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第百四話 ライバル、未知の村を探すのこと。その二 渓流を諦めて出直す

翌日薄暗い内に起き出すと、皆で凍り付かんばかりの冷たさの渓流で体を洗う。ナナはキャッキャと騒いでいるが、それに付き合う若いゴブリン達も、随分清潔にする習慣に慣れた。朝の練習で体を乾かし、軽く腹に収めて渓流に沿って上っていく。とにかく足下に注意をするが、ちょっと上流を窺っただけで、ここは侵攻ルートには使えないとみた。


何しろ渓流に浸かれば足下はとられる、岩肌は苔で滑りやすい、少し足を滑らせれば尖った岩で体を痛める。ケント達とうなずきあい、登攀を諦めていったん平地に戻る。


昨晩泊まった岩の上にとって返して、皆で話し合おう。


「どうだろうか、これまでの探索で侵攻されるような心配はあったか」


「私はちょっと考えられないと思う」

というのはナナ。


「同感だ。これまでの南側の斜面も少し、敵を警戒するには険しすぎると思う」

というのはガラッハからのベテラン。グッガとか言ったか。


「異論はあるか」

と訊くが、皆一様に首を振る。ふむ。

「では、このまま平地北側の斜面を探索するか、一度村に戻るかだが、他に案はあるだろうか」


「北側の斜面から攻撃するには、一度この沢を渡らなければならないから、このルートを使った攻撃は現実的ではないと思う。余裕があるのなら探索してもいいかも知れないが、今は一度村に戻って、川沿いに山を迂回するルートを調べた方がいい」

というのはケント。どうやら皆も同じ意見のようだ。


全く以て、丸二日を費やして解った事と言えばいざとなった時の水源が確保できそうだという位のことか。やれやれ。いったん村に戻って、長に井戸掘りの提案をしておくか。


昼前には村に戻り、長に報告を入れて食糧を少し補給して改めて出立する。犬人は兎も角、発酵食品しか食べられないゴブリン達の糧食にはいつも苦労する。まあ、狩った獣を晒しておけば腐り、ゴブリン達の食糧にはなるのだが、腐る前にこれらの肉は犬人達の腹に入ってしまって、いまだに成功していない。干し肉はどうやら発酵はしていないらしく、試しに食べたゴブリンは猛烈な下痢に悩まされた。


村を出て川原を南に少し下れば、すぐに山が引き込んで開けた土地にでた。対岸にはいつもの川沿いの道が見える。斜面の南なので木々は明るく下生えもそこそこだが、いかんせん道がない。移動出来ないことはないが、ここは慎重にいくべきか。


開けた場所も原っぱと言うよりはやや湿り、足下の黒土がひんやりする。正面から左手にかけては遠くに木立が見え、去年探索で来た、土手の延長らしい。ふむ。


皆に声をかけていったん尾根に登ることにしよう。端ならばこの山に登りやすいだろうし、尾根から行った方が地形が把握しやすく迷いにくい。


マチェットで下生えを切り払いながら、足下に注意しつつ登っていく。夕方にはコボルト村の真南の尾根まで上がることができた。


見下ろすとコボルト村とグル村が寄り添うようにあり、僅かばかりの煙がたなびいている。夕餉の火だろう。米粒よりも小さく見える村人達が行き交い、今日の獲物や収穫を渡しあい、次々と調理していく。村の北、西側には草が茂り、豊かな平地が広がっている。まばらに木が生えていて、鳥たちが巣に帰ってきているようだ。


村の東側には川が緩いカーブを描いて流れ、上流である北側は丘の陰になっている。さらに東へ目をやれば、今私達がいる尾根よりもやや高い丘陵が段々になって重なり、暮れなずむ夕闇に呑まれていく。もっと遠くには海が広がっていると聞く。


ヴルド城の東からは海原が大きく広がり絶景だったが、こちらの方の山を越えた海はどうなのだろうか。尾根の南側には夕焼けを浴びる山腹と夕陽の影が織りなすコントラストが美しい。


川は美しい弧をさらに伸ばして、私達のいる尾根のさらに南へ回り込んでいる。こうしてみると解るが、ガラッハや南の村は思っていたよりも西にあるらしい。対岸からでは川のカーブが把握しにくかった。


川が曲がっていっている平地はもうすでに夕闇に呑まれてよく見えない。


私達は石や木を集めて竈を造り火を熾し、二晩目を迎えた。

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