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睡魔にはどうしても勝てないこともある。

これで三章は終わり、ここからまた短編というカオス競演が始まります。(´・ω・`)

ガタガタと馬車に揺られながら色々と濃かった印象の俺がこっちに来てからの二つ目の国、メディオールを朝日に照らされながら後にする。


「なんか…ゆっくりとか出来なかったな。」


「二日目のエステ巡りのコース計画も無駄になってしまいましたし……」


「せっかく髪をキレイにしてもらったのに…」


皆それぞれの疲れが出たらしくグッタリしている。


「あ、ねぇユウ。」


「……ん?ああ。」


「軟膏頼まれてたんじゃないの?」


そういえばあそこに行ったのは元は手紙を届けることとチョウガの軟膏だった。


「戻ったらそこら辺の軟膏買って押しつける。」


「というか何考えてんのよ。」


「…鋭くね?」


アニエスに見透かされてしまった。できるだけ顔に出さないようにしていたつもりだったのだけれども。


「ご主人の反応が悪いときは大抵何か考え込んでいるときですし。」


「話してみるだけでスッキリすると僕は思うけど。」


回りにもバレていたようだ。前に座るノッチとシスティに視線を送ると頷きが帰ってきた。


「結局アレで良かったんかなー…とか思ってさ。」


「最後串刺しにしなくても良かったと思いますよ?」


「ああ…そこじゃなくて。」


自分でもまさかああなるとは思ってなかったし、抜けなかったらどうしようかとかなり困った。勢いよく引いたら抜けたから良かったけど。


「ジェリー王女のほうだよ。目を醒ましてもらったはいいけど…」


そこまで言ってから手を頭の後ろに持っていき天井を眺める。


「あれで正解だったのかなー…って。」


勿論あのままだったら他にも被害者が増えていただろうしそのなかには俺やアニエス達も含まれたかもしれない。能力者に拘らなかったら被験者なんていくらでもいるのだから。


「…ユウ君の解答で合っているよ。」


「……」


「彼女には酷だったけれど、あれは仕方のないことだしそれに彼女はそんなに弱くないから。」


「そう言ってもらえると助かるよ。」


苦笑して座り直すと車内の空気もどことなく良くなったような気がする。


「空気悪くしてすまんかった。」


「気にしなくていいぞ。」


ノッチから宥めの声もかけられ終わりムードが漂う。もうこうなったらこの話題には触れない方が良いだろう。


「よし!じゃあもう一つだけいいか?」


「早く言いなさいって。」


「一つだけと言わず何個でも僕はいいよ。」


膝を叩いて気分を切り替えてもう一つ。どうしても取り除かなければいけないことに取りかかる。


「ティリア!」


「はいご主人!」




「─向かいに座るチャラ男を叩き落とせ。」




不審者の排除だ。



「ご主人、触れたくないです。2重の意味で。」


「刀の鞘でもいいから。」


「汚したくないです。」


だが俺の側近は命令を聞いてくれない。


「僕のどこが嫌なんだい?」


「煩いよ何ですでに迎えにきた馬車の中にすでに乗ってるんだよ!」


「そうよ私達が乗ったら降りるのかな、って思ってたらここまで乗ってるし!いい加減無視すんのにも限界がきたわよ!」


「スゴいシンクロ具合だねぇ。」


「「「「「いいから降りろ!!」」」」」


耐えきれなくなったのかノッチだけでなくシスティまでもが声を荒げていた。


「まぁまぁ。ユウ君。よく考えて見てくれよ。」


車内からのブーイングにも怯まずに俺に語りかけるように口調を整え、手招きをするヘンリ。本来なら俺の方に体を倒して交渉したいのだろうがティリアが常に左手で風の弾をチラつかせているためそれはできないようだ。仕方なくティリアの肩を叩いて落ち着かせて俺の方から近づく。


「賢いユウ君なら僕がいない間に何をやっていたか分かるでしょう?」


「……。」


確かにいない瞬間はあったしその間にやっていたことは俺達がすんなりと国から出れたことで何をしてくれたかは簡単に分かる。俺の沈黙を肯定ととったヘンリが続ける。


「それにあれだよ。最終的にユウ君も僕に頼んだじゃないか。」


「言っておくけど探偵所のアレは違うからな。」


「目を醒ましてやれ。って。アレ僕に対してでしょう?」


ダメか…想像していたよりも頭がキレるようだ。


「分かったよ。いいよ。」


諦めて降参のジェスチャーをしながら元の席に戻る。アニエスとティリアが何か言いたげだったけれども黙ってしまった。


「いやぁ嬉しいな。」


ヘンリは大袈裟に喜ぶとその笑顔で


「ユウ君の仲間になれるなんて。」


とんでもないことを言い出した。


「ふざけるんじゃないわよ!誰がアンタを入れるのよ!」


ダンッ!と床をややへこませながらガンを飛ばし始めるサブリーダー。ティリアは俺の今の考えも察してくれたのだろうか、静かにしている。


「いいよね、ユウ君。」


「無視するな!!」


「アニエス。我慢だ。」


自らのポケモンに命令するチャンピオンのようにゆっくりと告げてやる。


「何でよ!」


しかしバッチが足りないのか言うことを聞いてくれない『アニエス Lv. ?』。


「メリットが多いからな。」


しょうがなく諭すようにゆっくりと喋る。


「高練度の魔法使いで剣士、なおかつ探偵業でのスキルで人から情報を聞き出すのが上手い。しかも女性相手に。さらに……」


「さらに?」


「コイツ多分医者だ。」


ウグッと女子らしからぬ唸りをあげ、怯むアニエス。チームに応急措置は全員できて当たり前だが一人は治療できるメンバーは必ず欲しい。早い話がゲームでいうヒーラー役だ。


「まぁとりあえずよろしくね!」


「私が認めない限りはメンバーじゃない!」


ヘンリの握手を求める手を払い怒鳴り付ける長女役。それをノッチとシスティのチームのお母さん役とお父さん役が宥めに入り、それをみてチャランポランの長男が笑っている。


なんだこれ。


巻き込まれないようにジリジリと距離を取っていると


「ご主人。」


ティリアがクイクイと袖を引っ張ってきた。


「眠いので肩貸してもらってもいいですか?」


「……好きにしろよ。」


では失礼。といい俺の肩に頭をもたげガチで寝始める側近。


未だギャアギャアと喚くアニエスごしに朝日が窓から差してきた。


「…悟りとか開けないかな。」


結局到着するまで側近の目は醒めなかった。



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