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それはね、コウノトリさんが連れてきてくれるんだよ。

「いらっしゃいませ…おお、ユウさん。」


「止めてくれ。昨日ユウさんって呼んできたアンタの弟子にエライ目に合わされたんだぞ。早く頼んでた物を渡してくれ。」


「おお、そうじゃったな。」


おーい。とトワフが声をかけるとまだ年端もいかないような子供が数名で木箱をもって奥から出てきた。


ご苦労じゃな。とトワフが労うとまた奥に引っ込んでしまう。


「…犯罪じゃないよな。」


「ワシをなんじゃと思っとるんだ。あの子らは全員孤児じゃよ。」


木箱を開けながら続きを喋ってくるトワフ。


「どこからかの戦争とかでみなしごになった子達をワシが面倒みとるんじゃ。」


「へぇ……凄いんだな。」


「まぁワシしかできんしな。……こんな奇妙な物を作れるのもな。」


木箱から俺の依頼したものを出し、一瞥して俺に渡してくる。


「感謝はしてるよ。」


苦笑してから受け取って早速着てみる。


戦闘を何回か、仲間内との戦闘を数十回。頼りになるアドバイザー達から幾度となく言われてきたのは『手甲、要らないんじゃないか?』というものだった。確かに最近は避け方や体さばき、武器それぞれの捌き方を教わったりして被弾率もグッと下がっているし、軽く斬られることはあってもこんな仕事をしていれば間々あることだ。と全く被弾のない某金髪と側近に言われ、ならば。と一新した。まず足に装備していたレガースを排除。正直狼化した後だと重荷にしかならなかったし、後ろはどのみち守れないから問題ない。代わりにブーツが膝下まで伸びる編み上げの物に。ズボンの上から履いて靴の隙間から針などを入れられないようにしつつ、素材は腰のバックや、一生装備することになった首輪と同じ、斬れにくい、水を弾くという不思議すぎる革。


一番変わったのはコート。冷静になって考えたら全く意味のない半袖を止め、両方とも長袖に。丈は側近の強い(脅迫じみた)説得により腰あたりまでになりそれを羽織っている。手甲の役割もある程度果たしてくれるのでこれでいい。


「前は閉じなくていいのかの?」


「なんか落ち着かないんだよな…それに結構激しく動くから、前を閉じておくと思うように動けねぇし。」


剣士とかならそうではないかも知れないけどこっちはそれよりもリーチがはるかに短い。一瞬一瞬の重要度が違うからこれでいい。


「じゃあまた用が出来たら来る。」


料金を渡して、ついでに携帯用の砥石を一つ貰っていく。料金はしっかり渡してあるから平気。


「またのご利用を~。」


「ご利用できる武器屋がここしかねぇんだよ。」


トワフの声に返してから外に出て、軽く背伸び。


「さて…急ぐかな。多分全員集まってるだろうし。」


この後は外れの森でのウルフ狩りの仕事が入っているし、何より遅れるとエライ目にあう。思いたったら即行動。そうしないとメイスが降ってくる。そう決めて歩き出す。


主要街道を抜け、ギルドまであと少し。


そこでコートの裾に軽い違和感。


「…ん?」






卓上に置かれているナッツを一つ摘まんで口に運ぶ。程よい塩気とバターの風味を味わうことなく左隣の空席を見てから、イライラと共に噛み潰す。


「遅い。もう20分は遅れてる。」


「食べ方に品がないよ、アニエスちゃん。」


苦言を挺してくるヘンリを無視して口の中のナッツをジュースと一緒に飲み干す。


「ユウ、まさか何かに巻き込まれたとか…」


「国内で何に巻き込まれるのよ。」


ノッチの意見もないこともないけれど国内で何に巻き込まれるのだろうか。精々お年寄りの道案内位だろう。イライラしながらもう一杯飲もうとした時、空席を挟んで向こうにいるティリアがガタッと立ち上がった。


「どうしたのティリア。」


「…ご主人が来たので。」


そう言い残すとテテテ…と小走りで入り口に駆けていってしまう。ティリアが到着すると同時に黒い髪の毛が見えた。


「凄い索敵…。」


親友の力を目の当たりにして茫然と眺めていると少し変なことに気付く。



一向にユウがこっちに来ない。



ティリアも視線を下に、ユウに向けたりして困っているようにも感じる。


「何やってるんだろ。」


「全くもう……」


仕方ないからこっちから行くとしよう。恐らく私が怒っているかもしれない。とユウとティリアが誤魔化すための口実でも考えているのだろう。怒ってなんていないというのに。ただ遅刻の罰を与えるだけ。正確に。確実に。


「遅いじゃない。」


「あ……アニエス…。」


ティリアは声をかけるとビクッとしてからユウを守るように体を向け直してくる。戦闘慣れしているはずなのに、ユウの足を踏まないようになのか、足元をチラチラと落ち着かないように何度も見ている。そのユウも何かを隠すように自分の後ろに押しているようにも見える。


「?いいからティリア。ちょっと退いて?」


優しくよけてユウに向き直り、


そこで固まった。


何も新しい装備にではない。


問題はその足元。まさに足元にチョコンと立っている



…ワンピースをきた幼女に。




「……」


「まぁ待て。落ち着け。」


「…え?アンタの?」


「んな訳あるか。」


そうは言うけど、どことなく雰囲気が似ている…いやそっくり。


「お?何だ?ユウの子か?」


「可愛いなぁ。」


「お前らなぁ、俺がここに来てまだ一ヶ月だろ?どうやったら子が出来るんだよ。」


いつのまにか集まってきたギルドの仲間達から包囲されて質問攻めにあうユウ。


「ん?どうした?」


終わりのない質問攻めの最中、ユウのコートの裾をクイクイと引っ張る幼女。


皆がシン…と静まる中、クルッとユウの方をむき、幼女は小さな指をピンと伸ばしてユウを指し、ほにゃ。と笑い


「ぱーぱ。」


と、仰った。





……


「……え?」



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