旅立ち
目を開けるとそこには広大なな大地と青い空が広がっていた。
あまりの絶景にしばし無言になる。
「シキどうですか?どこか違和感等はありませんか?」
「……ああ。」
「では、この世界の説明をしますね。この世界の名はノヴァブワン。まず世界は球体ではありません。10×10のマスの様な世界になっています。1マス辺りの広さは縦横20km程です。各マスにはコアと呼ばれる祭壇があります。そこを治めるものがその地域の主になれます。この世界で成り上がるにはコアを如何にして守り治めるかが重要になってきます。」
「陣取りゲームかよ。また面倒な仕様にしたもんだ。」
「そう単純なものでも無いですよ?それぞれマスによってモンスターしか居ない土地や城や街があるマスもありますからね。」
「おいってかおい!!!あそこに居るのスライムか!?」
草原にゼリー状の物体が飛び跳ねていた。
「スライムですね。この辺りは比較的低レベルのモンスターしか生存していない地域ですので。スライムくらいその辺にいっぱいいますよ?」
「あー、つまり各地にある祭壇を掌握し世界統一を目指せと?コミュ障でぼっちプレイヤーの俺に城や街のある地域を治め王にでもなれと?やべーやる気無くなってきたわ〜。」
「まぁ、それもありなのですが、この世界の真の魅力はクリエイト機能です。シキや私の創造物を創ることが出来ます。それはものに限らず生物もです。なので強力なモンスターを生み出しそのモンスターに祭壇を守護させたりするわけです。もちろん何の対価も無しにモンスターをクリエイトする事は出来ません。百聞は一見にしかずと言いますし、クリエイトしてみましょう。」
そう言うとワルスは近くに居たスライムを踏み潰した……。
ワンズが手をかざすと光の粒子が集まりだす。
次第にプニプニとした盛り上がりが地面に集まっていゆく。
モンスターが産声を上げた……。
「ぴぎぃぃぃー」
「おお召喚魔法って感じだな!!!」
「モンスターをクリエイトしました!一度倒したモンスターは図鑑に登録されます。そしてコレは私の経験値を消費しクリエイトしたモンスターです。ちなみにこのゲームに置いて経験値=生命力でもあります。私の初期経験値1000のうち10を使いクリエイトしました。ちなみにクリエイトしたモンスターにはシードは無く術者の意思で経験値に戻す事も可能です。但し他者に倒されると経験値はその討伐者に吸収されてしまいます。ここまでで質問は?」
「そぉぉぉい!!!!」
そう聞かれたシキは目の前のスライムを蹴り飛ばした……
《経験値10獲得》
「なるほどな。理解した。」
「――なっ!!!酷い!私のスライムちゃん……。」
「当然、他者がクリエイトした以外にもモンスターは湧いてるみたいだが?それは?」
「モンスターの自然発生は簡単で祭壇から産まれるわ。統治した祭壇はモンスターを産まなくなるけど誰も統治していない祭壇やモンスターが占領している祭壇は同族を生み出す祭壇になるのよ。だからアンデッド系しか存在しないマップとか色々あるわ」
「んーじゃあ、手っ取り早く拠点作って地固めして世界に慣れる事が最初の課題かな。」
「とりあえず小さな村がこの辺りにあるわ。そこに向かいましょう。」
そうして簡単な説明を受けた俺とワンズは草原を歩く。
すると目の前に先程ワンズがクリエイトしたモンスターとそっくりなスライムが現れた。
その数は三匹、問答無用で突進からの蹴りを御見舞していく。
「そぉぉぉい!てぇい!ちゅりゃ〜!」
ってか疲れない。こんなに走ったり蹴ったりしてるのに息一つ上がらない。流石仮想の肉体と言ったところか。
《経験値30獲得》
また脳内に直接アナウンスが流れる。
「楽しそうですねぇ〜。そぉぉぉい!だって。ププッ」
赤く染めた顔をワンズから顔を逸らす。
「そ、そりゃゲーマー憧れの世界だぞココは!興奮して何が悪い!!!」
「あっそういえば、シキを電子分解する時にやたらと重いデータの塊があったんですけど?何か心当たりは?」
「………ちょっとパソコンからデータを持ってきたのだよ。」
「何を持ち込んだかは知りませんが使える保証はありませんからね?クリエイト機能があるのである程度持ち込んだ物は複製出来るかもしれませんが。」
「よし!試す!……コンソールとか開けないの?」
「頭で考えながら縦に手を降って下さい。コンソールがでますよ。」
言われた通りに頭でコンソールと念じながら縦に手を振る。
「おおぉ!まんまゲームだなこれ。」
:ステータス
:マップ
:装備
:持ち物
:クリエイト
:図鑑
持ち物をタップする。
光の剣、闇の剣、炎の剣、氷の剣、魔神の剣ダーインスレイブ、ミョルニル、ブリューナク、黒漆大刀、正宗、魔神の弓、サン・バレッド、レールガン、豪雷の杖、魔神の盾、イージスの盾、漆黒の鎧、紅蓮の鎧……etc
「持ち込み出来てるじゃないか!!!」
「何を持ち込んできたのよ…。」
ワンズがウィンドウを覗き見る。
「はぁ〜。そんな事だと思ったけど、多分無意味よ。どーせクリエイトできないから。」
「ク、クリエイト!!光の剣!!!」
《経験値不足です。あと1279970不足しています。》
「128万の経験値だと!!!?!?ばかなぁ!!くっそくっそ!」
「最初から俺TUEEEEEEしたかったの?残念でした!」
「まぁ設計図的な感じで役には立つかもね。ほら行くわよ。」
分かってはいたか、正直ショックだった。元の世界で収集した数々のアイテムをセーブデータごと持ってきたのだ。
使えるとは思ってなかったがやはり一からのスタートらしい。
あーだこーだと項垂れているうちに村らしきものが見えてきたのだが……。
「あれ……。人が居ない?」