流れ着いた先
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一段落したので後書きにて、ケーニヒ事情について触れておきたいと思います。筆者は本物語をあくまでもヴィルヘルムの武闘伝的な位置づけにしており、詳細な事情をあまり触れる予定がありませんので。
東暦191年晩秋、リュミエール帝国傘下ケーニヒ領で起こったクーデターによって、大きく情勢は変わる事となった。
これまでヘルムートを中心に有力貴族によって行なわれていた政治だが、これはヘルムートが亡くなってもヨハンに受け継がれて運営されていた。
だが、クーデターの責任を取ってヨハンは兄クラウスに爵位を譲り蟄居する事となる。同時期、ドラッヘ家では傘下貴族の4家の当主が同時に亡くなり、宮廷魔導士で最も力のあるミハエルの死は大きく響き、衰退する事となる。
東暦191年の終わり、春の訪れが間もなくやってくる気配の頃、ファルケン公爵ウルリヒは大公の位を帝国より賜り、リュミエール帝国第4皇女コンスタンツェ・A・グリュンタール・ゴルドブルクが降嫁する事となった。
大公ウルリヒを頂点とする政治構造が作られ、その片腕としてレーヴェ家のクラウス公爵が補佐をする事となる。ファルケン公爵家は遠縁だがゲルハルトの従弟にあたるベリンハルトが公爵家を継ぐ事になる。
ライナー・フォン・ファルケン元公爵は、本家であるヴィルヘルムは文官である彼らにとっては邪魔に思っていたが、だからと言って武門を無くすつもりはなかった。オズバルドらを中心とした武闘派は南部防衛に大きい力を持っている。今回の騒動でほぼ壊滅したのは非常に痛かったと言えるだろう。彼としてはウルリヒが大公になり中央を統べ、南部ファルケン公爵領はヴィルヘルムに継いで欲しい…という思惑があったのだが、全てぶち壊されることとなった。
ウルリヒは権力を握るやいなや、父親の意向を無視して勝手をやり始めた。ライナーはもはや大公への提言も言えないような状況でロートブルク郊外の別荘で隠居を強いられていた。
そして大公ウルリヒは王妃の言葉を優先し、欲しい物は何でも買い与え、自身の気に入らない者は次々と斬り飛ばしていった。金は使い有能な人材を消失し、国庫の財政は火の車になるのは意外にも速かった。
それに拍車をかけたのは戦好きのクラウスがレーヴェ家の公爵になった事だろう。旧オッタル伯爵領は戦後処理で過度の貧困に陥り、反逆をすれば内戦に発展させ、クラウスはそれらを蹂躙した。
この両者が微妙にかみ合い、春の月が終わる頃には中央政権が圧倒的に強い専制君主政治が出来上がっていく半面で、国力は急激な下降線を示す事となった。
時は移り、東暦192年夏の月、渇いた熱風の舞う季節へと差し掛かっていた。
この日も、ヴィルヘルム・フォン・ファルケンは懲りずに戦場に立ち、そして、何もかもが片付いてしまった、血の臭いを残す死体だけが転がる戦場跡を眼下にその場を引き返していく。
「今日も死ねなかったか」
戦いとは無縁で生きていきたくても、戦う事しか教わってないヴィルヘルムが戦いを避けて生きていけるわけも無かった。
ヴィルヘルムが引き返した先には軍隊が存在していた。軍隊と呼ぶには些か問題があるだろう。どちらかと言えば農民が武装してみた…という方が正しいだろう。
その中でも中央に立つ眼鏡をかけた若い男が最初に歩いてヴィルヘルムの前に立つ。彼に至っては農民というより博士といった印象さえ持たせる男であった。
「いやはや、助かりましたよ、ヴィルヘルム殿」
「助かったというのかな?これでは終わらないだろう?」
千以上もの散らかされた死体が纏う甲冑は、いずれもリュミエール帝国軍のものである。
「我々はもはや殺されるか、国が調停を掛けてくれるかを待つだけです。もしも国が調停を掛けてくれないなら、皆で殺されるしかありません」
