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第七十四話 ライバル、ゴブリンの村に戦後賠償を要求しに行くのこと

陽の有る内に、戦後処理が始まった。戦死者を弔い、負傷者の手当てをする。唯、私達が手当てをする者の中にゴブリン達は含まれない。ゴブリン達はゴブリン達同士で手当てをし、死者を葬る。


死者は犬人側にはなく、ゴブリン側に大将を始め、全部で3名。負傷については重傷者のみで犬人側に5名、ゴブリン側に8名。



大将が死亡した事でゴブリン側の指揮権は副将に移り、彼が全面的に責を負う事となる。


戦後賠償に付いては犬人の側でほぼ「ゴブリンの物に欲しい物はない」という点で一致しており、下手をすれば「無罪放免」になりかねなかった。とは言え、私には一つ思う所があり、ゴブリン達の村の場所を案内して貰う事にした。



責任者である副将と、其の手下一名を除いて彼等の両手を拘束、連接し、本拠地への案内をさせる。本来ならば冬籠もりの支度を急ぎたい所であるが、ゴブリンを放置してまた別の集団に襲われるのも困るし、かと言って惟だけ大勢の捕虜を養うとなると冬籠もり処の話では無くなる。早急に敗残兵を解放して負担を減らし、ゴブリン達から賠償をせしめる必要があった。


道中に不安が無かったかと言えば嘘にはなるが、私がケント、ハンスと共に連行する間、別段、抵抗らしい抵抗は見られなかった。



川沿いに流れを下る事2泊。私達はゴブリン村へと着いた。


私達の姿が認識された途端に、ゴブリンの村を覆ったのは絶望。


彼等成りに、豊富な戦果による、不自由の無い越冬を期待していた様だが、拘束され、大将と副将を欠いた状態での帰還にあからさまな絶望を見せる。恨みがましい目で私を睨み、此方は全く悪い事をしていないのにも拘わらず、妙な罪悪感を植え付けてくる。


此の雰囲気に呑まれてしまえば、私達は「襲われ損」だ。建設途中と見える村の中央にゴブリン達を集め、ケントの通訳でのたまう。


之度このたびは貴様等ゴブリンに襲撃され、私達の村は多大な迷惑を被った。秋の収穫は遅れ、怪我人もでた。


わざと被害を軽く言い、奴等の無力感を煽る。


「貴様達の大将を含め、数名を討ち取りはしたが、貴様等の罪は此の程度であがなえる物ではない。本来で在れば襲撃者全員の命によって贖うべき所であるが、


大将の戦死を告げ、更に絶望を誘う。涙目になる襲撃者さえいる。


「私達コボルトは貴様等の様な無慈悲な集団では無い」


是だけ脅せば、大抵の要求は通るだろう。


「後で幾つかの要求を提示する。其の要求に従えば、今回の襲撃に関しては罪を問わずにおく」


当初の絶望が嘘の様な表情だが、「要求」に引っかかりを感じて喜びきれてはいない様だ。


「従わない様であれば、止むを得ない。大将を討ち取った私、ケイ・オダが直々に不服従者を罰する事になる。早い内に名乗り出る様に」


此処で不服従が即ち罪である事を更に念押ししておこう。尤も、彼の大将を討ち取った私に対し、直ぐ様反旗を翻す様な剛の者は流石のゴブリンと言えどもいなかった。


斯くして、数日の交渉の末に「今後コボルトに対して絶対服従する事」「村を移転した後は私達の村に届け出、所在を明らかにする事」「村の支配者を替える際にはあらかじめ私達に届け出、承認を得る事」等、幾つかの要求を承諾させ、新たなゴブリン大将に副将を据える事を決め、私達は帰途についた。


ケント、ハンスは意気揚々たるものだったが、私はそう楽観していなかった。何しろ此の世界は現代日本と異なり文字文化がない。今回の要求もそうだが、文字にして残し、互いの証しとする事が出来ない。


場合によっては、私達を帰途、多勢で襲撃して討ち取り、後は知らぬ存ぜぬを通す事だって可能なのだ、と二人に説明したらみるみる耳が下がり、尻尾が萎えて仕舞った。此の解り易さが犬人、コボルトの魅力ではあるが自分の命が掛かっているのであればうも言っては居れない。


畢竟、野営は三交代で見張りをし、昼は帰途を急ぐ。最短経路である川沿いを迂回し、襲撃を避ける手もあるが、再襲撃を成功させれば奴等の士気は高まり、屈服させる事が叶わないだろう。


其処で、二人と謀り、恐らく襲撃してくるであろうゴブリンの追撃を待ち伏せする事にした。


武装も取り上げた上で捕虜を返しているので、村襲撃程の武装はしていないだろうと云う事と、大将、副将を欠いている時点で大した戦闘力は最早無いだろうという見込みだが、果たして吉と出るだろうか。


秋も深まり、明るくなる月が私達の味方をしてくれるとよいと思いつつ、最も襲撃される見込みがある帰途二日目の夜を迎えた。

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