殺戮
将軍の命令によってヴィルヘルムと一緒に移動するのは10人のファルケン領の兵士達。彼らは将軍の命令でヴィルヘルムの補佐をする様に仰せつかっていた。
とはいえ、ヴィルヘルムは淡々と、無邪気に、と言っても良いだろう、斥候と言うよりはピクニック気分で街道を歩き、真っ直ぐアイゼンシュバートへと向かっていく。
兵士一同はいきなり本家の御曹司であるヴィルヘルムの護衛みたいな事を押し付けられ手困惑していたし、文句も言えない偉い人が何を考えているか分からない行動をしているので泣きたい気持ちで一杯だった。仮にも爵位継承権を持つお偉いさんなので機嫌を損ねたくも無いのだ。無論、諫言はするのだが、気にするな、ここが一番速いの一点張りなのだから困り果てるしかなかった。
ヴィルヘルムは鎧もつけず、腰に長刀をさしただけの状態で、普通に前進するのみなのだから兵士達も最悪な男のお目付け役にされたと思っていた。
当然、歩いていけば敵の斥候が見つける。
「あれは斥候かな?邪魔だな」
ヴィルヘルムは街道より離れた場所、森の奥の方をみて長刀を一閃する。森の奥より複数の悲鳴と血が舞い散る。
兵士達はぎょっとしてヴィルヘルムを見る。何をしたか理解できなかった。ファルケン家に伝わる軍流剣術の中に魔力を込め撃つ魔煌剣という技が存在し、その中でも遠くへ斬撃を飛ばす魔煌剣・烏という技が良く知られている。
習得できる人間は少ないが、魔煌剣の1振りでも習得できれば平民であってもシュバルツバルトで職に困らないといわれる程度に希少な技術だ。
「い、今のは…魔煌剣ですか?あのような遠距離斬撃は初めて見ました」
「ん?そーなの?今のなら普通の部隊長レベルなら出来るんじゃ無いの?ただの烏だし」
ヴィルヘルムは首をひねる。17歳になろうかとする少年のような青年は、人を殺す事も、一般的に奥義と呼ばれそうな技を使う事も、何の感慨も持たずただ歩き続ける。
「し、しかし大丈夫でしょうか?斥候がいるという事はそろそろ敵軍が正面からやってくるという事では?」
「そこの丘陵が邪魔で見えないけど、右に曲がりくねった街道の先に…200人くらいの先行部隊がいるね」
「200!?」
ヴィルヘルムの言葉に全員が青褪める。
「だから、私の後ろで不意打ちに遭わないように気をつけてね」
ヴィルヘルムはにこりと笑って付いてくる兵士達に声を掛ける。
「で、ですが…それでは敵と交戦する事に…」」
「後に気付かれて逃げられたら諦めて戻ろう。戦ってどうにかなるうちはガンガン進むよー」
そんな事を言っていると前方より行軍する敵の騎馬が歩兵に合わせて歩いているのが見える。
相手も斥候が戻ってこないのに目の前からあからさまにファルケン領の兵士が歩いてくるのを見て、ヴィルヘルムらのほうを指差して身内だけで何か揉めていた。
「あいつら、目の前に我々がいるのに、何で斥候はこいつらを通しているんだ、的な事で揉めてんだろ。もう戦端は切り開かれたのに」
距離にして2~300メートルほど、まだ互いに攻撃が届かない領域である。
そんな中、ヴィルヘルムは視界に敵の全員を収めると、向こうがヴィルヘルムらに迫ろうと動き出す最中、再び腰の長刀を横薙ぎに一閃して、そして再び鞘へと刃を収める。
約200人も敵兵は一瞬にして真っ赤な噴水を上げて全員が倒れる。
それを見た兵士達は真っ青になる。
「今のは?」
「今のはって、だから魔煌剣烏だってば。あれ、使えるでしょ?ちょっとだけ距離と範囲が長いだけだよ」
ヴィルヘルムはなんて事無く、誇るでもなく口にする。
