波乱
ブクマ、感想、評価など、ありがとうございます。
仕事で忙しく、毎日更新を目標にしていましたが、さすがに毎日は厳しくなってきてましたが、極力2~3日程度のペースで更新していこうと思ってます。
秋の東部視察により人員の借り出しが各貴族に通達される。この視察は毎年公爵家を順番に視察しており、2年前は西部視察としてロートブルク、去年は北部視察としてドラッヘ家の所領であるエドレスハウスという形での視察となっている。今年は順番で東部視察、つまりレーヴェ領のミニアツルガーデンを視察する事になっていた。
この視察は公爵達による首脳会談も行なわれるので、当然のように一番偉い公爵が参加するし、次期公爵といった人材がやってきて顔も売るお披露目の場にもなっていた。
とある定食屋にて、いつものようにユーリとリオの2人はやってきていた。
パスタの食べられるお店と言う事で入り、ユーリはボンゴレ、リオはミートソースを食べている。
「東部視察かぁ」
「こういう時って中央が空くけど大丈夫なのかね」
ユーリはひょんな事で東部視察の話が出てきて訊ねてみる。
「代理を置いていくさ、当然。当主がいなくなった際に実務的に交代できる人間かな。レーヴェ各家の外務担当者や内務補佐とか。例えばレーヴェ家ならば公爵の兄クラウス、ドラッヘ家なら孫のヴァルターといった所だね」
「孫で実務が勤まるの?」
「優秀らしいよ。年齢は僕らより少し上という程度だけど」
リオは淡々と話す。
「ふうん」
「ユーリはまさか帯同するのかい?」
「まあ、コソコソ付いて行く感じ?」
「あまり表立たないで一般市民として振舞っていたほうがいいよ。ヘルムート卿がいなくなって情勢不安定だから」
「そうだね。まあ、一般市民なのだけれど。精々ミニアツルガーデンで楽しんでくるよ」
「そのほうが良い。危なくなったらさっさと避難するようにね」
「まるで何か起こるみたいな言い草だな」
ユーリは怪訝そうにリオを見る。リオは肩を竦めて苦笑を見せる。
「何も起こらないとは思えないからだよ。そうなったらリズさんはどうなる?」
「リズ?さあねぇあれはあれでしぶといからな。大体、奴は最近知り合っただけの金食い虫で、私とは関係ない女だが」
ガックリと肩を落としているリオの姿に、ユーリは話している途中で首を傾げる。
「とはいえ、あまり生き急がない事だよ。ユーリはどこか余裕がなさげだからな。彼女みたいなマイペースな子が隣にいると良いだろう」
「まるで占いのようだな」
「そうかな。うん、そうなんだろうね。心配なんだよ、こう、……兄貴分として?」
「そう言われるとあれだな、チンピラの子分の気持ちになってきたよ」
アハハハハハとユーリは笑い飛ばす。
それから数日後、出発の朝となり、ハインリヒ邸の玄関をユーリとオズバルドとディオニスの3人が出ようとしており、エメリ、トルーデ、父が出かけるというので御曹司であるオリバー・ハインリヒの3人が見送りにやってきていた。
そんな中、身の回りの世話を焼きたがるお姉さんがいた。
「ハンカチ持った?ネクタイ曲がってるわよ。ああ、ちゃんとできるか心配だわ」
リズはユーリのネクタイを締めながら、おろおろとする。
「お前は私のお母さんか!?」
ユーリは貴族の護衛という態で出かけるので、基本的にはネクタイなんてする予定もない鎧姿になればポケットに手を入れられないので、ハンカチなども忍ばせない。ちなみに顔も兜で隠す予定である。
「いや、出かけるときってこれがデフォルトだから」
「かつてのレーヴェ家の破天荒公爵様ならばそうだろうな」
「ちゃんとウルリヒ様に媚びへつらうのよ?靴の裏をなめる準備は出来てるの?ちゃんと舌を拭いておくのよ」
「そこまで卑屈になってどうする」
ユーリとリズは出かける前に、阿呆なやり取りをしていた。
「で、いつになったら出発させていただけるのでしょうか。元公爵閣下と元王女殿下は」
オズバルドは冷淡な様子で呆れるように突っ込みを入れてくる。この二人の口喧嘩はある種のコントなので、しばらく一緒に生活をしたものだから、随分と慣れてしまっていた。オズバルドがユーリに毒を吐くなどそうそうないことだ。
「痛い!私、オズバルドさんに初めて痛烈な皮肉で刺された!」
「私たちについていけないからって、役立たずに心配されてもなぁ。リズが来て、レーヴェ家の知ってるやつに顔でも見られたら、もっと厄介になるのだから自重しろ」
「わかってるわよ。だから敢えて、……ユーリと……最期になるかもしれないやり取りをしていたのよ。思い出として」
「「「「「不吉なことを言わないで下さいよ!」」」」」
