第二話 主人公、異世界に驚くのこと。
んん・・・。ハエの羽音が・・・!
って、俺は気絶してしまったのか!
確か頭に衝撃を受けたはず。周りになにかが?
いや、パッとみたところ、そういうモノはいないようだ。森は静まりかえってはいないモノの、喧噪というほどの騒がしさもない。遠くで鳥が鳴いているようだ・・・。
いや、それでもさっきの一撃は確かに攻撃だったはず。「なにか」はいるはずだ。
ん。なんの音だ?
乾いた音が聞こえた。
明らかに忍ばせている音だ。
後ろか・・・。
さっきの奴に間違いないだろう、止めを刺すべくかえってきたのか・・・?
まだ距離はある。ゆっくり振り返ってみよう・・・。
ん?
なんだ?
奴はなんだ?
いや、わかっているが、心が理解を拒んでいる。
あり得ないあり得ないあり得ない!
そんな馬鹿なそんな馬鹿なそんな馬鹿な!
頭は逃げようとするが、心がいうことを聞かない。呆然と立ち尽くし、奴の攻撃を目で追うことしかできない。
奴は「それ」をゆっくりと頭上に振り上げ、一気に振り下ろした!
俺はふたたび頭に衝撃を受け、あっさりと、ひどくあっさりと意識を手放してしまった。
奴は一体何だ?何なのだ?あんなものが跋扈するここは一体どこなんだ?
頭の中で繰り返される問いに、応えてくれる存在はなかった。