その時点で兵士達は薄々と感じ取っていた。これは斥候ではなく先行暗殺部隊ではないかと。そしてこの目の前の化物のような御曹司の何を守れというのかという思いが過ぎる。
そんな中、丘に隠れて見えなかったが、森の奥から黒い煙が広範囲にわたってぼそぼそと上がっていた。
「あの場所は…トライバルト村か?」
「まさか敵に襲われたのでは!?」
「急ごう」
ヴィルヘルムは走り出し、兵士達も慌てて走り出す。
さすがに兵隊がいる筈なので、ヴィルヘルムらは隠れて村の様子を森の中の入口から覗きこむ。
そこはまさに地獄と化していた。
既に争いが終わった後で村の家の全てが焼け落ちて崩れていた。黒焦げになった死体があちこちに散乱しており、村の奥では食料を集めているバルツァー領軍の兵士とアームズ帝国の兵士達がいた。入口には白旗が掲げてあったが、へし折られて半分ほど焼け焦げていた。
「くっ…あいつら…」
こそこそと隠れてみていたヴィルヘルムらだが、兵士の一人は怒りに震える。
「これだから戦争は嫌なんだ」
ヴィルヘルムは重い為息をつく。
「ヴィルヘルム様、一度戻りましょう。この様子ではこの先の村はすべて同じ状況であると思われます」
兵士達のリーダーと思われる男が進言する。だがヴィルヘルムは首を横に振る。
「取り敢えず、敵を皆殺しにするから、君達は生きている人がいないか確認していたら、ロートブルクへ運んであげてくれ。馬は殺さずに残して置くから」
「え?」
「全員の魔力は把握した。我が領民へ働いた狼藉の数々、降伏したにも関わらず攻撃をしているのだ。生きて帰れるとは思っていまい」
ヴィルヘルムから発する気配は怒りである。その殺気に兵士達は凍りついてしまう。瞬間、森の中にいた鳥達がバタバタバタバタと逃げていく。
ヴィルヘルムは隠れるのをやめ、歩いて滅んだ村の中を歩いていく。
すると食料を運んでいた敵兵たちがヴィルヘルムに気付く。
「誰だ、きさ!」
「ここは我々のほっ」
喋っている途中だが、問答無用で遠距離斬撃によって斬り殺す。
「襲撃だ!しゅうげっ」
「何だ、こいっ」
敵兵は慌てて動くのだが、ヴィルヘルムは自身の視界に入った人間を1人ずつ斬り殺していく。血が舞い散り、次々と敵兵の首だけが飛んで行く。
ヴィルヘルムに付いてきた兵士達はこの日の惨劇を見て、目の前にいる本家の剣士が明らかに規格外である事を知る。190年前、鬼神ヴィルヘルムという怪物の武勇伝は、ファルケン領に生きる少年は幼い頃に嫌と言うほど耳にする。あまりにもかけ離れた戦果、ありえないような無敵感に憧れる半面で、これは御伽噺なのだと大人になれば誰もが理解するものだった。
だがこの日、その認識を帰る事になる。鬼神ヴィルヘルムは確かに存在していたのだと、
数日後、ロートブルクの東方アイゼンシュバートを舞台に移す。それは丁度、ミハエルとヘルムートがシュバルツバルト防衛の為に軍を率いて、翌日には戦端が開かれようとする頃である。
アイゼンシュバートにはバルツァー子爵領軍2000が駐留し、バルツァー子爵領軍の他の2000と帝国軍の1000が先行部隊として進み、その後からアームズ帝国4万の軍隊が次々とそこを行軍が列を成して、城砦の門を通過して行く。
アイゼンシュバートの城砦の最も高い場所に陣取るのは、アームズ帝国クロフォード大公領に常駐する黒龍騎士団将軍レオポルド・ランカスターである。砦の最上段で地平の彼方を眺めていた。地平の遥か先にある都市はロートブルク、現代では1000年前から現存するという数少ない不落の城のある大都市である。