オズバルド、オリバー、ディオニス、トルーデ、エメリの5人はほぼ同時に頬を引き攣らせて苦言を呈す。
「まあ、安心しろ。危険かもしれないという噂はあるが、そういうときほど何もないものだからな」
ユーリはポンポンとディオニスの頭をなでる。たまたま手前にいたのでそうしたのだ。大体ディオニスは従者なので、自分の手前、頭に手を置きやすい位置に立っている。
同様に、エメリがうらやましそうに見上げていたので、ユーリはとりあえずエメリの頭もなでる。嬉しそうに目を細めるエメリとは逆に、オリバーが悔しそうな顔でユーリを見上げていた。
実はユーリはこの時、オリバーがエメリに気があるという事を察したのだった。あまり男女の機微を深く考えたこともなかったが、そういう事に気付けるようになったのも、最近よく一緒にいて男女の機微について偉そうに蘊蓄を垂れる女がいる影響が大きいのだろう。
「さてと、それじゃあ、行きますか」
オズバルドが先を促そうとする。
「えー、今の流れなら、私の頭もなでて行く所でしょ?」
「お前の父を殺したこの血塗られた手で丹念に撫でてやろう」
ユーリが手を伸ばすと、リズは3歩下がって手から逃れる。
「それじゃあ、ユーリ、死んでもオズバルドさんを守ってくるのよ」
「いや、俺の任務はハインリヒ男爵様の護衛ではなく、ウルリヒ次期公爵君の護衛なのだが…。そして人に撫でるよう言ってたのに、逃げられるとさすがにこちらも心を痛めるぞ?」
ユーリは宙に浮いた手をワキワキさせて、諦めたようにハインリヒ邸を背にして歩き出す。
「いってらっしゃい」
優しい声でリズは小さく手を振ってユーリを見送る。
ユーリは頷き、そして進む先を見る。
この時、この送り出された言葉を聞いて、初めて生きて戻ろうと考えている自分に気付く。これまで、死ぬ気で戦場へと向かっていた。今回の出張でも、どこかの勢力がクーデターを起こす気配があると噂がある。どこか死に場所を求めるように戦いをしていた自分が、帰ろうと心に思う程度には、家族ともいうべきハインリヒ邸での生活が当たり前になってしまっていたのだろう。
それから軌道列車にのって約半日、ようやくレーヴェ領中心都市ミニアツルガーデンに到着する。
ユーリはハインリヒ、それに自身の付き人であるディオニスと3人で東部視察としてファルケン家の護衛にやってきていた。
「オズバルド様。僕らの主だった任務は何でしょう?」
ディオニスはオズバルドを見上げながら訊ねる。
「残念ながらユーリ君は攻撃能力はあっても防衛能力はないからね。護衛には不向きだ。だから、被害者を助けられる補佐が必要なんだよ」
「その補佐が最初に死んだら笑えますね」
オズバルドの言葉にディオニスは頷きながら笑う。
「死んだら笑えなかろう」
「ひどっ!」
補佐はお前だと言わんばかりにユーリはディオニスを冷たく突き放す。
「私達はオズバルドさんと違って、中央の防備だ。そ知らぬ顔でライナー卿らを守らねばならぬ。その為に顔を隠してそこら辺にいる一般兵みたいな顔して帯同する」
「顔を隠して、一般兵みたいな顔をするんですか、へー、ほー」
ゲシゲシゲシゲシッ
ユーリとディオニスは互いに蹴りあって睨み合っていた。
「君達は本当に仲が良いよね」
オズバルドは苦笑してユーリとディオニスを見る。
「仲良くなんて無いですよ?」
「まあ、良いよ、どっちでも。ただ、ヴィルヘルム様……ではなく、ユーリ君。気をつけてくだ……気をつけてくれよ。君の戦闘能力はまだ戻って無いのだろう?」
オズバルドも正式にヴィルヘルムはユーリに戻ったので、公では特に改めようとしているのだが、昔からの呼び方であり、もとよりヴィルヘルムの弟子だった家系がハインリヒなので、中々、ユーリ君と呼ぶ事に慣れなかった。
「一生戻るものでもないですけどね」
ディオニスは冷たく口にする。ヘルムートとの戦いで体はボロボロになり、生きているのが不思議な状態だった。そして治ったとしても既にかつての力を取り戻すのは困難である。それを知る少年からの忠告にオズバルドは不安な表情をする。
「ユーリ君はファルケン家には未練はないでしょう。ですが、私は…ファルケン家の作ってきた剣技を誇りに思ってます。ユーリ君が編み出した奥義に関してもね。だからこそ、君にはできるだけ長生きして欲しいんです」
「オズバルドさんに言われると敵わないなぁ。じゃあ、見捨てるのはディオニスって事で」
「さらっと酷いですよね?……リズさんが来てから毒舌に磨きが掛かりましたよね」
「あの女でも役に立つ事があったとは」
毎日仲良く出歩いていてそれを言うのか?
