヴィルヘルムに救われ、その伝でハインリヒ男爵家に厄介になってました」
「……ヴィルヘルムは……リズを使って何か利用しようとしていたのではないのか?」
「まさか。名前だけ先行していますけど、あれはそういう器用な人間じゃありません。考えるより先に人を切るような習性だけが身についた本物の天才剣士ではあっても、年齢は私と同じでも中身はてんで世慣れてない子供ですから」
「だが、あまりにも都合よすぎやしないだろうか?」
「もしもそんな企みがあったら誉めてやりたい位ですよ。ヴィルヘルムはお父様を殺して、満身創痍だった。私も流石に恩人を放置するのはまずいと思って、近くのハインリヒ邸に彼を運び届けたんです。2度ほどですが、彼と出会った際には何か謀りがあるのかと思って、どこに居を置いているか調べてましたし」
リズは苦笑して答える。
本人を知らないと、あの天然な青年さえも悪巧みをする貴族の様に思われてしまうのかと、さすがに哀れに感じてしまう。
「大体、父が私の素性をヴィルヘルムに話して、無理やり殺し合いに突入させた無茶苦茶な戦いですし。親子共々ごめんなさいとしか言いようのない状況だったのです」
「……」
案の定、ヴィルヘルムことユーリ君とやらに父は迷惑を掛けていたようだ。
ヨハンは何となく整理がついて、ここに至った状況を把握し、大きくため息をつく。
「お前はどうする積もりだ?今更…女王になる気もなかろう。とはいえ、戦争はどこかで終わらねば成らず、お前の立場はどっちに転んでも良いものじゃない。本気で勝てると思っているのか?」
「大事な人達を守ることが勝利だとするなら、手立てはいくつかあります。アームズ帝国はリュミエールから援軍が来た時点で手を引くことが推測されてます。その状況で、我々は2万の兵で25万の敵から民を守りきれば勝利です。長期戦、つまり冬さえ越えれば我々は勝てます」
「冬まで?」
「リュミエールは基本的に行軍途中の兵糧は持参しますが、戦闘を始めた際には滞在している領土から兵糧を取ります。シュバルツバルトの人口の半数に比類する兵力投入は間違い無く食料不足による国家崩壊が起こるでしょう。我が国がどうして兵力が少ないか忘れたのですか?国力保持の為に軍隊を極力減らしているんです。だから、その軍力の量を質で埋めてきた三大公爵家は敬意を持たれていたでしょう?」
リズから放たれる言葉は、ここに来るにいたるまでに薄々感じ始めていた違和感と、ケーニヒ大公国への絶望感を、ハッキリと示したものだった。
「大公は反乱分子を鎮圧する事ばかりに目を向けていて、自分達の状況を把握しているとは思えません。私は生きる為に、ケーニヒ大公国の民を餓死させようとする悪辣非道な軍師にもなるつもりです」
リズの宣言は、ヨハンの考えていた推測よりも遥かに恐ろしい事だった。
「ま、待て。だが、南部を早々とリュミエールが制圧すれば、その未来は…」
「お兄様、気付いていらっしゃっていないのですか?兵糧を失った大公国が、南部を滅ぼしたら、どこに食料が残るのですか?略奪しようと畑を耕す人間がいなければどうにもなりません。もって1年か2年でしょうね。たった半年で国を殺そうとした無能な連中ですよ?1年持つかも怪しい。この国の民を少しでも生かしたいからこそ、生き残れる方を守る事に徹しているのです。私も元より世話になったハインリヒ家の為に立ちましたが、この状況になったからこそ、王族の1人としてケーニヒの民が少しでも生きられる方向に尽力するつもりです」
ヨハンは一気に力が奪われたかのように肩を落として眉間をつまんで苦しそうな表情で俯く。
「俺が退いてから、そこまで話が進んでいたと言うのか?確かにクーデターを許す程度に国力が低くなっていた兆候はあった。だが、しかし…」
自分の未熟さが最も問題だった事に、ヨハンはただただ悔やむ。