「1000年、誰も落とせなかったあの城を落とす。これほど楽しい仕事はあるまい」
レオポルド・ランカスターは2メートルを越す巨体を震わせて笑う。分厚い胸板、獅子の鬣のような長い黄金の髪、そして猫の耳と尾をもつを持つ猫人族である。
レオポルドは巨大な刃を持つ戦斧を左脇に置き、背には体長10メートルはある巨大な黒いワイバーンをソファー代わりに使っていた。
アームズ帝国は国内でも多くの内乱が続き、帝国への反乱を起こす国家も有れば、国民の蜂起、リュミエールやソレイユといった隣の大国へ国を売るような領主も少なくなく、各地で争いが起こっている。
その紛争を何度と無く収めてきた黒龍騎士団の将軍は、リュミエール帝国の国土としているケーニヒ公国領を蹂躙していた。
「おい、ガネルよ。何故、報告が上がってこない」
レオポルドは近くにいたガネルという人狼族の部下に声を掛ける。
「はっ、それが昨日から報告が途絶えており、現在斥候部隊を出しているところです」
「明日には一斉攻撃をかけるのだぞ。我ら龍騎士部隊はともかく、騎馬隊や歩兵達の第1陣は到着している報告があるはずだろう。まさか村を焼き払ったら通信設備まで間違えて焼いた等とは言わぬだろうな」
呆れるようにレオポルドがぼやく。
「牽制に出ていた龍騎士部隊ですが5騎は全て行方不明、その内2騎はロートブルク襲撃直前まで連絡を取ってましたが以降の報告は途絶えてます」
「バカが。ロートブルクは龍騎士部隊対策くらい練っているだろう。侮ったな、ばか者どもが。ワイバーンを教育するのにどれだけ大変だったと思っていやがる」
レイポルドはチッと舌打ちをする。
「連絡がないのは不安ですが、ここまでの予定通りに行軍が進んでいれば、銃士隊と騎馬隊、それに魔導師部隊と歩兵であわせて5000は初日のロートブルク戦に間に合いそうですね」
「後の3万等もはや不要。ソーンランドの悪魔ジェイムズ総督の用意した秘密兵器など用いる必要も無くこの国は蹂躙できるわ」
レオポルドはカカッと笑う
「とはいえ、情報が無いのは流石に問題なので龍騎士部隊を連絡に使っておきたいのですがよろしいでしょうか?」
「構わぬ。その者らが戻ってきたら、我々も出発しようか」
「まさか、閣下。第1陣の戦闘から、参戦なさるお積りで!?」
「無論、ロートブルクの民を蹂躙し、千年不落の名を我が手で終わらせたいと思うのは武人としての楽しみよ。それを部下になど譲る事などは断じて許さぬぞ」
カカカカッと大笑いするレオポルドに腹心であるガネルは苦々しく顔をゆがめる。
「おい、ケニー。閣下より了承は得た。ちょっと前方へいってドラゴンで様子を見に行ってくれ。例の情報が途絶えている件だ。ドラゴンでなら上空から状況が人目で分かる筈だからな」
ガネルは城砦の下で待機している龍騎士の1人に声を掛ける。
ケニーと呼ばれた人狐族の龍騎士は、ガネルの指示に了承し、ワイバーンに跨って空を舞う。
バッサバッサと凄まじい風音を立てて、龍騎士は丘陵によって視界の見難くなっている街道の上空を飛んで、街道の先に進軍していった自軍の侵攻具合を確認しに行こうとしていた。
レオポルドとガネルは、ケニーが1つ目の丘陵を越えたあたりで次の話に移ろうとした瞬間であった。
空を舞うドラゴンが、ケニーと共に真っ二つに切り裂かれて大地に堕ち、落下による凄まじい衝撃音が鳴り響き、大地を揺るがす。、
「え?」
「あ?」
誰もが一瞬目を疑った。
