異変
「おかしい。村に人が一人もいない……。」
「おい、あっち観ろ!!」
視線の先には棍棒をもつ三メートル程のオークが四体。家屋の殆どは全壊かろうじて半壊を保っている家も中にはあるが、人らしい影は何処にもない。
「おい。ワンズ!この世界こんなに物騒なのか!?最初の村が全滅してるとか、どんなゲームだよ。」
「ありえない!本来モンスターは村や町には入ってこれないはず。何かおかしい。とりあえず考える時間をちょうだい。」
「んじゃ、ちょっくら腕試しして来る!!!」
「――ちょっ」
シキは落ちている木片を拾い背を向けているモンスターに背後から駆け上がると後頭部に突き刺す。
そのままオークは前のめりに倒れた。
隣にいたオークも咄嗟の出来事にまだ反応していない。すかさずオークの持っていた棍棒を手に取り顔面目掛けぶん投げる。
オークは片膝をついてどうにか耐えている。しかし攻撃の手は緩めない。今度は前から突進しオークの膝に足を掛けるとそのままバク宙の要領で下顎からの強烈な蹴りを叩き込み意識を刈り取る。
残りは二体、一体が振り上げた棍棒をシキ目掛け振り下ろす。
――ドゴォ
「遅え!!!」
半歩の移動のみで棍棒を交わすと伸び切った腕目掛け踵落としを決める。オークの腕は本来とは真逆の方向へ、へし曲がる。
もう一体のオークが横薙に棍棒を振り回す。これも当たる事はなかった。
次の瞬間、シキの後方から熱を感じた。
「ファイアボール!」
放たれた二つの火球は二体のオーク頭部に被弾。そのまま崩れるように倒れていった。
《経験値260獲得》
「ふぅ〜。まぁこんなもんか。」
「ちょっと!負けるとは思ってなかったけど装備も無しに突っ込んで行くとか馬鹿なのですか!?」
「まぁそこまで強そうに見えなかったし大丈夫かなぁ~っと。」
「魔法の説明もしてなかったですしヒヤヒヤしましたよ。」
「そう言えば魔法の事聞いてなかったな。」
「いいですか!!魔法も経験値を消費して取得します。一度取得した魔法は次回からは経験値は使用しません。但し1日の使用回数に限度があります。これを増やしたい場合も経験値を使う事になります。また威力も経験値をつぎ込めば上げる事ができます。私がさっき使った魔法はファイアボールで経験値300使用で一発です。ですが今は2発使用可能したので900の経験値を使いました。2発目以降取得しようとすると倍の経験値が必要になります。」
「ほう。じゃあワルスの現在の経験値はスライムクリエイトに使った10とファイアボールで使ったから残りは90か?」
「いえ、オークのトドメを刺した260があるので350ですね。」
「なるほど。なるほど。トドメを刺した人に経験値がいく訳だ。んじゃ俺は今、初期の1000とスライム四匹分とオーク二匹分とで1300って事か。」
「そんな事計算しなくてもステータス画面から確認できますよ。」
む。色々とはしゃぎ過ぎたな。
次からは説明を聞いてから行動しよう。うん。
「それよりこの村の住民はどこに行ったんだ?」
「わからない。通常この辺りにオークなんて居ないはずだし……それに村へモンスターが入ってくる事自体が不可能なはずなのよ。まさか……世界改変………。」