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二度あることは何回だってある。

「よぉい……しょ。」


ノッチが担ぎ上げて運んでくれた木材を積み重ね、それを釘で打ち付けてしっかりと固定。


「ご主人。釘の追加です。」


「んー。」


釘を運んできたティリアから箱に入った釘を受けとるとまたそれを打ち付けて…


しっかりとしたバリケード(といっても即席だから柵に近いけれども。)を作ってはノッチが地面深くに差し込んで固定する。


「よーし。あと7個!ペースあげていきなさい!」


「……いや、お前も手伝えよ。」


メイスを体の横で片手だけでクルクルと回すという年頃の少女の筋力ではあり得ない芸当をしながら檄を飛ばしてくるアニエスに抗議の声をあげる。俺はノッチが運んできた木材をてきぱきと組み上げ、ティリアは適度に俺からご主人成分摂取といい、スキンシップの名を被った妨害を挟んでくるけれど、釘を運んできたり飲み物や食料を持ってきたり、組上がったバリケードを所定の位置まで風で運んでノッチのサポートをしているけれど、アニエスは先程からこうしているだけ。


「今、受け手に私が何もしていないかのような紹介をしなかった?」


「お前はどこの次元に向けて喋っているんだ。」


不機嫌を隠すことなく回してしたメイスを止めると、俺を睨んでくる。この前『どうやってクソ重いメイスをクルクル回せるんだよ。』と聞いたら『力は使ってないわよ。ここをこうするとクルクル回るから、気に入ってるだけ。』と本当に俺の目の前でクルクル回し始めたという行動主義のアニエス嬢はやるときは殺るお方だ。特に俺には容赦ない。


「打ち付けとかお前適任じゃね?」


「アンタのその使令のせいでバリケード全部が木片になっていいならそうするわ。」


「いや、普通に打ち込め。」


どうやったら細めとはいえ丸太で組み上げたバリケードを木片にできるのだろうか。


「それに。私は私の役割があるの。」


「……まぁな。」


俺が短く返すと同時に拠点の門から人影がフラリと入り込んできた。


「心配ないわ。いつもの索敵班よ。」


アニエスは心なしか安心したような声と共にいつの間にか構えていたメイスを下ろしていた。


アニエスが入ってくる相手に敏感に反応しているのはいずれ来るであろう帝国の軍団に備えているわけ……


「いや、お前も手伝えよ。」


「何よ。来ないとは限らないでしょ。」


「それっぽく繕うなって。お前嘘つけねぇんだから。」


「……手、止まってるじゃない。」


「動かしてもないやつに言われたくない。」


「……」


「……何か言えよ。」


「ああああぁぁぁぁ!!もう!殴り倒すわよ?!」


「おお、行ってこい!今まさに帰ってきた索敵班と入れ替わりに門から飛び出して帝国の奴らを殴り倒してこいよ!!」


ザワザワとノッチ、ティリアを除いたファルクの仲間達が何事かと遠巻きに眺めているのが伝わってくるがそんなの今は関係ない。……なぜなら目の前のアホを止めるので精一杯だから。


「アンタをよ!私に嫌がらせを続ける、アンタを殴り倒すわよ!」


「ああああぁぁぁぁ!!もう!コイツ話が通じねぇぇぇ!!」



「……むぅ。」


「ユウとアニエスが叫んだ内容がそっくりなんだが…」



「ユウ、アニエス。あまり騒がないでくれ。見つかるのは流石に困る。」


アニエスがメイスを振り回さないよう、後ろから羽交い締めにして被害防止に務めているとファルクが呆れた様子でこちらに歩いてきた。


「ほら。怒られたぞ。謝りなさい。」


「何でアンタが私に説教してんのよ……!」


屈辱だと言わんばかりに睨んでくるアニエス。


「それよりもユウ、次の索敵班はお前の番だ。」


「あれ…そうだったか。」


ファルクが差し出してきた信煙弾を両手が塞がっているためティリアに受け取ってもらい、当番だったことを思い出した。


「ユウ。」


「ん。ああ、すまん。」


アニエスの不満そうな声が聞こえたため抱えていたアホをリリース。それと同時に腰の水筒を一本渡すと、すかさず受け取り、一口飲んだ。


「で、攻めてきそうな様子はあるの?」


「今はないな。だが、状況は非常に喜ばしくない。」


「どういうことよ。」



「索敵班の情報によると、奴らはこの辺りを徹底的に探し続けているようだ。」



「うわぁ……」


「それは…」


「?今までとかわらないんじゃないの?」


ファルクがもたらした情報が良く分からなかったらしいアニエスが不満そうに俺に聞いてきた。


「お前……」


説明する前に、いつの間にか俺の背中にくっつき幸せそうに仮眠をとるティリアが落っこちないように背負い直す。……ティリアは俺の肩に目線がくるから、俺の肩に顔を埋めると足が付かないはずなのだけれど、この前何でくっついていられるか聞いたところ、『愛です。』とドヤ顔で返された。


「あー…と。そうだな…そもそもだ。ここは帝国が作った拠点だろ?ということは場所を向こうは知ってる訳だ。」


「まぁそうでしょうよ。」


「なら何で俺が流れたあとに再会できたところにあれだけの軍勢がいたんだ?」


「……それはそうね。」


「ティリア。何でだ?」


「……Zzzzz」


何だろう。最近俺がティリアの世話をしているときの方が多い気がする。


「拠点を移していないのかの確認だろ?ユウ。」


「ノッチ…冴えてるわね……」


改めてノッチの存在に心から感謝した瞬間。


「ノッチの言うとおり、今までは確認だった。でもこれまでの捜索でそれはない。って結論が出たんだろうな。それで次に考えるのが、アイツらが欲しくて堪らないスライムをどこか別のところに隠してないか。てことだろ。」


「じゃぁ…確認がとれ次第、来るってこと?」


「それが一番確実だろうしな。だが索敵班の情報だとまだ暫くは平気そうだ。」


「暫くって…」


ファルクは門の方向を指差すとクルクルと回して


「どうやらかなり慎重に探しているからな。まだこの辺りの半分までしか探れていない。」


と、説明をした。


「……不気味ね。」


「ねちっこいとも言えるけどな。」


向こうの世界で巻き込まれた時もそうだった。こういうねちっこい戦法をとるやつに限って…


「だから、ここにスライムがある。と確信を得たその時は、全力で来るだろう。」



「何かないの?このバリケードだって…気休めにしかならないわよ?」


「「作ってないお前が言うな。」」


何でコイツは自分の手柄のように語れるのだろう。一回本当に聞いてみよう。


「それに関しては問題ない。」


ファルクはその言葉を待っていたかのように喋りだした。


人差し指をピンと立て、目を輝かせ…



猛烈なデジャヴ。




「私にいい考えがある。」



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