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『私にいい作戦がある。』

「さて、何か言いたいことはあるか?」


地面に水泳でよく見るけのびの姿勢で固定された俺を見下ろしてファルクが尋ねてくる。


回りにサッと目を向けると恐らくここにいる人が全員でその全てがその手に武器を持っている。それにしてもここに捕らわれている間に薄々感じていたけれど、ここには何故か男がいない。


転ばされているここは…回りを囲む木の枠組み、いや防護壁か?その距離感がどこを見ても変わらないから……ここは円形の集落の中の中心。


「出来ればもっと楽な姿勢がいいんだけど…」


とりあえず完全な処刑ムードをうやむやにしようと苦笑いしながら言いたいことを言っておく。上手く行けば処刑されないで済むかもしれないし…


「他には。」


……無理そうだけどな。


出来るだけ苦笑いを保ったまま心のなかで軽く毒づく。


「ああ、そういえばファルクの髪って黒じゃなかったんだな。最初が薄暗い中だったから分からなかったけど、まさか緑だったとは。」


顔を出来るだけ上げて気づいた今は割とどうでもいいファルクの髪に話題を移す。事実少し暗い色の緑色の髪は美しかったから素直に褒めたけれど……ファルクの顔はより暗くなっていく。


「……嘘は良くないな。」


「え?」


「その作り笑いだ。」


ついに我慢ができなくなったのか俺の手錠改め手枷を踏みつけてしゃがみこみ、俺を真正面から睨み付けてくる。タイトなスカートらしいものを履いているから見えてしまうのも今は関係ない。


ただ、俺が気にくわない。それだけだ。


「さっきから私達の隙を付いたつもりで懸命に冷静な観察眼で回りの情報を探っている……それなのにその作り笑い、」


そこで一度切り、ガンッ!とコンバットブーツで手枷をより深く蹴り埋めてくる。


その勢いで少し手を切り、血が出たが痛みに耐え随分と高い位置になってしまったファルクを見上げると、


「──イレウスを思い出す。」


憤怒。何もかもが気にくわないとばかりの鋭い感情。


なら俺も、



「……確かに嘘はいけないな。」



真っ正面から当たってやる。


「じゃあ何から答えればいい?」


「まずお前は?」


「俺はユウ。アキュリス王国のギルドでチーム組んで活動中の…無国籍者だ。」


アキュリス王国、と言った瞬間外野がざわめいたけど気にしない。いざとなればあの程度─



─捻り潰してやる。



「何故あそこにいた。」


憤怒の表情こそ消えたものの俺の中身まで見通すかの如く、鋭い視線を向けてくるファルクにあえて視線を合わせて質問に答える。


「俺の推察も混じるが…まずここにはリーダーの気まぐれでナマズを釣りにきた。そんで─」


うつ伏せで喋っているから少し苦しくなった呼吸を一息で整え、


「ここの誰かしらに川に引きずり込まれてここまで流れてきたって訳だ。」


俺が誰かしらと言った瞬間、後ろで後ずさる気配を感じ取った。ファルクから視線を外して今度は堂々と見回すと一人が隠されるように移動しているのが分かった。


アイツか。と狙いを定めた俺の目と鼻の先を意識ごと貫くように槍の穂先が抉った。


「それから?」


槍を突き立てたまま俺を見下ろすファルクを少し切れて垂れてきた血を舌で拭ってから見返す。


「俺を襲ってきた雑魚をねじ伏せて、帰ろうかと思ってたら情けなくも風邪で倒れてな。気がついたらここにいたって訳だ。」


聞き終えて槍の穂先を俺の首先、首輪でガード出来ていない部分に滑り込ませるファルク。


「ここで大人しくなる気はあるか?」


冷徹に見下ろすその目をニヤァと笑いかえし、


「……やってみろよ。」


この程度なら斬れない。それにコイツら全員どうにか出来る。


暫くそのまま互いに固まっているとファルクが槍を引き抜き、ゆっくりと俺から退いた。


それを解除と見なした雑魚達がざわめくのを感じて一息に跳ね起きてから、膝で手枷を破壊して残る足枷はしょうがないのでもう一回しゃがんで手刀で割れ目を入れてからまた立ち上がって片足で地面を踏みつけたら二つに割れた。


「いいのか?俺を解放して。」


足枷を足を振って完全に外しながら聞く。


「ここで暴れられても迷惑だ。こちらもあと少しなんだ。その寸前で頓挫する訳にいかない。」


槍を担ぎながら億劫そうにそう言うファルク。相変わらず警戒は続けているけれど─



─もういいか。



ふぅー。と息を吐き警戒を解く。


それを見たファルクも一気に警戒を解いて槍を軽く振って担ぎ直す。


「リーダー!」


わぁっ!と回りの仲間が一斉に質問をし始めた。しかし人数も人数だからワァワァとしか聞こえない。どこの世界でも女子は女子なんだろうか。


「忘れるな。私達がここにいるのは何もユウを狩る為ではない。やるべき事があるからここにいるんだ。」


ファルクのその言葉に口をつぐみ、真剣に聞き入り始める仲間達。


そこから何か相談というか何かザワザワし始めた女性勢。あまりにも暇なので近場の石に座ってボーッとする。


「……ん?」


指をクルクル回して遊んでいると手首にかさぶたが出来ていた。


「いつ切ったんだ……?」


不思議に思いながらカリカリ引っ掻いて剥がすと綺麗に治っていた。


「……まぁどこかしらは最近怪我するしなぁ…」


「よし。ユウ。少しいいか?」


方針が決まったのか呼ばれたから駆け足で近づき集団の近くで止まった。


「とりあえず…ユウの話は全面的に信じることにした。イレウスとやりあったのは本当か?」


「ティエルフールで少しな。」


ザワッ…としたところでファルクはそれに構わず続ける。


「幸いにも私達が相手しているのもソイツらの仲間だ。そこでだ。」


キリリとした表情で左手の人差し指をピン。と伸ばして


「私にいい作戦がある。」


──頭の中で『コンボイ 名言』で検索エンジンがかかった。


「まずはユウがここら近辺で奴等を手当たり次第戦闘不能にしていく。」


どうしよう。最初から欠点しかない。


しかし無情にも歩き回りながら作戦の語りは終わらない。


というか何故コイツらリーダーの暴走を止めんのか。


「そして相手の手の内が少なくなった頃合いを見計らい、ユウ!」


バッ!と勢いよく俺を指差すその目は子供のように煌めいていた。


「君を奴等の目のつく場所に放置し、群がってきたところを…」


感極まったのかそこでグッ。と手を握りこみ、宝塚の劇場のようにポーズを決め


「君ごと土に行き埋めてやる。」


作戦でも何でもない。ただの暴走だ。


「素晴らしいですリーダー!」


「流石です!」


何故か拍手喝采だし。


もう一回手枷が着々と装着されているし。


ワイワイと準備が始まる中、簀巻きにされ転がされた俺は空を見上げる。


「……ああ、そうか…。」



─女子ってこっちでも向こうでも、


  集まったら敵ってないんだな。



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