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black peak

「ん?何だ?」


「大方指揮官が出張ったんでしょ。……まぁそれならそれで手間が省けるかもしれないからいいんだけど。それよりも。


またうっかり殺しちゃったの?」


「いや、アザミ。奴はあの程度じゃ死なないはずだ。おお、ホラ。」



「勝手に殺すな……!」


口に溜まってきた血を吹き捨て、体に巻き付いたテントの外幕を剥がしながらもう支柱だけになったテントの中に戻る。


「おお、よしよし。まだ出来るようだな。」


楽しそうに待ち構えるブレグマから少し距離をとって立ち位置を調整する。


「……反則だろ、その手…」


大砲がまた撃ち出された後、『なら、手早く終わらせないとな!』と宣言してからは早かった。腕と足だけだった変化を全身に回したかと思うとそれまでよりも速い速度と数段上のパワーに圧倒されてあっという間にテントの一部にされてしまった。


「いいだろ!だが…久しぶりに全力でやっても壊れない奴だお前は!」


「ネタにされそうなことばっかりいってんじゃねぇ……よ!」


足元に転がっていたテントの支柱の欠片を蹴りあげてから全力でダッシュ。欠片を払い落としたブレグマの懐に入ってから、まずは右の突き。勢いをそのままに左の蹴りを入れて思いっきり跳びすさる。さっきまで俺がいたところをブレグマが薙ぐのを見届けてから再度接近。左の突きを掻い潜ってがら空きの脇腹に!


「うおらぁ!」


全力で肘をいれた。ここから切り返して繋ごうとして、右の蹴りに吹き飛ばされる。


「中々悪くないが…軽い!」


飛ばされて踞る俺に叫びながら突進してくるブレグマ。咄嗟に転がって踏みつけをかわして立ち上がろうとするも、さっき蹴りを食らった脇腹の痛みでそうすることは出来なかった。


「ふんぬぁ!」


掛け声に顔をあげた瞬間、頭を思いっきり鷲掴みにされて宙に浮かされる。


そして毛皮に覆われているかのように変化した手で俺の頭を握りつぶさんばかりに力を込めてくる。


「途中までは良かったんだがなぁ…変化も中途半端。速度は確かに速いしパワーもある。けれどもなぁ。相手が悪い。」


俺の頭を掴み上げながら何か言っている気がする…けれども痛みでそんなことは頭に入ってこない。


「俺を倒したかったら全身を変化させるなりなんなりしてこないと。」


─痛い。痛い。体中のありとあらゆるところがなにかしらのダメージを受けているせいか、体中が熱を持ったように熱い。



ん?……なんだもうグロッキーか…




ブレグマの声が小さく聞こえ…いや遠くに聞こえてくる。これが断末魔ってやつかな…


そういえばこんなこと前にもあったっけ。


確かあれは…まだ敵だったティリアに腹を捌かれた時だったか。懐かしい。


痛みが熱に上書きされ、どこか夢心地に近い感覚になっている俺をまたしても衝撃が襲った。


なんだ?痛いな…ああ、ブレグマが殴ってきてんのか。頭を握って宙に浮かしてのボディ乱打って……死ぬわ。




止めろよ。



「終わりだ!」


突き出された拳を右手で受け止める。


そのまま離すのはダメージにならないから、受け止めた拳を力の限り横に払う。いきなりの横への動きに腕はしばらく使えないだろう。


お返しに両手で頭を握っている腕を掴んでお返しに握り潰してやらなきゃ。


「!くっ!」


しかしすんでの所で腕を退いてかわすブレグマ。逃がす訳にも行かないから地面に足がつく前にヒュン。と空を切って



鱗に覆われた尻尾で顎をカチ上げる。




予想外だったらしい攻撃に体が泳いだ。


チャンス。


トンと着地をしたら背後で何か光った。多分あの女の魔法……かわすのも攻撃するのも今は後回しでいいから



背中から生えている翼で防ごう。



火炎を翼で逸らしながら鱗に覆われた右の突きでブレグマを地面に殴りつける。


反撃に出ようと体を起こそうとしているから尻尾でもう一回殴って黙らせなくちゃ。ズドォン!と地面をひび割れさせてブレグマを埋め込む。口から血を吹いたからダメージが入った。もう一発……と思ったらブレグマの体にモヤがかかってきた。


それを突き抜ける勢いで踏み抜くと地面が少し割れて、ブレグマの体はそこにはなかった。



「がっは…お、お前……」


遠くに聞こえてきたブレグマの苦しそうな声。


顔を向けて声の方向を見るとブレグマはどうやら女がかけた魔法で間一髪かわせたらしい。しかしダメージは深刻らしく追撃は無さそう。


なら、ここはもういいだろう。


拠点が心配になってきたから再び森の中に飛び込んで拠点に戻らなきゃ。皆が心配だ。



おっと、その前に。


アレは潰しておこう。



クルッ。とブレグマと女のほうに体を向けてすぅ……と息を吸い込む。体の中に澱のようにたまっている何かを吸い込んだ空気と一緒に



まるで龍のブレスのように吐き出す。



ドォォォォン!と鳴り響く轟音を遠くに聞いてから翼で土煙を払って視界を良くする。


ブレグマと女がいたところもそこから先も、きれいさっぱり消し飛んだ。





さて、皆が心配しているだろう。


ヘンリに絡まれたらめんどくさいなぁ。


システィはスライム無効化できたかな。

ノッチには今回少し負担が大きいなぁ。

ティリアはご主人ー!ってまた飛びついてくるな。

アニエスは遅い!って文句を言ってくるな。うん。


……急いで戻らなくちゃ。


そう考えて、翼を伸ばして飛び上がった。



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