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第六十五話 ライバル、コボルト達と馴染むのこと。

私達の狩った鹿肉はほぼ、其の日の内に消費された。私としては可成り頑張って狩って来た積もりであったので、もう少し残るかと思っていたのだが、そうはならなかった。ほぼ、骨しか残っていない。


皆が笑顔で、満足している。今日は狩りで手ぶらと云う事が無かったからだろうが、毎回鹿が狩れる訳でも有るまい。肉が残れば干し肉でも作ろうかと思っていたのだが、今宵の出番はない様だ。


何の気無しに骨はどうするのかと訊いてみると、是は捨てて仕舞う様だ。む、勿体ない。鹿で取った事は無いが、骨と云えば豚にせよ鶏にせよ大概は煮出せば「出汁」がとれる。鹿でとれぬ事も無かろうし、彼等がスープ様の食事を嫌うとも思えない。


此処は一つと、交渉して明日私が調理する事を条件に骨の保管を頼んだ。ついでに穀物類はどの様な物なのかを訊いてみる。良くは解らないが野生の物を採るらしい。量は其程無いが、是ならば「新味」には行けるだろうと考える。


焼いた鹿肉、根菜と穀物に火を通した汁気の物、其れに一杯の酒を呑んで夕餉を終える。食事の後は皆で食器を洗い、一日の汗を流した。


気候の言い日柄だからいいが、寒風吹き荒ぶ冬等はどうするのだろうか。疑問は尽きない。


寝床は外来人であるからと言って差別されると云う事は無かった。この辺りこの犬人は開けっ広げと言うか、大らかだ。大神様と云う守り手が居るので、根本の所では其程心配して居ないのだろう。ただし、村の中での序列によって大体の場所は決まっているらしく、私も其処で寝る様に言われた様だ。


斯うして一日の生活を終え、屋根の下で眠りに就く。何とも言えない幸福感がある。



------



犬人達の朝は早い。というか、現代日本人の朝は遅い。昔は日本でも斯うだったであろうと云う日の出と共に起きる。互いに吠える様な挨拶を交わし、起こし合っていく。私も隣に寝ていた寝坊助を起こした。


子供は直後こそうだうだしているが、あっと言う間に目を覚ましてはしゃぎ出す。嬉しい喧しさだ。取り敢えず皆でぞろぞろ川に出て、顔を洗う。

先に顔を洗った者に手拭いを渡し、今度は自分が顔を洗う。後ろで待っている者から手拭いを受け取って顔を拭き、水気を取ったら今度は次に待つ者に渡す。


朝食は夕べの内に皆で支度している。大神様以外はほぼ平等だ。ほぼというのはやはり、老人と子供は同じ様には出来ないので、と云う事だ。手近な者が手助けをしている様だが、是はその通りだろう。就寝もそうだが、村と云う共同体の結び付きの方が血縁よりも強い様に見受けられる。


皆で火を通した木の実を食べる。量に偏りが出ない様、丁寧にでは無いが軽く潰してある。もう少し塩気があると、木の実の甘みも引き立って美味いのにと隣の奴に云うが、彼(彼女?)は塩味が分からない様だ。



そうか、犬人達は人間の様な汗は搔かないのかも知れないな。ならば塩分には其程敏感でなくて不思議はない。

私としてはこの犬人達の味付けは淡泊に思われるが、彼等には彼等の適量があるだろう。



一渡り朝食を終えると、皆で口を漱ぎ、出立の支度をする。私は今日も狩りチームだ。

他にも村に残って子供や老人の世話をする者、連れ立ってはいるが、狩りチームの様に武装はしていない者が居る。

話を聞いてみるが、どうやら近所で燃料やら食料になる植物の採集に行くらしい。すると、昨日から口にしている木の実や穀物は彼(彼女?)等の働きか。ここは素直に感謝しておく。



狩りチームは昨日の様にミーティングだ。ただ、今回は私が待子の中で突出して配置されている。ふむ。


勘繰れば切りは無いが、此処は素直に戦闘力を評価されたのだと解釈しておこう。



今日も皆で元気良く狩りに出発だ。



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