調査
その後村をくまなく捜索したが人と出会うことは無かった。
だが、いくつかわかった事もある。人が居なくなったのはオークに殺されてって訳では無いらしい。人が最近まで住んでいた形跡がなかったのだ。食糧やら目ぼしい家財道具等はどの家屋にも残っていなかったからだ。
無人の村にいつまでも居てもしょうがないので、ワルスと二人移動を開始した。目的地はこのマスにある祭壇だ。
マップを開くと大まかな祭壇の位置が表示される。
距離は2、3kmってとこだろうか。
移動中に色々な説明を聞いておくことにした。
モンスタークリエイトは消せば経験値が戻ってくるが装備品や消耗品をクリエイトした場合経験値は戻せない。
魔法も同様で一度取得した魔法は忘れる事は出来ず、これも経験値に戻すことはできない。
したがって武器等は本来ならクリエイトを使用せず買う方が良いとの事。クリエイトで作るメリットとしては炎の剣等特殊な効果が付与された武器が作れる事だ。しかしながら必要な経験値が膨大になるとの事。
そして今更ながら知ったこの世界の死亡判定についてなのだが…。
これは経験値そのものがHPだった。
そして装備品がある場合もダメージは生身の部分に当たっても装備品にフィードバックされる。
装備品の耐久値が無くなれば装備品は砕け散る。
つまり装備品に耐久値+経験値がHPとなる。
つまり装備がすべて破壊され経験値が無くなれば死亡だ。
デスペナルティーはすべてを失い始まりの場所に戻る。すべてとはこの世界に来てからの記憶も全てだ。かなり重いデスペナルティーなので安易に死ぬ事は出来ない。中々に厳しい設定だ。
そうこうしている間に祭壇の近くに来たようだ。
祭壇は地下にあるようで、地下に続く階段が目の前にあった。
近くにモンスターの気配はないが地下から漂ってくる気配は肌を粟立たせるだけの異様な空気を放っている。
シキは索敵代わりにスライムを三体クリエイトする。
そしてスライム達に祭壇の探索を命じる。
「ぴぎぃぃぃー!」
主人の命に応えるように三体のスライムが祭壇の奥に先行して行く。
「ヤバイな今の俺たちじゃ多分どうにもならん。索敵を頼んだスライムが瞬殺で吸収された。何より三体同時に消えた。知性がかなり高いか数がかなり居る可能性もある。ここは一旦引くぞ。」
「そうね。オークが街に居た事と言い何か異変が起こっている事は確かだし、とりあえず人を探しましょ。」
その場から離れようと祭壇に背を向けたその時背後からモンスターの咆哮がシキ達に襲いかかった。
「ブォオオオオ!!」
「ちっ!村に居たオークと色も違うし手に持ってるアレどう考えても刃物だろ。やべぇなこれ。」
そうこうしているうちに祭壇からはオークが計四体出現した。
「シキ!!ここは一旦逃げますよ!このモンスターはオークの上位種でオークソルジャーとオークキングもいます。経験値的には5000クラスのモンスターです。かすり傷でも負えば致命的です。即時撤退を!!!」
シキとワルスは即時撤退を決意した。
しかし、オークソルジャーの俊敏性は身体に似合わず素早く容易に撤退を許すものでは無かった。
「くっそ!迂闊だった。これ程の窮地に産まれてから1日で遭遇するとか、ハードモードにも程があるだろ!!!クリエイト!!!ウォーターボール!ファイアボール!」
2つの魔法をモンスターの目の前で衝突させる。
水と高温の炎により大量の水蒸気により煙幕を張ることに成功する。
モンスターの足止めを無事に成し遂げどうにか無傷にて逃走に成功したシキとワルスだった。
「……シキ。やっぱりこの世界恐らく改変されてる。私が創造した世界はこんな場所に高位のモンスターが居る設定では無かった。今はまだ推測でしか無いけど、貴方と始まりの世界からこの世界に来るまでの間に世界改変が行われた可能性が高い。そしてそれが可能なのは十賢者のみ。恐らく彼等がなにかしらの改変をしたはず。それを元に戻すには世界7つある特別な祭壇に行かなくてはならない。」
「ワルスはもうこの世界に干渉出来ないんじゃないのか?」
「この世界には死の概念が無い。記憶は失ってもまた復活する事は出来る。エンディングのない世界なんてクソゲーだと思わない?その為にも世界を次の世界に作り直す方法がある。」
「何にしてもこの世界の人に出会って情報収集しないとな。ここから大きな街を目指すか。装備も揃えないといけないしな。」
そこでふとシキは疑問に思った事をワルスに聞いた。
「なぁ。この世界のお金ってどうなってるんだ?」
「経験値よ。」
「はぁーーーーーーー!?ちょ。システム的に経験値に依存し過ぎだろ。金こそ力ってか!?はぁ〜萎えるわ〜」
「正確には魔石ね。魔石は武器や消耗品と違って経験値に還元出来るのよ。だから魔石をクリエイトして通過の代わりにするわけ。モンスターがお金を落とすより合理的じゃない?」
「とりあえず経験値も稼がないとな。ってか戦闘しなくても強くなれるってのは俺好みではあるがな。ふふふ。」
こうしてシキとワルスは祭壇を後にし交易都市ラグーザに向かうのであった。