見た目からして何を考えているかわかりにくい若い華奢な青年は、眼鏡を上げながら、博士というよりは胡散臭い政治家のように語る。
だがこの青年の言っていることは真実なのだから仕方がない。
「で、村の人々は?」
「お陰様で無傷です。無論、軍の方は無傷とは行きませんでしたが、それでもこれまでの戦いと比べたら微々たるものです」
「そうか」
「こんな小さい地方で蜂起しようと帝国は子蟻を潰す程度にしか考えていないのですから仕方ないのです。奴らが我らを子蟻程度の認識であろうと、我らは人としての誇りを持って生きていかねばなりません。奴らにそれを示し続ける必要があります」
「私が去ったらどうする積もりだったんだ?」
だが、あまりにも多勢に無勢である。ヴィルヘルムの視界に入っている武装農民集団は500人いるかいないかといった所である。対して、先ほど壊滅させた軍隊はすでに千を越えている。そもそも、あまりに多勢に無勢だったから、通りすがりに手を貸した程度だった。
「皆で死ぬだけです」
目の前の青年、いや、ここに集う農民達の瞳は既に死人のそれであった。ただ仲間のために立ち上がっただけであり、既に死を覚悟した者達である。
事情を耳にしてヴィルヘルムはこの内乱を起こしている者達と共に死に行くことを望んで手を貸したのだった。
ここはケーニヒ大公国の北東部に位置し、帝都より600キロ程度しか離れていない小国エーアデ伯国の農村である。事の起こりは十数日前まで遡る。
武門の男として戦場で死ぬ事を望んだユーリは、再びヴィルヘルムを名乗ることにし、ケーニヒから離れることにした。シュバルツバルトをから船で大河を東へと下り、北東へと10日程の時間を掛けて辿り着いた先はというと、かつて滞在した事もある旧アルツ王国であった。
かつての繁栄が嘘のように酷い衰退を見せていた。
そんな折、現アルツ領アインブルクでは大きい問題に悩まされている事を耳にする。北方からやってくる盗賊団によって立て直しつつあるアインブルクは何度となく襲撃を受けているという話だ。
この時、盗賊団として名を聞いたのだが深く話を聞くと、政治的にいえばどっちもどっちといった話であった。アルツ崩壊の際に多くの貴族は領地を奪われて帝国直轄領とされた。多くの土地に帝国から赴任してくる新しい貴族や代官によって管理され、崩壊した国家は苦しいながらも生きていたらしい。
旧アルツ王国領は南部が田園となっており、大河に面している。その為、大河を経由した他領との貿易によって潤っている。これは中央のアインブルクも同様であった。元々この国は南部で農業を、北部で鉱山や荒野の開発を行なっていたのだ。
帝国はアルツを直轄領にする際に、全ての貴族を廃嫡し、成り立たなくなった北部を棄てるという選択をしていた。これは北部の鉱山があまり重要性のない場所だったからでもある。だが、棄てられた者達は溜まった話ではない。
元々、大河沿いの町は非常に潤っており、これまでは北部の食糧も南部によって賄っていたのだが、北部には一切の干渉をしなくなった。北部に住んでいた人間たちは食料を得ることもできず、人を襲う危険な獣などから身を守るための軍隊さえも失い、路頭に迷うことになる。
そこで廃嫡された貴族達は北部で集り立ち上がった。純粋に開拓をして領地を貰って暮らせばよいものだが、元々安穏として生きていた領地貴族が、そんな泥臭い真似をしようという考えに至らなかったのだろう。そして彼らがやっている事が盗賊と全く同じだったのだ。南部や旧首都へ侵攻し、略奪の限りを尽くして、自分達の住処へと帰って行く。
殺し犯し、奪っていく。彼らは旧アルツ領北部を拠点に隣国にも攻め入り略奪を繰り返した。だから、ヴィルヘルムが軽い噂を耳にした段階では盗賊団という話だったのだ。
