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熊さんとぉ、乱闘。

次号!最終回!(嘘です。投稿日がエイプリルフールだったので。つい。

しばし固まって混乱している頭を必死に整理する。


今までブレグマが言っていた重要過ぎる情報の数々も、皆の安否も気になるし、今陣頭指揮を取っている奴の存在とかも気になるけれども…一番俺を混乱させているのはブレグマ自身がさっき俺の目の前でかましてくれた─


「どうした?早く始めたいんだが。」


─この変化。


「待て待て…ちょっと待て。」


「まさか逃げるなんて言わないよな?」


さっきまで楽しそうにしていたのに一気に不機嫌…というよりか嫌悪感に近い感情をむき出しにして俺を睨みつけてくるブレグマ。


「少し混乱してっから頭ん中整理したいから、2、3質問いいか?……じゃないと気になって戦いどころじゃない。」


「それを早く言わんか。危うくすぐに殺すところだぞ。」


戦いどころじゃない。と聞いて戦闘体制を解くブレグマ。もう毛皮に覆われた腕も胸の前で組んで俺の質問に答えてくれるようだ。


「じゃあ…まず一つ目。お前らがここに来ているのは使令なんだよな。」


「おお。」


これはYES。


「二つ目。で、今はそれが崩れているってことは…どこかのここでの指揮官殿が暴走しているから、お前らはもう完全にやる気がなくなった。と。」


「NOね。そうじゃないわ。」


今度はブレグマが答えるよりも早く女が答えてきた。


「……指揮官殿には一回会ってるから隠さなくてもいいと思うぜ。ティエルフールでな。」


そう付け足しておくと女はスッ…と目を鋭くして─思いっきりブレグマを三白眼で睨んだ。


「何だ?」


「……別に。喋りすぎだって言いたいのよ。」


やっぱりか…それまでが慎重に慎重に回りを固めてきて、まだ捜索範囲が半分近く残っていたというのにいきなり拠点に攻めこんでくるわ、下手したらスライムもどうなるのか分からないのに、ドカドカ(多分ここでは最大回転率で撃ってたはず。)撃ち込んでくるわ。…どこぞの無謀な指揮官殿が頭に浮かぶけれど、まぁそっちはアニエス達が何とかしてくれるだろう。


「じゃあ…最後。」


これは単純な興味だ。俺も戦闘をしているときに感じた、僅かながら大きな違和感。


「いっつも本気の時は変化してきたわけか?」


「まぁな!そのせいでそれまで勢いづいていた奴も尻込みして……途端に戦闘にならなくなってしまう。」


最初はいつも通りに喋っていたブレグマは最後の方は今までの退屈になってしまった戦いを思い出したのかため息まじりになっている。


「そんなのはもういい!お前は楽しませてくれるんだろうな?」


「分かったよ。」


らんらんと目を輝かせ楽しみにしているブレグマの前で少し深呼吸してから一足で狼化。


「全力でいかせてもらう。」


その場で軽くステップを踏んで体の調子を確認。


「おお……」


「……へぇー。」



「……何だよ。何か変か?ってそうか変か…」


俺の変化を見て女はおろか、ブレグマまで熊まじりになった顔で器用に関心している。


「いや。これは面白い!今まで色んな奴を倒してきたけど、まさか同じ変化能力と戦えるとはな!」


「俺も同じだよ!」


いつも通りの一気の加速。そこから飛び上がって右の蹴り。当然の如く受け止められるけどそれはもう予想内。体を捻って手を着いて着地。体を丸めてから伸び上がって!


「せっ!」


顎を蹴り飛ばす!


