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第七十一話 ライバル、ゴブリン戦で先制するのこと

交渉の決裂を見た奴等の動きは速かった。あっと云う間に本陣を畳み始める。此方こちらも悠長な事はして居られない。リーダー、サンマ、ハンス、ワウを集めて緒戦の説明をした。


又、力自慢を集めて、此方は門の開閉を担当させる。の先制戦では門の開閉が今後の戦を左右する。と云うか、これが上手く行かなかった場合は此の犬人村の存亡にかかわる。


「奴らが本陣をたたみ終えた!」

ケントからの報告を契機に討って出た。

門扉を外して出撃する。先制隊が一気に土手を滑り降りる。奴等は未だ川に入った処で、私達が行き成り討って出てきた所に驚いている。僥倖だ。


川原に出ると手頃な石を拾い、思い切り投擲する。人数が人数であるから、石礫も雨霰と云う訳にはいかない。どうしても慣れて居ないものだから、川の中程で落ちて仕舞ったり、ゴブリンを飛び越えて向こう岸の土手に落ちるものさえ有る。


其れでも此の先制攻撃はとても有効だった。金瘡きんそうに強いゴブリン共も、打撲には弱い。又、前回のグループとは異なり今回のグループには階級・格差があった。詰まり、最前線を担う兵の防御力は後方の大将に比べて低く、石礫の投擲が非常に高い効果を発揮したのだ。


更に足場の悪さが追い打ちとなる。川の対岸は村を大きく回り込むように流れている。つまり、流れの「外」だ。そして、一般的に川は流れの内側が緩く浅い。外側は其の逆で、速く深い。渓流の様な激しい差は無いが其れでも無視出来ない差が有る。投擲に驚いたゴブリン兵は、足を滑らせて転倒した上で味方に捉まって起き上がろうとする中で味方の足を引っ張って転倒させて仕舞うと云う惨事となった。更に我々の投げる石がパニックに拍車を掛ける。


「撤退!」

程良くパニックを与えた所で、撤退を指示する。


「「「おう!」」」

リーダーも含めて良い返事だ。取り敢えず手に持ってしまった石ころを投擲すると一目散に門へと向かう。遅れた者は居ない。


さっさと門を潜り、嵌った門扉に閂が下ろされるとやっと一息つけた。水を一杯貰って喉を潤す。


「ケント、敵の様子はどうだ」


「怪我人を救って一旦対岸に退った」


ふむ。


気になったので私も閂に登ってみる。此処も何れ物見が要るな。見やると、負傷兵を労って救護している。成る程、此のグループが強い訳だ。


みるみる部隊が再編される。今度は階級の高い者を先頭に渡河部隊を編成した様だ。舐められていたと云う事か。


「来るぞ!再出撃だ!」と血気盛んなのはリーダー。


「いや、今度は出ない」と止めておく。


「なぜだ!さっきの奴をくり返せば奴らを追い払えるのだろう?」


「いや、もう通用しない。

「奴等は先程の様に軽歩兵を先頭にはもうしていない。位の高い強い者を先頭に据えている」


「なおさら好機じゃないか。強い奴をたおせば、俺たちは勝つだろう」


「其の代わり、石を投げるだけの俺達はあっと云う間に鎧兜を身につけ、剣と盾を持つ強者に囲まれてしまう。石を多少投げた所で、鎧兜、そして盾には通用しない」


「なら・・・」


「此処は大人しく奴等の渡河を許すしかない。渡河を終えて、此方の岸に陣を敷こうと云う時に少し弓を射掛けてみる。矢が勿体ないから、二、三射で良い」


怪我人を庇いながら、ゴブリン達は渡河を終える。奴等からも、塀の上から様子を窺う私達は見えるから、渡河の最中も油断は見せない。


それでも全員が渡河を終え、負傷者を河岸に座らせた時にはようやくホッとした様子を見せた。


「てー!!」


号令一下、数射された箭が奴等を襲う。

油断大敵だ。


打撲で身動きが取れない者、それから負傷者の補助をしていて身動きが取れない者。そう云う者に容赦なく矢が刺さっていく。


形容のし難いゴブリンの阿鼻叫喚が、村の塀に迄届く。


私達が身を隠した頃に奴等も射返してくるが、箭は空しく村の庭や家屋の壁に刺さるのみ。


ゴブリンの箭が途切れる。此処だ。此処が討って出る正に其の時だ。


門を再び開いて、私達は剣を翳して飛び出ていった。

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