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第五十一話 主人公、異世界格闘大会で戦うのこと。その二 連戦連勝

立ち上がった騎兵はガードを下げた。まだやる気なのか。そりゃそうか。ならば。


先ほどと同じように踏み込んで左を打つ。ただし今度は!


この左が本命だ。ボディを堪えるべく腹に力を入れた奴は、インパクトの瞬間に頭が前に出てもろにカウンターとなった。奴の膝から力が抜けたのが分かる。


今度こそ沈んだろう。


「やーっ!」


ばかめ。これも分かるわい。投げられた振りをして後ろから体当たりをしようとか言うのだろう。沈めた反動を使って後ろに下がり、体重を右足に移しながら踏み込む!ついでに腰から上を捻る。


「ふっ!」


後ろの奴にまともに体当たりを入れた衝撃を感じた。


「がっ・・・」


空気が全部抜けた音が変な声になって聞こえる。


ふたたび周りが凍り付いたのが分かった。そりゃそうだ、これまで組み打ちしかなかったヴルドの格闘技では一瞬にして二人、それも前後の相手を倒すなんて、想像さえしていなかっただろうからな。


周囲を警戒しながら、後ろに向きを変える。体当たりで倒した奴と対戦する振りをしていた奴は一応、勝ち残ったことになるのだろう。ならば奴が次だ。

足下に倒れている後ろの奴をよけながら、もう一人に近づく。まだ何が起きたのか飲み込めていないようだ。


ふふふ・・・。



投げを打ったあとのポーズで固まっているそのまま、顎を右から左に打ち抜く。一瞬に白目をむいたのが分かった。三人目だ。


カクンと糸の切れた操り人形のように倒れる。


俺を囲んでいたのはもう一組いたな?


そちらに目をやると、組み合ったまま固まっていた。さすがにこれでは手がだせない。形式的とはいえ、一応は一対一なのだから、これで二人に手を出すようであれば「どちらかに加勢した」という事になって失格だろう。


他の対戦者達は自分たちの戦いに必死で、俺の動きなどを気にすることもないが、この二人は違う。俺の方しか見てはいない。まるで蛇に睨まれたカエルのようにこちらを注視して固まっている。


さすがに男二人が組み合って固まっているのは、まるで恋人が抱き合っているかのようで滑稽だ。



「よろしくお願いします!」



急にかけられた声に振り向くと同期の奴がいた。名前はなんだっけ?そうか、こいつも受け身で勝ち上がったのか。いいね。


おっと、ちょっとボクシングっぽい、空手っぽい構えだ。こいつも打突を練習したのか。こいつと打突はやっていないはずだが・・・。


同期が不意打ちをしないことを確認してから周囲を見ると、やっぱり結構な組み合わせで決着が付いている。勝ち残っているのは同期ばかりだ。尤も同期もそれほどの数はいないので、古参同士でやってのこった奴もいる。


よし。やるか。


まずは小手調べに騎兵を倒したコンビネーションを試してみるか。


左の牽制はあっさりスウェイされ、右のボディもガードされた。ち、慣れてやがる。


今度は奴が突きを打ってきた。同じ体格ならば俺の掌打よりも奴の突きの方がリーチがある。体格の劣勢を補う工夫か。やる。とはいえこんなものをまともに食らうわけにもいかんだろう。体を左に捌いて避ける。


体を捻りなおして右掌打を体に打ち込もうとするが、フック気味の掌打を避けられた。やる。


奴も少し目を見開く。そりゃそうだ、俺だってこんな技術を桐以外で訓練している奴がいるとは思っていなかった。受け身ぐらいは想定していたがな。



こんな殆ど初戦で強敵とか、マジ勘弁してくれ。少年マンガの王道を外しすぎだろ。


げ、今度は左右の連打かよ!左は避けて、右は手ではらう。お返しは三連打だ。左右左!右と左はきっちりガードされた。


くそ、マジ勘弁だ。


とはいえ、強敵が出てくると燃えてくるのがやっぱりバトルものでしょ!!

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