ガッ。と衝撃を感じる。


「おお……!」


「おお……。」


俺の蹴りを喰らって棒立ちのブレグマと蹴りあげたままの姿勢の俺との言葉が重なる。片方は感嘆。俺は『やっぱりか。』と諦めの。


「いい感じだな。」


言葉を聞くより前に足を弾いて反転。裏拳で足を払いにいこうとして止める。絶対にあの足を払えるわけない。


「ヌン!」


突き出され…というか鉄の塊でも高速で飛んできたかのような錯覚を起こしてくれる素晴らしい突きを一歩下がり、そこから前進して左の突きを見送り、脇腹に左突き、右肘、すり抜けるついでに回りながら左肘。抜けたタイミングを狙って飛んできた右の突きは全力で側転してかわす。かわす時に掠めて宙に散ったズボンの一部を気にせずにそのまま何度か側転を切って、離れたところに着地。


どう動くかなんて考えた瞬間ミンチにされる。を止めて後ろにとびすさる。


「……うーん…」


つまらなそうにプラプラと構えていた拳をほどいて振るブレグマ。


「何だかなぁ…反応はいいんだが、いかんせん打ち込んできてくれないと勝負にならん。」


そう言いながら手を当てた腰は少し赤くなっているだけでダメージが入ったのか入ってないのかサッパリ分からない。実際俺も狼化した際に、アニエスのよく分からない地雷を踏んだときに殴打された時に、赤くはなるけどさしてダメージはない。


だからきっと、アレも似たようなもの。


「はっ。そんな鉄か何かで出来てるみたいな馬鹿げた体…どうやったらダメージが通るんですかぁ?……剣だって斬れなそうな感じで堂々と立ちやがって。」


皮肉を込めてそう言ってやると心外そうな顔で


「いや。そうでもないぞ。流石に…前に矢が刺さってな。まぁ少しチクッとして、すぐに抜けたけどな。」


「……効かねぇんじゃねぇかよ。」


しかも多分引っこ抜いたら元通り。ってアレだろう。俺もティリアに腹捌かれたけどあっという間に塞がったし。


「しかし…アレだな。全然戦いに来ないな。」


「お望み通りの殴りあいはやってるだろ。何が不満なんだよ。」


ジリジリと横にスライドしながら隙を狙うように移動しながら文句を言ってやると


「そうじゃなくてな。分かりやすく言うと…何だかなぁ。「勝とうとは思ってない。」そうそれだ。」


ブレグマが例えに窮していると女から助太刀が飛んできた。


「助かりましたよ。ええと…?」


「アザミ。」


どうやらアザミというらしい女は興味無さそうに俺を見ている。


「ああ、じゃあアザミさんよ。そのままこの熊さんに大人しく巣に帰ってハチミツでも舐めてろ。って伝えて帰ってくれねぇ?」


アザミの言うことならブレグマにも通っているらしいので皮肉を思いっきり込めて言う。


「それは無理。」


一蹴。


「まぁ…それもそうか。」


低い姿勢から体を起こしていつもの構え。


俺がここで戦うのは勝つのが目的じゃない。一番怖いのが一瞬の油断から一発貰い、そのまま熊さんのラッシュで大地の養分になることだ。


「……なるほど?リーダー。」


「ん?どうした?」


「この少年、まともに戦う気はないわ。」


「……何?」


予想外だったらしく構えと共にやる気まで解けたと見えるブレグマはポカンとしている。


「大方、ここで大砲もない私達を張り付けておけば消耗戦に持ち込むことが出来るし、そうなったら向こうにはファルクも、この少年の仲間もいるわ。特にファルクと何て言ったかしら。ティリアちゃん?もいるわ。」


「……アイツ有名人なのか…」


何で敵にまで知られているのか。と思ったけどそういえば俺の側近やる前は付き添いやってたっけ。


「私がスカウトしたのよ。『程よく美味しいご飯を毎日食べれるなら。』って条件付で。今は少年の側近ですってね。初日に『ナメられたくないです。』って理由で宿舎3つを吹き飛ばしたあの娘がなつくなんて。」


「……。」


その光景がありありと見てとれるのがすごく嫌だ。


「ううーーん…困ったな。ここで本気で戦ってくれないと俺が困るんだがな。」


いつの間にかほったらかしにしてしまったブレグマはどうやったら俺が本気を出してくれるのかを腕を組んで必死に考えている。


「まぁ……ならまた日を改めればいいんじゃないか?それなら互いにメリットがある。」


「いや、そういうわけにもいかん。頂いた指令がまだ完遂していないからな。」


「ん?」


頂いた指令は元々指揮官の付き添いのはず。でもそれは指揮官が暴走しているからもう関係ないはず。


「お前ら一体……」


問いただそうとしたその時、



後ろの拠点から響く爆発音が森を大きく揺らした。



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