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第三十六話 主人公、敗戦処理について知るのこと。

百人隊長からオレに対する沙汰があったのは、いろいろ話を聞かれてから10日後のことだった。沙汰としては微妙なもの。


一つ。損害を軽微に抑え、死者を出さなかった功績。ただし、これは命令違反の罪を補えるほどではない。


一つ。怪我人の救護にあたり、負傷者が重篤になることを防いだ功績。これもまた命令違反の罪を補えない。


よって、この二つの功績と一つの罪科を相殺し、これまで通りとする。


ということだった。

オレとしてはありがたい。とにかく味方の犠牲者は減らしたいのだ。まして、怪我の手当がまずかったために、助かる味方が助からなかったというのはなんともやりきれない。


ヘンス副隊長についてはこれはおとがめ無しとなった。事実としては確かに命令違反をしているかもしれないが、それ自体は副隊長には確認できなかったという事になっている。隊長は怪我をしていて副隊長に伝えたかどうかははっきりしないし、オレははっきりオレが伝えたと報告した。よって副隊長が出した撤退命令自体は副隊長の意志で隊長の意志に背いたのではないと判断されたようだ。


問題になったのがヴァルガ隊長。


事実としては徹底的な戦闘を命令した訳だけれども、これが実は上からの命令に違反していた。いや、厳密にいえば違反していたというほどではないのだけれど、今回は哨戒任務が目的で、一番は地図作り。二番は兵士を無事に帰還させること(ヴルドの兵力不足は深刻なのだ)。それだけが命令だったらしい。

ついでに靴の検証もあったが、これは依頼レベル。


となると戦闘は「必要がない間は避ける」ことが基本になる。


もちろん隊長の報告通りに奇襲されたのであれば、戦闘は必要だったという事になるが、オレが「警告があって奇襲ではなかった」と報告したことでややこしいことになってしまった。

隊長の同僚と言える、クラッグ隊長は奇襲だったと報告し、蓼の副隊長もそれに倣った。楓の隊長は死亡して証言できないが、帰還した副隊長は「警告があった」と証言してしまった。ヘンス副隊長も警告があったと証言した。

これで生還した二人の隊長の証言に疑問がついてしまった訳だ。楓の副隊長が偽証する理由はない。奇襲だろうが警告があろうが、戦闘命令を下したのは副隊長ではないのだから。一方で隊長の証言が偽証である可能性が出てきてしまったし、隊長二人が偽証する理由もある。



結果をいおう。隊長二人はそれぞれの隊の隊長を罷免された。楓の副隊長、ヘンス副隊長はそれぞれ昇進して十人隊長となり、蓼は解隊されて欠員の出た桐や楓をはじめ、他の隊に分散配置となってしまった。桐はできるだけ戦力を温存するために四年兵のジルさんが副隊長代行をする。配転された元蓼の人はダーバさんという二年兵の人だ。桐一は隊長が四年兵だし、三年兵は既に二人いる。バランスを考えれば二年兵というのが妥当なんだろう。

ヴァルガさん、クラッグさんがどうなったのかは聞かされない。


どうにも後味が悪い。桐隊はまだラグさんが復帰しないので9人体制だし、蓼はなくなってしまった。百人隊長とはいうが、実際には9隊しかない訳で、それってどうなのという気はする。


ヴァルガ隊長もこんなことになってしまったけれども悪い人ではなかった。のかな?まあ、そんなに悪い人って訳ではなかった。まあ、自分の判断ミスなのだからしょうがないと言えばしょうがない訳だけれども、ダーバさんはなんだか納得してない風で怖い・・・。

おれとヘンス副隊長が結託して隊長の追い落としをはかり、その巻き添えを食ってクラッグ隊長は罷免されたと。そんな風に吹聴していると風の噂に聞いたけれども、それって桐隊にしてみれば言いがかりもいいところで、隊の雰囲気がとても悪い。


むうう・・・。とはいってもこの年頃じゃあ、いうこと聞かないしなぁ・・・。陰謀とか大好きだしなぁ・・・。


ただ、格闘訓練で相対したときは、ごめん、ボロボロにしちゃった。しょうがないよね、蓼は受け身をやってないっていうんだから。一応やった方がいいよーとはいっておいたけれども、とても練習するとは思えない。


あー、めんどくさい。





夏に入って俺たちは順番に30人ほどの編成で1グループ数回ずつの哨戒を行い、俺たちとゴブリンを中心とした蛮族の間にある変化が起きた。


もちろんある変化とは別に、哨戒の目的である「地図作り」は一定の成果が得られている訳だが。

前回に続く敗戦処理話です。

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