だが、問題はその規模が非常識だった。万を越える盗賊団など聞いた事もないからだ。鎮圧部隊がやってくれば、老人や女子供さえも奴隷にして戦場の最前線に立たせ、彼らが殺されているうちに主要な戦闘部隊は逃亡するという悪逆非道を行なっており、帝国もかなり手を焼いているようだった。
無論、帝国が圧力を加えて国土を割り、王族を皆殺しにした後にこのような事が起こったのだから、自業自得ともいえるだろう。
ヴィルヘルムは滞在中に丁度その盗賊団と遭遇してしまった為、戦うしかなくなってしまった。
これが再び戦場へ立ち、ヴィルヘルムを名乗る羽目になった最初の話である。
歴史上、ヴィルヘルム・フォン・ファルケンの名前がこの国に轟き始めたのはこれが切欠だったのだろう。帝都では帝国正規軍さえもイタチゴッコを続けさせられていた、最悪な盗賊団に対して、ヴィルヘルム・フォン・ファルケンはまさに非情だった。
奴隷であろうと刃向かう敵を斬り殺し、一直線に敵の本陣を壊滅させた。その際に生じた盗賊団の被害は奴隷をも含めて3万人とも言われている。
逃げた盗賊団もヴィルヘルムが出た4度の掃討戦で崩壊し、もはやただの烏合の衆となり、生き残った奴隷達は元の土地へと戻って行く事となった。
それが冬の月が終わる頃には流れの剣士ヴィルヘルム・フォン・ファルケンの名前は伝説となった。そう、伝説なのである。何故かと言えば一人で万を超える軍勢(内半数は一般人を奴隷として盾にしていたが)を壊滅させたなどと言う話を、真実として受け取れる人間がいなかったからだ。
そして、ヴィルヘルムは、盗賊団の逃げた首魁を追って、領土を越えた先、リュミエール帝国傘下であるアルツの北方にある国に作られた、彼らのアジトへと乗り込み、それを壊滅させた。そしてそこからエーアデ伯国の農村にたどり着いたのが丁度春の月の中旬だった。ここでも騒乱があり巻き込まれてしまっていた…というのが現在のおかれた状況であった。
ヴィルヘルムは武装農民の一行とともにエアーデ伯領の中心都市ムルデに戻る。
ムルデは小さい町並で、周りの農村の雰囲気はどこか自身が育ったファルケン領エンゲルハルトやハインリヒ領フーンシュタットに似ていた。広大な農地を統べている為に伯爵を号していたが、文化レベルはケーニヒ領の男爵と大差ないのが帝国の実情でもある。
小さな砦のようなムルデにある城に入って一同は会議をする事になる。会議の主要人物たちは、各村の名主達や戦える人間の長を纏めたような集団である。
何故、一般人が城に入って会議をするか、と言うことだが、それにはこの戦の根源に関わる事となる。
ヴィルヘルムは事情を聞いて手助けをしているが、正直どこまでやれるか分かっていない。このメンバーは基本的に全員がただの農民上がりで、領地の管理ができるわけではない。1人だけこのメンバーのリーダーを務めている眼鏡の男が各人の意見を集めて纏めるという形式を取っている。
「皆様の奮闘のお陰で、今回の襲撃はどうにか撃退する事は出来ました」
眼鏡の男、ムルデ伯国に数多ある農村の名主の息子であるイェンス・バイエルは周りを鼓舞するように集っているメンバーにまるで全てが終わったかのような声色で語りかける。
周りの男達はオオオオッと盛り上がる。
普段の何を考えているか分からないような嫌らしさを、この農民達の前では微塵も出さないのである。あるいはこれが本来の姿なのか、ともヴィルヘルムは感じるが、それは不明である。何せ自分でさえ、自分の中に飼っている獣がどれほどなのかわかっていないのだから。
戦自慢なのだろう、腕っ節の強そうな男達は鎧甲冑のまま誇らしげに胸を張って椅子に腰を掛けていた。
「しかし、今回もまた帝国からの調停はありませんでした。我々はいい加減に収穫に向けて畑に戻らねばなりませんが、今はままならない状況にあります」
イェンスの言葉に全員が陰鬱な表情になる。
「だども、帝国への手紙はもう何度も出してるだ」
「いつまでこんな事を続ければいいか」