ドラゴンの鱗は鉄の刃さえも通さない強靱な鱗を持つ。それが綺麗に真っ二つに切り落とされたのだ。そもそも空を飛ぶドラゴンは速すぎて射程を動かしにくい魔導砲では狙いにくく、魔法で攻撃して、地面に近づいた所を盾を持った防御網で攻撃を抑えつつ、無数のミスリル尖刃を持った槍や魔導銃で突き崩すのが定石である。
ドラゴンを斬るなんて話はそもそも聞いた事が無い。
すると展望台に登り望遠鏡で見ていた人間が気付く。
「敵襲!敵襲です!敵勢力ははっきりと確認できませんが、先頭に長刀を持ったファルケン軍の人間と思われる男が1人!それ以外は見当たりませんが街道からこちらに向けて歩いてきます!」
すると丘の奥の方でウオオオオオオオオオオオオオオオオッと叫ぶ声が聞こえてくる。恐らくは行軍中の兵士達が丘の奥で戦いを開始したようだった。
「襲撃?一人しか分からないとはどういう事だ?」
ガネルは展望台の兵士に怒鳴りかける。
「それが…ただ真っ直ぐ街道を歩いてくる人影しか見えず、あ」
行軍中の兵士の叫ぶ声がプツリと消える。さすがにそれは異様だった。
「あ、死神だ…」
展望台に登って様子を見ていた兵士は顔を青ざめさせて口にする。
「何を言っているのだ!正確に報告しろ!」
「そ、それあ…行軍中の中隊200人が街道を歩く敵兵と交戦を開始したのですが、敵兵が刀を振ると兵士達が全員真っ二つに斬られて死に絶えました」
「!?」
正確に報告をされた為に更なる疑問符が頭の上に浮かぶ羽目になる。意味が分からない。
アイゼンシュバート城砦とロートブルクを繋ぐ街道は、丘陵によって曲がりくねっており、曲がりくねった街道はついに城砦裏手にある広大な荒野へと出る。そこに現れたのは長刀を持った1人の男であった。
赤黒く染まった服は異様で、淡々と前進する。城砦にいた兵士達は慌てて城砦の外に出る。
「貴様!何者だ!名を名乗れ!」
兵士の一人が大きい声を上げて襲撃者に問う。城砦を占拠していた人間達も出てきて急造であるが戦闘の布陣を作り始める。
「我が名はヴィルヘルム・フォン・ファルケン3世!我が領土への侵入、我が民草2500人に対する暴虐の限りを尽くした貴様らの愚行は許容できぬ!故に!これまでロートブルクからここまでに殺してきた貴様らの兵士7000に加え、ここの兵士5000人、この奥より続く10万の帝国兵の命で持って購わせてもらう!」
「!」
暴論である。だが実際に行軍していた兵士達からは誰も連絡が付かない。偵察に行った龍騎士部隊も帰ってこない。
ヴィルヘルムを名乗る男の服は夥しい返り血で染まっている。
ヴィルヘルム・フォン・ファルケン、この地においてはまさに英雄とも悪名ともとれる名を轟かせた男の名である。食べ物で好き嫌いをすればヴィルヘルムが襲ってくるぞなんていう脅し文句が当たり前のように言われている程度に危険存在として認識されている。伝説は様々で龍騎兵をすべて斬り殺したとか、万の軍勢を1人で斬り殺したとか、噂に尾ひれが付いた御伽噺のような伝説が数々残っている。
その名前を自分のものとして自己紹介する時点で頭がおかしいと思われる。だが夥しい血と切り落とされた龍騎士を見て、冗談と笑い飛ばせる人間は既にいなくなっていた。
「はっ…面白い。ヴィルヘルム3世だと?吠えるほどのものか、見せてもらおうじゃないか!」
レオポルドは自身の黒龍に跨り、右手に戦斧を握り締める。
「われこそはアームズ帝国の軍神レオポルドなり!万の戦を勝利し続けた我が、たかだか田舎の鬼如きに屈する事などありえぬ!」
大きい声でレオポルドは断言する。
ドラゴンに乗って空を舞い、大地に立つヴィルヘルムを見下ろす。
