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第二十七話 主人公、ヴルド正規軍に配属されるのこと。

冬月も半ばを過ぎ、春月が近づく頃に俺たちは技能試験を受けた。各人の特性をみて配置先が決定される。ヴルド正規軍の兵科は全部で四つ。


花形が騎兵科。馬に乗って機動戦闘をする。戦場をかけるその姿はヴルド女性の評価も高い。唯一の問題はヴルド自体が馬産地ではないために、馬が「持ち込み」、つまり自前だということだ。実家が戦闘に耐えられる馬を用意してくれない限り、本人の能力がどれほどであろうと、騎兵にはなれない。

今年、俺たちから騎兵科に選抜されたものはいなかった。


ある種エリートと言えるのが弓兵科。文字通り弓を射る。体力よりも腕力(その差は微妙だが)、素早さよりも緻密性。鎧兜は一般兵よりも軽装で、兵士たちからの希望者は意外と多い。騎兵に比べればまだなりやすい上に、本人たちの資質があるため、やっかみも少ない。

今年は5人が選抜され、ユーラもその一人だった。


意外な兵科だと思ったのが工兵科。俺はこんな兵隊がいるとは思ってなかった。まあ、一言でいえば土建屋に近い。ただ、ヴルドのような城塞都市では防衛上必要ならば、利益があろうがなかろうがやらねばならないわけで、城壁の構築、渡し船の整備、用水路の手入れなどなど仕事は尽きない。死亡率の低さから、意外とヴルド女性の評価が高い。

今年は3人選抜され、俺たちからはゼファーが含まれた。山間の村って、意外と多様な人材がいるのな。


残りは歩兵科。鎧兜を着込み、槍と剣をもって戦場を這いずり回る。上記以外の全員がこの歩兵科に選抜?された。誰かがいった「戦争は数」の数の部分だ。


これまでは出身ごとにまとまって行動していたが、基礎訓練を終えたら欠員がでた部隊に優先配置されていく。

いよいよ本格的な「ヴルド軍生活」の始まりだ。


訓練を終えた俺たちに盾と剣が配られた。一応はこれが軍人としての身分証明になるのだろう。



半年以上付き合ってきた山間の村の奴らとも、これでしばらくのお別れだ。少し感慨深いものがあるが、他の奴らはそれこそ物心ついた頃からのつきあいだ。

それぞれに別れの挨拶を交わしている。


俺たちはそれぞれに自分の荷物を持ち、指示のあった部隊への移動を始めた。


俺が指定された十人隊は桐隊。ウーン・・・。このネーミングは何とかならんか・・・。


隊長はヴァルガ隊長殿。二十代半ばほどの人で、ぱっと見はきまじめな印象だけれども、目つきはちょっと怖い。桐隊唯一の士官殿になる。

副隊長がヘンス副隊長殿。ヴァルガ隊長殿よりも年上で、ちょっと空気が険呑(けんのん)。士官ではないものの、職業軍人。


桐隊には四人隊が二つあって、桐一、桐二になる。桐一はヴァルガ隊長が通常の指揮を執り、四年兵が一人、三年兵が二人、二年兵が一人。桐二が俺の隊で、ヘンス副隊長殿の元、三年兵二人、トールさんとガウさん、二年兵がブッシさん、そして初年兵の俺。


挨拶もそこそこに初年兵が配属された十人隊は、代わる代わる新市街へと繰り出していく。いわく、初年兵歓迎会だそうだ。

初年兵といえば14〜5歳だろうが、酒とかいいのかと思うんだけどな・・・。まあ、こんなファンタジー世界で酒がどうのとか、あまり関係ないか。って言うか、名乗りができて、自分で食い扶持が稼げるんなら、私生活についちゃ、まあ、自己責任なのか。親の金で兵隊やってるわけじゃないものな、騎兵隊以外は。




新市街の酒場では思っていたよりも兵士の扱いはいい。ベテランは行儀いいし、初年兵はおいたが過ぎるが、店の人達は温かい目で見守っている。


そうか、兵士といえども元はヴルドの領民だ。近隣のものなら、小さい頃からの顔なじみだし、離れた村から来たものだって流れの風来坊って訳でもない。この年で親元を離れて寂しい思いをしていると思えば、店の人もつれなくはしないか。ましてや事あるたびにお世話になるんだ。

兵士の方もそれは同じ。何かあったら心のよりどころになる場所だし、「ここを守る」という気持ちは店の人に負けず劣らず。



料理を運んだりしているのはやっぱり女の子が多い。って言うか、基本亭主以外はみんな女の子みたい。女の子をまとめているのが女将さんか。

店内では初年兵の自己紹介があちこちで行われている。


もちろん俺も初年兵として挨拶したが、どうにも温度差がある。うむ、これは年のせいだな・・・。俺の年なら三年兵、四年兵が当たり前だ。この年で初年兵とか、まるで落第生だ。

まあ、しょうがない。それにいくら女の子がちやほやしてくれるっていっても、所詮は商売。こっちが金を払うからちやほやしてくれるだけで、個人的にどうこうっていうことはあるまい。

特に根拠はないが、なんかそんな気がする。


俺はそんな桐隊に配置され、20日ほど訓練と巡回に明け暮れた。10日おきに支給される給料はおつきあい程度に新市街の酒場に消え、残りは焼き物のつぼに入ってベッドの下にある。


だが、春月に入ってすぐ、桐隊のように初年兵が配置された十人隊には出動命令が下された。

レオは部隊に配置された。

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