「俺達はただ人間らしい生活が送れれば何も文句はねえのに…」
名主達は肩を落としてぼやく。
「その通りです。我々の要求は極めて程度の低い話です。我々は国を害そうとしていた訳ではありません」
イェンスは回りに語るのだが
「1つ聞きたいのだが」
ヴィルヘルムは挙手をする。
「何でしょう?」
「国を害そうとしていた訳ではないというが、何故、領民達で伯爵領を占領しているのだ?国を害したくないとは言っても、国に管理を任せている貴族を吊るしてしまったらまずいだろう」
イェンスに対してヴィルヘルムは再度確認するように質問をする。
それにはイェンスも渋い顔をする。
「伯爵は俺達の娘達を犯し殺した!」
「殺されて当然だ!」
「代官の不正も元を正せばアイツがいたからだ!」
名主達は訴える。
さすがのヴィルヘルムも頭を抱えるしかなかった。
何故、ヴィルヘルムが頭を抱えるか、彼らの言い分が本末転倒だからだ。
代官を殺すのであれば問題はないだろう。代官は貴族が雇った役人なので、言ってしまえば準貴族、つまり平民である。しかし貴族を殺せば、帝国は許さない。正確には許せないのだ。貴族は帝国に忠誠を誓って、領地を任せている。そんな人間が殺されれば国は報復に出なければならない。帝国に牙を剥いた事と同義だからだ。
農民達は理解して無かったのか?
ヴィルヘルムはジトとイェンスを睨むと、イェンスは肩を竦める。
「とにかく、正義は我々にあることを諦めずに帝国へ訴えていく必要があります。彼らの譲歩をどうにか勝ち取らねばなりません。帝国が本腰を入れたら我々は終わりです」
イェンスは彼らに希望を与えてやる気を出させ、頑張ろうと訴える。
「おい、イェンス。お前、分かっていてそれを口にしているのか?」
「……ですが、もはや、やるしか無いのです」
イェンスはヴィルヘルムの問いにあっさりと答える。
「はあ……まあ、良い。乗りかかった船だ。死ぬまでは力を貸してやる。後は勝手にせよ」
ヴィルヘルムは呆れる様に溜息をついてその場を去る。
ヴィルヘルムが去ると名主や村の力自慢の男達は冷たい目でヴィルヘルムの去った扉の方を睨みつける。
「イェンス様、奴は信用できるんですか?」
「確かにそこそこ腕はたつようですが…」
「正直信用ならないべ」
「後でワシらから色々とふんだくるに違いないだ」
「大体、鬼の名前を自分で騙る辺りが、素性も知れないだで」
男達はイェンスに対してヴィルヘルムへの不審を訴える。
「彼とは、ある程度の折り合いはつけています。悪いようにはしません」
イェンスは大丈夫だと彼らを抑える様に言う。外様の人間を排除したがる田舎者独特の感覚なのだろう、彼らにとって助っ人とは言え得体の知らないヴィルヘルムという男は信用なら無かった。
この地方におけるヴィルヘルムというのは鬼の名前である。200年前、西の辺境を制定する際に、西の辺境に住んでいる鬼が、たった1人で帝国軍を皆殺しにしたという伝説があり、その悪鬼の名がヴィルヘルムなのである。
小さい子供が夜更かしをしていたりすると、早く寝ないとヴィルヘルムが襲ってくるぞという話を本当にしている程度に有名な鬼の名前だ。ゆえに、ヴィルヘルムを名乗る人間なんておかしいとしか思えなかったのだ。
「イェンス様が大丈夫と言うなら…まあ…」
「しかし、あんな奴がいなくても俺達の力とイェンス様の知恵があれば」
「そうですだ」
「あんな得体の知れない奴に恩を売るなんて」
やはり彼らはヴィルヘルムをよくは思っていなかった。
イェンスは苦笑して彼らの不満を抑えるように努力する。今回の戦いで、もしもヴィルヘルムが助っ人をしてくれなかったら、この武装農民集団は滅ぼされていた事実を心から理解している人物が一人しかいない程度には、この軍勢は非常に知識的な面も武力的な面も持っていないのであった。
