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第八十話 ライバル、ゴブリン第二の村に着くのこと。

初日、二日目、三日目の行程は滞りなく、私達は件のゴブリン村へ着いた。起きた事と云えば、私達が毎日行う水浴び、其れから武術鍛錬にもゴブリン達が付き合うようになった事は特筆すべきだろうか。


勿論ゴブリン達の体臭はその食事にあるので、水浴びを習慣にしようが消える事は無いのだが、取り敢えず努力を犬人達に認めて貰う事が出来たという点では大きい。


矢張り、誰でも頑張っている事については、真っ当な感性があるならば「ある程度」の評価はする気になる。食事にしても是は本人達の努力で何とか成る物ではないのだから、まあ許容範囲に達したと認められると云う事だろう。


問題が武術の方で、ゴブリン達は兎に角姿勢が悪い。之も本人達の所為ではないのだが、常に前屈みの様な状態だ。之では先ず以て「立身中正」が保たれないが故に、馬弓錐にも苦労する様である。決して私達が強制した訳ではないのだが、やると言って聞かない。


まあ、一日二日で何とか成る物でもないので、是は追々姿勢が正しくなったら次に進むと云う事で二つ目の努力目標と成った。


三日目の日暮れ近くにゴブリン村に着く。


長と成った副将を筆頭に盛大な出迎えを受け、何だかこそばゆい。別に彼らから其れ程感謝される様な事をした覚えはない積もりだ。飽く迄も私と犬人達が之以上の災禍に陥らない為の方策であった。


夕食には態々(わざわざ)私達の為だけに獲ってきたらしい、新鮮な川魚、野鳥の焼いた物、野の葉物が並ぶ。勿論、醤醢ひしおの様な調味料は欠かされない。食べ切れない程の量が出されるが、何、余れば腐らせる事で彼らの食料になる。程々に手を付けて存分に味わった。


宴では長より村を「ガラッハ」としたいという希望を告げられる。何でも先の大将の名前だという。其れ程の支持のあった長の名を留めて置きたい事、犬人達の村にも名前があるらしい事から、自分達もと考えたと云う事だ。


然うは言ってもコボルト村とは遺恨のある者の名。先ずは犬人に具申をしてから正式に決定したいといっている。


リーダーは酒で怪しくなった呂律を何とか回して

「いいんじゃねーか」

とか言っては居たが、ケントには止めさせる。


此処は一旦村に持ち帰り、大神様達の御墨付きも貰った方が、箔が付いてゴブリン達も嬉しかろう。


「相分かった。大神様にも諮り、御許しを頂く事にしよう。悪い様にはせぬから待たれよ」

と返事をさせておく。


一度衝突した勢力との関係は難しい。圧政で押しつぶしていっては何れ反乱の芽が出るし、弱腰では舐められて侮られる。

力で政権を築き、其の後260年も平和裡に維持した徳川政権というのは、みるべき物がある。圧政を敷いたのは家康の盟友、織田信長だが、彼は政権を確立する前に部下の反乱で潰えた。

後を継いだ羽柴秀吉は小牧長久手の戦いで徳川家康を圧倒する事が出来ずに其の後の弱腰を余儀なくされ、政権を確立させる事が出来ずに果て、継嗣は大坂の陣で倒された。


其れ等を間近で見てきたのが徳川家だ。学ぶべき事は大いにある。何事も過ぎたるは及ばざるが如し。


私達は酒に酔い謡い、騒ぎまくるが、私達と帯同するゴブリン達は隅の方で畏まっていた。まあ、此の辺りはゴブリン達同士の上下関係があるのだろうから、私達は口に出さない。



寝床はゴブリン成りの気遣いなのだろう、村の後背地に建てられた離れを使わせて貰った。

明らかに私達を迎える為に建てられ、整えられている。是を断り、村の外に泊まると言えば、流石に之は失礼だろう。


離れには十人程が泊まれる広さがあったが、雑魚寝が基本の犬人達にとっては相当に広すぎた。恐らく村人の半数以上は泊まれるだろう。コボルト村風に床を持ち上げ、床下がある。早春の肌寒い風はあるが、なぁに、私達は毛布を被って雑魚寝をする。問題は無かった。



翌朝、朝日と共に目を覚まし、村中央の広場に出る。前回来訪時には行わなかったが、今回は友好的だと云う事をアピールしよう。犬人達で武術鍛錬を披露する。


今回同行しているメンバーは既に馬弓錐から冲錐、川掌、降龍迄は出来る。まあ、其れ成りの見せ物には成るだろう。


一応ケントからは是が先の戦いで勝敗を決した、私の武術の一端であると言って貰っておく。


更に私だけでは有るが、金剛八式に加えて、小八極、崩歩を見せておこう。


終わる頃には村も目が覚める。

朝の沐浴を終え、支度を調え、朝の内に出立する。ゴブリン達の表情は良く解らないが、まあ、余り悪感情は無いと思っておこう。


此処からはゴブリン達の道案内に従わざるを得ない。


南下を始めて二日目、周囲の山々が目立って低くなってきた。気温もやや暖かくなって来、木々も芽が脹らみつつある物が出始めている。


国破れて山河在り、城春にして草木深し。

全く此の美しい大自然の中、態々血生臭い戦場へ行かねばならないとは。


三日目の昼頃、川沿いの道から外れ、山間の道に分け入っていく。山間とは言え其れ程急峻な地形ではない。まあ、水の流れない横谷の様な地形だ。


只、前後を山に挟まれた地形は生活に付いてはともあれ、襲撃に弱い。


小一時間程も木々をかき分け進むと、ガラッハ村の様な村に出た。之が今回のゴブリン村なのだろう。


造り其の物はガラッハに準じているが、彼方が川沿いの開けた地形に在るのに対して、此方は山間にある。之で襲撃の心配があると成ると、随分厳しい。


使者達が先に立って村に入り、ゴブリン達の出迎えを受けるが、正直余りの人数に落胆の色は隠せなかった。


一応は客としての待遇は受けるが、まあ其の様な物だろう。


夕食では一応私達も食べられる物が出ては居るが、まあ、ガラッハ程の物はなかった。

村の長と思しきゴブリンに自分達の紹介と飽く迄も「軍事顧問団」である事、過度な期待は抱かせぬ様に念を押す。


夕食では襲撃者達が見上げる様な巨人で、数え切れない程の軍勢を連ね、情け容赦なく打ち据えて行くと云う情報を得た。実際に自分達でも確認する必要はあるが、数え切れない程の軍勢と云う事が気になる。


情報が事実であったら、不良少年の喧嘩の様なゴブリン達の戦争など、一蹴されて了うかも知れない。


庭の隅に建てたテントの中で、私達は少し不安な夜を過ごした。未だ未だ夜は冷える、春先の事だった。

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