第百二話 ライバル、未知の村探索に出立するのこと。
村に降りると、出くわしたのは呆然としているゴブリンの女子供達。まあ、容姿の関係であまり可哀想な気がしないのは残念だ。
まあ、彼らに残酷な現実を突きつけなくてはいけない以上は、却って余計な感情移入がない方がいいのかも知れない。
ロルにいって、村人達の今後を訊きに行かせる。
返答はある意味では予想通り。ある意味では予想外。つまりは「返答なし」だ。村を捨てる決断もできず、かといって具体的に村を運営していく算段もできない。もっとも、男たちもそれが決断できずにいたからこうなってしまったわけで、その決断を彼らにしろというのも無理な事なのだろう。
とは言え、このまま放置して引き上げてしまったら、新兵達の勉強会を開いただけで何をしにきたのか、と言う事になりかねない。村人同様に私達にも決断が必要だった。
ふむ。
「よし、まずはガラッハ、グル、東の村から10名ほど独身者を抽出して駐屯地に駐屯させる」
従兄弟がとか、親戚がとか、北の村出身者の兵士から異論がでるが、ここは却って無視させてもらう。近親者では男手を失った村の寡婦と接近しやすく、新たな世帯を構成しやすいだろう。そうなったら、まるで私達が従わない村を乗っ取るために人類軍を利用した構図になってしまう。駐屯地の隊長には犬人からマークを任命した。これでゴブリン村とも必要以上に接近しないだろう。
これからは定期的に食糧などの補給や、建築の資材支援などが必要になる。駐屯隊に必要な指示を与えて、部隊を再編した上で帰途についた。
これからは月に3回ほどの定期連絡が補給物資とともに必要になる。同時に人員の交代、監察なども必要だ。昨年よりは人手に余裕があるとは言え、問題が山積みなのは変わりない。
夏の間の警戒と、秋にまた人類軍新兵候補の襲撃をしなくてはいけない。
コボルト村に帰ると、南の村から連れ帰った子供3人に加え、新たにガラッハ、グル、北の村、東の村から全部で20名ほどの新兵希望があり、新兵訓練が大所帯になっていた。
冬に収穫できた食糧のおかげで随分食糧事情が改善していて、そのあたりも志願を増やしている理由なのかも知れない。
訓練はベテラン兵から順に行軍を始め、集団行動の練度を上げ始めた。戦は数なのは確かだが、いくら数ばかり多くても烏合の衆ばかりでは勝てない。
一騎当千の英雄がいても、その英雄を千の兵で拘束した上で大将を討ち取れば戦には勝てる。その英雄を倒したければ、三千、四千の兵で交互に十日も攻め続ければいい。
そのためには多数の精兵が必要だ。
戦闘訓練ではサバイバルゲーム形式での集団戦を始めた。兜の天辺に花を差し、木の棒でそれを刈り取る。同数で対戦させて、いかに数的優位を作るかを競わせる。ただ正面から打ち合っているだけでは勝負は五分五分。乱戦になっても運勝負。安定して勝利するためには動き回って「形」を作らねばならない。
畑で農作の指導に当たっている若夫婦に挨拶にいくが、あからさまに忌避された。ゴブリン達とは談笑していたようだったので、少しでも距離を縮めたかったのだが、難しい。
ゴブリン達は言語能力に優れているので、コミュニケーションが取りやすいのだろう。犬人達はその愛嬌のある風情から親しみやすいようだ。そして私だけが蚊帳の外。
少しでもこの世界の言葉を覚えて、あの城塞都市の潜入偵察を容易にしたいのだが、とかく壗ならない。
初夏を過ぎ、南の村駐留隊のメンバーがすべて入れ替わり、人類部隊との小競り合いが数回報告された頃、遂に私達はまだ知られていない人類村の探索と襲撃に出立した。




