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第四十話 主人公、秋攻勢で戦うのこと。その二 苦戦と転戦

槍を杖にして立ち上がる。腿がずきずき痛む。いかなければ。


いかなければ。


左足が痛いので、槍を左に突きたいのだけれど、どうにも左肩も痛くてままならない。ガツガツと槍の石突きを地面に突き立てながら、土塁の内側を歩いて行く。


普段の三倍以上の時間がかかっている気がする。巡回隊の邂逅地点が遠い。こんなに遠かったっけ・・・。分からない。でもいくしかない。俺にできる事なんて他にはない。


民家は寝静まっていると言うよりは、息を潜めている。こちらをおそるおそる窺っている気配がする。まあ、誰だってこんな殺し合いなんか近づきたくはないわな。


二刻ほども歩いた気がする。東京時間で言うと三時間から四時間か。正確な時間は分からない。

しんどい上に疲労がひどい。体に力が入らないが、それでも最初の襲撃を受けた邂逅地点に着いた。

うっすら民家から漏れた灯りで、あたりに死体が転がっているような感じがある。こんな時間に灯りをつけられるなんて、金のある家があったものだ。まあ、一軒二軒はね。


気配を探るが、どうやら仕留め損なっている蛮族はいないらしい。うむ。そうしたら今度は北門までいかなきゃいけないのか。正直嫌やなぁ・・・。


「おい!そこのお前!」


躊躇っていたら声がする。この声は梅隊の人だ。


「はい、桐二の、レオです」


「おお。生きてたか。西門は大丈夫そうだから数人をおいてきてみたが」


失礼な。


「何とか」


「いや、大丈夫そうには見えないぞ。北門にいくなら捉まっていくか」


「お願いします」


梅隊の人が左脇を担いでくれる。ベテランでも同じ兵隊なら年はどっこいだ。背は俺の方がある。力はどっこいか。


あれれ。梅隊の人が追いつくって事は、何時間も経ってたという訳じゃないのか。担いでもらって楽をするととたんにまぶたが重くなる。


「おい!しっかりしろ」


大丈夫、大丈夫ですよ。俺はしっかりしてますって。


「しょうがねえな。誰か酒もってないか」


酒なんか飲んじゃまずいでしょう・・・。


「うわっぷ!」


「気付けだ、飲め」


うわたたたた。


「びっくりするじゃないですか」


「気が遠くなってたからな。しっかりしてもらわんと、担いでる方がしんどい」


そりゃどうも。


「すんません」


「お前、この辺の人間じゃないんだって?」


「そんな話をどこから」


「いいからいいから」


「遠いところからです」


気絶しないように話しかけてくれてるのか。


「それでこの戦いか。凄まじいな」


そうかな?

「普通ですよ、普通」


「襲撃で箭を受けて、助けを呼びに行った先で剣戟をして、滅多打ちにされたのに更に他の戦場に駆けつけようって言うのが普通か」


普通じゃないのかな。

「・・・」


「まあいい。そろそろ北門だ」


え、そんな物なのか。やけに早いな。


「コラ、いい加減肩から降りろ。戦えんだろうが」


そりゃ済みません。

「う・・・」


地面に下ろしてもらう。周辺を警戒しているらしい。


「どうやらここでも戦闘は終わったようだな」


そうッスか。


「俺たちは他に回るが、お前は連れて行けない」


そんな。


「お、俺も・・・」


「ダメだ、足手まといだ」


くそ。


「よし、市内を手分けして確認するぞ」

「はい」

「二人ずつ組んでいく。俺とガラは中央通り。お前らは土塁沿いに東へ行け。以上があったら無理をしないで大声で呼ぶんだ。いいな」


「「「はい」」」


くそ、さっさと行ってしまったよ。こんな暗闇で一人置き去りにしやがって。この脚め。立て!


む。なんだ?


何かがこっちを探ってる?畜生、こんなところ襲われたら溜まったもんじゃないぞ。

一応槍はあるが、剣は・・・。うん、ある。


「何者だ」

一応確認してみるぞ。同士討ちとか嫌だからな。


「グルルゥ・・・」

ゴブリンとは違うのか。あのキンキンする甲高い声とも違う。やったことのない敵か、これやばいんじゃね?


死ぬのは初めてじゃない、初めてじゃないけど、死ぬのが好きとか嬉しい訳じゃない。どっちかって言うと嫌って言うか、かなり嫌だ。勘弁してくれ。


地面を引っ掻くような音が聞こえる。嫌だなぁ、あはは・・・。

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