「勇敢なるアームズ帝国の兵士達よ!目の前にいる小僧を殺せ!生きてきた事を後悔するほどの絶望を与えて見せろ!さあ、撃滅せよ!」
「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」
数千の兵士達の咆哮と進軍する足音によって大地を震わせて、雲霞のごとく兵士達がヴィルヘルムへと襲い掛かる。さらに上空からは龍騎士が襲い掛かってくる。
最初に襲い掛かるのは銃士隊による魔導銃による弾丸の雨霰である。だがすべての銃口の向きを瞬時に把握し、すべてをかわす。
そのまま長刀を持って単独で軍勢の中に突撃し、すれ違いざまに一閃、単位にして100以上の人間の腹と頭が離れる。
「どけ!兵士達!ドラゴンブレスだ!」
龍騎士が吼えて、ドラゴンの口から業火が降り注ぐ。
「魔煌剣・鳶」
ヴィルヘルムは兆等に魔力を集めた魔煌剣を、頭上で回転させて、斬撃の連続による、斬撃の竜巻を生み出す。周りにいた兵士、襲い掛かった龍騎士はその竜巻に巻き込まれ一瞬にして血の華を散らし骨も残さず肉塊へと変わる。
その情景を見た兵士達は一気に顔色を悪くする。だが手を止めると、今度はヴィルヘルムが攻めに回る。
「魔煌剣・大鷲!」
大規模斬撃により人間の上半身だけが血飛沫を上げて空へと舞い上がる。空から龍騎士部隊が次々とヴィルヘルムへと襲い掛かる。
「はああああああああっ」
ヴィルヘルムは大地を蹴って空へと舞い上がり、先頭で飛んできた龍騎士とすれ違い様に龍ごと人間を真っ二つに切り落とし、その奥にいるドラゴンの頭を蹴り飛ばして、その勢いを使って城砦の頂上へと着地する。
長刀を鞘に戻して鞘と刀身の両方に魔力を集中させる。
「魔煌剣・金烏!」
ヴィルヘルムの持つ最強斬撃の頂点に立つのがこの金烏である。
大鷲は魔力を込めた斬撃を飛ばすのだが、金烏は斬撃を飛ばすのではなく、空気諸共魔煌剣によって切り裂く。かつて200メートル級ドラゴンを幼き日に撃ち殺した、独自の魔煌剣は7年の歳月を経て、威力は格段に上がっている。
居合いの要領で鞘すべりを利用し、オリハルコンをも切り裂く刃は音を越えて放たれる。
瞬間、次元さえも切り裂いたような音が鳴り響き射線上にいた龍騎士部隊7機と兵隊3000人が一瞬で絶命する。
「面白いと言ったな、帝国兵。このような惨劇の何が楽しい!?答えて見せろ!」
「侮るなよ!ヴィルヘルム!」
レオポルドは斧を握ってヴィルヘルムへと襲い掛かる。だがヴィルヘルムはレオポルドと黒龍の攻撃を前に出てすれ違うように避ける。そのまま回転して大地へ着地する。
「くっ…避けられたが…まだまだおわら…」
レオポルドは左手で龍を操る手綱を握り、己の龍を引き返して再びヴィルヘルムに向かわせようとするのだが、何故か左手が無い事に気付く。手綱を引くにも自身のドラゴンの首が無く引く先も存在しない。
「!?」
レオポルドは死の最後まで、自分の上半身と愛騎の黒龍の首が一緒に切り落とされた事に気付いていなかった。
将軍を失った帝国兵はどうすれば良いかも分からず、副将であるガネルの指示によって城砦の東側へ撤退を開始する。これからまだ3万以上もこのファルケン領に向かって進軍しているのだから、友軍もたくさんいる。何よりこの危険な怪物の事を連絡しなければならなかった。
背を向けて撤退する軍隊を、ヴィルヘルムは背後から迫り悉く蹂躙する。龍騎士はすべてドラゴンと一緒に真っ二つにされて地に落ち、逃げる兵士達も次々と息絶える。
鬼神ヴィルヘルムの名は、敵に轟く間もなく、その姿を見た人間はすべて口を封じられる事になった。