「ハッキリ言えば…我等公爵家や王族は民を守る事にのみ考えてきたのです。ですが、リュミエールの実力主義と言う考え方が入ってきた事で問題が起こりました。弱者は滅んで当然と言うリュミエール貴族の考え方は、ケーニヒにおいては適用しません。大公やクラウスお兄様はその考えをこの小さい国土で実践しています。リュミエールは税を払えない無能な領地を簡単に滅ぼしますが、リュミエールの莫大な領地からすれば微々たる量で、開発速度が釣り合っているから問題が起こりません。ですが、ケーニヒは国が小さく開発がほとんど見込めないので、滅ぼすと、領地が復活するまで時間が掛かり、一気に食糧難に成ります。リュミエールに国が滅ぼされた16年前、何故ゲルハルト様が最後まで徹底抗戦を訴えず、何故お父様がファルケンへの制裁を実施しようとしなかったかお分かりですか?したら滅びる他に無いのです」
ヨハンはリズの切実な言葉に歯噛みする。何が間違いだったのか、少なくとも自分が失態を認めて兄に爵位を譲ったのが一番の問題だったのだ。兄クラウスは確かに自分よりも頭脳明晰で、武力も強く、多くの人を独裁的に引っ張っていく父に似た才能を持っていた。だが、ケーニヒにおいて、その考え方が全く悪い方向へ向いた人材だったのだ。
今になって父が自分に爵位を継がせた真意に気付いてしまう。クラウスはこれと決めれば自分の考えを一気に推し進めて、弱者を潰してより自分達を良くする方策を導く。だが、ヨハン自身は周りの声を聞き、出来るだけ波風立たないように、弱者であっても救いの声があれば話を聴き何処かで折衷案を出す。弱腰と蔑まれようと、それはケーニヒにとっては必要な処置なのだ。
父は恐らくそこら辺のバランスをわかっているから、見せしめるべき場所は見せしめていたのだろう。だが、上手く回っていたのだ。対して自分は四苦八苦して未熟さを痛感していたが、それこそがヘルムートのいなくなったケーニヒ公国の政治において必要なものだったのだと感づかされる。
「リズ、俺を大公国へ戻してくれ。今ならまだ間に合う」
ヨハンは自分のが本当にすべき事に思い当たって、無理を承知で頭を下げる。自分が戻ってクラウスや大公を説得する事がもっとも正しい仕事だ。
「無理です」
だが、リズは簡単に首を横に振る。
「何故だ!?女王としての立場ならば…」
「ここはアームズ帝国に主導権を握られてます。私はその掌の上でどうにかこの国の民を生かす為に頭を使って奔走しているだけに過ぎません。アームズ帝国は元より、戦って勝つ気なんてないんですよ。反乱軍をサポートし、リュミエールの進軍によってケーニヒが自滅する事だけを考えた策略です。彼らは、その自滅の中に反乱軍も混ざってます。彼らは滅んだ後のケーニヒ領の肥沃な農地を手にしたいだけです」
リズは淡々と残酷なストーリーを説明する。
「そんな馬鹿な事を許されるわけが……」
「だから私は、自身の価値を示すべく少数で多数の敵を退け、女王としての発言権を増し、彼らの庇護下に入る事を約束して、彼らの策の外にこの南部領地の民を外させようとしているのです。ハインリヒ領でお世話になったのは何も彼らだけじゃありません。多くの農民たちとも交流を深めてました。彼らを見捨てることなんて出来ませんから。最初は嫌々この立場になりました。この立場に私がいるから、助けられる人がいるなら、それを利用するしかないんです」
リズは悲しげに口にする。
ヨハンはこの反乱の真相さえも知らず、こんな場所まで来ていた事実を知り、ほとほと自分に呆れてしまう。一体何を見ていたのだろうか?こんな地で妹は命懸けでアームズ帝国の下に納まりながらも民を出来るだけ救おうと尽力しているのに、爵位という重圧から解放され、自分は兄に言われたままに、強者と戦えると考えて暗殺者のマネ事をしていた。
「リズ、…1つ聞きたい。何故、私を助けた?」
「お兄様は分かりませんか?簡単ですよ。………私の立場は非情に危うい。私が亡くなっても誰かが引き継げる人がいないといけません。戦争を正しい終着点に落とすのは政治家の役目です。私が最後までそれを出来る保障はないのです。アームズ帝国撤収後、私達は防衛に失敗すれば地獄になります。その時、誰かが戦争を終わらせる必要があります。女王の首を取り、戦争に終止符を打てるのはレーヴェ家の人間が最も良いと思います。お兄様が功績を持って、ファルケン領を守ってくだされば、きっと最悪の終着点は回避できるでしょう」