そんな表情でオズバルドとディオニスは目を細めてユーリを見る。ユーリやリズ自身はどう思っているかはわからないが、少年であるディオニスから見ても二人はどう見ても恋人のように毎日一緒にいるのだ。当人がそれに、どうやら気づいていないらしい。
ユーリは、ファルケン家にある軽装鎧を着け、目の部分まで覆うような兜を被り、腰にはいつもの長刀を差している。ヘルムート戦で壊れているので、新しいものだがファルケン領で領主にいつも収めている名匠によって叩かれた片刃の刀である。
「似合わないなぁ」
ユーリは自分の事を棚に上げて、同じような服装をしている小柄な少年に声を掛ける。ディオニスはユーリの従者扱いではあるが、目立ってはいけないので軽装鎧をつけさせられている。とはいえ子供に鎧は軽装であっても重そうで、申し訳程度に武器としてダガー腰に下げさせている。
「仕方ないじゃないですか」
10歳の少年がこの立場になる事はないのだからこの反意は間違っていない。逆に言えば10歳満たずにして医療魔術を極めているこの少年は帝国の中に置いても異例中の異例だったのだろう。
「まあ、従者ですって当たり前のように私の斜め後についていれば誰も文句は言うまい。オズバルド様の家臣として護衛に参加しているのだし」
「でも、ユーリ様もお人よしですね。公爵家を奪ったライナー卿やいけ好かないウルリヒの護衛なんて」
「いけ好かなくても奴らが国を支えているのは確かだ。ウルリヒは…まあ、もう少し勉強が必要だがな。そこはライナーが上手くやるだろう。あの狸親父は好きにはなれないが無能ではない」
2人は歩いてライナーやウルリヒのいる護衛団と合流する。
何も無い事に越したことはない。東部視察とはいえ、大きい街を見渡したり、商工業や農業の現場視察、主要鉱山の発掘状況の確認、資料と実際の嘘の記述が無いかなど、元々王族が監査を兼ねて行っていた事を皆で見ながらやりましょうという話なので、難しい事は特にはなかった。
他の領土ならばともかく、この国の公爵領は極めて安定しているので、私腹を肥やす馬鹿な事をしなくても財源は豊富である。一部、例外も有るが、それは15年前の戦争の戦犯とされた領土だけの話だが、それも中央に関しては立て直している。
ドラッヘ家のギュンター、ファルケン家のライナー、レーヴェ家のヨハンというこの国の大御所である3人の公爵がレーヴェ家の家臣に率いられて様々な場所を見学していく。
つまり、そんな退屈な視察が一日中続いていくのである。
「こんな意味の無い事を何でやらねばならぬのだ。あほらしい」
ウルリヒは学生服での参加をしているのだが、忌々しそうにぼやく。気持ちは分からないでもない。
「俺が権力を取ったらこんな下らぬ風習は絶対に廃止だ」
ふんと鼻で笑うようにしていた。
「これにより不正や悪政などをしていないか互いに監視する意味があるのですから。怪しげな金の動き等により抜け駆けして兵器を作っていないかオープンにする事で平和が守られてきたのです」
「貴様、たかが護衛の癖に生意気な。斬り殺すぞ!」
「ウルリヒ、下らぬ事を言っているなら父親にでも言ったらどうだ。こそこそバカを言ってるといつまでも親父はお前に後を継がせられぬぞ」
「なっ」
ユーリは兜についていた目元を覆う防具を上にスライドさせてウルリヒを睨む。
「!」
ウルリヒはまさか生意気を言った護衛が、ユーリだったとは気づかず慌てて後退ってしまう。
迂闊に狂犬の尻尾を踏んでしまった気分なのだろう。ウルリヒは体裁を整えるために、何も知らない顔で先を進む。
「ふん……も、もはや貴様は爵位継承権も持たない。俺が公爵になったら、貴様の首を飛ばしてやる…」
ウルリヒは現在自分が護衛されているという事実を忘れているのか悔しげに悪態をつく。
(ユーリ様、この方はアホウなのでしょうか?)