前書きにあったように、ケーニヒ事情について触れておこうと思います。
ケーニヒ王国は長きにわたって存在し栄えてきました。国家は大国よりも長く歴史を持ちますが、国土はアームズ帝国やリュミエール帝国と比べると非常に小さいです。元になった地名がないので例えにくいのですが、ケーニヒ:アームズ:リュミエール=日本:中国:アメリカ程度の国土比だと考えて貰えると幸いです。中国とアメリカに国境線で挟まれた日本を想像したら、無性に泣けてきましたが(笑)
長い間、他国と交流することで、女王家という天才を生み出してきた王国と隣の大国との間にあった科学レベルの差が詰まって来ているというのが今の状況です。その為、王家は様々な情報収集に余念がなく、リズが色々と物知りなのは王族だけに伝わる情報源を各所で利用しているからです。
それをリュミエールとの戦争で壊したのがヘルムートで、彼は歴史でいえば売国奴と呼べる悪者でしょう。
では、果たしてリュミエールと戦って勝てたのかと言えば、100%勝てなかっただろうというのが当時の見解です。ケーニヒは動員しても3~4万程度なのは先の戦争で知れていると思います。しかし南北にある両帝国は地方においても平気で10~20万動員できます。科学力の差が低くなった昨今、戦いは非常に厳しい状況だったのです。いくら一騎当千のヘルムートやゲルハルトといった人材がいても、手の届かない場所を四方八方から攻められてはどうしようもないのです。
そこでどちらの国に下るかと言えば、獣人が強い権力を持つアームズと人間種族が強い権力を持つリュミエールに挟まれている以上、リュミエールに下るしかなかったので、ヘルムートは苦渋の決断をしています。半分くらい、自分の色々な趣味嗜好が混ざったことは否定できませんが。
彼の最も失敗だったのはヴィルヘルムに殺された事でしょう。彼がつつがなくヨハンを中心にした政権のレーヴェ家を盤石にしておけばましだったと思われます。
対して、ドラッヘ家はどうだったかというと、今回のクーデター然り、リュミエールとの戦争時代も然り、見事な風見鶏です。どちらにもいい顔をして、強い方につく。恐らくは当主ギュンターがそういう気質なのでしょう。ただし、彼らの影響が強い宮廷魔導士団は武力としても高い質を誇り、彼らがどちらかに加担して負けたら国の武力衰退はもっと酷くなるので、これも仕方ないともいえるでしょう。個人的な趣味嗜好でいえば、格好いいとは思いませんが。
最後に、ファルケン家は簡単に言うと王家に忠誠を誓った古臭い家でしょうか?王国に最後まで従った家ですが、女王の仇討ちをすれば領地の民も守れないので、リュミエールとの徹底抗戦まではしてません。無論、嫁ぎ先の娘を殺された件に関しては内密に報復してますが。
ではゲルハルトとヴィルヘルムの間の繋ぎ役として公爵に任命されたライナーは、本家からファルケンの権力を握ろうとした悪党かと言えば、そうとも言えません。作中でも、確かに権力者になろうとして、ヴィルヘルム暗殺を企んだりもしていますが、決して国を壊そうとはしてません。人格はともかく、頭の良い人です。アームズ帝国との戦争では、公爵領をつぶれて自分の立場が危なくなっても、帝国皇姫を守り、リュミエール帝国から国そのものを取りつぶされないように中央の防備を優先しています。そして、政敵ヴィルヘルムに借りを作る程度には善良です。
歴史小説なんかを読む方は共感を得られるかもしれませんが、主人公の視点によって大きく異なってしまうのは仕方ないと思ってます。三大公爵の彼らは自身の異なる正義を貫いて、国や領地の為に戦っているのです。
その点でいえばヴィルヘルムはまだそこに達しているとは言い切れません。
そして残念ながら、あの新しい大公は誰の視点から見ても愚かにしか映らない男かもしれません(笑)が、きっと彼も帝国皇女から見れば何かの主人公だったのでしょう。