「おい、待て。まさか…お前、私を助けた理由とは…」
「最悪、私の首を取ってくれる人が必要なんです。それはアームズ帝国が撤収した後に、どういう状況が残されるかによって、ファルケン貴族らやお兄様と共謀した上での結論を出す必要がありますが」
悲壮な覚悟を聞かされて、ヨハンは絶句する。
「アームズ帝国と女王が共謀し、ファルケン家は仕方なく動かされたとでも言えば助かるでしょう。16年前の戦争でも女王の首を取るまでリュミエールはとまらなかったといわれています。今回、敗北のストーリーが出来上がったら、向こうが勝機の有無の分からない内に、白旗を振らねば我々は滅びます。レーヴェ家は既に汚名を被ってますし、女王の首の1つや2つ簡単でしょう?」
「それが、この国の民の為になるのか?」
「はい」
リズはにこやかに笑って返す。ヨハンは俯き口を結ぶ。
16年前の戦争、果たして父は自分の利益を理由に、王族を根絶やしにしたのだろうか?売国奴の汚名を着て、リュミエール側についてケーニヒの支配者となったのは事実だ。
だが最高権力者となった父はといえば、さっさと権力を放り投げたかったようだし、いつも戦いを求めても相手がおらず、暇そうに鬱屈していた。
今、自分の目の前にそれに似た状況が転がり込んでいる。最悪、自分を殺せという妹を目の前にして、確かに元々女王暗殺の為に来ているのだから不自然さはないが、ケーニヒを少しでも守る為に必死に戦う姿を見せられ、それを殺せる訳がない。いや、死んだと思っていた妹が生きていて、またそれを殺すなんて非情を自分の手にできる自信も全く無かった。
「まあ、防衛網を作ってますし、このロートブルクが滅びなければ良いのです。ケーニヒ大公国が先に滅んで、我々がアームズ帝国の庇護される形で平和的に統治されれば良いだけ。今はリュミエール到着前に防壁や防壁となる地形に様々な罠を作って出来るだけ敵の数を減らすしかありませんから。リュミエール軍の到着は遅れれば遅れるだけ我らの勝機が出ます」
幼かった妹は、当時の面影を残したまま、しかし、南部の統治者の顔をしていた。残念ながら、東部の統治者だった自分よりも遥かに立派な姿だとヨハンは思い知る事になる。
そんな中、1人の兵士が走って女王の方へとやって来る。
「女王陛下。伝令です。大公軍1万がこちらに進軍、2日後にアイゼンシュバート城砦にて衝突と聞いてますが…」
「……野戦で15万の軍勢を撤退させたばかりなのに、城砦を1万で挑むか。こっちとしては被害を出したくないわね。良いわ、私が指揮をします。軍令部にも伝えておいて。10分後に会議です」
「承りました!」
兵士は走って去っていく。
「という訳ですので、お兄様は暫く大人しくしていてくださいね。アームズ帝国の連中は私に一目は置いていても信用はしてませんから」
リズは一礼して牢獄を背にする。
3日後、ヨハンは、王国復興軍は被害0で1万の大公軍を撤退させたという話を、見張りの兵達の立ち話から耳にする事になる。
幼い頃、妹とよくテーブルゲームをしたものだが、1度もチェスでは勝てたことが無かったとヨハンは思い出す。女王の血族は世代によって異なるが様々な分野の天才を出したという。
ある女王は、建築に優れた才を示し、シュバルツバルトに高いビル群が出来始めたのはこれが由来である。ある女王は魔導技術に優れた才を示し魔導砲から広域破壊魔導砲に至るまでの超兵器を開発した。ある女王は軍略に優れた才を示し、多くの城砦を作り最強の防衛網を操つり隣国の侵略を退けた。ある女王は科学に優れた才を示し軌道列車を開発した。
女王家とはいずれもそういった特異な才能を持ち、いずれも頭脳明晰な女性が生まれていたという。リズもまたその例に漏れなかったのだろう。リズの才能とは、つまり軍師のような能力に長けているという事だと、ヨハンはここに来て初めて気づくこととなった。