(残念ながら、学力と知能は比例しないらしい)
現在、護衛についている人間に対して将来お前を殺すのだと宣言されたら、守ってくれるはずが無い。それを平気で言える神経に呆れてものも言えなかった。
学校では文武両道の天才少年で通っているのだが、下々を見る時はなぜか視野が狭くなる阿呆である。ユーリは不出来な息子を持ったライナーの苦労偲ばれる。このバカ息子が第四皇女を射止めてしまったというのだから尚更、質が悪い。男の見る目のないお嬢様だったと同情するしかなかった。
ライナーも傲慢な部分はあるが、彼は武門の脳筋を上手く立てて利用していた。ユーリの兄達や祖父達に対して刃向かうような真似は決してしなかった。幼い頃から怪物に囲まれて生きてきたのだから彼はユーリ達のような鬼神の末裔のような連中を恐れている。
だが、年代的な問題なのだろう。ウルリヒはユーリよりも年齢が1つ上という程度なので、ファルケン家の武門に生きる怪物達を一切知らない。だが、分家の中では神童としてチヤホヤされて生きてきた。残念な事にそもそも回りの人間は上の人間を褒め称えるのは当然だという事実を理解せず、本気で自分が優秀だと勘違いしている節がある。ユーリら武門の子供たちが最初は片田舎で厳しく剣術を教わるのは、そこら辺にある。実際、ユーリは人生で初めて祖父に誉められたのは、祖父から貰った最期の言葉だった位だ。
視察はつつがなく進んで行く。つまらない護衛任務という名の、偉い人と帯同する仕事は最終日へと差し掛かっていた。
これならばオズバルドと一緒に周辺の確認と言うような、偉い人の近くにいるのではなく、街を見渡せる任務の方が楽しかっただろう。
全工程を終えて、最終確認の会議をしている中で、事件は起こった。
会議も半ば、ティータイムとなって一同はお茶を配られる。
ユーリもこれで終わると少し気は抜けていた。ここにはファルケン家傘下にある南西部の将軍アンファング男爵を含め、多くの武門の人間達が護衛として集っている。
落ち着いた雰囲気の中、談笑が会議室の中に響いている。
レーヴェ領に取れる特産の紅茶だという紹介を受けながら閣僚達がそれらを口にする。
かぐわしい香りが会議室に漂う中で、ユーリの鼻は敏感に察知する。ウルリヒは紅茶を飲まずに両手で後頭部を支えて暇そうに足を伸ばしている中、ライナーは紅茶を口にしていた。
「ライナー!飲むな!」
ユーリは慌てて走り、ライナーの手元から紅茶のカップを叩き落す。
「何をやっているのだ、この無礼者が!」
ウルリヒは怒りだし、ライナーは何事かと問い詰めようと口を開こうとして、そして一気に吐血する。
「毒だ!全員、紅茶を飲むな!」
ユーリの叫びに全員が慌てる。だが既に遅く、既に血を吐いて倒れているものが4人ほどいた。
珍しく即効性のかなり凶悪な毒だと推測される。ユーリが、香りの中にある微妙な匂いをかぎ取れたのは幸運だっただろう。そういう訓練をしてきたからだ。
「ディオニス!」
「は、はい!」
ディオニスは慌ててユーリに駆け寄って、ライナーを見る。
「大量の水を!胃の中を洗浄しないと!」
ディオニスはライナーの口の中に手を突っ込み、胃の中を吐かせようとする。
「なっ…誰だ、このような真似をしたのは!」
レーヴェ家当主であるヨハンが大きい声で怒鳴る。
その瞬間、護衛として部屋に帯同していた兵士達がいきなり近くにいた公爵領の重役を襲い始める。
騒然となる会議室。刃に切りつけられても慌てて逃げる文官達。
ユーリはそこで視界の片隅で、アンファング男爵が剣を抜き、ウルリヒの背後からその刃を振り下ろそうと迫るのを見る。
「ウルリヒ!伏せろ!」
「え?ひっ」
ウルリヒは慌てて伏せると同時に、ユーリは長刀を抜いて魔煌剣・鷗を放つ。魔煌剣・鷗とは追尾性能を持った魔力を飛ばす斬撃で、ウルリヒが伏せるのが遅くても大丈夫なように、魔力が込められた空飛ぶ刃は迂回してアンファングの首を切り落とす。
「ぐくっ」
ユーリは無理が祟ったようで体の節々に痛みを感じる。だが痛いから無理とは言える状況ではない。
そんな中、真っ先に反撃に転じたのはヨハンだった。襲い掛かる兵士達を素手で殴り倒していく。だがレーヴェ家の騎士3名が反乱をしたのか、ヨハンへ背後から襲いかかる。
だが、ヨハンは流石にヘルムートの息子なだけあり先代の使った震拳によって一撃で襲ってくる男達を殺していく。
元々、武門の家である三大公爵家のトップが、その下にいる連中に負けるはずも無く、これらの裏切りはあっさりと鎮圧される事になる。会議室での騒乱は鎮圧したが、多くの人間達が殺されていた。反乱した人間達もまたそれなりの役職にある人間達だった。
要人30名、護衛65名という場で、要人12名、護衛45名が死ぬという結果になった。
それでも外では騒乱の音、爆発して壊れる音、人々の悲鳴、そして剣戟と喧騒の音が鳴り響き、それは全く終わる気配が一向に無かった。
「ユーリ様、ライナー様は我々が何としてでも支えます。それよりもハインリヒ様のいる方が慌ただしくなっていそうです」
ディオニスは外の様子を心配してユーリへと声を掛ける。当然だが、ユーリもそれを一番心配していた。
「ああ、分かっている。ここは任せるぞ」
ユーリは会議室を出て外へと向かう。
仕事が忙しく、更新を待たれている皆様には申し訳なくも、1日1回更新を目標にしていましたが、不定期更新へと差し掛かりそうです。
さて、本編ではクーデターが起こりました。
これは戦闘ものの物語で、基本的には哲学的な事と、政治向けな事とか、あまりやる積もりはなく省略しています。今回のクーデターでも、裏でどのような動きがあって、このような事になったか等、深掘りする予定はありません。出番の少ないヒロインからクレームを受けそうですが、そういう事なのです。
ところで、書いていて、ふととある映画のCMで某俳優が叫んだ有名なフレーズが私の頭をよぎりました。
「事件は会議室で起こっているんじゃない!現場で~」
今回の件は現場が会議室でした、という事ですが。外でも激しい戦いが起こっているようで、落ち着いた会議室を背にユーリは外へと駆け出します。
おそらく見ていただいている方は気付いているでしょう。
次の展開がどうなるか。
分かり易すぎやしないか?
そんな声が聞こえてきそうです。
以前にも触れましたが、この物語は、私が10年以上昔に書いていた物語のサイドストーリーを、一本の完結作品として舞台設定を大幅に変えたものです。その過去の遺物では、悪の組織と知略で戦う天才科学者である主人公というものが本編としてあり、主人公には剣術道場をやっている武闘派な祖父がいて、その祖父の若き日の武勇伝を描いた作品でした。なので当時は、結末がどんな悲劇でも、天才科学者である主人公がどのような素性だったのかを描ければ良いものでした。ですが、過去の遺物の方は、本編が未来にある以上、死んでしまっている人間が実は生きていたという話は作れないのです。つまりすべての登場人物の運命が決まった状態で話を書いてました。ぶっちゃけ若き日は自分の作品に泣きながらノートに文字を書いていた時代です。そう、PCがあまり普及していない昔でしたので(笑)
ですが、ユーリ君には大きく未来が広がってます。これが本作と過去の遺物との絶対的な差です。
最強という称号を与えているのに、まだ大陸の西の片隅でしか戦ってはおりません。この物語に希望を与えたいがために、実は大筋は決まっていても最終的な終着点を全く決めてません。『最強』というタイトルと広大な舞台を与えたのは、ユーリ君に希望を持たせる為と言っても過言ではないでしょう。




